子どもの個性 どう伸ばす?

すくすく子育て
2022年5月7日 放送

子どもの個性っていつから出てくるの? 個性を伸ばすには自由にさせたほうがいい? 好きなことと、得意なこと、どちらをやらせるべき? 今回は「子どもの個性」について、とことん考えます。

専門家:
柴田愛子(保育施設代表)
川田学(北海道大学大学院 准教授)

慎重な性格の子には、どんな環境が必要?

長女(3歳)は慎重な性格ですが、臆病でこわがりなところもあって気になっています。0歳のころから、はじめての人や新しい場所が苦手で、固まったり泣いたりしていました。今では、公園で遊んでいるとき、他の子どもが一緒におもちゃで遊ぼうとすると「ダメ!」と怒ったりします。加減ができないようです。このままでは慎重さから友だちをつくることが難しいのではないかと心配です。いろいろとチャレンジできるように、どのような環境を用意してあげればいいのか悩んでいます。
(お子さん2人のママ)

生まれ持った「気質」と周囲の影響でつくられる「社会的な個性」がある

回答:川田学さん

子どもの個性や性格には、感受性の鋭さなど、生まれ持った「気質」が影響します。一方で、周囲の影響を受けてつくられる「社会的な個性」もあるのです。
はじめての子どもの場合は、親が神経質になることも多く、子どもにも神経質さがうつる場合もあります。その意味では、「社会的な個性」の最初のステップは、生まれた順番が影響するのではないかと思います。

慎重さがずっと続くことはあまりない

回答:柴田愛子さん

慎重さが一生そのまま続くのは、あまりないのではないかと思います。いろんな人との出会いや体験を通して、だんだん変わっていきます。公園などで友だちと遊べない慎重な子はいますが、それが長く続くわけではありません。

「安心の基地」があれば少しずつ外に出ていける

回答:柴田愛子さん

親が「友だちと仲よくしてほしい」という思いから、つい子どもを無理に遊ばせようとしてしまうことがありますが、それは逆効果だと思います。
お子さんは、家ではすごく元気に遊んでいても、中と外をよくわかっていて、外では力が入るのでしょう。警戒しながら、安心できる親の背中からいろんな子を観察しているわけです。そのような「安心の基地」があれば、少しずつ外に出ていけます。でも、そこで親に「行っといで」と言われると、安心の基地がないので、世界が広がっていきません。帰ってきたときに、「ドキドキしちゃったね」と受け止めてあげると、安心して、またチャレンジできます。
幼稚園・保育園に行くようになったら、いろんな子の中で過ごすことになります。心配するよりも、「今は、慎重派なのよね」と思うぐらいでいい。まずは、親との信頼関係をつくること。ときには、背中を押さない努力をして、子どもが自分から出るのを待ってあげましょう。


個性はいつごろから出てくる?

息子は穏やかな性格で泣くことも少なく、「育てやすそうだね」と言われることもあります。でも、ありえないことですが、まわりを気にしているのではないか、我慢しているのではないかと気になります。自分の気持ちを素直に言える子になってほしいので、もっと感情を出してほしいと思っています。ただ、まだ数か月の子に、ふるまいが個性として現れるものなのかわかりません。個性はいつごろから出てくるのでしょうか。
(お子さん5か月のママ)

いろいろな経験を通して個性が花開く

回答:川田学さん

お子さんの場合は、感情に穏やかな安定感があるのだと思います。今は5か月とのことですが、7~8か月ぐらいから夜泣きが強くなったり、人見知りが出てくる子もいます。小さいときは穏やかだったけど、1歳ぐらいで怪獣のように元気な子に変身することもあります。あと数か月の間に、大きく変化することもあるのです。
個性は、生まれ持った生物学的なものと、生まれた後の社会的な経験を通してつくられるもの、生涯にわたってその両方があります。これからいろいろな経験を積んで、個性が花開いていくと思います。

生まれたばかりの赤ちゃんは自己肯定感100%

回答:柴田愛子さん

私は、生まれたばかりの赤ちゃんは自己肯定感100%だと思います。泣くことで訴えているわけです。心配するような、まわりに気を遣うようなことは、まだできません。お子さんは、泣くことが少ないとしても、おなかがすいたり、だっこしてほしいときは泣いていると思います。それは、ちゃんとした自己主張で、そのような表現ができていれば、十分だと思います。

幼児の特性は変化していく

回答:柴田愛子さん

親は、子育てしていると、自分の子どもを他の子と比べてしまい、「わが子の個性がずっと続いていく」と思いがちです。でも、子どもにはその時期ならではの特性があって、成長と共にその特性はどんどん変わっていきます。例えば、洋服を着るのが嫌いだった子が、3歳をすぎると急にドレスのような服を大好きになることもあります。慎重な子が、4歳になったら「なんでもいちばんになりたい」と積極的になることもあるのです。

子どもの行動は集団の中で変化していく

回答:柴田愛子さん

子どもは集団の中で生活していくと、周囲の影響で行動が変化していきます。例えば、心配性であぶないことにはなかなかチャレンジしなかった子が、大好きになった子が活発で、急に目覚めたように「私もやってみたい」と言うようになりました。どんどん体育的なことにチャレンジして、小学校にあがるころには「体育が楽しみ」と言っていたんです。将来を予測して心配し過ぎると、心配がふくらむ一方です。心配は、心配なことが起きてからでいいと思いますよ。


子どもの個性をどこまで尊重する? しつけとの線引きは?

娘の個性を大切にしたいと考えています。個性を伸ばしていけるように、できるだけ自由にさせていたのですが、今は自由としつけの線引きが難しくなってきたと感じています。もうすぐ3歳ですが、ほしいものをねだったり、だだをこねたり、みんなと一緒のことができないことが増えてきました。自由にさせすぎて、言うことを聞かなくなったのではないかとも思えます。自由にさせることとしつけの線引きをどうしたらいいでしょうか。
(お子さん2歳9か月のママ)

「自由」と「放任」は違う

回答:川田学さん

2~3歳ぐらいになると、「わかっていて、やっている」ことがでてきて、このままではいけないのではないかと考えてしまいますよね。そこで考える「自由」と、子どものやりたいままにさせる「放任」は違うと思います。私は、しつけは「たこ揚げ」に似ていると考えています。たこは、糸が切れてしまうと飛んでいってしまうし、糸が太すぎたり、糸を強く引き過ぎたりすると揚がりません。何でも自由にさせることが、“糸の切れたたこ”になってしまってはいけません。

「わがまま」なときには親の気持ちをしっかり伝える

回答:柴田愛子さん

自由にさせていたから自己主張するようになったというより、いわゆるイヤイヤ期に入っているのだと思います。子どもは「私のまんま」を乱発していると思いますが、親も生身ですから、嫌なことは「イヤ」と言ってみましょう。子どもがわがままを言うなら、親だって「私は寝てほしいのよ」とわがままを言って、気持ちを子どもに伝えていい。子どもも親も自己主張して、お互いに泣いたりしながら、折り合っていけばいいと思います。

子どもは「ことば」ではなく「経験」で変わっていく

回答:柴田愛子さん

子どもに直してもらいたいところがあって、親が直そうと思って働きかけても、直るものではありません。ことばでコントロールしようとしても、あまりうまくいかないでしょう。子どもは、人に嫌われたり、ドキッとしたり、そのような経験で変わっていくと思います。

成長・発達は波のように変化する

回答:川田学さん

人間の成長・発達で興味深いところは、前向きで外向的・社交的に見える人が、意外とずっとそのままではないことです。成長とともに、内向的になることもあります。いろいろと学んで何かを知ることで、はたと自分のことに気づいて、周りを見渡すと恥ずかしくなることもある。子どもの成長・発達は、波のように、寄せては引くように変化していきます。親は、そのとき最善と思うことをやっていくしかないと思います。


好きなこと得意なこと、どっちを伸ばす?

長男(2歳9か月)は工作が大好きです。でも、まわりと比べると得意なほうではありません。私からみると、ペダルなし自転車をバランス感覚よく速く進めたり、鉄棒に長くぶらさがったり、運動が得意にみえます。これから、好きなことをやらせるべきか、得意なことをやらせるべきか、親の考えをおしつけてしまわないか、どういう方針で決めていけばいいのか悩んでいます。
(お子さん2人のママ)

好きなことは、得意なことになる可能性がある

回答:柴田愛子さん

得意なことは人との比較で評価されるものですが、好きなことは自分のものですよね。私は、好きなことは長続きすると思います。今は下手だとしても、長く続けているうちに得意になる可能性も大きいでしょう。好きなことがあること自体がステキで、ひとつでもあれば人生が生きやすくなると思います。大変な時期があっても、好きだから貫ける。好きを伸ばしてあげてもいいと思いますよ。

親が頑張り過ぎると子どもは苦しい

回答:柴田愛子さん

よく、「子どもが得意なことを伸ばしてあげることで成功した」という話を聞きます。例えば野球ですね。それを聞くと、親は「この子は、せっかく〇〇が得意なんだから、いろんなことを注げば頂点を極めている人たちのように光るのではないか」と夢を描きます。でも、それは非常にまれなケースです。それがどれだけ大変なことなのか、わかっておきましょう。
親が伸ばそうと頑張って、お金も労力もつぎ込み過ぎると、子どもは苦しいですよね。心が自由ではなくなって、得意も好きもなくなってしまうかもしれません。「この子は好きなことがある」「この子は〇〇が得意ね」と思うものがあれば、それでよしとしてはいかがでしょう。

「親ばかパワー」は子どもの生きる力の基盤

回答:川田学さん

私も、人は好きなことをしているときがいちばん輝いているので、それを大事にすることがひとつだと思います。
基本的に、親が「この子はすごい、天才だね」思えるような「親ばかパワー」は、子どもの生きる力の基盤になると考えています。子どもを追い詰めるほど強すぎない、おおらかな親ばかぐらいが、ちょうどいいでしょう。


専門家からのメッセージ

子どもの個性は流動的。早い時期に個性を決めつけると個性を摘んでしまうことにも

柴田愛子さん

ほかの人と比較して、子どもの秀でた部分を育ててあげることが「個性を伸ばす」という言葉になっているように思えます。一方で、今のあるがままの子どもを「個性」と表現する考え方もあります。子どもの個性は、常に変わっている流動的なものです。早い時期に「この部分を伸ばす」と個性を決めつけてしまうことが、逆に子どもの個性を摘んでしまうことになりかねません。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです