どうする? 子どものグズるキレる

すくすく子育て
2021年8月14日 放送

子どもが、自分の思い通りにならなくて、ものにあたったり、かんしゃくが続いたり。親も、つい大きな声を出してしまったり、泣きたくなったりもします。「子どものグズる・キレる」にどう対応すればいいのか、専門家と一緒に考えます。

専門家:
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)
井澗知美(大正大学 准教授/臨床心理学)

子どもがキレやすくなったのはどうして?

幼稚園に入園して2~3か月ほどたった頃から、娘が口答えするようになりました。今では少しでも注意すると、すぐに怒ってしまいます。例えば、食事中に「(2歳の妹が)おもちゃを欲しいって」と話し出すので「今は食事中だよ」と言っても「いいでしょ!いいんだもん!」と怒ります。寝る前に「トイレに行こうか」と説得すると「やだ!でないもん!」とキレます。後で「ごめんなさい」と謝ってトイレに行ってくれたりしますが、反論ばかりされると私もまいってしまい、ムキになって言い合いになることもあります。
幼稚園での様子を聞くと、「しっかり者で優しく、全然手がかからない」と言われますが、どうして家ではすぐに怒るようになってしまったのでしょうか。どうしたら反抗しないで話を聞いてくれるのか悩んでいます。
(お子さん3歳11か月・2歳のママ)

家で発散して、心のバランスをとっている

回答:遠藤利彦さん

お子さんは、幼稚園という“社会”に適応しようと頑張っていると思います。家に帰ってお母さんの顔を見ると、安心して、自分のフラストレーションのようなものを発散して、心のバランスをとっているのではないでしょうか。
家の外では「いい子」を演じているところもある。でも家には、ダメな自分もイヤな自分も、すべてをひっくるめて「好きだよ」と言ってくれる親がいる。とても健康的な状況だと思います。

自分で感情を調整し始めている

回答:遠藤利彦さん

トイレに行く・行かないで言い合いになった後、お子さんのほうから「ごめんなさい」を言えていますね。きちんと自分で感情を調整し始めているあらわれだと思います。きっとそのうちに、素直に話を聞いてくれるようになっていくでしょう。

どんな声かけをすれば、子どもが話を聞いて、素直に行動してくれるようになるでしょうか。

知ってほしいという気持ちを受け止める

回答:井澗知美さん

お子さんは、だんだんと自我が発達して、いろいろなことが言えるようになってきているのでしょう。「妹がおもちゃを欲しがっている」と言ってきたのも、「自分が気づいたことを知ってほしい、認めてほしい」という気持ちがあったかもしれません。そこで「食事中はだめ」と答えるより、子どもの気持ちを受け止めて、「お姉ちゃんよく気づいたね」と声をかけてあげてもよかったですね。

選択肢を与えて、子どもが自分で決める

回答:井澗知美さん

自我が発達してきた子どもの場合は、自分で選ばせるのもよいですね。例えば、「トイレに行ってほしい」と伝えたいとき、「行って!」「でない!」の言い合いになるようであれば、「ママとお歌を歌ったあとに行く? それとも時計の針が3になったら行く?」のように、選択肢を与えてみる。「自分」が出てきている子どもは、「自分で決めた」と思えるほうがよいと思います。


子どもがグズるとき・キレたときは、どう対応すればいい?

3歳の息子は、思い通りにいかないと物や人にその怒りをぶつけてしまいます。例えば、ゲームに負けたとき。怒りがおさまらず、「きらい!」と言いながらゲーム機を叩いてしまいます。私も感情的になって、つい乱暴な口調で叱ってしまうことがあり、どう対応したらいいのか悩んでいます。
(お子さん3歳9か月・9か月のママ)

もうすぐ3歳になる長女は、妹たちが生まれてから泣きわめきが止まらなくなることが増えました。「ジュースが飲みたい!」と泣いてきたときに、「お風呂から出てからにしようか」などと優しく言い聞かせても、なかなか泣きやまないんです。外出先で泣いて、手がつけられなくなり、抱きかかえて連れ帰ることもありました。疲れ果てて、放っておきたくなることもありますが、泣かせたままでいいのか心配です。
(お子さん2歳11か月・1歳8か月・生後1週間のママ)

かんしゃくを起こしているときは、わかりやすく伝える

回答:井澗知美さん

かんしゃくを起こしている子どもは、混乱していて、うまく頭を働かすことができません。そのため、わかりやすく伝えることが大切です。例えば、「ジュースがほしい!」とかんしゃくを起こしているとき、「お風呂から出てからにしようか」だけだと、うまく伝わらず「飲めないんだ」と思ってしまうかもしれません。「お風呂から出たら、ジュースを飲もうね。おいしいよ」など、丁寧に伝えてみてください。子どもが「ジュースを飲むためには、お風呂に入ればいい」とわかるように伝える工夫が大切です。

泣きやまないときは少し待つ

回答:井澗知美さん

あまりにも泣きやまない子どもを、放っておきたくなる気持ちはわかります。しかし、子どもは親から認められたいもの。無視をしていると子どもは寂しいと思います。騒いでいるときは少し待ってあげることが大切です。泣きやんで、少し落ち着いたところで、「ジュースを飲もうか」「ちょっとママとどこかに行こうか」のように声をかけるのがよいでしょう。子どもは、親から声をかけられる、つまり、親から温かい注目をしてもらえる体験をすることで、心が安定していきます。

かんしゃくが起こる前の状況をチェック

回答:井澗知美さん

どんなときにかんしゃくが起こるのかを観察することも大切です。また、小さい子どもは、疲れや眠いといった生理的な現象が、感情に大きく影響することがあります。かんしゃくが起こる前の状況をチェックしてみましょう。

かんしゃくは、対象・タイミング・方法を間違えた怒り

回答:遠藤利彦さん

古代ギリシャ哲学者のアリストテレスも言うように、怒りというものは、怒る対象、怒るタイミング、怒る方法を間違えると、その効果がなくなってしまいます。例えば、言葉でわかってもらえる相手なのに、人やものにあたってしまう。いってみれば、かんしゃくは対象・タイミング・方法を間違えた怒りではないでしょうか。子ども自身も、いつのまにか、かんしゃくのような怒りは「自分のためにならない」と気づいて、発達とともに減っていくのではないかと思います。

子どもがものにあたるときは、どう対応したらいいでしょうか?

気持ちが切り替わることばかけを

回答:井澗知美さん

ものにあたったり、「嫌い!」と言ったりするのは、表現がうまくできないからなんです。親に対応するゆとりがあるときは、「そうだね」「うまくいかないと嫌だよね」「また明日やろうね」といった、気持ちが切り替わることばをかけてあげてください。子どもが、「今はうまくいかなくても、明日もできる、明日がある」と思えるといいですね。

自分の行動に責任を持たせる

回答:井澗知美さん

子どもによって向き・不向きがありますが、ものにあたったときに、ものを取り上げる方法もあります。例えば、ゲームであれば「3分の間、ゲーム機で遊べないよ」と言うのです。一生ではないけど、短い時間、遊びたいのに遊べない。それは、自分の行動に責任を持つことにもつながります。
この方法は、絶対うまくいくとは限らないので、「だめだったとしても、違う方法でやってみよう」と考えてください。やり方を変えて、いろいろと試してみるとよいでしょう。

“怒る”という自分の感情を、子どもが理解することが大切

回答:遠藤利彦さん

子どもの怒りを抑えつけるのではなく、怒り方を学ぶ機会だと考えてみましょう。このとき、子どもが自分の感情を理解することが大切になります。子どもが感じている気持ちにふさわしい言葉を、タイミングよく貼ってあげる、「感情のラベリング」をしてあげるのです。

例えば、ゲームに怒ったときに、「うまくいかなくて、悔しかったね」「負けちゃって、がっかりだよね」といった声をかけます。感情のラベリングは、子どもが自分の感情を理解するために、周りの大人が心掛けたい働きかけです。
ラベリングをしてあげることで、子どもは徐々に「今の自分の感情」がどのようなものかを理解していきます。理解できるようになると、自分の感情とうまくつきあえるようになっていくと思います。


グズる子にイライラ⋯ どうすればいい?

ふだんは元気いっぱいの息子(4歳)ですが、グズることが多くて困っています。お姉ちゃんが小学生になって、息子も今までより早い時間に起きるようになったのですが、朝に弱く、グズってなかなか動こうとしません。ほかにも、ママの自転車に乗りたいのに乗せてもらえないなど、自分の思い通りにいかないときにもグズります。
息子がグズったときは、家事を止めて、しばらくは声をかけてつきあうなど、息子の気持ちに寄り添うようにしていますが、毎日積み重なっていくとイライラが募ってしまい、最後には「もういい加減にしてよ」と怒ってしまいます。
(お子さん6歳・4歳のママ)

ちゃんとできているところをほめる

回答:井澗知美さん

お子さんは、グズりながらもきちんと起きて、自転車に乗れなくてグズってはいるけど歩いて、ちゃんとやっているところがえらいですね。お子さんに寄り添うお母さんの声かけも、すばらしいと思います。そのとき、「ちゃんと起きたね」「歩いてくれてありがとう」のように、子どもができていることを、もう少しほめてあげてくださいね。

子どものタイプをわかってあげる

回答:井澗知美さん

お子さんは「自転車に乗れると思ったのに、乗れない」といった場合、気持ちの切り替えに時間がかかるタイプかもしれません。「この子はちょっと時間のかかる子だな」と思って声をかけると、声のトーンから切迫感がなくなり、やわらかくなると思います。

個性を子どもの魅力に変えていく

回答:遠藤利彦さん

子どもには、それぞれ持って生まれた個性があります。心理学では「気質」といいます。そんな気質の中に、ウォームアップに時間のかかるタイプもあります。新しい刺激や変化に対して、自分のペースでゆっくり時間をかけながら消化して、その状況を受け入れていくタイプです。
このタイプは、深くものごとを考えたり、他の人があまり見ない所に目を向けることができたり、とても感受性が豊かであったりします。そのように、個性や気質を子どもの魅力に変えていくことを考えてみましょう。

イライラして自分のせいではないかとマイナスに考えてしまうときは、どうしたらいいでしょう。

イライラするときは親が追い詰められていることも

回答:井澗知美さん

特に子どもが小さい時期は、親子で過ごす時間が長くなります。そのため、どうしても自分の関わり方のせいだと考えがちですが、子どもの育ちのすべてが親の対応で決まるわけではありません。
とてもイライラして、「この子が私を困らせている」と感じるときは、親自身が追い詰められて余裕がなくなっているのかもしれません。そんなときは、子どもを誰かに任せて少しでも自分の時間を持ったり、誰かに話を聞いてもらったりできるといいですね。


専門家からのメッセージ

プラスの感情もマイナスの感情も、自然に表現されるのが健康な状態

遠藤利彦さん

基本的に、プラスの感情もマイナスの感情も、自然に経験して、自然に表現されることが、子どもにとって健康な状態だと考えてください。そういった感情について、子どもが落ち着いているときに話をしましょう。
例えば、「この前、お店で〇〇ちゃんがすごく怒って、お母さんは困ったんだよ。お母さんも頭が真っ白になって、どうしたらいいかわからなくなったよ」のように、“いいか悪いか”ではなくて、感情のエピソードについて話すことが大切です。

短い時間でもいいので子どもと遊ぶ時間があるといい

井澗知美さん

グズりやかんしゃくは、とても大変な行動です。でも、大変な面ばかりを注目するのではなく、いろいろできるようになってきた子どもでも、まだまだ甘えたい部分もあると考えてください。1日に10~15分でも、短い時間でいいので、子どもがグズってないときに、一緒に遊ぶような時間を持ちましょう。そんな時間があれば、子どもの気持ちが落ち着いていくと思います。
いろいろと工夫しても、うまいかない場合もあります。そんなときは、地域の保健センターや子ども家庭支援センターなど、発達の専門の所に相談する方法もあります。誰かと一緒に考えていくことが役に立つこともありますよ。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです