子どもの服と体温調節

すくすく子育て
2021年6月26日 放送

今回のテーマは「子どもの服と体温調節」。小さい子どもの暑さ・寒さはどう考えたらいい? 熱中症や紫外線対策は? 体の冷えが心配⋯ 好きな服しか着ようとしないときは? 毎日着る服をどう選べばいいのか、専門家と一緒に考えます。

専門家:
薩本弥生(横浜国立大学 教授/被服環境学)
井桁容子(元保育士)

今回のテーマについて

小さな子どもにとって、服にはどんな役割がありますか?

薩本弥生さん

小さい子どもは、まだ体温調節がうまくできません。まずは、体温調節のサポートという役割が重要になります。

服が子どもの行動に影響することはありますか?

井桁容子さん

もちろん影響があります。動きにくい服だと、集中できないこともあります。また、服を気にして動きが変わるようなものも、その子に向いていません。服が、子どもの動きを妨げないように気をつけましょう。


子どもが感じる暑さ・寒さがわからない。何を着せればいい?

夏を前に、6か月になる息子の服で悩んでいます。薄着で体が冷えるのも心配ですし、厚着にして湿疹が出たこともありました。散歩に出かけるようにもなり、紫外線や熱中症も気になります。
私たち大人と赤ちゃんで、「暑い・寒い」の感覚がどの程度違うのかわからず、いつも気温をみながら、何を着せようか迷っています。どんなことに気をつけたらいいですか?
(お子さん6か月のママ・パパ)

パパ・ママの感覚も大事

回答:井桁容子さん

まずは、いつもより暑い・涼しいなど、パパ・ママの感覚を大事にしてください。その次に、子どもと大人がいる場所の違いに気をつけます。例えば、ベビーカーの中は、大人が感じる温度と違います。

暑いかどうか、背中に指を入れて確かめる

回答:井桁容子さん

「子どもが暑がっているかな?」と思ったら、首元から背中に指を入れて確かめましょう。暑いときは、汗でべたっとしています。さらっとしていれば問題ありません。外出先でも、寝ているときでも、指1本で簡単にチェックできます。暑いときは、1枚脱がせてあげるなどの対応をしてあげてください。

寒いかどうかは、おなかや首元で確かめる

回答:井桁容子さん

寒いかどうかは、体の冷えを確認します。おなかや首元を触って、ひんやりしているかチェックしてみましょう。手足ではなく、胴体のあたりをみてください。

着脱しやすい服を着せる

回答:井桁容子さん

服をたくさん重ねて着ると、脱ぎにくくなってしまいます。暑さ、寒さに対応できるよう、着脱しやすい服のほうがいいでしょう。赤ちゃんのうちは親が気をつけて着脱させますが、子どもが着替えられるようになったら、「暑い」と思ったときに自分で脱げるような服がいいですね。

場所によって温度が変わることに注意する

回答:薩本弥生さん

室内にいるとき、温度は26~28度が目安です。冷房の風が赤ちゃんに直接当たらないようにすることが大切です。また、冷たい空気は下方に集まります。大人よりも赤ちゃんがいる場所のほうが、低い温度になっていることがあるので、気をつけてください。
一方で、屋外の場合は、暖かい空気が地面で照り返して、大人が感じるよりもベビーカーの中が暑くなることがあります。赤ちゃんがいる場所によって温度が変わってくることに注意しておきましょう。

子どもの体温調節機能の特徴

ここで、小さい子どもの体温調節機能について、草川功さん(聖路加国際病院 小児科医長)に聞きました。

解説:草川功さん

特に乳幼児は、外部環境の影響を受けやすく、暑い中にいると体温が上がり、寒い中にいると体温が下がってしまいます。基本的に、小さければ小さいほど、この傾向が強くなります。自分で体温調節がうまくできないため、大人だと我慢できる範囲でも、子どもは急に体温が上がったり、下がったりすることがあるので注意しましょう。
子どもの体温調節能力を育てるために重要なのは「汗」です。汗をかくなど、子どもが持っている体温調節機能を邪魔しないように育ててあげることが大切です。

汗をかかないようにエアコンを調節していましたが、汗をかくのは大事なんですね。

2歳半くらいまでに、汗をかくトレーニングを

回答:薩本弥生さん

子どもは、2歳半くらいまでに能動汗腺(汗をかいて体温調節を行う汗腺)が育ち、その数が決まります。室内はエアコンで快適にするのがよいと思いますが、適度な外遊びなど、小さいうちに積極的に汗をかくトレーニングをすることも大切です。汗をかくときは、汗の蒸発を邪魔しないような服を用意することが大事です。

汗をかいてもいいように、どんな服がよいのでしょうか?

通気性・吸湿性がよく、ゆとりがあるものを

回答:薩本弥生さん

汗が蒸発しやすいように、通気性、吸湿性のよい素材の服がいいでしょう。あまり体にぴったり張り付かず、ゆとりがあり、空気が流れるようなデザインがおすすめです。暖かい空気は上にあがっていくので、特に襟元は、大きく開いているほうがよいでしょう。

涼しい着こなしはありますか?

服と体の間に空気の流れが起きやすいデザイン

回答:薩本弥生さん

服と体の間に、空気の流れが起きやすいデザインがよいでしょう。特に夏の暑い時期は、体にぴったりしたものではなく、空気が動いたほうが涼しいと思います。

ゆったりとしたTシャツと短いズボン、軽くすっきりしたシルエットのワンピース、チュニックなどがいいですね。
また、体の表面が汗をかいた状態のままにしないことも大切です。あせもなどを防ぐためにも、汗をかいたら拭いてあげて、服が湿っているときには着替えさせることも必要です。

子どもが大きくなって、歩いたり走るようになったら、どのような服装を選ぶのがよいですか?

元気に遊ぶようになったら、大人より1枚少なめが目安

回答:薩本弥生さん

小さい子どもは、体表面積当たりの代謝量が大きいので、平熱が大人より少し高めです。大人よりも外部環境の影響を受けやすく、活発に動きはじめると、さらに体温が上がります。暑いときに脱がせやすい服にしておくとよいですね。元気に遊ぶようになったら、大人の服より1枚少なめを目安に、動きに応じた枚数にするとよいでしょう。もちろん、大人が1枚なら子どもは0枚というわけではなく、子どもの体の様子を見て調節しましょう。

紫外線が気になるときは、どんな対策がよいですか?

服やスカーフなどで、日ざしが直接当たらないように

回答:井桁容子さん

赤ちゃんは、袖のある服などで、日ざしから皮膚を守ることが大事です。スカーフなどをかけて、日陰に入ったら取ってあげるような対応でもいいと思います。紫外線が直接肌に何分も当たることは避けたほうがいいですね。

UVカットや通気性のよい素材を

回答:薩本弥生さん

UVカットや通気性のよい素材の服がいいでしょう。あまり蒸れないようにすることも大切です。

肌を覆うような服装だと、熱中症が気になります。どちらを優先すればいいですか?

熱中症を優先。帽子や日よけで対策を

回答:井桁容子さん

もちろん熱中症の対策が優先です。子どもが暑そうであれば脱がせるなど、熱中症に注意してください。頭を守る帽子も重要です。小さいうちは帽子を嫌がるかもしれません。そんなときは、無理をしないで、「これは大事だよ」と伝え、分かるようになるまで待ちましょう。それまでは、ベビーカーの日よけなどで、頭を守ってあげてください。


暑いときでも肌着は着せたほうがいい?

子どもの服を、天気予報や体感温度をもとに、夫婦で相談しながら決めています。最近、迷っているのは肌着について。今は、メッシュ素材の涼しい肌着の上にTシャツを着せていますが、肌着を巡って意見が分かれています。
ママの意見は、「暑い時期でも汗をかくから、Tシャツの下に肌着を着たほうがいい」、パパの意見は、「Tシャツは十分に汗を吸うし、肌着みたいなもの。1枚でいい」といった感じです。暑い時期は、どちらがいいのでしょうか?
(お子さん1歳5か月のママ・パパ)

素材による。状況に応じて

回答:薩本弥生さん

肌着の役割は、汗を吸うだけではなく、体から出る汚れも吸うこと。毎回洗濯して、衛生面を整えるものです。その意味で、Tシャツの下に肌着を着せるのは正解です。ただ、肌着の役割をはたせるTシャツであれば、1枚でもよいでしょう。酷暑のときは2枚より1枚のほうが涼しいと思います。肌着と同じような素材でできている、子ども向けのTシャツもあるので、状況に応じて、どちらも正解だといえます。

暑い時期に適した素材はありますか?

吸水・速乾性、凹凸のある素材

回答:薩本弥生さん

とても汗をかくようなときは、吸水・速乾性の素材を使った服がいいですね。「綿」がいちばんと言う方も多いのですが、綿は汗を吸うと乾くのに時間がかかります。綿とポリエステルの混紡など、合成繊維の素材も性能がよくなっています。子どもの肌に合わせ、用途によって選んでください。

また、汗をかいているときは、適度に凹凸のあるような素材のほうが、体に張りつきにくくなります。メッシュ、サッカー、クレープのような生地がよいでしょう。Tシャツ1枚の場合は、汗を吸って乾きやすい素材のものがいいですね。


冷房が効いた室内や冷たい床。「冷え」は大丈夫?

アラブ首長国連邦のドバイで暮らしています。暑い時期は気温が50度になることもあります。子どもの服は、日本の夏の服と変わりませんが、体の「冷え」が気になっています。
暑さのため、屋内はどこでもエアコンが効いていて、屋外との温度差が大きく、子どもも「寒い」と言うことがあります。床が人工大理石の住宅なので、床から冷えないかも心配です。靴下を履かせていますが、いつのまにか裸足で遊んでいます。
エアコンが効いた室内や冷たい床で、気をつけることはありますか?
(お子さん2歳9か月のママ)

体の中心の部分が温まっていれば大丈夫

回答:薩本弥生さん

手足が冷たいからといって、寒いとは言えません。手足は、体温調節のための「センサー」の役割を持っているので、露出して、生理的に外部を感じることも大切です。床で手足が「冷たい」となっても、体の中心の部分(胴体のあたり)が温まっていれば大丈夫です。
ただし、子どもが床に寝転んだり座ったりして、おなかやお尻が冷えないよう注意してください。直接冷えないように、ラグや座布団のようなものを用意してあげることも大切です。

室内では靴下を履かなくてよい。靴を履くときは必要

回答:井桁容子さん

靴下は、靴を履いて出かけるときには必要です。足の保護や、汗を吸うなどの役割があります。室内では、基本的に靴下を履かなくてもよいでしょう。足の指でしっかり床を捉えることができるので、ケガを防ぐことにもつながります。

子ども自身の「寒い」という判断に任せていい

回答:井桁容子さん

お子さんは、室内で寒いと感じたら、自分から「寒い」と伝えることができていますね。寒暖の差を自覚できています。そのため、着たり脱いだりするような調節は、本人の「寒い」という判断に任せてもよいのではないでしょうか。お子さんを尊重しても大丈夫だと思います。


子どもが布団をはいでしまう。パジャマはどうすればいい?

子どもが寝るときの服に迷っています。布団をかけても、寝ているうちにかけ布団をはいで、おなかが丸出しになっているんです。風邪をひかないか心配です。どんなパジャマがいいのでしょうか。

腹巻きなどで体の中心を守る

回答:薩本弥生さん

腹巻などで、体の中心の部分(胴体のあたり)を守ることが大切です。ズボンに腹巻がついているタイプもありますね。手足は多少出ていても大丈夫です。寒いときなど、子ども自身が親の熱を求めて、寄り添って体温調節をすることもあります。

寝始めは汗をかくので無理に布団をかけなくてもよい

回答:井桁容子さん

子どもは、大人より新陳代謝が活発なので、体温も少し高めです。そのため、大人よりも暑く感じると思います。また、寝始めは汗をかくので、無理に布団をかけなくてもよいでしょう。涼しい状態にして、汗を拭いてあげたほうが寝付きがよいと思います。夜、気温が下がり、室温が変わるころに布団をかけてあげてください。


子どもの服の好みやこだわり。どこまで合わせたらいい?

娘は、スカート丈が短いものなど、好みの服しか着ようとしません。元気に遊ぶときは、下着が見えてしまうので、スカートの下にショートパンツをはかせています。ズボンのほうが遊びやすいのではないかと思っています。寒い時期は、寒くないようにタイツなどを着せようとしますが、泣いて嫌がります。子どもの好みにどこまで合わせたらいいのでしょうか。
(お子さん5歳のママ)

子どもなりの美意識が育っている。成長ととらえて

回答:井桁容子さん

親が、ふだんからおしゃれに興味のある家庭では、子どももファッションに興味を持つようになる傾向があります。お子さんも、おしゃれに目覚めたときがあったと思います。子どもなりの美意識が育っている、成長していると考えて、大切にしてあげてください。寒いことも自分でわかる年齢だと思います。少し寒くても服が大事という考えも、自分の思いが貫ける、お子さんのいいところですよ。

危ないときは、しっかり伝える

回答:井桁容子さん

遊んでいるときに服の装飾が引っ掛かるなど、ケガにつながりそうな場合は、危ないこともしっかり伝えることが大事です。例えば、「すべり台で遊ぶときは、ヒラヒラしたところがここに引っ掛かると大変だよ」のように、洋服によって危ない可能性があることを話してください。ヒラヒラした服がすてきな場所と、ズボンのほうがいい場所を、選べるようになるとよりいいですね。

寒さに少しずつ慣れているなら大丈夫

回答:薩本弥生さん

例えば、秋からスカートを着て、少しずつ寒さに慣れているのであれば、ある程度大丈夫だと思います。寒くなってから急にスカートをはくときや、極端に寒いときは体の様子をみて防寒具を着せましょう。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです