パパの育休

すくすく子育て
2021年6月19日 放送

育児休業を取得する男性は少しずつ増えていますが、2019年の取得率は7.48%(※)。思うように育休をとれない場合もあるようです。育休をとりづらいのはなぜでしょうか。育休には、どんな苦労やいいことがあるのでしょうか。いろんなパパ・ママの声を聞きながら、「パパの育休」について考えます。
※厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」より

専門家:
天野妙(「みらい子育て全国ネットワーク」代表)
小崎恭弘(大阪教育大学 教授)

育休をとりづらい。どうすればいい?

まずは、育休の取得で苦労した、仕事が忙しくてとれなかったという声を紹介します。

2人の子どもを育てています。1人目のときに、ママが切迫早産で入院したため、育休をとって家庭を支えたいと考えました。でも、職場の上司に育休の相談をすると、「男性はとれないのでは?」「育休は母親だけでいい」「キャリアに響くぞ」といった話をされ、育休に反対しているようでした。最終的には「権利なので」と押し通して取得しました。結果的には大きな迷惑をかけることなく復帰できましたが、育休中は職場で問題になっていないか不安でした。
(2人のお子さんのパパ)

パパ —— 育休について職場や上司の理解はあるのですが、仕事が忙しくて取得することができませんでした。職場の人数が少ないこともあり、休むことで他の人の負担が増えることに、どうしても抵抗があったんです。
ママ —— パパたちの子育てに向き合う意識は高まっていると思います。でも、職場に「男性なのに」といった考えがあったり、助けてくれようとする人がたくさん仕事を抱えていたり。仕事の分配などが、もう少しうまくいくと、みんなが育休をとりやすいのかもしれません。
(2人のお子さんのパパ・ママ)

男性の育休取得は、難しい場合が多いようです。この状況は変わるのでしょうか。

育休は法律で定められていて、誰でも取得できる

回答:天野妙さん

上司に育休を相談したときの、よくある反応は、「男性は育休をとれない」「母親がいる」「出世に響く」の3つです。「会社には男性の育休制度がない」という方も多いようですが、育休は法律で定められているため、会社に制度がなくても、誰でも取得できます。

2022年4月からは、取得の意向確認が義務に

育児休業は、会社や事業所などに雇われている労働者が、子どもが満1歳になるまで休業できる制度です。子どもが保育園に入れないなど、条件によって最長2歳まで取得できます。
2022年4月からは、企業が育休の対象となる従業員に制度を説明し、育休取得の意向を確認することが義務になります。

育休中の収入は、どうなるのでしょうか?

育児休業給付金や社会保険などの免除がある

回答:天野妙さん

育児休業給付金という制度があります。最初の180日間は月給の67%、その後は50%が、毎月給付される制度です。67%では少し不安になるかもしれませんが、育児休業中は社会保険料などが免除されるため、手取り額は8~9割ぐらいになります。

長期的な視点で考えることが大切

回答:天野妙さん

短期的に見ると、一時的に収入が落ちることに不安があると思います。ですが、男性が育休などで家庭を支えれば、女性が働きやすくなり、長期的には世帯収入の増加につながると思います。
現在、約半数近くの女性が、第1子出産時に離職しているといわれています。そのまま仕事に就かない場合と、働き続けた場合を比較すると、生涯所得の差がおよそ2億円にもなるといわれています(※)
※ニッセイ基礎研究所レポート「大学卒女性の働き方別生涯所得の推計」より

育休取得の理解をえられないとき、どうすればよいでしょう。

頼れる人を見つけることが大切

回答:小崎恭弘さん

まだまだ男性が育児に関わることが少なく、育休の理解をえられないこともあります。そのため、誰も助けてくれないと感じて、パパは孤独を抱えがちです。
しかし、職場にいる女性も、育休に同じような思いがあるはずです。まわりをよく見れば、理解のある同僚や、同じ思いを持つ子育て中のママやパパがいるかもしれません。上司の中にも、自分ではできなかったけど、本当は休んで育児をしたかったという方もいるはずです。父親の支援をしようとする人もたくさんいます。育休取得や子育てのためにも、頼れる人を見つけて、情報を得て、知識や技術を身につけることを意識してください。

働く人たちが家族を大切にできる社会に

回答:小崎恭弘さん

育児休業は、「育児・介護休業法」の一部です。介護休業とともに、働いている人が自分の家族を大切にしていくための制度なのです。「男性の育休は必要ない」という考えの上司でも、将来、介護をする立場になるかもしれません。育児・介護休業は、多くの人にとって“自分のこと”なのです。働く人たちが家族を大切にする企業文化が一般的になる、そんな社会になってほしいと強く思います。

多くの方が、仕事が忙しすぎて育休をとれないようです。できることはありますか?

早めに相談することが大事

回答:天野妙さん

基本的に、早めに相談することが大事です。例えば、事故やケガなどで突然休むことになると職場の対応も大変ですが、育休は休みたい時期を事前に相談できます。会社側も、早めにわかれば準備のための時間を持てます。
また、お互いにサポートできるような仕事の枠組みも大切です。例えば、チームで仕事をシェアする、他の人がスムーズに引継ぎできるように業務を「見える化」しておくなどです。

「お互いさま」で助け合える職場の雰囲気を

回答:小崎恭弘さん

みなさん、人に迷惑をかけてはいけないと強く考えていると思います。育休で職場に迷惑をかけたくないと思っている方も多いでしょう。
一方で、子どもを育てることは、社会的に迷惑なことではありません。これからの時代を、未来をつくっていく、とても大切なことです。子育てを「申し訳ない・悪い」ではなく、「お互いさま」と考えて、助け合える職場の雰囲気をつくってほしいと思います。


育休を取得したパパとママは、どんなことを感じている?

育休中、どんなことを感じながら過ごしているのでしょうか。3組のパパ・ママに話を聞きました。

パパ —— 生後1か月の息子を育てるために、3か月間の育休を取得しました。最近は泣きやまないことが増えて大変です。右も左もわからない初めての子育て。ママと家事・育児を分担しながら頑張っています。もく浴や夜の見守りは一日おきの交代です。オムツやミルクは、パパ・ママどちらもできるようにしています。
ママ —— 第1子で、赤ちゃんと何時間も過ごすことも初めてでした。産後はメンタルが不安定になって、パパから「俺がやるよ。横になってていいよ」と言ってもらえたのが、すごく救いでした。ありきたりですが、ひとりじゃないという実感がありました。

パパ —— 生後2か月の頃から、10か月間の育休をとりました。子育ては、予定を決めていても思い通りにはいきません。家のことも自分のことも全然できませんでした。想像以上に大変だと実感しました。
ママ —— パパと一緒に育児ができて、すごく助かっています。ひとりのときは、相談相手もいなかったので、パパが帰ってくるのが待ち遠しかったです。話し相手がいるだけでも、心の支えになりました。パパが育休をとれていなかったら不満が爆発していたと思います。コロナ禍で実家にも帰れないので、精神的にも大変だったと思います。

パパ —— 2人目の子が生まれたときに育休をとり、子育ての大変さが身にしみました。1人目のときも手伝っているつもりでしたが、実際はこんなにも大変で。全貌が理解できていなかったと思います。育休をとったからには、成果を出したい気持ちがあったのですが、上の子がイヤイヤ期になり、「ママじゃないとダメ」と言われることも多くて、精神的にも大変でした。
ママ —— パパは、育休前から育児をやってくれるほうでした。自分でやったほうが早いこともありますが、自分と同じことをパパに求めるのは、間違っていると思います。段取りがよくないときなど、言いたくなることもありますが、妻側としても温かく見守ってあげられるといいなと思います。

産後のいちばんつらいときにパパが支えることが大事

コメント:天野妙さん

産褥(さんじょく)期といわれる産後8週間は、産後うつのピークに重なります。授乳などで体力も奪われ、ママがとても大変な時期なのです。そんな産後のつらい時期に、パパが育休をとって、ママを支えてあげることが重要です。

子育ては、“楽しさ”と“大変さ”で実感できる

コメント:小崎恭弘さん

育休中のパパとママは、お互いに協力しながら子育てと格闘する戦友のようなものです。子育てのおもしろさは、もちろん“楽しさ”がありますが、その“大変さ”も醍醐味なのです。両方があって、子育てを実感できると思います。

成果ではなく、親子で成長することが大切

コメント:小崎恭弘さん

家事や子育てを「成果」と考えたり、完璧主義でいると、できない自分を追い込んでしまうことがあります。目に見える仕事ではないので、成果を目標にする必要はありません。子どもの変化にあわせて、親も一緒に成長していくことが大切です。育休を、親子をつくる大事な時間だと考えください。

パパの育休を有意義にするために、ママができることはありますか?

パパとママで一緒にやっていくことが大事

回答:天野妙さん

妻側は、どうしても自分と同じレベルを夫側に求めてしまいがちです。でも、ママ自身も最初はうまくできなかったはずです。中には「男性が育休をとっても意味がない」と言うママもいますが、最初にパパを否定してしまうと、その先ずっとひとりで育児をすることになります。
パパの家事や育児に思うことがあっても、まずは「ありがとう」と感謝の気持ちを伝える。その上で、経験やコツを伝えてください。そうやって、2人で一緒にやっていくことが大事だと思います。


育休を振り返って何を感じたのか、何が変わったのか、パパたちに聞きました。

子どもの成長を見られるのがうれしいです。ミルクを飲む量が少し増えただけでもうれしい。体重が3kgを超えて、ママと一緒に「やった!」と喜べるのもいいなと思います。
(お子さん1か月のパパ)

生後2か月から1か月ほど育休を取得して、育児の大変さを痛感しました。育休取得前も残業をしないようにしていましたが、復職後はより強く思うようになりました。残業しなくてもいいように、働き方を効率的にするなど、プレッシャーもあります。仕事だけではない大変さがあるかもしれません。
(お子さん5歳のパパ)

もし、男性の育休が主流となったとしても、男女共に50:50で育児と家事をやることだけが正解ではなく、それぞれの家庭によって違うと思います。私は育休をとってよかったと思いますが、みんなもそうするべきだ、とまでは言えません。
(お子さん11か月のパパ)

パパの育休は、パパだけの問題ではない

コメント:天野妙さん

パパの育休は、パパの問題だと考えている方が多いと思います。しかし、パパの育休によって、女性の社会進出や、産後うつの解消などにつながり、少子化の改善に寄与するともいわれています。夫婦で育休についての情報をインプットして、育休取得について話し合ってみてください。

親になり家族をつくる主体は、ほかならぬパパ自身

コメント:小崎恭弘さん

男性の育児休暇が注目されるのは、とてもいいことだと思います。社会的な制度なども、大きく変わろうとしています。しかしながら、男性の育休を「ママのため」「子どものため」という側面で考えている方が多いのではないでしょうか。
もちろん、ママを支えること、子どもを育てることも大切ですが、ほかならぬパパ自身が、親になり、家族をつくる主体となることを軸として考えてほしいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです