子どもの行動のヒミツ

すくすく子育て
2021年1月30日 放送

同じことを何度も繰り返したり、何を言っても「なんで?」と聞いてきたり、急に大きな声を出したり。今回は、子どもたちのちょっと困った行動について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)
井桁容子(保育士)

同じことばかり繰り返す。どこまでやらせておけばいい?

息子は、石を排水溝に落とすことにはまっています。家の前にも排水溝があって、散歩に行こうとしても、すぐに石を探しては落としはじめます。30分以上、繰り返すこともあります。ぽちゃんという音や、水が跳ね上がることがうれしいようです。動物園などにお出かけしても、排水溝を見つけると夢中になってしまうほどです。子どもにはいろいろな経験をさせたいのですが、同じことを繰り返してばかりで、このままでいいのか気になります。
(1歳6か月 男の子のママ)

子どもは科学的な発見をしている

回答:井桁容子さん

親は散歩や動物園が目的だったとしても、お子さんにとっては排水溝が目的だったとも言えます。排水溝は、道路とは明らかに違う素材で、穴があって、そこに入るものがあったり、入らないものがあったり。それらを認識して、確かめることができたわけです。科学的な発見なのです。わかったつもりになるよりも、いろいろと試して、とことんやってみたという研究者のようですね。
いろんな場所から、いろんな形の石を探して、排水溝まで持ってきて落としているので、体の運動にも頭の運動にもなっていると思います。
自分の気持ちをわかってもらえるとき、子どもは育ちます。今は、自分の興味があることをわかってくれる大人を求めている時期だと思ってください。

子どもは「世界のおもしろさ」を探している

回答:汐見稔幸さん

私は、3〜4歳ぐらいまでの時期は、人生の大航海時代のはじまりだと思っています。マゼランやバスコ・ダ・ガマが地球上のいろいろな場所を発見したように、この世界の知識がほとんどない状態から「どんなおもしろいものがあるのだろう」と必死になって探しているのです。子どもがおもしろがるものは、大人がきれいだと感じたり、大事にしているものとは、まったく関係ありません。おもしろいことを発見して、生まれてきてよかったと感じて、またいろんなことをはじめるのです。

自分の行動に反応があることが楽しい

回答:汐見稔幸さん

子どもは、自分の行動に反応があると、うれしいと感じるものです。石を落としたら音が出る。「何だろう?」と思って、何度も試していると、ずっとできることがわかる。そう思ったら楽しくてしかたがないわけです。

育児では、おもしろがることが大事

回答:汐見稔幸さん

いろんな石を持ってきて、穴に入るかどうか試したり、音の違いを確かめたりするような子は、科学者タイプかもしれません。いい音かどうかに一生懸命になっている子は、芸術家タイプかもしれません。こんな時期でも、その個性が見えることもあります。そんな子どもの様子を見ていると、「将来はどうなるだろう?」と思って、とてもおもしろいと感じます。育児では、おもしろがることが大事だと思います。

時間がないときなど、ずっと繰り返して終わりが見えなくて困るような場合は、どうしたらいいでしょう?

目標を作ってあげる

回答:汐見稔幸さん

「あと何個する? 10個にする?」のように、目標を作ってあげるのもひとつの方法です。例えば、「もうちょっと」と言われたら「15個はどう?」と聞くなど、子どもが選んで決めていくこともポイントです。

満足するまでつきあうときも

回答:井桁容子さん

子どもは、満足すればちゃんと終わりにします。満足するまでつきあってもらえていると、親の事情がいつもと違うときには、ゆずってくれるようになります。

親のがまんは子どもに伝わっている

回答:汐見稔幸さん

親のイライラや、急ぎたいといった気持ちを、子どももわかっています。言っても聞かないかもしれませんが、親のがまんは子どもに伝わっているものです。子どもは、周りの人が自分をどのように扱ってくれるのか、とても敏感に感じ取っています。


子どもの「なんで?」。どう答えたらいい?

もうすぐ3歳になる娘は、すぐに「なんで?」と聞いてきます。例えば、散歩をしているとき、「お花がきれいだね」と言うと「なんで?」、「今日は晴れているね」と言うと「なんで?」。このように際限がありません。絵本を読み聞かせていても「なんで?」がとまりません。答えがみつからないことを聞かれると困りますし、娘は困った様子を見て喜んでいるようでもあります。はじめは好奇心が芽生えてきた、成長の証しだと喜んでいたのですが、どこまで答えたらいいのか悩みます。
(2歳11か月 女の子のママ)

「なんで?」をいい加減にあしらわない

回答:井桁容子さん

子どもが「なんで?」と繰り返すのは、一種のコミュニケーションなんです。面倒に思わず、おもしろく答えてあげたり、図鑑などで一緒に調べたり、考えると切りがないようなことに「悩んじゃうなぁ」と答えたり。とことん一緒に調べて、子どもが「ちょっとやっかいかも」と感じることがあってもいいんです。とにかく、いい加減にあしらわないことが大事です。
ママが頑張って答えていると、その様子を見てお子さんが笑っていましたね。自分のほうを向いてほしいという思いと、大人が「うーん」とうろたえる感じが、心地よかったのでしょう。

親を困らせるのがおもしろい

回答:汐見稔幸さん

子どもは親が期待していないことを、どんどんやっていきます。でも、その行動にはそれなりの理由があります。お子さんは「なんで?」と聞くと、ママが困ってしまうことがわかっているんです。自分がママを困らせると、いつもと主人公が交代しているようで、こんなにおもしろいことはない、と思っているのかもしれませんね。

頭ごなしに否定しないで「なんで?」につきあう

回答:汐見稔幸さん

大事なことは、決して頭ごなしに否定しないことです。こんなタイプの子どもだと考えてください。子どもに「叱ったりしないで相手をしてくれた。『なんで』と繰り返しても、きちんとつきあってくれた」という記憶が残って、後に「とてもありがたいことだった」と感じるようになると思います。
ときには「ママもわからないのよ。〇〇ちゃんは『なんで』だと思う? 教えて」と聞き返してみるのもいいでしょう。お互いに「なんで?」と聞きあうような遊びにしてしまうわけです。いろんな方法があると思います。そのうちに、卒業するときがきますよ。


子どもが突然大きな声を出す。どうすればいい?

息子は、突然大きな声を出してしまいます。例えば、トイレトレーニングでなかなか出ないときに「あー!あー!あー!」と声を出したりします。ほかにも、嫌なことがあったとき、お友だちが叱られているとき、大人同士が大きな声で話しているときなどに、突然声を出します。何かを伝えたいのか、雰囲気が嫌だからなのか —— どうして大きい声を出すのか想像しますが、理由はわかりません。どうすればいいのでしょうか。
(2歳7か月 女の子)

言葉では間に合わないとき声が出る

回答:井桁容子さん

自分の思いを伝えたい、でも言葉が間に合わない。そんなときに声が出ていると思います。「僕はここにいるよ」「僕はそう思わないよ」「仲間に入れて」といった意思を、手っとり早く伝える手段として声を使っているのです。
また、「あー!あー!あー!」とリズミカルに声を出していましたね。リズム感がよく、音楽系の資質があるのかもしれませんよ。

声を出すことを注意したほうがいいですか?

注意するより「思い」を言語化してあげる

回答:井桁容子さん

注意するよりも、違う方法があることを教えてあげてください。例えば、声を出したときに「『あー』だけだとわからないよ。『やめて』かな、『もっと』かな」のように、子どもが思っていそうなことを言語化してあげます。そうしていくことで、「やめて」と言うほうが早く通じるとわかってきます。
子どもは、周りに言葉にたけた人がたくさんいるとき、かなわないと思って大きな声を出すことがあります。少しずつ仲間に入る方法を開いてあげるには、思いを言葉にしてあげることです。

エネルギーを外側に表現するタイプだと思って

回答:汐見稔幸さん

人は、喜び・怒り・疑問といった「情動」が湧いてきたとき、そのエネルギーを言葉や表情や体で表現します。でも、小さな子どもの場合はうまく言葉にできません。お子さんの場合は、自分の中にたまったエネルギーを、なんとか外に出そうとして声になるタイプだと思います。
外向的・内向的という、心理学者のユングが考えたカテゴリーがあります。活発な人が外向的で、おとなしい人が内向的だといわれますが、実は違います。たまったエネルギーを、外に向かって表現するタイプを外向的、頭の中でイメージしたり言葉にしたり、自分で収めようとするタイプを内向的といいます。エネルギーの処理のしかたにタイプがあるのです。お子さんは、エネルギーを外に向かって表現するタイプだと思いますよ。


負けず嫌いでズルをしてしまう。どうしたらいい?

息子は負けず嫌いなのか、ちょっとしたゲームでも、無理やり、ズルしてでも勝とうとします。ヒーローごっこのような遊びでも、悪役になろうとしません。このままでいいのでしょうか。
(5歳6か月 男の子のママ)

負けないために知恵を働かせるのは必要な能力

回答:井桁容子さん

負けず嫌いは、人として当然の感覚だと思います。そのエネルギーを使って、負けないために知恵を働かせたり、作戦を練ったりするわけです。生きるために必要な能力ですので、悪いことではありません。
また、いろんな意味で、常に勝つことはできませんし、負けることのほうが多いですよね。だから、勝ちを目指すのはいいけど、負けたときにも「負けてよかったね」と思える、負けることで次を頑張れるような考え方を、大人が示してあげておくことも大切です。もちろん、競うのが苦手な子もいますし、いろいろな人がいます。

負けず嫌いのエネルギーは大事に。克服できるように見守る

回答:汐見稔幸さん

子どもの中に人類の遺伝子が色濃く残っている、と感じることがあります。長い人類の発展の中で、男性は狩りをしたり、誰が強いのか、誰がかしこいのか競い合ってきた歴史があります。いずれ、そのような論理だけでは自分が苦しくなるだけだとわかっていきますが、競い合っていたときに働いていた遺伝子が出てきているのだと思うと、私はおもしろいなと感じます。
また、負けず嫌いの気持ちは、子どものエネルギーにもなっています。勝てなくて苦しんで、考えて、かしこくなって、だんだんとわかっていく。それを大事にしてあげながら、子ども自身が少しずつ克服していくようになるのだと、長い目で見守ってあげてください。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

他の子と違うところがわが子の売りと考える

井桁容子さん

今は、みんながそれぞれ違っていることに磨きをかける時代に入っているといわれています。自分の子どもが「周りの子と違う」と思っても、そこが“売り”だという見方ができると、子育てがもっと楽しくなると思います。

何かに没頭し、こだわる人間こそ新しいことができる

汐見稔幸さん

子どもが何かに没頭しはじめたら、「自分を見つけはじめたのではないか」と喜んでください。ただ、それは世間で正しいとされていることとは違うこともあります。でも、そういうものにこだわる人間こそ、新しいことができると思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです