子どものいたずらとうそ

すくすく子育て
2022年5月14日 放送

今回のテーマは、子どもの「いたずら」や「うそ」。どうやってやめさせればいい? かわいいうそや小さなうそでも注意すべき? どうしてうそをつくの? そんな疑問や悩みについて、専門家と一緒に考えます。

専門家:
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)
松井智子(中央大学 教授/心理言語学)

危険ないたずらをやめさせるには、どうしたらいい?

長女の危険ないたずらに困っています。例えば、わざと高いところからジャンプして、頭をぶつけてしまったことがあります。こちらの様子をうかがいながら、隠れて口にものを入れてふざけることもあります。命の危険があるので厳しく注意すると、反省するよりもかんしゃくを起こしてしまい、あまり効果がありません。こんないたずらは、下の子が生まれてから多くなったように思います。どうすれば、やめてくれるでしょうか?
(お子さん2歳9か月・6か月のママ)

単に楽しんでいる場合は、危険を伝えてやめさせる

回答:松井智子さん

単に楽しんでいるのか、誰かの注意をひくためにやっているのかで、対応のしかたが変わります。口にものを入れて、感触を楽しんでいるような場合は、すぐに危険であることを教えて、やめさせることが大事です。

親の注意をひきたい場合は、注目しているサインを送る

回答:松井智子さん

子どもが親の注意をひきたくてやっている場合は、危険であることを伝えてもあまり効果はありません。「そんなことをしなくても、ちゃんと見ているよ」と、注目しているサインを送ってあげることが大事です。
下の子がいるとお姉ちゃんだけに時間をつくるのは難しいので、お姉ちゃんに下の子の世話を手伝ってもらうなど、一緒に何かできる機会をつくるのもひとつの方法です。「ちょっと大変だから手伝って。頼りになるよ」のように伝えると、お姉ちゃんも「下の子の世話をしたい、世話ができるんだ」という気持ちになります。それは、子どもにとってうれしいことでしょう。
一方で、やはり危険なことは「危険があるんだよ」と教えて、やめさせていくことも大事です。

試すことで危険と安全の区別ができるようになることも

回答:汐見稔幸さん

お子さんはちょっとした冒険が好きなタイプのようですね。人間は、自分ができるかどうか試してみたい動物なので、一生懸命に試しながら、だんだん「これは危ない」「これはできる」とわかっていくわけです。
あまり親の気持ちだけを優先して、「危ないからダメ」にしてしまうと、お子さんのよさが消えてしまうかもしれません。ある程度は子どもにまかせて、けがや失敗をしたときに「どうしてけがしたかわかる?」「ここは高すぎるよ」といったことを、しっかり丁寧に伝えてあげるといいでしょう。

感情的に叱るのではなく、子どもの目を見て丁寧に伝える

回答:汐見稔幸さん

お子さんのようなタイプの子には、感情的に伝えてもなかなか通用しないかもしれません。しっかりと目を見て「なんでママが心配しているかわかる?」「口に入ったら大変なのよ」と、子どもにわかる言葉で丁寧に伝えてあげる。すると、子どもにも「これはちょっとまずいかな」という気持ちが出てきて、少しずつ減っていくように思います。いたずら心を抑えつけ過ぎないように育てたいですね。


子どものいたずらに、どこまでつきあえばいい?

娘と一緒に外出していると、わざと靴を片方だけ脱いで走り出すことがあります。どうしてそんなことをするのかわかりませんが、そこでパパやママに追いかけられることを楽しんでいるようです。かわいいいたずらだと思って対応していますが、しつこいと思うときもあり、どこまでつきあえばよいのか悩みます。
(お子さん4歳8か月のパパ)

遊びは面白いルールをつくることで始まる

回答:汐見稔幸さん

子ども遊びというものは、何かおもしろいルールをつくることから始まります。お子さんは「片方の靴を脱いだら追いかけっこする」という、初歩的なルールのある遊びをつくっているわけです。やはり、パパ・ママと遊べることが楽しいのだと思います。

疲れているなど理由があれば、きちんと断ることも大事

回答:汐見稔幸さん

疲れているときなど、やめさせたいときは、「パパはちょっと疲れているから、今日はできないよ」と丁寧に伝えてみてください。そうすれば、子どもは、つきあってもらえないと遊びが成立しない、「できる日」と「できない日」があるとわかっていくでしょう。子どものほうも、遊びを始める前に「もう少しパパの様子を見よう」となるかもしれません。

私は、叱ったり怒ったりすることができない性格です。以前、車道に飛び出そうになって危険なこともありましたが、叱ることができませんでした。ママからは「ちゃんと叱ってほしい」と言われますが、怒るような言葉がなかなか出てきません。

怒るのではなく断ることもできる

回答:汐見稔幸さん

怒らないのは、パパのいいところでもあると思います。怒るのが難しいときは、「ダメ」と叱らなくても、「一緒に遊べないよ」と断ればいいのです。

危険なことは説明して、別のルールを設定する

回答:松井智子さん

お子さんの年齢だと、相手の反応を期待しながら、わざとしているところがあると思います。親があわてて追いかけてくれる反応を期待しているのでしょう。
ただ、車道に出てしまうのはとても危険なので、危ないことを説明してください。物事の因果関係もわかるようになっていく時期なので、きちんと「ここから出ると、車が来て危ない」と話して、例えば「車道には出ない」という別のルールとして決めてみるのもいいでしょう。

子どもは、どこから危険なのか、境界線があまりわかっていないのでしょうか?

「楽しい」が優先するので、目に見える境界線を決める

回答:松井智子さん

子どもは、まだ経験値が少ないため、大人のような恐怖心が弱く、楽しいことが優先されがちだと思います。だから「ここから向こうへは行かない」のように、目に見える形で境界線を説明して、ルールとして決めてみてください。ルールを決めておけば、ときには子どものほうから「ここから向こうに行ったらだめなんだよ」と、得意になって教えてくれるかもしれません。


小さなうそでも注意するべき?

長男(4歳)は、よく小さなうそをつきます。例えば、おもちゃの片づけを注意すると「弟が使っていた」と、うその言い訳をします。いつもは「そんなことないじゃん」のように軽く流していました。でも、見過ごせないうそを強めに注意したら、とても落ち込んでしまいました。それまで、「大阪までひとりで行ったんだ」といった、空想を楽しむようなうそでよく遊んでいましたが、それも言わなくなりました。注意すると落ち込む時間が長い子なので、そのつど注意すべきか、流したほうがいいのか悩みます。そもそも「うそ」と「言い訳」は同じなのでしょうか。
(お子さん4歳・5か月のママ)

幼児期のうそに相手をだます意図はない

回答:松井智子さん

幼児期のうそに、相手をだますような強い意図はありません。自分が怒られるのが嫌で、そこから逃れたくて、言い訳のようなうそをつくわけです。相手をおとしめるようなうそではありません。お子さんの「弟が使っていた」といううそは、そのような言い訳と同じだと考えていいでしょう。

注意が逆効果になることもある

回答:松井智子さん

注意をしたほうがいいかどうかは、子どものタイプにもよります。叱られて萎縮するタイプの子には、逆効果になる可能性もあるのです。怒られることを避けるためのうそで怒られるのは、子どもにとって、とても嫌な状況です。

子どもがうそをついた理由を考える

回答:松井智子さん

叱ることが逆効果になる状況では、どうして子どもがうそをついたのか、何から逃れたいためにうそをついたのかを考えることが大事です。
例えば、「弟が使っていた」といううそは、「片づけをしたくない」という理由が考えられます。そうであれは、例えば「最近片づけがうまくなったよね。ママに教えて」のように声をかけて、子どもの気持ちを「やりたい方向」に向けていくことがひとつの解決法になります。

子どもが変わるチャンスは、自分が評価されたとき

回答:汐見稔幸さん

人間が態度を改めるのは、自分で「本当にそうだ」と実感しているときです。ポジティブな気持ちのときに、自分で変わろうと思えるのです。単純に、たくさん叱れば変わるわけではありません。自分が評価されたときが変わるチャンスなのです。例えば、きちんとできたとき、うそをつかず正直に言ったとき、そんなときに評価してあげることを丁寧に続けていきましょう。そこまで叱らなくても、言い訳のようなうそが減っていくと思います。

子どものうそは自分を守る手段でもある

回答:汐見稔幸さん

子どもは、自分を守るためにうその言い訳をすることがあります。ある意味では子どもが創造的な活動をしているときに、「それはダメ」と本気になって叱ると、せっかくの芽が伸びなくなってしまう可能性もあります。小さなうそは「またそんなこと言って」と軽く流して、正直に言えたときは「今日はきちんと言えたね」と評価してあげる。そのほうが、お子さんにとってはありがたいのではないかと思います。

子どもが空想を言っているとき、それが「空想」だと理解しているものですか?

大人にすることにこだわり過ぎないほうが、子どもはおもしろく育つ

回答:汐見稔幸さん

例えば、絵本では「キリンさんと話した」といったことがたくさんあります。子どもが、そのような物語の世界と現実とを区別しているか、混同しているのかについて、たくさんの議論がありますが、私は区別できているのではないかと考えています。
頭の中にもうひとつのリアリティがあって、そこではおとぎ話も現実味のある世界になっていきます。私たち大人も、例えば小説で体験できることで、現実とは違うことをはっきりと認識しています。
小さな子どもは物語と現実の区別がそれほどしっかりとはできていませんが、5歳ぐらいになると徐々に変わっていきます。そこで「大人の論理に切り替えなさい」としてしまうと、子どもが持っている「いいもの」をうまく伸ばせなくなる可能性があります。子どもを大人にすることにこだわり過ぎないほうが、子どもはおもしろく育つと思います。


なぜ、うんちが出ていても「出ていない」とうそをつくの?

息子はうんちが出ていても「出ていない」と言ってオムツを替えさせてくれません。「『出た!』と言ってくれたほうがうれしい」と伝えているのですが、なぜうそをつくのでしょうか?
(お子さん3歳3か月・1歳2か月のママ)

子どもの恥ずかしさをふまえて、オムツにしたことを受け入れる声がけを

回答:汐見稔幸さん

お子さんは、ふだんの生活で「きちんとトイレでしてね」「よくできたね!」「またオムツにしちゃったね」と言われることが繰り返される中で、「オムツにするのは恥ずかしい」という気持ちが少しずつ強くなり、あえて言わなくなったのでしょう。恥ずかしいという感情が、芽生え始めている時期だと思います。そうであれば、「いいのよ。だんだんできるようになるよ」と言ってあげることが大事だと思います。

健康なうんちが出ることは恥ずかしいことではないと伝える

回答:松井智子さん

日本は他の国と比べて「恥の文化」だといわれます。親子の会話でも、つい「恥ずかしいね」という言葉を使ってしまうことも多いと思います。うんちに関しては、「出ないとつらいよね」「出てよかったね」と声をかけて、健康なうんちが出ることは、恥ずかしいことではなく、いい状況なのだと子どもがわかっていけるように話してみましょう。

ほほえましい気持ちで見守るぐらいの余裕があると子育てが楽になる

回答:汐見稔幸さん

子ども自身が「うそを言うのは恥ずかしい」という気持ちが芽生えれば、自然になくなるだろうと考えてみましょう。子どもをほほえましく見守るぐらいの余裕があると、子育てが楽になると思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです