子どもを持って変わった? ママとパパ

すくすく子育て
2021年5月8日 放送

育児がはじまり、夫婦の関係が以前と変わったということはありませんか? 子どもができてパートナーが変わってしまった、けんかをするようになったなど、変わってしまった関係にどう向き合えばいいのか、みんなで考えます。

専門家:
田中俊之(大正大学 准教授/男性学)
久保桂子(和洋女子大学 特任教授/家庭社会学/家族関係学)

変わってしまった夫婦関係。どうすればいい?

以前は、いわゆるラブラブのような状態でしたが、子育てがはじまってからは家事・育児のことで意見がすれ違うようになりました。産まれる前、夫は積極的にやってくれるようなことを言っていたけど、実際は期待したほどではありません。気づいてやってくれるだろうと思ったことも、気づいてもらえず、私が勝手にイライラしています。以前は自分を抑えることもあったけど、今は余裕もなくなって、子どものために必死になって、感情をストレートにぶつけてしまうこともありました。
夫が変わったのではなく、私が変わったのかもしれません。恋愛というより育児のパートナーであることを、夫に求めるようになったと感じます。変わってしまった夫婦関係をどうすればいいでしょうか。
(お子さん1歳7か月のママ)

夫婦で子どもとの関わり方にギャップがある

回答:田中俊之さん

子どもが産まれる前の状態のまま親になることは、難しいと思います。社会学では「結合定量の法則(人と関われる量は一定)」という考えがあります。例えば、中学校から高校に進学したとき、高校で新しい友人ができると、中学校の友人と疎遠になることがある。これは薄情だからではなく、人と関われる量の中で、新しい友人の割合が増えたためです。
これを、夫婦関係で簡単に考えてみましょう。仮に、お互いに関われる量を10ずつ持っているとします。2人だけのときは、相手に10をあてます。子どもができて、母親が子ども8・夫2、父親が子ども2・妻8のような状態になると、夫婦の間にギャップができてしまうわけです。

子育てには常に備えるという心構えが必要

回答:田中俊之さん

私は、5歳と1歳の子どもがいるのですが、妻と同じような関わり方で、自分が親だという立場に慣れるまでに5年ほどかかりました。例えば、家事は週末にまとめてやるような分担ができますが、子育ては週末だけ頑張ればいいわけではありません。日々に生じるもので、いつ何があるのかわかりません。ようやく最近になって、常に備えるという心構えができてきたと感じます。

夫婦がチームになって移行期を乗り越えることが大事

回答:久保桂子さん

いろいろな調査からも、子どもが産まれると、パートナーへの愛情や結婚満足度が低下する傾向があることがわかっています。そのため、夫婦関係や子育ての秘訣は、夫婦を一緒に生活していくチームだと考えて、移行期を乗り越えることだといわれています。
赤ちゃんを育てることは、24時間世話のかかる命を守ることでもあるので、チームで向き合うことが大事です。2人で、家事・育児について一生懸命に話し合って、一致点を見つけていく。そういった努力が必要です。話し合いが相手への攻撃になるのではなく、2人の関係を育てるようなコミュニケーションになるようにしてください。


ママとパパ 何が変わった?

番組のアンケートで「ママとパパ 何が変わったの?」について聞いたところ、ほとんどがママからの投稿でしたが、次のような声が多く寄せられました。

  • 1位 夫婦でけんかが増えた
    以前はけんかをしなかったのに子どもができて言い合いが増えた、など。
  • 2位 パパが好きなことをしているとムカつく
    自分の時間が持てないのに、パパは携帯を見たり、ゲームをしていたり。そんな様子を見るとイライラしてしまう、など。
  • 3位 パパが育児参加しない・できない。ワンオペがつらい
    パパが仕事で帰りが遅い、パパがいるのに育児参加してくれない、ひとりでの育児がつらい、など。

パパは「家は休む場所」という認識を変えたほうがいい

コメント:田中俊之さん

ふだん長時間労働をしているパパは、「家は休む場所」だと考えている方が多く、ゲームをしたり、マンガを読んだりしてしまいます。私自身も、仕事から帰ったときに妻から子どもを渡されて、「仕事で疲れているのに」と思ったことがありました。でも、妻は子どもと過ごして、ゆっくりトイレに行くことも、食事をすることもできません。その大変さが、実際に体験しないとわからないのです。「家は休む場所」と思っているなら、その認識を変えていく必要があるのではないでしょうか。

価値観の違いでけんかになることもある

コメント:田中俊之さん

子どものことになると、どうしてもけんかになることがありますよね。何を食べさせるか、何を着せるか、長期的に教育をどうするかなど、夫婦で価値観がぶつかってしまう。それ自体は当然のことなので、どう生かすかが大事だと思います。

働き方を変えることがキーになる

コメント:久保桂子さん

OECD(経済協力開発機構)の調査(2020年)によると、日本男性の1日あたりの有償労働時間は、国際比較すると非常に長いことがわかっています。

OECD全体の平均よりも、130分以上長い452分です。北米・ヨーロッパで比較的長いカナダでも341分です。全体として考えれば、もっと少ない時間です。まずは、このような働き方を変えることが、この問題の重要なキーではないかと思います。

夫が変わらないことが原因になることも

コメント:久保桂子さん

「パパが育児に参加しない・好きなことをしている」などがあがっていましたが、私が行った調査でも、「夫婦で分担を決めたのに夫が守らない」「子どもが病気で寝ているのに、飲み会に行った」という回答がありました。
子どもが産まれると、家庭の生活は大きく変わります。それなのに、自己中心的に行動したり、育児に参加しないなど、夫が変わらないことがけんかの原因になっていると思います。


子どもの前で夫婦げんかしても大丈夫?

子どもが少しずつ言葉を覚えるようになり、親の表情もわかるようになってきたと思います。そのため、子どもの前で言い合いになったり、夫婦げんかをすると、子どもに影響しないかと気になっています。
(お子さん1歳7か月のママ)

けんかをどう解決したのか見せることは学びになる

回答:田中俊之さん

親が、ふだんはどういう姿を子どもに見せているかを考えてください。たまにけんかをすることがあっても、「いつもと違う」と子どもは理解するでしょう。子どもが保育園などに通うようになれば、子ども同士でけんかになることもあります。親がけんかをしたときに、どう仲直りするのか、どう解決していくのかを見せることができれば、子どもにとって大きな学びになるはずです。
ただ、その段階を超えて、子どもの前でののしり合うような場合は、夫婦だけで解決することが難しいと思います。第三者に入ってもらったほうがよいでしょう。


パパに主体的になってもらうには、どうしたらいい?

子どもが産まれてから、パパにイライラすることが増えました。私は子ども中心の生活で、自分のペースで寝たり、食事をしたりすることがなかなかできません。その横で、夫は以前と同じペースで生活しています。「協力してくれないかな」と聞いても、「何をしたらいいかわからない」と言います。
夫は、以前は家事をしていましたが、育休中に自分からしなくなりました。指示をしないとやってくれません。どうしてそうなったのでしょうか。私と夫で家事の範囲が違ってきて、子どももいるので以前のバランスに戻るのは難しいかもしれません。でも、だからこそ誰かの分担ではなく、お互いが気づいたら動けるようになりたいと思っています。
(お子さん1歳2か月のママ)

夫はごはんの支度や子どもの面倒など、家事・育児にも積極的に関わってくれています。でも、夫の言葉にカチンとすることがありました。ちょっと休憩しているときに、「暇そうだし出かけてもいい?」と言われたんです。まだまだ家事もあるし、子どものお世話もあるのに、どうして暇だと思ったのか理解できませんでした。
けんかになって「何をやって欲しいのか言ってくれ」と言われて。私は察して欲しいのに、夫はわからないというのがストレスに感じました。夫に主体的になってもらうには、どうしたらいいんでしょうか?
(お子さん10か月のママ)

パパは1日のスケジュールを知らない

回答:田中俊之さん

パパは「暇かな」と思ったなら、ママに「ふだんは忙しいだろうから、出かけてくれば」と声をかけたらよかったですね。「暇そう」だと感じたのは、家事・育児の1日のスケジュールを知らないことが原因だと思います。
私自身、このコロナ禍で自宅でのリモートワークになり、自分が見えていない家事・育児がたくさんあることを知りました。それらを知ることで、1日を穏やかに過ごすために何をすればよいのかがわかってきます。例えば、目についたときに〇〇をしておくと、次が楽になるという進行が理解できます。トータルで家事や子育てを考えられないと、ちょっと空いた時間が暇に見えてしまうわけです。

全体をわかるには体験することがいちばん

回答:田中俊之さん

家事や子育てを全体で見るには、体験することがいちばんです。1日を子どもと過ごして、食事や着替えや寝かしつけをしながら、家事も行う。そういったことを具体的に体験しないと、なかなか実感できません。その大変さがわかれば、ママのしていることもわかってくるはずです。

育休中に分担が変わることはよくある。夫婦で見直しを

回答:久保桂子さん

以前は家事をしていた夫が、子どもが産まれてしなくなったなど、育休中に分担が変わることはよくあることです。私が行った調査でも、「育休中に妻に全て任せるようになってしまった、申し訳ない」と言う方がいました。家事に対する態度や関係性を、夫婦で見直すことが必要だと思います。

子どもが産まれたときに、ママをサポートしようと思って「妻サポ」という言葉を使ったら、まわりの人に微妙な反応をされました。後からわかりましたが、サポートでは足りない、家事・育児のプレイヤーが増えることが大事だと気づいたんです。それからは、うまくはできないけど、二軍のプレイヤーでも全部できるようになろうと考えました。
(2児のパパ)

パパもまんべんなく家事・育児ができることが大事

回答:田中俊之さん

夫婦でプレイヤーが2人いるという考え方はとてもよいですね。実際に子育てをすれば、手は多ければ多いほどいい。祖父母や近所の方など、気にかけてくれる人がいると助かります。
ただ、ママがメインでパパがサブのような形で慣れてしまうと、変えていくことが難しいと思います。そのため、うまくできなくてもいい、二軍でもいい、という考え方ではじめることが大切になります。例えば、ママがいなくても、歯磨きや爪切りなど、一通りのことがなんとかできる。まんべんなく家事・育児をすることがとても大事なのです。


夫婦での行き違い、どう防げばいい?

子どもが産まれて、妻とけんかをするようになりました。例えば、私が食事を作っていたときに、子どもが泣いていたにも関わらず、妻が何もしないことがありました。妻は慣れているのかもしれませんが、どうして何もしないのかわかりません。
妻は、母親になってからイライラしたり、言い返すようになったと思います。以前は何かあってもお互いが落ち着くまでクールダウンできていましたが、今は子どものこともあり言い合いになってしまいます。そうした行き違いを防ぐ方法はあるんでしょうか。
(お子さん10か月のパパ)

子どもに話しかけた声は間接的にパパへのサインになる

回答:久保桂子さん

いつも子どもと過ごしているママには、ママの考え方があると思ってください。子どもの様子や泣き声で、安全な状態であるかわかっていると思います。このとき、ママが子どもに「もうちょっとだからね。すぐ行くから待っててね」といった声をかけていれば、パパにも聞こえるはずです。子どもに話しかけた声は、間接的にパパへのサインにもなります。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

お互いの違った面を新しい魅力だと考える

田中俊之さん

子どもを育てていると、夫婦でお互いに、これまでと違った面が見えてきます。それを新しいパートナーの魅力だと考えて、よりよい関係になるきっかけにしてください。そうすれば、夫婦の悩みも、家族にとっていいものになると思います。

大変な時期だけど、いちばん楽しい時期でもある

久保桂子さん

この時期は、夫婦にとっていちばん大変な時期かもしれません。でも、いちばん楽しい時期でもあります。日々成長していく子どもに、パパもママも喜びを感じているのではないでしょうか。ぜひ、子育てを楽しんでいただきたいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです