子育ての疲れ

すくすく子育て
2021年1月16日 放送

子育ての疲れ。みなさんはどんなときに感じますか? 夫が育児に参加してくれない、コロナ禍での閉塞感で疲れる、「子育てがつらい」と言えないなど、さまざまな理由で疲れを感じているママたちがいます。そんな「子育ての疲れ」について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学 学長/発達心理学)
倉石哲也(武庫川女子大学 心理・社会福祉学科 教授)

今回のテーマについて

頑張ることと疲れて放り投げたくなることはワンセット

大日向雅美さん

子育てを一生懸命頑張ることと、ときには音をあげて放り投げたくなるくらい疲れることは、ワンセットです。どちらも真実で、どちらかだけということはありません。それなのに、子育ての楽しさや、子どものかわいさしか言えないと思わせたり、思い込んだりするのは不自然なことなのです。

愚痴を言うことも大事

倉石哲也さん

子育ては命を守る作業でもあります。ひとりで何もできない、泣くことしかできないような赤ちゃんを育てることは、とても大変なことです。そこで一生懸命に頑張っている人には、どこかで息抜きをしてほしい。ときには愚痴を言うことも、とても大事なことだと思います。


子育てを夫に頼れず、精神的に疲れる⋯

夫は育児に消極的です。平日は朝から晩まで仕事で、ほとんど家にいません。休日も育児に参加することはめったにありません。散歩や買い物のとき、パパと一緒にいる家族を見て、幸せそうだなと感じてしまいます。
もともとは2人で一緒に家事をしていたのですが、子どもが生まれて、育児になるとなぜかノータッチになりました。最初はだっこやミルクやおむつをお願いしていたのですが、「なんでしてくれないの? 誰々さんちはやってるよ」のようなことを言ってしまったのがよくなかったかもしれません。「自分は仕事をして、休みは育児をして、自分の人生って何だろう?」と言われてしまって、何も頼めなくなりました。もういいや、この人に何を言ってもだめだ、もう家事も自分でやればいいやと思って⋯。なんとか我慢して頑張らないと、と思っています。
(5か月 女の子のママ)

両親の緊張感が子どもに伝わるようになる

回答:倉石哲也さん

とても頑張っておられて大変だと思います。そしてパパにも参加してほしいという思いもある。お子さんのことを考えると、いますぐに何かをしないといけないわけではありませんが、この先、どのようにパパが育児に登場する場面をつくっていくのか考えたほうがよいと思います。
子どもが1~2歳ぐらいになると、何となく家の雰囲気や両親の緊張感を感じ取ることがあります。そのときのために、少しずつでも関係をよくしていく準備をされたほうがよいでしょう。

自分の大変さを行動でアピールする

回答:倉石哲也さん

パパは「まだ大丈夫だろう。せっぱ詰まってはいない」と思っているかもしれません。そんなときは、自分の大変さを、言葉だけではなく行動でアピールするのもひとつの方法です。極端な例ですが、パパの前で皿を割ってみたり、痛いと言いながらのたうち回ったり。最後の手段かもしれませんが、それぐらいしないと伝わらない場合もあります。

パパも一緒に番組を見て、ママの大変さをわかってほしい

回答:大日向雅美さん

つらいはずなのに、明るく話そうとされて、でも最後には感極まって涙を流された。それが本心だと思います。倉石さんがおっしゃったように、ママの本当のつらさが伝わってないかもしれない。家事もママがやると言っているから大丈夫だと思っているかもしれない。
だから、ぜひパパにこの番組を見てほしいですね。ママの話す様子を見れば、こんなにも、泣いてしまうほど思い詰めている、と伝わるはずです。何万遍の言葉よりも、説得力があると思いますよ。

売り言葉に買い言葉になることもある。重く受け止めないで

回答:大日向雅美さん

パパが「自分の人生って何なの」と言ったことに傷つきましたね。でも、夫婦であれば、売り言葉に買い言葉のようになることもあります。そこまで重い意味を込めているのか、わかりませんよ。だから、その言葉を重く受け止めないで、こだわりすぎないようにしましょう。
そして、パパにはこの番組を見ていただきましょう。ママが、毎日どれだけ頑張って、我慢して、まわりの家族を見て幸せそうだと感じているのか。その思いが、きっとパパに伝わるはずです。


新型コロナで先が見えなくて、閉塞感で疲れがたまる⋯

働きながら子育てをしています。新型コロナの影響で、週に4日は自宅でテレワークをしていますが、子どもをみながら仕事をするのが難しいと感じます。上の子は保育園に預けていますが、少しでも体調が悪いと預かってもらえません。パパもテレワークのときは、子どもをみてくれますが、下の子はまだ授乳が必要な時期で、夜の授乳もあるのでほとんど眠れません。
誰かに発散したいけど、コロナ禍ではママ友にも気軽に声がかけられません。保育園の行事が全部中止になりました。同じ状況のママ友もいるので、いろいろと話したいのですが、お互い遠慮しています。連絡を取り合うこともだんだんなくなってきました。コロナの影響でなかなか先が見えない中、閉塞感で疲れがたまる一方です。
(5歳・7か月 女の子のママ)

自分を責める気持ちはなくしてほしい

回答:大日向雅美さん

今はとてもつらい状況だと思います。でも、これは個人的な問題ではありません。その点を認識のスタートにすることが大切です。
新型コロナへの対策で、社会や世の中は、政治も企業も、子育て家族に無理なことを求めてきました。自粛しなさい、3密を避けなさい、テレワークで乗り切りなさい。それらは、子育て中の親にとって、できないことばかりです。小さい子どもがまとわりついている中で、どうやってテレワークができるでしょう。それなのに、テレワークにしてあげたから通勤しなくていい、だから成果を出してくださいと求めるわけです。そんな企業ばかりではないと思いますが、大勢がそのようなムードになりました。
これは、社会や世の中がおかしいのです。だからといって、何かができるわけではありませんが、少なくとも自分を責める気持ちはなくしましょう。仕事も5〜6割できればいいと思いましょう。
子育て中の親はみんな同じ状況だから、今は声を出せないだけです。どこかで突破口が少しでも開けば、一気に声を出し合えるときがくると信じていいと思っています。

もうひとり誰かに頼る

回答:倉石哲也さん

チーム育児という考え方があります。今は夫婦で役割分担を工夫されていると思いますが、もうひとりぐらい誰かに頼れるといいですね。今すぐには難しいと思いますが、ベビーシッターや子育て支援の施設に預けて、その間にテレワークでの仕事に集中する。そのように、誰かに育児のチームに参加してもらって、スケジュールを調整しながら子育てや仕事をやっていくことも、ひとつの方法です。


「子育てがつらい」となかなか言えない⋯

初めての子育てで自信もなく、「つらい」と言葉に出すと、周りから「この人は母親として大丈夫なの?」と思われないか、と考えてしまいます。実母からも「母親ならしっかりしなさい」と言われました。そんなことを言われるくらい自分はダメかもしれません。すべてが負の方向に追いやられている気がします。
(1歳 女の子のママ)

3人の子どもを育てています。夫は転勤族で引っ越したばかりです。両家の親も遠方で頼れません。そもそも、自分が望んで産んだのに「子育てで悩んでいる。しんどい」と誰かに言うことは間違っているのではないかと考えてしまいます。SNSを見ては、キラキラした子育てをしているママの存在を知って、余計に落ち込みます。こんな黒い感情を持っているのは自分だけではないかと思ってしまいます。
以前、保健センターで相談したとき「一時保育を利用してみては」と提案いただいて、子どもを2時間ほど預けたこともありますが、お迎えのときにすごく泣いていて。私のリフレッシュのために泣かせてしまった、ごめんなさい⋯ そんな罪悪感にさいなまれました。
(3歳・1歳11か月 女の子、4か月 男の子のママ)

親と離れて子どもが泣くのは、親との愛情が育っている証拠

回答:倉石哲也さん

子育ては子どもの命を守ることでもあるので、「親だからしっかりしないといけない」と思うのは当然のことだと思います。子どもを預けたときに泣いてしまったと自分を責めていましたが、むしろ、それだけ子どもに親への愛情が育っているわけです。罪の意識を感じる必要はありませんよ。

子どもが親以外の大人に接することは大事

回答:倉石哲也さん

誰かに子どもを預けることは、子どもの成長にとっても大事なことです。親以外の大人にもかわいがってもらえる、守ってもらえる。自分の周りには、そんな大人がたくさんいると小さなころから感じることで、いざというときに誰かを頼れるようになるわけです。それは、子どもが自立していくために大事なことです。

一生懸命に頑張っているからこそ、つらくなったり、疲れてしまう

回答:大日向雅美さん

子育てを一生懸命に頑張っているからこそ、つらくなったり、疲れてしまうのです。「つらい、疲れた」と思うのは、SOSの信号です。心が「子どもたちと笑顔で向き合えるための条件を探して!」と叫んでいるんです。それが、「つらい、疲れた」という言葉になるだけのことで、決して黒い気持ちではなく、ポジティブな声だと思ってください。
自分を大事にしましょう。絶対に黒い気持ちではありません。本当に大事な声を届けてくれた、そんな声を自分で聞けたことは、すごいことですよ。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

大日向雅美さん

子育て真っ最中のお母さんたちは、本当によく頑張っていらっしゃいます。つらいことがあったら、自分に矢を向けないでください。私が疲れるのは、私がおかしいわけではなく、世の中が、社会がおかしいのだと思ってください。そこから解決への道を探していきましょう。そして、子育てから視野が広がって、みんなでスクラムが組める。ひとりひとりが視野を広げることで、「子育ては社会のみんなで」というスローガンが現実のものになると思います。

倉石哲也さん

子育ては命を守る尊いことでもあるので、疲れをも誇りにしていただきたいと思います。一生懸命に頑張っていることを、誰も言葉にしてくれないかもしれません。こんな時期だから、とても難しいかもしれません。それでも、「自分はこれだけ頑張っている。疲れるほどやっている」という誇りを、しっかりと持っていただきたい。だから、愚痴が言いたくなっても、それだけ一所懸命、真面目にやっているんだと、発想を転換していただきたいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです