コロナで心配! 子どもの発育

すくすく子育て
2021年3月6日 放送

新型コロナの影響で、子どもの発育が心配だという声が増えています。また、当たり前になったマスク生活の影響を心配する声も。コロナで始まった新しい生活様式と子どもの発育について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)
若盛清美(認定こども園 副園長)

友だちと遊ぶ機会が減ったけど、コミュニケーションが苦手にならない?

以前、長女は積極的に友だちと遊ぶような子でした。4月の緊急事態宣言で幼稚園が2か月間の休みになり、公園にも行けない雰囲気で、家の中で遊んで大きな音が出ると近隣から迷惑だと言われ、私たち親も神経質になってしまったかもしれません。そのためか、休みが明けても友だちの輪に入っていくのが苦手になって、ひとりで何かをすることが多くなったようです。友だちに声をかけて断られたらどうしよう、嫌われたらどうしようと考えてしまうみたいで、遊びだすと大丈夫なようですが心配です。また、あやまって妹の足を踏んで泣かせてしまったときなど、ちょっとしたことで自分を責めてしまうこともあります。このままコミュニケーションが苦手になるのではないかと心配です。
(6歳・2か月 女の子、4歳 男の子のパパ・ママ)

今は幼児期から児童期に移り変わっていく時期

回答:遠藤利彦さん

公園で遊ぶことを我慢したり、家で静かに過ごすようにしたり、そんな気持ちを持っていることは「えらいね」とほめてあげてくださいね。
たしかに、コロナ禍による生活の変化が影響しているかもしれません。でも今は、幼児期から児童期に移り変わる過程で、自分が人からどう見られているのかを考えるようになる時期でもあります。心の力を身につけている、ともいえます。そのような心の要素が表れていると捉えてみてください。
また、いったん友だちの輪に入れば一緒に遊べるようですし、心配しなくてもよいでしょう。一緒に遊んでいれば、そのうちに友だちから誘ってもらえて、自分からも誘いやすくなると思います。今の悩みは、自然に解消されていくのではないかと思います。

道徳的な気持ち・感情を身につけている

回答:遠藤利彦さん

妹の足を踏んで自分を責めたのは、「悪いことをしちゃった、ごめんね」という優しい気持ちがあったからではないでしょうか。道徳的な気持ち・感情を身につけている、ひとつの証拠だと考えてください。

友だちと遊ぶのに慣れていく時間はひとりひとり違う

回答:若盛清美さん

子どもが友だちと遊ぶのに慣れていく時間は、ひとりひとり違うと思います。早く慣れる子もいれば、時間のかかる子もいます。親としては「うちの子はどうしたのかな?」と心配になるかもしれませんが、心配せずにゆったりと受け止めてあげて、「今度は一緒に遊べるといいね」という思いで毎日送り出してください。だんだん、以前のように遊べるのではないかと思います。

コロナ禍で子どもたちに変化はありましたか?

みんなが「6月が新学期」という思いでスタートした

回答:若盛清美さん

4月の緊急事態宣言のころは、外出を自粛したり、除菌や消毒に気をつけたり、親も神経質になっていましたね。でも、その状況の中での成長もあったと思います。
私たちの園は6月から再開しましたが、4〜5月は園での生活をしていなかったので、「6月からが新学期のスタート!」という思いで子どもたちを受け入れるようにしました。子どもたちも「これからはじまる」という気持ちになります。新しく入園する子にとっては、まさにスタートなので、園の子どもたちには「いろいろ教えてあげてね」と伝えていたんです。そのように取り組むことで、6〜7月の間に、以前の4〜5月よりも子どもたちの距離が短くなったと感じます。

コロナ前の生活を知っている5~6歳の子どもたちに、変化の影響はないでしょうか?

大人が安心の基地になって、子どもの背中を押してあげることが重要

回答:遠藤利彦さん

以前はできていた遊びができなかったり、行きたいところに思うように行けなかったり、そのようなフラストレーションを抱える子どもが多いと思います。そのとき、まわりの大人が不安を持っていると子どもに移ってしまうことがよくあります。大人がどっしりと構えて、子どもの安心の基地になって、背中を押してあげることが重要です。


マスクでの生活。子どもへの影響はある?

将来、娘が表情を読み取れなくなるのではないかと心配しています。今はマスクでの生活が続き、親以外の人から表情を学ぶことができません。娘には、人のいろんな表情がわかるようになってほしいと考えています。
(3歳 女の子のママ)

毎日の幼稚園の送迎では、親も子どももマスクをしています。そんなとき、マスクをとって歩いている子がいて、すぐに誰だかわからなかったことがありました。今は、相手の表情を認識したり、読み取ったりする力が育つ時期だと思うので、そのような能力が伸びづらくなっているのではないか、子どもの発育に影響がないかと感じています。
(4歳 男の子のママ)

人の表情に接する機会は持てている

回答:遠藤利彦さん

いつでも全ての人がマスクをしている状況であれば、心配すべきことかもしれません。でも、少なくとも家庭では、親とマスクなしでコミュニケーションができていると思います。テレビなどの映像では、出演者の表情を見ることもあるでしょう。子どもたちは、実は人の表情に接する機会を持てているわけです。まず、その点を再確認しておきましょう。

目は重要なコミュニケーションツール

回答:遠藤利彦さん

マスクで顔の下半分が隠れると、口元や頬の動きが伝わりにくくなりますが、顔の上半分には表情の大切な要素がたくさんあります。特に目については、日本では「目は口ほどにものを言う」といわれている通り、人間にとって重要なコミュニケーションツールです。
人間の目は、他の動物と比べると、黒目と白目のコントラストがはっきりとして、黒目の動きがとてもわかりやすくなっています。そして、小さな子どもは顔の中で目の部分をいちばんよく見ています。食事のときや、大きく口を動かすと、口元に注目することもありますが、基本的には目の付近です。自然に人の目に注意を向け、その周辺のいろいろな表情の動きも見ているわけです。

子どもたちは相手の目をじっと見てくる

回答:若盛清美さん

園で、0~2歳担当の保育士を見ていると、目の動きがはっきりしていて、眉もよく動いていると感じます。自分で意識しているところもあるのでしょう。
また、まだ言葉がはっきり出ない時期の子どもに、マスク姿で「〇〇ちゃん」と名前を呼ぶと、最初はじっと目を見てくるんですね。そこで、ニコッとして顔を合わせていると、「あ!この人は前に会った人だ、安心できる」という思いになって、ニコニコしながら寄ってきたりもするんです。

園によってはマスクなしの時間を設けている

回答:若盛清美さん

私たちの園では、子どもたちが1日中ずっとマスクをしているわけではありません。例えば、夏で暑い日にはマスクで息苦しくなることも心配です。園庭で遊ぶときに、外しても大丈夫なときもあります。そのように、マスクをしたほうがいいとき、しなくても大丈夫なときを子どもたちに伝えるようにしています。


保育園でできることが減って、今後に影響はない?

娘が通っている保育園では、みんなで歌うことができなくなりました。みんなで一緒にすることを減らしているためです。給食は会話をせずに食べます。発表会などもなくなり、特別な時間や場所で緊張感のある経験もできなくなっているので、今後に影響してこないのか気になります。
(5歳と3歳のママ)

自分の好きなことをやれていれば子どもの発達に心配はない

回答:遠藤利彦さん

園によって、いろいろなルールがあり、考え方の違いもあります。ただ、不自然な状態が続いている中でも、子どもたちが自由に遊んで、自発的に自分の好きなことができることが大切です。自分の好奇心に従って、友だちと何かの遊びをするなど、十分に機会が確保できていれば、子どもの発達に心配はありません。

子どもは日常の中で緊張を経験する

回答:遠藤利彦さん

子どもは、発表会のような特別な行事でなくても、日常の子ども同士の遊びの中でも緊張しているものです。例えば、どうやって遊びの輪の中に入っていくかなど、きちんと緊張感を経験できていると思います。自然に緊張感を経験して自分で克服することが、日常的にあるのだと考えください。

「コロナだからできない」ではなく、コロナでも子どもたちと楽しい時間を作る

回答:若盛清美さん

「コロナだからできない」と考えるのではなく、子どもたちの姿を見ながら、子どもたちが自分で選んで遊べるような環境をつくってあげることが大切だと思います。
そのために、私たちの園では、子どもたちと話し合いをする時間を多く持っています。例えば、毎年恒例だった夏祭りです。子どもたちは夏祭りをやりたい、でも「いつもはお父さんやお母さんがお店をしてくれるけど、呼べないね」と話をしたら、「僕たちがお店をする」と言って、工作で食べ物を用意したりしたんです。
いつもと同じにはできませんが、私たち保育者の願いも子どもに話しながら、「どうやったらいいかな」と話し合って、一緒につくり上げていきます。そうすれば、「コロナだから密集はダメ、親も参加できない」で終わりにならず、子どもたちも納得して楽しい時間になり、「あのときは、親は来られなかったけど、自分たちで工夫した」といった経験が残ることにもなります。

園から発信していくことも大事

回答:若盛清美さん

私たち保育者は、きちんと子どもたちのことを保護者に伝えることを大事にしています。子どもたちの夏祭りを写真に撮って、ひとことを添えて保護者に発信しました。運動会も子どもたちだけで行いましたので、楽しみにしていた保護者に撮影したビデオを発信しました。このように、保護者が参加できない状況だからこそ、園からの発信が大事だと思っています。


おうち時間が増えて動画を見ることが多くなった。視力に影響はない?

おうち時間が増えて、テレビやタブレットで動画を見ることが多くなりました。家にいるときは見ていい時間だと思っているようです。このままだと、視力に影響するのではないかと心配しています。
(2歳4か月 男の子のママ・パパ)

こちらの質問について、仁科幸子さん(国立成育医療研究センター/眼科医)に伺いしました。

今は目の機能が発育する時期

回答:仁科幸子さん

乳幼児期は、外界から適切な視覚刺激を受け取って、視力や眼球運動など、いろいろな目の機能が発育する時期です。遠くの物・近くの物にピントを合わせる調節力、目を寄せたり広げたりする目の動きなどです。この時期に、一定の大きさの画面を近距離でしか見ていないと、さまざまな目の機能がバランスよく育たなくなることもあります。

テレビやスマホ・タブレットなどを見せるときは、どんなことに注意すればいいのでしょうか。

距離や画面の大きさなどに注意する

回答:仁科幸子さん

就寝前は避けましょう。近距離で見たり、移動する車の中で見たりすると、見にくく目の負担になる場合があります。画面は、比較的コントラストがよいなど、見やすいかどうかを気をつけてください。そのように、対象物との距離、画面の大きさや質、コンテンツの内容などに注意してください。

自宅でできるチェックポイント

解説:仁科幸子さん

子どもの目の異常について、自宅できるチェックポイントを紹介します。子どもの目に少しでも違和感があったら、眼科医に相談しましょう。

  • 瞳が白い、光ってみえる
  • 目の大きさや形がおかしい
  • 視線が合わない
  • 動くものを目で追わない
  • 目が揺れる
  • 目つきや目の動きがおかしい
  • 極端にまぶしがる
  • 片目を隠すと嫌がる

専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

子どもは制約された中で、興味のあることを自分で作ろうとする

遠藤利彦さん

「Less is More(少ないほうが豊かである)」という言葉がありますが、子どもの発達にもあてはまるのではないかと感じます。でも、私たち大人は、その逆の「More is More」、たくさん与えてあげればあげるほど子どもの発達は豊かに広がるはずだと考えがちです。
子どもは制約された限られた中で、興味のあることを自分で作ろうとします。例えば、いろいろなごっこ遊びやふり遊びを展開して、その中で力を身につけていくことがあります。そのようなプラスの面にも目を向けることも大切だと思います。

神経質になり過ぎない。ふだんと同じように子育てを楽しんで

若盛清美さん

コロナだからダメ! —— 何かにつけて、コロナを理由にしてしまいがちになりますよね。でも、そんな状況でも、神経質になり過ぎないようにしていただければと思います。ふだんと同じように子育てを楽しんでください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです