だっことおんぶ

すくすく子育て
2022年6月25日 放送

子育てには欠かせない「だっこ」。でも、だっこのしかたをちゃんと習うことは、あまりないですよね。安全性や体力の面も気になります。そこで、だっこの秘けつやおんぶのしかたを、専門家に教えてもらいました。

専門家:
小崎恭弘(大阪教育大学 教授/保育学)
平尾時栄(助産師/ベビーウェアリングコンシェルジュ)

負担のない安全なだっこを教えて!

だっこを習ったことがなく自己流なので、子どもの体に負担がないか心配です。落としたくない気持ちが強くて、両手でガッチリと固定しているので、子どもがきつくないか気になります。私も肩や腕に力が入り過ぎて、体が悲鳴を上げています。最近は腰痛も出てきました。子どものためにも、私のためにも負担のない正しいだっこで、かつ安全なだっこのしかたを知りたいです。
(お子さん5か月のママ)

快適なだっこのポイントは、高め・密着・子どもの姿勢

回答:平尾時栄さん

「正しいだっこ」という表現をよく聞きますが、何が正しいかではなく、安全で快適なだっこが大切だと思っています。今のだっこに負担を感じるのであれば、少し楽になる工夫があります。快適なだっこのポイントは、「高め・密着・子どもの姿勢を整える」の3つです。この3つをおさえただっこのしかたを紹介します。

縦抱き(コアラだっこ)のしかた

解説:平尾時栄さん

生まれたてで赤ちゃんがやわらかい時期のだっこが難しいという話をよく聞きます。だっこにはいろんな方法がありますが、そんな時期におすすめの方法です。

まず、寝ている子どもの体の下に手を差し込みます。

自分の体をたおして子どもを迎えに行き、体にぴったり引き寄せます。

そのまま子どもと体を一緒に起こします。この状態で、すでに高い位置でだっこができています。
※低月齢の場合は首・背中をしっかり支えましょう

子どもを高めの位置でだっこするのがポイントです。顔が近い、子どものお尻がだっこする人のおへそあたりになるのが目安です。

続いて、子どもがしがみつきやすい姿勢に整えます。

通常、赤ちゃんの両膝と股関節は「Mの字型」に、自然に開脚しています。

このMの字型の自然な開脚状態を保てるのが「コアラだっこ」です。まるで、コアラが木につかまっているように見えますよね。股関節脱臼などのトラブル予防にもなるため、コアラだっこが推奨されています。

子どもの肛門が、だっこする人に向くように、骨盤をくるっと手前に巻きつけてあげると、足の位置も定まりやすく、フィット感がでてきます。
密着する面を広くすることもポイントです。親子が寄り添っている状態で、接地面が広いと、重心がひとつになるので軽く感じます。子どもが自分でしがみつきやすい姿勢に整えてあげることは、負担が少なく、親子ともに快適なだっこにつながります。

子どものお尻を手のひらで支えていると、手首を痛めやすくなります。できるだけ体の中心に近いところを使っていきましょう。手のひらではなく、腕に座らせて支えると負担が少なくなります。
また、腕が疲れてきたら、上に向けていた手のひらを下に向けると少し楽になります。手のひらを上にした状態と、下にした状態だと、使う筋肉が変わるのです。

横抱きのしかた

解説:平尾時栄さん

縦抱きから横抱きにするときは、子どものお尻と体の上のほうを支えて、ゆっくり向きを変えてあげます。

手足が自由になり過ぎてると、子どもが落ち着かないので、手足を自分で見れたり触れたりする体の中心にもってきてあげるとよいでしょう。


パパがだっこするとすぐに泣いてしまい、どうしてもママに頼ってしまいます。
(お子さん6か月・4歳のパパ)

保育士がだっこしても泣く。パパは自信を持って

回答:小崎恭弘さん

ママの手が痛い・腰が痛いところを見ると、パパも頑張ろうと思いますよね。でも、ふだんママが育児の中心だと、パパは自信がなく、どうしていいのかわからなくて、子どもに泣かれると不安になることもあるでしょう。でも、私たちプロの保育士でも、子どもは泣くときは泣くのです。ママでないと絶対にだめなわけではありませんよ。
パパが不安な気持ちで子どもに接していると、その気持ちが動作にあらわれ、子どもにも伝わります。もう少し自信を持って、「パパがやるよ」というような意気込みでやってみましょう。


だっこひもをより快適に使うには?

2人の子どもを育てています。よくだっこひもを使っていますが、最近は30分ほどつけるだけで、腰や背中に痛みを感じるようになりました。もっと快適に、だっこひもを使う方法はあるのでしょうか?
(お子さん8か月・3歳のママ)

だっこひも調整のすすめ

まずは、平尾時栄さんに、ふだんのだっこひものつけ方を確認してもらいました。

解説:平尾時栄さん

まずは、背中のバックルの位置を調整しましょう。今は首に当たっていてるので、首で支える形になり、体重がうまく分散できません。背中のバックルを肩甲骨の下あたりにすると、子どもの体重が分散され、首や肩の負担が軽減されます。
※メーカーによって最適な位置が違います。取扱説明書を確認してください。

バックルの位置が下がって、バックルをとめるときに手が届かない場合は、バックルをつけた状態で頭からかぶって装着してみましょう。

続いて、子どもの姿勢を、親に抱きつきやすい形に整えます。お尻よりひざが高くなるような姿勢をイメージして、お尻から太ももを持ち上げます。骨盤からくるっと手前に巻きつけるように自然に整えると、より密着できて、だっこが安定します。

最後に、背中のベルト幅を、今よりも狭めたほうが背中の負担が軽くなると思います。

だっこひもに違和感あると、自分の体型とメーカーや製品との相性がよくないのだと思ってましたが、調整できるのですね。

だっこひもでも「高め・密着・子どもの姿勢」を意識する

回答:平尾時栄さん

よく「どのメーカーがいいですか?」と質問されますが、自分の体のサイズに合わせられる・調整できるものを選ぶのがよいと思います。快適なだっこのポイント「高め・密着・子どもの姿勢」は、だっこひもを使うときも同様です。ポイントに気をつけて調整すれば、負担が少なくなると思います。

だっこひもでのだっこで、赤ちゃんがずっと同じ姿勢でいることが気になります。何時間まで大丈夫でしょうか?
(お子さん8か月のママ)

おろす・体勢を変えるなど、親子が疲れない適度な間隔を

回答:小崎恭弘さん

保護者としては気になるところですよね。例えば、大人で考えてみると、ずっと同じ姿勢でいるのはつらいことだと思います。子どもにとっても同じです。おろしたり、体勢を変えたり、休憩をしたりすることを意識してみましょう。状況によっては、長くだっこしないといけない場合もあると思いますが、親も子も疲れ過ぎない、適度な間隔を心がけましょう。


だっこひもの事故に注意!

だっこの負担を軽くしてくれる、便利なだっこひも。一方で、使い方を間違えると重大な事故につながることがあります。
子どもの事故予防にくわしい小児科医の坂本昌彦さん(佐久医療センター/小児科医)に話を聞きました。

解説:坂本昌彦さん

乳児の頭部打撲で入院した事例を調べたところ、原因の約半分(※1)がだっこひもやスリングなど乳幼児用品からの転落による事故でした。実際に、次のような事例が起こっています。
※1 入院35例のうち18例が乳幼児用品からの転落

事例1/4か月の子どもをだっこひもに入れて外出中、かばんから財布を出そうと前かがみになったところ、脇から子どもが滑り落ちてしまった。

事例2/10か月の子どもをヒップシートに座らせて移動中、落としたおもちゃを拾おうとしたら、支えている手がゆるんで子どもが後頭部から転落した。

赤ちゃんは頭が大きいので、落ちるときは頭が下になってしまいます。だっこされている高さは、70cmから1mぐらいで、子どもにとっては非常に高く、落ちると大きなけがにつながる可能性があります。まずは、幼児用品の使い始めに取扱説明書をしっかり読んでください。

また、装着するときのチェックポイントを、ひとつひとつ確認することが事故の予防につながります。
こちらは、だっこひもからの転落事故を予防するためのリーフレットです。


東京都生活文化スポーツ局 消費生活部 生活安全課 作成
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/kyougikai/h26/press/leaflet.html

「バックルの留め忘れはないか」など、転落予防の注意点がまとまっているので参考にしてください。事故の話を聞くと、怖いと思う方が多いかもしません。ですが、むしろあらかじめ事故が起きるリスクを知ることで、事故を予防する対策ができて、安心して使うことができます。


ずっとだっこしてあげられない⋯ どうすればいい?

6か月になる息子は、生まれたときから大きく体重も重めです。その上、息子をだっこしていると、上の子がやきもちをやいてくるので、なかなかずっとだっこしていることができません。何かできることはあるでしょうか?
(お子さん6か月・4歳のママ・パパ)

おんぶは両手が空くので上の子の世話や家事ができる

回答:小崎恭弘さん

まだ、おんぶをしたことがなければ、ぜひ試してみましょう。おんぶの場合は両手があくので、上の子と遊んだり、家事をしたりできます。しっかりおんぶすれば、子どもも安定して落ち着きます。

おんぶひもの使い方

子どもの首がすわってからは、おんぶひもを使うことができます。平尾時栄さんに教えてもらいました。
※使う場合、必ず各メーカーの取扱説明書を確認してください

解説:平尾時栄さん

おんぶひもには長いひもがついています。これが肩ひもになります。

背当てがあり、Dカンという輪っかがついてます。
このおんぶひもは、肩ひもをDカンに通して使うタイプのものです。

おんぶのしかた

まず、子どもをおんぶひもの上にのせて、脇の下に肩ひもが通るようにします。

続いて、2本の肩ひもを胸の前で束ねて握ります。肩ひもが安全ベルト代わりになるので、左のように隙間をつくると落ちてしまいます。体にぴったりつくようにしてください。

ひもを持った手と逆側のひざを立て、子どもをのせます。家であれば、ソファーに座らせてもよいでしょう。

続いて、立てひざをした側の腕を、子どものおなか側に差し込んで、腕を使ってかかえるように子どもを背中へまわします。お尻をうまく背中のほうに持って行きましょう。これで、高く背負う形になります。

ここからは、子どもがずり落ちないように、前傾姿勢を取りながら注意して進めます。

お尻を支えている手を前に持ってきて、2本の肩ひもを分けて持ちます。前傾姿勢で子どもが落ちないようにひもを引っ張りながら、肩ひもが両肩にかかるように、首をくぐらせます。

もういちど片手で2本の肩ひも持ち、しっかり前のほうに引っ張りながら、できるだけまっすぐに、軽く前傾姿勢で立ち上がります。そのまま、肩ひもを2つに分け、片方のひもをひざで挟んで外れないようにします。

続いて、Dカンをお尻のほうから前にもってきて、肩ひもを通します。

Dカンに通した肩ひもをひざで挟み、反対側の肩ひもも同じようにDカンに通します。

Dカンの近くで肩ひもを持って、斜め上に向かって引き上げ、子どもの位置を上げます。子どもの腕が肩にのる高さにしましょう。

最後に、肩ひもを、それぞれ反対側のひもに外側から通して、胸の前で結んで完成です。

どのだっこひも・おんぶひもも、慣れれば簡単ですが、慣れるまでは大変だと感じるものです。慣れるまではパートナーがサポートしながら練習したり、1人でする場合は、鏡を見ながら低い姿勢で行いましょう。

コメント:小崎恭弘さん
初めてのおんぶは、コツもわからないので、ぎこちない部分があると思います。2人で練習すれば、スムーズにできて、安全も確保できます。ママが練習した後は、パパが練習してママがフォローしましょう。何回か試してみれば、慣れてくると思います。やはり両手が自由に動かせることがとてもいいので、夫婦で取り組んでほしいと思います。

子どもにとって、「だっこ」と「おんぶ」は、どちらがいいのでしょうか?

だっことおんぶ、それぞれによいところがある

回答:小崎恭弘さん

だっことおんぶには、それぞれによいところがあります。だっこは、顔が見えて、視線が合って、親子の関係性・場所ができていく安心感・安定感があります。おんぶは、親子で同じものを見ることができて、子どもにとって社会や世界が広がっていくものなのです。だっこも、おんぶも、究極の親子のスキンシップではないでしょうか。状況によって使い分けて、子どもとの豊かな関わりを意識してみましょう。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです