子どもの耳鼻ケア

すくすく子育て
2021年6月12日 放送

小さな子どもにつきものの、耳・鼻のトラブル。どのようにケアをすればよいのでしょうか。健やかな聴力を育てるために、気をつけておきたいことを、専門家に教えてもらいます。

専門家:
守本倫子(国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 耳鼻咽喉科 診療部長)

鼻水を取っても鼻がつまる。ケアの方法は?

長男は、よく鼻水を出して鼻をつまらせます。お風呂上がりは、わりと鼻の通りがいいのですが、家にいるときは電動の鼻吸い器でこまめに鼻水を取っています。でも、寝ているときに取ることはできません。鼻水がのどに回って、せきやたんが出る、後鼻漏(こうびろう)のような状態になってしまいます。せきこんで起きてしまうこともあります。
鼻水をつまったままにすると、気管が狭くなって、小児ぜんそくにつながると聞いたこともあります。鼻水を取っても鼻づまりが治らないとき、どのようにケアすればいいのでしょうか。
(お子さん2歳3か月のパパ・ママ)

鼻を温めると鼻の通りがよくなる

回答:守本倫子さん

お風呂に入ると、体が温まって鼻の通りがよくなります。同じような状況を作ってあげられるといいですね。例えば、蒸しタオルなどを鼻の周りに置いて、鼻を温めてあげる。それだけでも、鼻の通りがよくなると思います。

生理食塩水をスプレーする

回答:守本倫子さん

生理食塩水を使う方法もおすすめです。例えば、子ども用のスプレータイプの生理食塩水を鼻に入れて、シュッと吹いてあげます。たまった鼻水が流れて楽になると思います。

夜はたまった鼻水がのどに絡んでせきこみやすくなる

回答:守本倫子さん

のどに鼻水がおりても、昼間は飲み込むことができます。でも、夜は飲み込めません。たまった鼻水がのどに絡んで、せきこみやすくなります。たまった状態のままだと、のどが赤くなったり、せきが続いたり、ぜんそくのような症状になる場合もあります。中耳炎になることもあるので注意が必要です。たまった鼻水を流してあげるだけでも、ずいぶん楽になると思います。

鼻水が出なくても、苦しそうに口呼吸をしていることがあります。奥のほうでたまっているのでしょうか。

鼻水が出ていないのに苦しそうなときは耳鼻科を受診

回答:守本倫子さん

鼻水を吸っても出てこないのに、苦しそうにしているのであれば、耳鼻科を受診してください。鼻の奥をみていただいたほうがよいでしょう。


耳そうじの方法を教えてほしい!

娘はうまれたころから耳を触るクセがあります。はじめは「落ち着く行動かな」と思っていましたが、6か月ぐらいのとき、耳の奥に、大きな耳あかを見つけたんです。この耳あかが原因かもしれないと思って、念入りに綿棒で取り除いたのですが、綿棒の先に血がついてしまいました。その後は、一生懸命に取らないようにしています。風呂上がりなどに、耳の入口を綿棒でぬぐう程度にとどめています。
ただ、相変わらず、耳を触るクセはなくならず、このままのお手入れでいいのか悩んでいます。
(お子さん1歳のママ)

アトピー体質などの場合、体が温まるとかゆくなることも

回答:守本倫子さん

耳の穴も皮膚なので、アトピー体質などの場合、体が温まるとかゆくなることがあります。同じように、落ち着いてリラックスしているとき、寝ているときなども、副交感神経が優位になって体が温まり、かゆくなることがあります。

赤ちゃんの耳の穴の皮膚は薄いので注意を

回答:守本倫子さん

お子さんの場合、最初は耳あかでかゆかった可能性があります。ただ、耳そうじをしているうちに、耳の中が傷ついて、皮膚に炎症がおき、だんだん耳あかがたまりやすくなったのかもしれません。耳あかが大きくなると、さらに炎症(外耳道炎)になりやすくなります。
赤ちゃんの外耳道の皮膚は、大人に比べて1/3~1/2の薄さです。そのため、大人の感覚で耳そうじをすると、傷ついてしまうことがあります。注意しておきましょう。

耳あかと耳そうじ

解説:守本倫子さん

耳あかには、ばい菌などから耳の穴を守るバリアの役割があります。

また、耳あかは、皮膚の表面にある細かな毛の働きや、あごの動きによって、自然に奥から外へ押し出されます。そのため、耳そうじは、月に1回程度で、入口付近に出てきた耳あかを取るだけで十分です。細かい耳あかが気になる場合は、2週間に1回程度でもよいでしょう。

耳そうじをするときは、まず、耳たぶを少し引っ張ります。耳の穴がまっすぐになり、中がよく見えます。

綿棒で入口付近の汚れだけを取ります。1〜2回手前にかき出すように、くるっと回転させてぬぐいましょう。

綿棒は鉛筆のように持ちます。手が安定するので、綿棒が耳の奥まで届かず安全です。
綿棒にワセリンなどを薄くつけると、耳あかが取りやすく保湿もできます。

耳あかが気になるときは耳鼻科を受診

回答:守本倫子さん

耳あかで心配なことがあったり、大きなかたまりが出てくる場合は、耳鼻科を受診してください。耳鼻科で耳あかを取ってもらい、炎症している場合は薬が処方されると思います。徐々に正常な状態になれば、耳あかがあまりたまらなくなります。


大きくなる耳あかで聞こえも心配。このままで大丈夫?

娘が1歳10か月のころ、鼓膜の内側に水がたまる「滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)」と診断されたため、よく耳鼻科へ通院していました。
3歳になったころ、耳あかが大きくかたまってしまい、耳の穴が塞がれる「耳垢栓塞(じこうせんそく)」と診断されました。このときは、耳あかをやわらかくする薬を使い、1週間ほどで自然に取れたのですが、半年後の診察で、再び大きくなっていたことがわかり、すぐに取ってもらいました。ですが、1か月もたたないうちに、また「耳垢栓塞」と診断されました。前回の処置が痛かったのか、娘は耳鼻科を嫌がるようになり、診察室でも暴れるので、しばらく様子を見ることに。3か月以上、そのままになっています。
最近では、よく耳を触ったり、声をかけても反応があまりないので、聞こえに影響があるのではないかと心配です。何度取っても大きくなる耳あかは、このままでいいのでしょうか?
(お子さん3歳10か月のママ)

滲出性中耳炎が聞こえに影響することも

回答:守本倫子さん

耳あかがたびたびたまるのは、耳の中が傷ついている可能性があります。耳そうじのときに傷ついて、外耳道炎のようになっているかもしれません。
ただ、聞こえが影響しているのが耳あかだとは限りません。滲出性中耳炎になり、それが要因になっている場合も考えられます。

滲出性中耳炎は、かぜや急性中耳炎のあとなどに、鼓膜の内側の炎症が続き、浸出液という液体がたまってしまった状態です。熱や痛みはほとんどありませんが、放置すると難聴の原因になることがあります。

聞こえない状態が続くと言葉の遅れにつながる可能性も

回答:守本倫子さん

原因が耳あかや滲出性中耳炎であったとしても、聞こえに影響がある場合は、耳鼻科でみていただいたほうがよいでしょう。聞こえない状態が続くと、言葉の遅れにつながる可能性もあります。

耳鼻科を嫌がるので家でできることを調べて、少し前から生理食塩水の点耳を試しています。そのあと、いつもの耳鼻科が休診で、別の耳鼻科を受診したことがあって、耳がきれいだったのか特に処置はありませんでした。このまま生理食塩水の点耳を続けていいのでしょうか。

必ず耳鼻科医の指導と処方のもとで行う

回答:守本倫子さん

耳あかがかたくて取れない場合、生理食塩水や耳あかをやわらかくする点耳薬などを使った家庭でのケアを指導することもあります。自己判断だけだと、滲出性中耳炎などの病気が見落とされることもあるので、必ず耳鼻科を受診して、医師の指導と処方をもとにケアするようにしてください。


子どもの聞こえや難聴、どんなことに注意すればいい?

子どもの聞こえに影響する原因として、どんなことに注意すればいいですか?

まずは聴力検査を

回答:守本倫子さん

多くの市町村で、赤ちゃんの聞こえを調べる「新生児聴覚スクリーニング検査」を行っています。検査を受けていない場合、先天性の難聴などを見落としている可能性がないとは言えません。未検査の場合は、耳鼻科で聴力検査を受けたほうがよいでしょう。

ウイルスの影響で難聴になることも

回答:守本倫子さん

ウイルスが難聴の原因になることもあります。例えば、おたふくかぜにかかったことで難聴になる場合もあります。きちんと予防接種を受けて、感染対策することも重要です。

おうちでできる「聞こえ」の簡単なチェック方法

おうちでできる、簡単な「聞こえのチェック方法」を紹介します。

0歳からできるチェック方法

おもちゃや電話の音、呼びかけたときなどに、反応するか確かめましょう。

左右で聞こえの差があるか

子どものうしろからそっと近づき、風や振動を起こさないように、スマホなどで片側から小さな音を出してみます。反対側からも音を出してみて、左右で違いがあるか確認しましょう。

小さな音が聞こえているか

のどに手を当てて声を出すと、のどが震えていることがわかります。ささやき声のときは、のどが震えません。この声で、子どもが聞こえを確認します。気づかれないようにうしろに行き、ささやき声で名前を呼びかけてみましょう。1歳半ごろまでにチェックしてみてください。

3歳くらいからのチェック

3歳くらいからは、イラストが描かれたシートを使ってチェックをしてみましょう。

1メートルほど離れて子どもと向かい合い、「絵の名前を言うから指さしてね」と言って、当てっこをします。
絵の名前を当てられるようになったら、口元が見えないように手で隠し、ささやき声で言ってみます。何度も言わず、一回だけ言うのがポイントです。

このほかにも、呼びかけても反応しない、テレビの音を大きくしたがるなど、気になることがあったら、耳鼻科を受診してください。


難聴は、早期に対応すれば防げますか?

早期に発見し適切な対処をすることが大事

回答:守本倫子さん

例えば、中耳炎などはきちんと治療すること、ウイルスは予防接種などで対応することが大切です。一方で、先天性の難聴は治すことが難しいので、早期に発見し、補聴器を着けるなど、適切な対処をすることが大事になります。

体験談 先天性の難聴とその対応

ここで、生まれたときの検査で難聴と診断されたお子さんのご家族の体験談を紹介します。

息子は、生後5日目に「新生児聴覚スクリーニング検査」を受け、左耳が「要再検査」でした。耳にたまった羊水が影響することもあるそうで、その後、精密検査を受けました。結果は、先天性の難聴だと診断されました。自分の子どもが難聴になる —— そんなことは思いもよらず、自分に原因があるのではないかと考えたこともあります。

診断後、すすめられたのが「補聴器」です。右耳は正常に聞こえているので、使わなくても言葉の発達には影響がないと言われましたが、着けたほうがより多くの刺激を受けることができるので、将来が豊かになればと思い、着けることを選択しました。
生後3か月、はじめて補聴器を着けたとき、パパの声かけを左耳で反応したんです。「あ、聞こえているんだと」とうれしく思ったことを覚えています。

今では1歳1か月、左耳にかわいい補聴器を着けています。テレビで子ども向けの歌を楽しんでいても、声をかけると反応してくれます。きちんと左の方向からの音が聞こえているようです。

片耳難聴だと騒音の中で聞こえづらい

コメント:守本倫子さん

片方の耳が難聴の場合、騒音の中での聞き取りが難しくなります。でも、体験談のお子さんは、テレビ番組を見ていても声かけに反応していましたね。補聴器で聞き取りやすくなっていることがうかがえます。音の方向性もわかるので、両方で聞かせてあげたほうがいいと思います。

補聴器購入の補助は地域で違いがある

コメント:守本倫子さん

補聴器は安いものではありません。それなりの費用がかかります。両耳難聴は、身体障害者手帳の取得により補聴器購入の補助があります。片耳難聴の場合は、独自に補助を行う自治体もありますが、障害者手帳の交付対象外補助が受けられません。多くの地域で補助が受けられるようになってほしいと思っています。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

耳あかだけ、鼻水だけと思わずに、まずは耳鼻科に

守本倫子さん

耳あかや鼻水は、自分たちで何とか対処できるのではないかと思うことが多いでしょう。でも、その中に病気が隠れている場合もあります。耳あかだけ、鼻水だけと思わずに、まずは耳鼻科を受診してみてください。聞こえや言葉の発達についても、気になるときは相談してみましょう。耳鼻科の扉は開いています。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです