運動を好きになるには?

すくすく子育て
2021年7月17日 放送

子どもたちには、走ったり跳んだり、楽しく体を動かしてほしい。でも、親の思いとは裏腹に、子どもが運動に関心を示さないことも。今回は、子どもが運動に興味を持つ方法について、一緒に考えていきます。

専門家:
野井真吾(日本体育大学 教授/教育生理学)
内村周子(体操クラブ指導者)

どうすれば運動に興味を持ってくれる?

息子(3歳6か月)は、公園の遊具に興味を示しません。「すべり台しない?」など、いろんな遊具に誘っても、「ダメ、しない!」と言います。とにかく慎重派で、高いところからジャンプすることもありません。他の子が走り回るような斜面でも、四つんばいで移動します。子どもの行動にハラハラして心配することもありません。慎重な性格が、運動能力の育ちに影響しないか心配です。
同年代の子どもと同じように、思い切り体を動かしてもらいたいと思っていますが、どうすれば運動に興味を持ってくれるのでしょうか。
(お子さん3歳6か月のパパ)

遊具を使わない遊びもたくさんある

回答:野井真吾さん

お父さんは、心配しながらも「すべり台しない?」のように、子どもの意思を確認していますね。させようとするのではなく、きちんと聞くところがとてもよいと思います。
一方で、大人は遊具や道具を使った遊びを「運動」だと思いがちです。でも、遊具を使わない遊びもたくさんあります。すべり台やブランコがない時代でも、別の遊びで育っていたはずです。いろいろな遊びが運動になると考えてください。

“怖い”という気持ちは大事

回答:野井真吾さん

慎重な性格で、“怖い”という気持ちがあるかもしれませんが、それは大事なことです。例えば、高いところからジャンプしようとしておどおどしている子に、まわりの子が「頑張れ!頑張れ!」とせかすことがあります。そんなときに、ケガが起きるんです。まわりの後押しによらず、自分の体と心の準備が整ったときに、「やってみよう」と思えます。慎重であることは、決して悪いことではありません。むしろ、何も怖がらないほうが心配ですね。

大事なのは「しなさい」ではなく「しようか」

回答:内村周子さん

例えば、子どもと外出したとき、足元に線があれば「線の上を歩いてみようか」と言ってみる 。ここで大事なのは、「歩きなさい」のような命令形ではなく、「歩こうか」と提案することです。「ママもやってみるから、やってみよう」と誘って、跳べるところがあれば「ちょっと跳んでみようか」と誘導するのもいいですね。

子どもの性格を受け入れることが大事

回答:内村周子さん

私は、子どもの性格を受け入れることが大事だと考えています。実は、私の子ども(内村航平選手)も怖がりだったんです。その性格を踏まえた上で、ふだんから、おもちゃなどもない状況の中で、「跳んでみようか」「登ってみようか」と声かけをしていました。

ワクワクドキドキの積み重ねが大事

回答:野井真吾さん

線の上を歩いてみることも、子どもにとっては、両脇に川が流れているように想像されて、ワクワクドキドキすることかもしれません。そんな生活の積み重ねが、体や心を動かし、発達刺激になると思います。

家でもできる!カンタン運動

ここで、内村周子さんに、家でも簡単にできる「タオルを使った運動」を教えてもらいました。

タオルをジャンプ

まず、1枚のタオルを細くして、足元に置きます。

このタオルを飛び越えてみましょう。「これはヘビさんだよ。起こさないように、ピョン」といった声かけも楽しいですね。
※すべらないように気をつけましょう。

細くしたタオルでのジャンプが上手になったら、タオルを広げてみましょう。

次のステップでは、タオルを縦に置きます。子どもはどんどん挑戦していきますよ。

タオルでキャッチボール

タオルを丸めて、キャッチボールもできます。やわらかいので当たっても痛くありません。思い切り投げたり取ったりしましょう。

タオルでボウリング

空のペットボトルを並べて、ボウリングをすることもできます。ペットボトルに水を入れて、簡単に倒れないようにするのもおすすめです。

タオルひとつで、いろんな運動ができます。パパ・ママも一緒に楽しむことが大切です。


運動にやる気を出してくれない。どうしたらいい?

娘は来年から小学校になります。体育の授業についていけるように運動の練習をしていますが、すぐにやめてしまいます。「どうしたらがんばれる?」と聞いても、「がんばれない、無理」と言います。私自身、運動が苦手だったので、子どもには同じ思いをさせたくないのですが、なかなかやる気になってくれません。どうすればいいのでしょうか。
(お子さん6歳のママ)

得意・不得意を大人の物差しで決めない

回答:野井真吾さん

親心から運動を教えたい気持ちはわかります。でも、その思いがプレッシャーになり、かえって運動が嫌いになる場合もありえます。大切なのは、運動の得意・不得意を大人の物差しでみて、早い段階で決めないこと。ほめることはあっても、否定をしないことです。

子どもへの声かけで、注意することはありますか?

「なんでできないの?」はNGワード

回答:内村周子さん

「なんでできないの?」を言ってはいけません。子どもも、ひとりひとり違って個性があります。その個性を受け入れて、見いだしてあげるのも親の務めではないでしょうか。


どんな声かけでやる気になってもらえる?

ここで、体操教室で子どもたちと触れ合っている内村周子さんに、声かけのコツや注意点を聞きました。

「ママもやってみるね」

「ママも小さいときは苦手だったんだよ」「じゃあ、ママもちょっとやってみるから」のように声をかけて、一緒にやってみましょう。親が、あえて失敗するところを見せてあげてもいいですね。「ママはできなかったよ! できる?」のように聞くと、頑張ってくれることもあります。

「やろうとした。それでいいんだよ」

できなくてもいい、「できなくても頑張ることが大事」だと伝えましょう。ひとつでもできたことがあったら、「1個いけた!すごーい!」とほめてあげる。失敗しても、チャレンジしたことが大事です。「やろうとしたじゃない。それでいいんだよ。すっごい!」と声をかけてあげてください。

全力でほめてあげる

体操教室でも、「すごいね! なんでもできるね! 頑張れ! かっこいいよ」のように声をかけています。できたときは、全力でほめてあげることを大事にしています。コロナ禍で、オンラインで教えることが増えましたが、「ほめる」ことは変わりません。


※2018年2月撮影(渋谷スポーツ共有プラザ&ラボ“すぽっと”)


幼少期にほめられたことが信頼関係につながる

コメント:内村周子さん

子どもが小さい時期は、特にほめてあげます。児童期・中学生・高校生になると、だんだんうぬぼれも出てくるので、ほめることが少しずつ減っていきます。厳しい言葉をかけても、幼少期にほめられて、自分を受け入れてもらえたという信頼関係があれば、きちんと言うことが聞けるようになるのです。
子どもが他の子と比べて多少劣っていたとしても、その部分を否定するのではなく、子どもの良い部分を見つけてあげることが大事だと考えています。

子どもと一緒に楽しむ、同じ目線で関わる

コメント:野井真吾さん

大人が子どもに教えるのではなく、一緒に楽しんで、同じ目線で関わる部分がいいですね。私も、その子の能力をどう引き出すかが大事だと思います。そのためには、子どもの目が輝く瞬間を見落とさないこと。それが、その子の発達欲求だと思います。
親には「この年齢なら、これができて当然。できてほしい」という思いがあるかもしれませんが、子どもが何を大事にしたいのかを見てあげることが、いちばんの基本です。そこから課題も見えてきます。


運動能力をもっと伸ばすには?

5歳のお姉ちゃんを筆頭に、きょうだい3人とも運動が大好きです。コロナ禍で体力を持て余した子どもたちは、ベッドの上で繰り返し飛び跳ねる遊びをはじめて、ベッドが壊れないか心配でしたが、あまりに楽しそうで、ベッドも丈夫なようで、好きにやらせています。今では寝る前の恒例行事になっています。
私たち夫婦も運動が好きで、子どもたちの運動能力をもっと伸ばしてあげたい思いもあり、みんなの遊びにつきあうようにしています。安全に気をつけながら、パパの補助でアクロバティックな運動をしたりもします。
いつも自由にさせているのですが、正しい運動を教えるためには、自己流ではなく教室などに通わせたほうがいいのでしょうか。将来スポーツ選手を目指すというより、家族みんなで運動を楽しめればいいなと思っています。子どもたちを伸ばしていけるコツがあれば聞きたいです。
(お子さん5歳・3歳9か月・1歳11か月のママ・パパ)

本人が希望すれば協力する

回答:内村周子さん

専門的な指導は、本人が希望したときに協力すればいいと考えています。なにより楽しんで運動することが大切です。親の思いが強すぎないほうが、プレッシャーや不安を与えることもなく、子どもは伸びやすいのかもしれませんね。

子どもの発達欲求を止めない

回答:野井真吾さん

私は、子どもには「発達したい」という欲求があると思っています。例えば、同じ運動を何度も繰り返すのも、発達欲求のあらわれではないでしょうか。それを止めずに、何度でも思う存分させてあげるといいですね。お父さんが安全に気をつけていたことも、とてもよいことだと思います。

親は、子どもの特性を知っている名コーチ

回答:野井真吾さん

考えてみれば、親は子どもの特性をいちばん知っている存在だと思います。子どもにとっての名コーチになりえるわけです。家庭での運動は、家族それぞれに合うものを見つけていくのがよいのではないでしょうか。何より、楽しく運動することを大事にしてください。

ある程度の年齢と技術になればプロに任せる選択も

回答:内村周子さん

例えば、子どもが体操をやりたいかどうかは、小さいころはわかりません。本人の意思がわかるのは、まだ先のことです。小さいころの習い事は、親の「このスポーツさせたい」という気持ちからだと思います。
一方で、環境の影響もあるでしょう。私の子どもがスポーツ選手になったのは、家に体操教室の器具があったことも関係していると思います。
でも、VTRを見ていると、器具がなくてもいろんな動きができるようになっていて、すごいと思います。子どもたちがある程度の年齢と技術になったとき、本人が望めばプロに任せるのも大切かもしれません。やはり、プロには専門的な知識と技術があります。そのときは、子どもも含めて、家族で話し合うことが大事です。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

「運動」と考えずに「遊び」に置きかえてみる

野井真吾さん

大人は、子どもの「運動」として考えると、「できないから心配」のような不安になることもあります。でも、「遊び」に置きかえてみると、楽しめるのではないでしょうか。「運動」ではなく「遊び」としてとらえることを大事にしてみましょう。

「ずっと見守っているから一緒にがんばろう」という気持ちが大事

内村周子さん

野井さんが言うように、スポーツだと思うと、心も体もきつくなる場合があります。遊びと考えるほうがいいですね。親は、そんな子どもを見守って、子どもは「自分は見守られている」と感じる。「ずっと見守っているから、一緒にがんばろうね」という気持ちが、いちばん大事だと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです