どう防ぐ? 家でのケガ・事故

すくすく子育て
2021年8月21日 放送

家の中での子どものケガや事故。常に子どもを見るのは難しく、大人がどんなに気をつけていても、子どもが思わぬ行動をすることがあります。どうしたらケガや事故を防げるのか、専門家と一緒に考えます。

専門家:
坂本昌彦(佐久医療センター/小児科医)
西田佳史(東京工業大学 教授/傷害予防工学)

今回のテーマについて

早いうちから安全対策を

子どもの事故予防について調査・研究している本田千可子さん(東京大学大学院 助教/保健師)によると、1歳までにケガではじめて受診した子どものうち、20%は生後4か月以内だといいます(1)。まだそれほど動き回らない時期からケガをするので、早いうちから安全な部屋づくり・育児用品の情報を集めるなど、準備をはじめることが大切だといいます。
1) Age in months and birth order in infant nonfatal injuries: A retrospective cohort study. (2020)

予測できることは、対策ができる

西田佳史さん

英語では「事故」を「accident(アクシデント)」と言います。偶発的・予測できないという意味を持っています。一方で、私たちが研究している傷害予防工学では、「傷害」はデータを集めることで予測ができると考えます。予測できれば対策ができるのです。


安全な部屋にするには、どうしたらいい?

もうすぐ1歳になる息子は、興味があるものに何でも手を伸ばし、口に入れたりしてしまいます。今は、ベビーサークルの中だけで遊ばせていますが、そろそろ限界を感じています。部屋には家具やキッチンがあるので、目を離したときに子どもが危ないことをしそうで心配です。子どもがケガをすることなく元気に遊べる部屋にするには、どうしたらいいのでしょうか。
(お子さん11か月のママ)

家具を固定して転倒を防ぐ

回答:西田佳史さん

子どもにとっては、部屋の中のもの全てが遊具です。遊具で遊ぶように、いろいろな家具にのぼりたくなります。テレビ台・たんす・棚などに手をかけると、倒れて子どもが下敷きになることがあるので危険です。アメリカでは、テレビ台の転落事故による救急搬送が45分に1件、そして死亡事故が3週間に1件起きています(2)。転倒防止バンドで固定するなどの対策をしたほうがよいでしょう。
2) Safe Kids WORLDWIDE. A Report to the Nation on Home Safety The Dangers of TV Tip-Overs(December 2012)

家電を置く場所や電源ケーブルに注意

回答:西田佳史さん

電気ケトルや炊飯器から出る水蒸気に興味を持って、やけどの事故が起きる場合があります。低い位置に置かず、子どもの手が届かない位置に置きましょう。子どもの足元から家電までの距離の合計が、120cm以上になるのが目安です。

また、家電の電源ケーブルを引っ張ることで、ひっくり返ることがよく起こります。電気ケトルの場合は、熱湯をかぶる事故になりかねません。子どもの手が届かない位置のコンセントを利用するなど、対策を考えておきましょう。
このような家電が多くあるキッチンは、子どもが入らないようにベビーゲートなどを設置することも大切です。

月・年齢ごとに多い重大事故について知ることが大事

回答:坂本昌彦さん

子どもから24時間目を離さないことは難しいので、少しでも注意すべきポイントを絞ることができるといいですね。まずは、月・年齢ごとに多い重大事故について知ることが大事です。

寝返りができないころは、顔にものがかぶさって窒息する事故が多くあります。
寝返りができるようになると、窒息する事故は少しずつ減ってきますが、転倒や転落、触ってケガ、やけどといった事故が増えてきます。
生後5~6か月を過ぎると、周りのものに関心を持つようになり、ものを口に入れてしまう誤飲が増えてきます。
歩き始めから3歳ごろになると、親の知らないうちにお風呂場に行って、溺れてしまうような事故があります。

高所からの転落は、重症な事故につながる

回答:西田佳史さん

高所からの転落は重症な事故につながるため、避ける必要があります。

東京消防庁(平成27年~令和元年)によると、東京都だけで、5年間に70人の子どもが転落により救急搬送されています。また、3歳までは窓からの転落が多く、4歳ではベランダからの転落が増えています。

ベランダに踏み台になるようなものは置かず、エアコンの室外機はできるだけ手すりから離して設置しましょう。

子どもだけでベランダに出ることを防ぐ

回答:西田佳史さん

子どもだけでベランダに出ることを防ぐことも考えてみましょう。例えば、窓枠に補助錠を付ける方法もあります。

窓が簡単に開かなくなるため、安全性が高まります。換気が必要な場合は、窓の隙間を10cm以内にして補助錠を使用するといいでしょう。窓用やドア用などがあり、ホームセンターなどで購入できます。


誤飲・窒息を防ぐには?

子どもが誤飲などで、喉にものが詰まってしまわないか不安です。どういうことに気をつけたらいいでしょうか。

誤飲すると重大事故につながりやすいものを知る

回答:坂本昌彦さん

誤飲は生後5か月ごろから増え、特に2歳以下の男の子に多いといわれています。まずは、重大事故につながりやすいものを知っておきましょう。
例えば、たばこです。最近では、従来の紙巻きたばこより、加熱式たばこの誤飲件数のほうがが多いといわれています。また、ボタン電池が食道に引っ掛かり、食道に穴が空いてしまう事故もあります。そのほか、パック型液体洗剤やトイレ用スタンプ洗剤、大人用の高血圧・糖尿病の薬などの誤飲も危険です。

毎年、磁石を飲み込む事故も報告されています。おなかの中で、複数の磁石が粘膜を挟んでくっ付いてしまい、腸に穴を空けてしまうことがあるのです。

かみ砕きにくい食品や、丸くてつるつるした食品に注意する

回答:坂本昌彦さん

かみ砕きにくいものや、丸くてつるつるした食品による窒息事故は、大人が見ている目の前でも起こっています。

5歳以下の子どもの場合、ナッツ類や豆類を食べさせないようにしましょう。

ミニトマトやブドウなどを食べさせる場合は、必ず4分の1に切ってください。

異物を喉に詰まらせてしまった場合

子どもが誤飲などで異物を喉に詰まらせてしまったときの対処を、坂本昌彦さんに聞きました。

解説:坂本昌彦さん

1歳未満の乳児で意識がある場合は、膝の上にうつ伏せで乗せ、頭を胸よりやや低い状態にして、背中の真ん中を連続して強くたたきます。もう一方の手で、あごを支えてあげましょう。

続いて、あおむけにして、胸の下のみぞおちの上あたりを突き上げるように数回押します。 
これらを交互に行い、繰り返します。
※この対処は緊急時のみ行い、絶対に子どもで練習しないでください。

1歳以上の幼児の場合、後ろから抱きかかえ、みぞおちの下の部分を突き上げます。

もしも、子どもが窒息したときは、こうした処置を行いながら、できれば大声で人を呼び、119番に通報しましょう。


子どもが歯磨きしながら歩いて危ない⋯ どうしたらいい?

子どもが歯ブラシを持ったまま歩いて、転んだことがあります。さいわい歯ブラシが口に入っていませんでしたが、怖い思いをしました。絶対に座って歯みがきするように言っても、まだ2歳なのでなかなか伝わりません。
(お子さん2歳のママ)

歯ブラシを工夫して事故を防ぐ

回答:西田佳史さん

実際に、歯磨きをしながら転んで、歯ブラシが喉の奥に刺さってしまう事故があります。東京消防庁(平成27年~令和元年)によると、東京都でも1年間に40件ほど救急搬送されているようです。
基本的に、多少目を離してもいい状態にするのが大事です。のど突き防止の歯ブラシを使うのもひとつの方法です。

例えば、転んだときに曲がってくれる「やわらかい歯ブラシ」、喉の奥まで入らないようにした「つば付き歯ブラシ」もあります。

親が座って歯みがきをする姿を見せる

回答:坂本昌彦さん

子どもに「座って歯みがき」するように言っても、親自身が歩きながら歯みがきをしていたら、子どもは「そういうものだ」と思ってまねをしてしまいます。まずは、親自身が「座って歯みがき」をしてください。子どもに「座って歯をみがきなさい」ではなく、「一緒に座ってみがこうね」と声をかけることからはじめましょう。


家で溺れるのを防ぐには?

家で溺れる事故も心配です。実際に、以下のような事故例があります。

親が髪を洗っているあいだ、9か月の子どもを浮き輪で浴槽内に浮かばせていました。声がしないと気づいて見てみると、子どもが浮き輪から外れ、うつ伏せで浮かんでいました。

溺れる事故は、どのように防ぐことができるのでしょうか。

子どもは静かに溺れると思って対策を立てる

回答:坂本昌彦さん

子どもが溺れたら、「助けて」といった声や、バシャバシャと水をかく音が聞こえるイメージを持っているのではないでしょうか。実際には、声や音はなく、静かに沈んでいることが多いのです。

子どもは静かに溺れるものだと思って、対策を立てることが大事です。例えば、親が洗髪するときに、子どもを浴槽から出す、「〇〇ちゃん、大丈夫?」と声をかけて返事を確認するなどの方法があります。

水の量が少なくても溺れる

回答:坂本昌彦さん

お風呂のお湯が少なくても油断をしてはいけません。子どもは、水深10cmほどでも溺れることがあるので注意が必要です。


きょうだいがいる場合の事故予防は?

息子(5歳)は工作が大好きで、思う存分遊んでほしいけど、娘(1歳)が細かい工作の部品などを口に入れないか心配です。息子と違うおもちゃを娘に与えますが、お兄ちゃんと同じことをしたいようです。そこで、口に入れると危ない小さなブロックなどのおもちゃは、別の部屋で遊んでもらうことにしました。
できる範囲で工夫しているつもりですが、子どもたちの行動は予想を超えることがあるし、常に二人を見るのにも限界があります。きょうだいがいる場合、遊ぶことと事故を防ぐことを、どうやって両立させたらいいでしょうか。
(お子さん5歳・1歳のママ)

小さな子どもの目線で事故予防を考える

回答:西田佳史さん

いちばん怖いのは誤飲ですね。何でも口に入れたがる時期なので、基本的には小さなお子さんの目線で予防を考えていくことが大事です。

場所や時間を分ける

回答:西田佳史さん

部屋を分けるのは、すばらしい対策だと思います。他にも、妹が昼寝をする時間に兄が工作で遊ぶなど、時間を分ける工夫もあります。

小さなものをまとめるトレーなどを活用する

回答:西田佳史さん

子どもは夢中になって遊んでいると、小さなものを落として、どこにあるのかわからなくなることもあります。小さなものが落ちたままでは心配です。

例えば、段ボールで工作用トレーを作って、ものが落ちにくいように工夫することもひとつの方法です。

いくつもの方法を組み合わせてみる

回答:坂本昌彦さん

例えば、ベビーサークルを活用するとき、サークルの中で妹を遊ばせると思いますが、お兄ちゃんがサークルの中で小さなおもちゃで遊ぶこともできます。妹が中に入りたくて機嫌が悪くなることもありえるので、万全の対策とはいえませんが、いろいろと試して、いくつもの方法を組み合わせてみましょう。

上の子に協力してもらう

回答:坂本昌彦さん

お兄ちゃんがもう少し大きくなってきたら、妹の誤飲予防作戦を一緒にやってみる方法があります。例えば、「ミニトマトを食べるときは、危なくないように1/4に切ってるのよ」「これは〇〇ちゃんには危ないね」のように、何が下の子にとって危ないのか教えていきましょう。


子どもに危ないことをどう教える?

子どもに入ってほしくない場所にベビーゲートを設置していましたが、成長とともに突破されるようになったので、しかたなく撤去しました。すると、娘が階段から落ちて、唇を切ってしまうことがありました。入ってはいけない場所や、やってはいけないことを何度言い聞かせても、結局危ない場所に行ってしまいます。上の子が玄関の開け方を教えて、下の子たちが外に出ようとしていたこともありました。ずっと見続けるのにも限界があります。どうやって、危ないことを教えたらよいのでしょうか。
(お子さん4歳・2歳7か月の双子のママ)

3~4歳でも行動の結果の予測はまだ難しい

回答:坂本昌彦さん

1~2歳ぐらいの時期は、好奇心が強く、まだ危険予知能力も育っていません。何を言っても、言い聞かせることは難しいでしょう。
3~4歳ぐらいになると、少しずつ理解力が育ってきますが、まだ自分の行動の結果を予測するのは難しいと思います。

子どもの安全教育には時間がかかる

回答:坂本昌彦さん

ある保育園の園長から、子どもに言い聞かせるときは「短い言葉で端的に、怒らず、諭すように伝える」と伺ったことがあります。
例えば、「玄関から出ると車が来るよ。危ないでしょう。だから気をつけないといけないんだよ」のように言葉が多いと、子どもは何に気をつけていいのか、わからなくなってしまいます。端的に「玄関から外に出てはいけません」と、目線を合わせて、手を握って、ゆっくり言い聞かせましょう。

子どもへの安全教育には時間がかかります。繰り返し言い聞かせ、子どもが理解できるようになるのを待ってください。教育と並行して、補助錠やベビーゲートなどで危険な場所に近づけないようにする対策もおすすめです。


子どもの遊びと事故予防のバランスは?

二人の娘たちは、好奇心が旺盛です。先日、キャラクターのビニール袋がうれしかったようで、頭にかぶってしまい危ないところでした。そこで「帽子はかぶるもの~♪ 袋はものを入れるもの~♪」のように、子ども番組の歌の替え歌を作って、「袋はかぶるものじゃないよ」と教えました。
一方で、子どもは子どもらしく、活動的に遊んでほしいという思いもあります。想像力を育むためには、ものの用途を限定しないほうがいいのではないかとも思います。危ないことも、ケガもしてほしくないのですが、子どものどういう行動を止めればいいのでしょうか。
(お子さん3歳・1歳6か月のママ)

小さな事故は許容し、それを通じて学ぶ

回答:坂本昌彦さん

替え歌のアイデアは、とてもすばらしいですね。子どもにとって、遊びはとても大切です。遊びを通じて成長していきます。小さな事故は許容し、それを通じて子どもたちは学んでいきます。子どもの事故をゼロにするということではなく、後遺症を残すような大きなケガは防ぐ視点が大事だと思います。

安全対策をし過ぎると、子どもの危険回避能力が育まれないことはありますか?

安全対策をした環境で、子どもはよりアクティブになれる

回答:西田佳史さん

よく「安全にし過ぎると、危険回避能力が育まれないのでは?」と聞かれることがありますが、私は全く逆だと考えています。安全対策を行った環境は、子どもが少しぐらい失敗しても大丈夫な環境でもあります。そのため、よりアクティブで健康的になれるのではないでしょうか。安全対策をしないと、「あれをやってはダメ」「これをやってはダメ」となってしまい、かえって子どもの危険回避能力が育まれないのではないかと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです