ひとりっ子の子育て

すくすく子育て
2021年10月23日 放送

ひとりっ子はわがままに育つ? 競争心が育たない? 将来ひとりで大丈夫? そんな、ひとりっ子ならではの悩みについて、専門家と一緒に考えます。

専門家:
柴田愛子(保育施設代表)
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)

ひとりっ子のメリット・デメリットは?

ひとりっ子は、わがままになったり、きょうだいがいなくて競争心が育たなかったり、マイペースすぎたり。そんなマイナスなイメージを持っています。実際に、きょうだいがいる子といない子で、性格に影響はあるのでしょうか。ひとりっ子のメリット・デメリットはありますか?
(お子さん11か月のママ)

きょうだいがいる・いないで、性格の違いを比較する意味はない

回答:遠藤利彦さん

そもそも、きょうだいのいる子とひとりっ子の性格の違いを比較すること自体に、どれぐらいの意味があるでしょうか。例えば、きょうだいでも出生間隔が5~6年になると、上の子は小学生になるまでひとりっ子なのです。そう考えると、きょうだいの有無で性格の違いを問題にすることが難しいと思います。

性格は遺伝や経験などの多くの要因で決まる

回答:遠藤利彦さん

性格は、いろいろな要因が絡み合う中で形成されます。持って生まれた遺伝的な要因や気質、環境やさまざまな経験などがあります。その中に、きょうだいの有無もあるのかもしれませんが、多くの要因の中のひとつです。性格に影響を及ぼすことがあったとしても、その影響は小さいと考えていいでしょう。

個性はあっても、みんな同じ"子ども"

回答:柴田愛子さん

40年以上保育をしていますが、誰がひとりっ子で誰がひとりっ子ではないと感じたことがありません。その子自身の個性はあっても、「ひとりっ子だから」という見方はしてきませんでした。みんな、同じ子どもです。

短所は、見方を変えれば長所になる

回答:柴田愛子さん

長所と短所は、表裏一体です。「わがまま」は言いかえると「我がまま」で、自分を中心とする軸を持っているということです。「競争心」については、もしも競争心が強い人ばかりだったら、社会が殺伐としてしまうかもしれません。「マイペース」も、まわりに流されないで自分のペースを保てることでもあります。デメリットに感じていることは、ひっくり返せばメリットになります。メリットやデメリットを仕分けする必要は全くないと思いますよ。


家の中での顔と外の顔が違うのは大丈夫?

ひとりっ子の娘(3歳)は、家族にかわいがられて、家の中ではわがまま放題です。自分の希望がかなわないときは、泣いて叫んだり、まるで女王さま状態です。でも幼稚園では、人が変わったようにおとなしく、みんなの輪に入ろうとしません。同い年くらいの子とのコミュニケーションが少し苦手なのかもしれません。うまく友だちとの人間関係を築けていけないのではないかと心配です。
(お子さん3歳のママ)

3歳でわがままは健康的

回答:柴田愛子さん

2~3歳は、親が頭を抱えるぐらいにわがままで、プライドが高いですよね。それは、とても健康なことだと思います。VTRを見ると、お母さんも結構楽しそうにお子さんにつきあっているように見えましたし、それはそれでいいのかもしれませんね。

ひとりっ子は子どもを見慣れていない

回答:柴田愛子さん

家庭で大人だけに囲まれて育ったひとりっ子は、子どもを見慣れていません。そのためか、子どもたちの群れを見ると、緊張して後ずさりすることもあります。

子どもに慣れることで、大人よりも子どもに魅力を感じるようになる

回答:柴田愛子さん

幼稚園で静かになるのは、場をわきまえているためだと思います。他の子をじっと見て、「あの子はおもしろいな、あの子は何であんなことをしてるのかな」のように観察しているわけです。そして、家に帰ってくると、見てきた子のまねをしたりするのではないかと思います。
だんだん幼稚園の子どもたちに慣れていけば、「子どもってこういうものなんだ」とわかって、大人よりも子どもに魅力を感じるようになるでしょう。急ぐ必要はないと思います。

内と外、どちらも本当の姿

回答:遠藤利彦さん

ひとりっ子に限らず、家の内での様子と外での様子が違う子どもはたくさんいますね。どちらが本当で、どちらが嘘だと考えるのではく、どちらも「本当の姿」だと捉えるのが重要だと思います。

いろいろなきっかけで変わることがある

回答:柴田愛子さん

私自身も、家ではおしゃべりなのに、外では静かな子どもでした。幼稚園や保育園には行かなかったのですが、小学校の1~2年のときは何もしゃべらず、困ると泣くことしかできませんでした。小学校時代は、自分から手をあげたことは3回しかないくらいです。でも、中学2年のときに信用できると思える先生に出会って、少し窓が開いたんです。その後、高校生からは怖いもの知らずで、しゃべるようになりました。
振り返ると、自分が「さなぎ」だった思います。さなぎはじっとしているけど、中から外をじっくり観察しているわけです。先生や生徒の様子を十分に観察して、自分の機が熟したころに信頼できる人と出会うことで変わっていったと思います。お子さんの場合も、いろいろなきっかけで変わることがあります。永遠に続くことはないと思いますよ。


ひとりっ子は、ひとりで悩むことにならない?

私には姉がいて、いとこも多いので、身内のことや家族のことを相談できます。でも、娘はひとりっ子で、いとこもいません。将来困ったときに相談できる相手がいなくて、ひとりで悩むことになるのではないかと心配しています。
(お子さん1歳6か月のママ)

きょうだいだけが相談相手ではない

回答:遠藤利彦さん

心配はよくわかります。ただ、きょうだいには、同姓か異性か、年齢が近いか離れているかなど、さまざまな関係があります。実際のところ、相談しやすい場合もあれば、しにくい場合もあるでしょう。家族に限らなくても、将来、親しい友達ができれば悩みを打ち明けて、相談しながら心のバランスを保っていけるのではないでしょうか。

困ったときに「困った」と表現できるように

回答:柴田愛子さん

私は5人きょうだいですが、悩みごとを相談したことがなかったですね。きょうだいは、母親の愛情を奪い合うライバルでもあったんです。
大事になのは、困ったときに、自分から「困った」と言えることだと思います。そうすれば、大きくなったときに、相談相手を自分で見つけられるようになります。例えば、「この相談は、あの人に話すのがいいかな」「カウンセラーに相談してみよう」と思えるようになる。困ったことは山ほど起きるので、それを解決するためにも、自分で「困った」を表現できる、いろいろな人と出会っていけるといいですね。必ずしも、きょうだいに限ったことではないと思います。


ひとりっ子の親が気をつけることは?

息子はひとりっ子で、きょうだいがいないのでコミュニケーションの部分が少し心配で、親としてどのように接するのがいいのか悩んでいます。夫も私もきょうだいがいて、ひとりっ子がどういうものなのか、わからないんです。例えば、家の中だと、いつも親と遊ぶことになりますが、息子の指示に親がやってあげるという感じで、これでよいのだろうかと感じています。ひとりっ子の親は、どんなところに気をつけたらいいでしょうか。
(お子さん2歳10か月のママ)

過干渉とおせっかいに注意

回答:遠藤利彦さん

親が熱心になると、つい「あれもこれもやってあげないといけない」「特別なことをたくさんするべきではないか」と考えがちです。そうすると、子どものやることを先回りしてしまうことが多くなり、それが子どもの当たり前になってしまう。先回りし過ぎると、子どもが受け身になってしまうこともあるわけです。子どもへの過干渉やおせっかいに、少し注意しておきましょう。

パパ・ママが好きなことをしている姿をみせる

回答:遠藤利彦さん

親自身が、好きなことや楽しめることを、子どもにしっかり示してもいいのではないでしょうか。テレビを見て思い切り笑ったり、趣味にふけって楽しむ姿を見せたりすると、子どもが親に興味・関心を持つようになると思います。

ひとりの人間として子どもと関わる

回答:遠藤利彦さん

「親として」という言葉がありましたが、ときには親子としてではなく、人間同士として関わるのもよいでしょう。ひとりの人間として、子どもと関わることも大切です。

「子どものための夫婦」になりすぎない

回答:柴田愛子さん

親は、子どもが生まれたとたんに、子どもがかわいくて「育てなくちゃ」と思い、子どものための夫婦になりがちです。だけど、本来は夫婦があって子どもが生まれたのだから、夫婦のペースを大事にしてもいいと思います。

親も素の自分を出して

回答:柴田愛子さん

きょうだいがいないとコミュニケーションできないわけではありません。親も子もみんな人です。あまり子ども中心にならずに、人として関わっていけばいいと思います。親が子どもを気にかけすぎると、子どもから見て、親がどういう人なのか分かりにくくなってしまいます。親も素の自分を出していれば、子どもは「パパはこのテレビが好きなのね」「ママはこれをすると怖い」「ママはパパがいると態度が変わる」といったことを学んでいきます。それが、コミュニケーションになると思いますよ。

家族で「わがまま」を出しながら折り合いをつける

回答:柴田愛子さん

家族の誰かが不自然だったり、誰かの負担にならないほうがいいですね。親も子も、家族みんなが自分のわがままを出しながら折り合いをつける。「パパはこういう人だから」「息子はああいう人だから」と引き受け合えるのが、家族ではないでしょうか。やりたくないことがあったら、親も「今はやりたくない」と言ってもいいと思います。ひとりでも居心地が悪かったら、無理がきてしまうと思いますよ。


ここで、たくさんのひとりっ子を見守ってきた柴田さんに「ひとりっ子のストレス」について伺いました。

ひとりっ子のモヤモヤを解放する工夫を

コメント:柴田愛子さん

保育園で、ひとりっ子がとても多い年がありました。そのうちの1人が、「ここ(胸)がモヤモヤしたまま帰ったときに、みんなはきょうだいけんかをすればなくなるでしょ。僕はひとりっ子だから、モヤモヤをどうしていいかわからない」と言ったんです。そこで、ひとりっ子たちに、「みんなはどうしてるの?」と聞いたら、ほとんどの子が「ママをぶつ、蹴る」だったんです。

モヤモヤを解放することは、とても大事だと思います。子どもが親をぶったり蹴ったりしても、「嫌な子になってしまった」と思わないでほしい。もし親が元気なら、「おいで、相撲しよう!」と取っ組み合いをしてもいい。それがだめなら、逃げてもいいと思います。

例えば、園では、布団を巻いて「たたいていいよ!」と差し出したりします。いろいろなものを思い切り投げるのも気分が軽くなるので、お手玉のように危なくないものを渡しています。「くそー!」と感情を吐き出しながら投げる方法もあるんです。モヤモヤは一時のことですが、それを出さないと内面が浄化されません。モヤモヤを解放するために、いろいろな工夫をしてみてください。


専門家からのメッセージ

子どもを外に連れ出して、ほかの子に触れ合う機会を

遠藤利彦さん

子どもの成長は、いろいろな人との関係に支えられていると思います。だから、できれば子どもを外に連れ出して、ほかの子どもたちを見たり、一緒に何かをするようなことができるといいですね。子どもは、自分と同じぐらいの年齢の存在に、とても興味を持ちます。そういう興味や関心を、満たしてあげられるような機会をつくるといいのではないでしょうか。

過干渉に注意しながら愛情を注ぐ

柴田愛子さん

子どもは作るものではなく、授かるものです。まずは、ひとり授かったことを「よかった」「うれしい」と感謝してほしいなと思います。
ひとりっ子のよさは、親の愛情を疑わないところだと思います。だから、過干渉にならないように、ときどき目をそらしながら愛情を注いであげれば、ちゃんとまっすぐ育っていくと思いますよ。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです