私って過干渉?

すくすく子育て
2021年9月25日 放送

子どもへの指示が多かったり、行動を制限したり。みなさんにも心当たりはありませんか? どこまで口出しをして、どこまで見守ればいいのか。親の過干渉についてみんなで考えます。

専門家:
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)
武田信子(臨床心理士)

子どものやることを制限してしまう。どう心がけたらいい?

長女(3歳)は絵を描くのが好きですが、クレヨンでテーブルを汚してしまったことがあり、それ以来「汚さないで」と、絵を描く前から注意してしまいます。ほかにも、1歳になる下の子を触ろうとしたとき、だっこのしかたや力加減がわからないだろうから、「触らなくていいよ」と口出しをしてしまいます。
余裕がないと、どうしても先回りして子どものやることを制限してしまいます。親はどう心がければいいのでしょうか。もう少しのびのびとやらせてあげたいと思う反面、慎重になってしまうところが悩みです。
(お子さん3歳・1歳のママ)

何も言わないわけにはいかない。言い方をどう工夫するか

回答:武田信子さん

みなさん同じように言っていると思いますよ。もし、大自然で何をやってもいい環境ならよくても、家の中では「これをやられると困る」ことがありますよね。
子育ては、ある意味「干渉」でもあります。子どもが自分でいろいろなことができるようになるまで、大人が責任を持って育てる。だから、何も言わないわけにはいきません。その上で、言い方をどう工夫するかを考えましょう。
例えば、「下の子を触ろうとする」という話がありましたね。急に触ったら驚いたり、危険なこともあるので、ひと言「かわいいね」と言って、これから何かするよと伝われば、親も気がつき、下の子も嫌ならのけぞるような反応もできると思います。ふだんから、親がひと言かけるような工夫をしていると、言葉も変わってくるのではないかと思います。

子どもに聞くようにすれば、信頼されているのだと思うようになる

回答:汐見稔幸さん

私自身の子育ての反省もあるのですが、危ないときは、すぐに「こうしなさい」「これはだめ」と言いがちですよね。そのときに、もう少し丁寧に「子どもに聞いてみる」ことをやっておけばよかった、と思っています。
例えば、下の子を触ろうとしたときに、「触りたいの? でも落ちたりしないように気をつけて触ってほしいけど、できる?」と聞いてみるわけです。私を含めて、日本の子育てには「ちょっと子どもに聞いてみる」ことが足りていなかったのかもしれません。
子どもは聞かれることで、「自分が意見を求められている。信頼されている」と感じるようになると思います。はじめから「それはダメ」「それはしなくていい」と言うと、プロセスがなく、自分が人間として大事にされているという感覚が、なかなか伝わらないのです。


自分でできるのに親に甘えてくる⋯

来年小学生になる長男(5歳)は、「自分で着替えたくない」「自分でごはんを食べたくない」と言い張り、親に甘えてきます。しばらくは待ってみるのですが、着替えないと体が冷えてしまうし、食べないのもいけないので、最終的に私がやってあげてしまいます。
でも、保育園だと、きちんと一人でできるそうです。番組の取材を受けたときも、しっかりひとりで食事ができていました。自分でできるのに、毎日着替えと食事は自分からやらないので困っています。私がしてあげることで、自立心が育たないのではないかという心配もあります。
(お子さん5歳・2歳のママ)

自立したら何もしてもらえなくなると思っている

回答:武田信子さん

保育園や人前だと、一人で食べることができていますね。きっと、「親の前ではしっかりしない」と決めているのでしょう。親の「自立してほしい」という思いを感じて、「もし自立したら、何もやってもらえなくなるかもしれない」と思っているのかもしれません。

自立に向けて助走しなおしている

回答:汐見稔幸さん

「自分でやっていかないといけない」「もっとしっかりしないといけない」のように、「自立しないといけない」とはわかっている。でも、簡単にそちらの世界に入りたくない気持ちもある。甘えることができる世界は、安心の世界でもあります。大好きな人に、心も体も委ねられる体験ですよね。その世界を離れて、全て自分でしないといけないという寂しさや不安があると思います。そのとき、いずれ行かないといけないなら、自立への助走をしなおすために、一度甘えるほうに戻って、「よいしょ」と勢いをつけようとしているのかもしれません。今は、そのために戻っているところだと思いますよ。


今回の取材で、ママが「どうして着替えたくないのか」を聞いてみると、次のような答えでした。

ママ  :保育園だと自分で着替えられるね。
お子さん:自分でできるわい!
ママ  :どこまで見守ったらいい?
お子さん:見守るのは、1日20分でお願いします。
ママ  :20分見守ったあと、どうすればいい?
お子さん:そのあとは絶対見守らないでください。
ママ  :自分でできるってこと?
お子さん:自分でできます。
ママ  :ほんと?
お子さん:ほんと。

「自分でできる」と言っていたお子さんは、2日間ほど自分でやろうと頑張ってくれたそうです。今後、どのように向き合えばいいのでしょうか。

自立を焦らず、彼のタイミングを

回答:武田信子さん

できたときは、できたことを褒めること。そして、しっかり甘えさせてあげること。まずは、それらを先に考えてください。子どもの自立を焦っても、彼のタイミングに合わなくなるのではないかと思います。

わかっているけど簡単にできない。葛藤がある

回答:汐見稔幸さん

私の3番目の子どもは、ちょっと機嫌が悪くなると、自分で感情をコントロールすることがとても苦手でした。その子が小学1年生になったころ、機嫌が悪くなっときに、「自分で機嫌をなおせないから困ってない?」と聞いたら、「うん」と答えたんです。自分でも困っていることがわかっていて、それでも何をどうしたらいいのかわからない状態だったんです。
そのとき、私は「この子は、きっと人にやさしい子になる」と思いました。自分の大変さをわかっているからです。人間は、わかっているけど簡単にできないことがあります。大人になっても、わかっているけどやめられないことが、たくさんあるわけです。子どもも、同じように葛藤しているのです。
お子さんは、「1日20分」とかっこいいことを言っていましたね。甘えたいことは恥ずかしいから言わないだけで、本当は「甘えたいんだ」と言いたかったと思います。この年齢で、きちんと自分のことがわかっていると言ってくれたのだから、ありがたいですね。今しかないから、もっといっぱい甘えさせてあげようということであれば、だんだん「もういいよ」と言うようになってくると思います。

子どもの気持ちと自分の我慢の兼ね合いがあって、どこまで子どもに寄り添ってあげたらいいのか難しいですね。

「寄り添う」は相手の言うことを聞くことではない

回答:汐見稔幸さん

「寄り添う」は、相手の言うことを、「はい、わかりました」で聞くことではありません。子どもの言い分を聞いて、親も自分の言い分を出して、折り合いをつけていく折衷案のようなものです。一方的なものではありません。お互いに聞き合って、「今回はここでできるね」という形にしていけば、子どもも「大事にされている」と感じるのではないでしょうか。


子どもに質問を繰り返してしまう。悪い影響はない?

娘が保育園から帰ってきたときに、「今日は楽しかった? 誰と遊んだ? 何をした?」と聞いてしまいます。自分から話さないので、娘がどう感じたのか、どう話してくれるのかが気になって、答えるように誘導しがちです。自分から話してほしい、将来的に家族で何でも話し合える環境にしたい思いが強過ぎるのかもしれません。
以前、祖母の家にお泊りすることになり、娘も楽しそうにしていたのですが、初めてのことで私が不安になって、「大丈夫?」「夜は一人でおばあちゃんと寝られる?」「お母さんいないよ」のように、何度も確認するうちに、本人が不安になって、お泊りができなくなったことがありました。子どものためにと思ってやったことが、逆効果かもしれないと感じています。
過度に質問や指示を繰り返すような生活を続けてしまった場合、自発的に発言したり行動したりすることができない子になるのではないか、親の行動が子どもに悪い影響がないか気になっています。
(お子さん3歳・11か月のママ)

「心配」ベースではなく「興味・関心」ベースで質問する

回答:武田信子さん

子どもが「どう答えれば親が満足してくれるだろう」と考えてしまうほど、たくさん聞いてしまっているのかもしれません。
「いい子でやっているかな、何か問題はないかな」のような心配があると、どうしても質問のしかたに表れてしまいます。そして、「思った答え」が得られないと、「どうしてそうしたの?」と、次の質問が出て、子どもは困ってしまいます。質問に答えると、次の質問がくるかもしれないと考えてしまうわけです。
まずは、「心配」ベースではなく、何が本当に知りたいのか、「興味・関心」ベースで聞いてあげるのがよいと思います。

親が自分のことを話すことで、子どもも話すようになる

回答:汐見稔幸さん

よく小学生の子を持つ方から同じような質問を受けます。最初のうちは「学校どうだった?」と聞くと「今日ね~」と答えてくれるけど、1週間続けていると、そのうちに子どもは話すことがなくなって「別に」という返事になるんです。そこで「学校に1日いたんだから、『別に』ってことはないでしょ」と言っていると、子どもは「別に族」のほうに行ってしまうわけです。
どのように聞いたり会話をすれば、子どもが「しゃべってみようかな」と思えるか考えてみましょう。おそらく、ふだんの会話では「ねえねえ、ちょっと聞いてくれる? 今日こんなことあったのよ」のように、こちらから話すことが多いですよね。同じように、子どもに「こんなことを言ってみよう」という話題を見つけておいて、自分がうれしかったこと・びっくりしたことなどを子どもに話してみる。そのようなおしゃべりをしているうちに、子どもから「学校の先生も〇〇とか言っていた」と話してくれるかもしれません。子どもの話に、「へぇ、ほんとに。同じだね」と返してみるなど、子どもが「会話が楽しいな」と思えてくると、少しずつ話をしてくれるようになると思います。
いつも同じことを聞かれて、「いい子でいたんでしょうね」と期待されていると感じたら、話したくなくなります。まずは、親が自分の体験を「ちょっと聞いてくれる?」と話すような家庭の会話文化をつくりましょう。話がなくても、自分がしゃべることがないなら、子どももしゃべることがないだろうなと思えばいいわけです。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

子育ては干渉することでもある。自分中心になり過ぎない

武田信子さん

子育てをすることは、ある意味、子どもに干渉してしまうことです。そのとき、自分中心になり過ぎることが、過干渉だと思います。「相手はどう思っているのかな」「どう聞いたら何と言うかな」と考えて、実際に聞いてみましょう。お互いのやりとりの中で、子どももひとりの人間で、その経験を総動員して、いろんなことを考えていると気づくと、声かけも変わってくると思います。自分が子どものころはどうだっただろうかと、思い出すのもいいかもしれません。

子どもの気持ちを聞き、ワンクッション置く

汐見稔幸さん

「過干渉」の定義は難しいですね。親が自分の思うように行動させようと過度に要求する。その程度の認識でいいと思います。その逆は、子どもを信じること。信じて、子どもの気持ちや考えをできるだけ聞いてあげること。その上で、折り合いをつけて、ワンクッション置くことが、過干渉を避けるいちばんの方法だと思います。
デンマークでは、ベビーカーに乗るような赤ちゃんに対しても、「あなたはどう思う?」と聞くといいます。自分の意見を言うということが、社会で生きていく上で大事だと考えてのことだそうです。他の国から機械的に模倣する必要はありませんが、そのような態度に学びたいですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです