どう伸ばす? 子どもの可能性

すくすく子育て
2020年11月14日 放送

子どもの才能、見極められるの? 子どもの可能性、どう伸ばせばいい? 親の夢を託すのは、可能性を狭めることになる? 今回は子どもの可能性について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)

今回のテーマについて

汐見稔幸さん

子どもの可能性には、それぞれ個性があります。子どものおもしろいところを見て、上手に応援していきましょう。可能性を個性や能力のような形にするのは、大人と社会の役割だと思います。


子どもがやりたいことを止めてしまうと、可能性を潰すことになる?

長女がやりたいことを、親の都合で制限してしまうことに悩んでいます。パート勤務で時間の余裕がないときは、遊びを途中でやめさせることもあります。できるだけ怒らないようにしていますが、言うことを聞かないときは大きな声で叱ることもあり、罪悪感があります。子どもがやりたいことを制限して、可能性を潰してしまわないか心配です。
(4歳6か月・2歳 女の子のママ)

おもちゃは、創作ができる“素材玩具”を選ぶ

回答:汐見稔幸さん

子どもの可能性を伸ばしてあげたい、でも十分できていないという気持ちがあるだけで、半分以上、親としてちゃんとやっていると思いますよ。
子どもが遊ぶ「おもちゃ」は、少し工夫をしてみるとよいかもしれません。自分で創作・創造できる「素材玩具」がおすすめです。例えば、絵・粘土・折り紙などは、どんな形でも作ることができます。そんな自由にできる環境を作ってあげるといいですね。自由に遊ぶことで、子どもの好きなことや得意なことなどが見えてきます。
おもちゃは、大げさに言えば「子どもが出会う文化」のようなものです。少し多様化してみるのもよいでしょう。お子さんに合わず、つまらないと感じて遊ばないこともあると思いますが、ときどきそのようなことを意識してみてください。

親の言うことが一貫していれば大丈夫

回答:汐見稔幸さん

遊びをやめさせるとき、けじめがはっきりしていれば、子どもはだんだんとわかってきます。例えば、「新しい服を着て水たまりで遊ぶのはダメ」のように、“いいとき”と“ダメなとき”を子どもに伝える。社会のルールも伝えたほうがよいですね。
このとき、同じことを、ある日はダメ、ある日はいいと気分で変えてしまうと、子どもは困ってしまいます。親の言うことが一貫していれば大丈夫です。「ダメなものはダメ」であっても、「体調が悪いから今日はごめんね」ということでもいいのです。子ども自身で、ルールが分かるようになります。


子どもの可能性、どう見極めるの?

子どもが何に向いているかが分かれば、それだけでも伸ばしてあげられるのではと考えています。自分に余裕がなくても、それだけは頑張ってやらせてあげようと思います。子どもの可能性を見極めることはできますか?
(4歳6か月・2歳 女の子のママ)

子どもに多様な体験を

回答:汐見稔幸さん

子どもが何に向いているのかを見極めることは難しいでしょう。しかし、好きなものをさせてあげることで、少しずつその可能性を見いだすことはできます。子どもの可能性は、子どもが出会う体験の多様性によって、さまざまに広がります。その中で、「もしかしたら向いている?」と思えることを、一生懸命やってみる。10ぐらいの中で、1〜2つは見つかるかもしれません。

いい意味での親バカになる

回答:汐見稔幸さん

いい意味での親バカになることも大切です。子どもがしていることに親が「おもしろいね」と言うと、子どもは自信を持てるようになります。「できないでしょ、何やってるの!」と言うより、はるかにいいわけです。可能性を伸ばすには、「子どもにとっておもしろい」だけではなく、「自分でできるという自信を持つ」ことも重要です。親バカになって、子どもを後押ししてあげてください。

忙しくて、子どもにいろんな体験をさせるのが難しい場合は、どうしたらいいでしょうか?

子どもを観察して、可能性を上手に信じる

回答:汐見稔幸さん

子どもにごはんを食べさせたり、寝かしつけたりすることと同じように、子どもを観察することも親の務めのひとつだと思います。例えば、皿の並べ方にこだわっている様子から「美的センスがあるのでは」と見いだすこともある。一緒にカーテンの買い物をしたとき、「えっ」と思うものを子どもが選んだけど、実際に掛けてみると意外によくて、「デザインに興味を持つようになるかも」と思えることもあります。
今の社会は忙しいのが当たり前ですが、その中でも日常のことを一緒にやりながら、その子のセンスを見つけていく。親バカになって、子どもの可能性を上手に信じて、ひょっとしたらという気持ちを持ち続けることが、大事なのではないでしょうか。

子どもの観察をメモで残す

回答:汐見稔幸さん

子どものちょっとしたしぐさの中に、個性の芽はたくさん出ています。例えば、子どもを寝かしつけた後に、今日の子どものよかったこと・おもしろかったことをメモしてみましょう。1日に少しの時間でもいいと思います。ちょっとメモしておくことが、人生を変えることもあります。ぜひ観察することを続けてみてください。


習いごとは早く始めるべき?

娘は歌や踊りが大好きで、リズム感もいいなと思っています。私自身、3歳からピアノを習っていたので、娘にもピアノやバレエなどの習い事をさせて、もっと才能を伸ばしてあげたいと考えています。でも、いつから始めさせたらいいのか悩んでいます。2~3歳から始めるのがいいのか、本人が「やりたい」と言ってからがいいのか。子どもの才能を開花させるためには、習い事は早くからさせたほうがいいのでしょうか。
(2歳11か月 女の子のママ)

2~3歳は楽しめる教室を選び、4~5歳では子どもにも選ばせる

回答:汐見稔幸さん

日本人は、習い事を始める時期について昔から熱心でした。江戸時代のころは、始めるのは6歳の6月6日がいいと言われていました。そのころになると、自分が何を何のためにやっているのかが、ある程度分かるからです。
2~3歳で教室に通う場合は、子どもが楽しくできるところが絶対条件ですね。遊んで、楽しくてしかたがない。それが、いつの間にか「好き」になっていくことを目指してください。
4~5歳になると、子ども自身の合う・合わないが出てきます。本格的に習うことになった場合は、いくつかの教室を見学して、子どもと相談して選ぶことが大切です。ちょっと合わないなと感じたら、教室を変えてもよいでしょう。そのぐらい、教室選びは大事です。教室のほうもいろいろと研究していて、楽しくやるところが増えてきています。

将来、子どもが人生を楽しむためと考える

回答:汐見稔幸さん

親では十分に可能性を伸ばせない部分だけど、教室で習えばきっと伸びるだろう —— そのような場合、将来、子ども自身が人生を楽しむスキルを身につける意図であれば、可能ならば習い事をさせてあげたほうがいいと思います。
途中で挫折があったら、子どもとちゃんと相談しましょう。できるだけ習ったことを生かそうと考えても、絶対に無理はさせないことが原則です。習い事を続けるうちに、すごくのってきたら、もっと本格的にしようとスタンスを変えればよいのです。

まずは自由に楽しく遊べる環境を

回答:汐見稔幸さん

音楽一家のように、小さなころから音楽が当たり前にある家庭で、音楽家が育つ例もあります。子どもに、何かを好きな子に育ってほしいと考えるなら、その何かが当たり前にあって、自由に楽しく遊んで、慣れ親しむことができる環境を作ってあげたほうがいいのです。まず、そのような環境があって、もっと本格的に取り組むことになったら、習い事を始める。それでもいいのではないかと思います。


親の苦手なことは遺伝する?

自分の苦手なことが子どもに遺伝してしまわないか気になっています。私は数学などの理系が苦手だったので、子どもも苦手になって、仕事の選択肢が狭まってしまったらどうしようと心配です。才能に遺伝の影響はどのくらいあるのでしょうか。
(2歳11か月 女の子のママ)

遺伝だと決めつけないで。環境の要因も大きい。

回答:汐見稔幸さん

遺伝で理系が嫌いになる、といった決めつけはやめたほうがよいでしょう。また、数学・理系嫌いは、どのような授業や教育を受けたのか、環境の要因が大きいと思います。
子どもの遺伝子には、お父さんやお母さんだけでなく、祖父母や、その祖先まで、たくさん入り込んでいます。誰から、どこが遺伝しているのかはわかりません。子どもの体験によっては、親が苦手なことに夢中になることもあります。友達が何かおもしろいことをしているので自分もしてみたいと思うこともあります。そのような経験の偶然性によって、大きく変わるのです。遺伝は影響しているけれど、それよりも環境の要因が大きいと考えてください。

苦手なことでも向き合ってほしいとき、どうしたらいいですか?

いいところを膨らませて苦手を克服する

回答:汐見稔幸さん

苦手なことを克服させる育て方が確かにあります。でも、その方法で本当に伸びたという話をあまり聞きません。私は、好きなことをどんどん伸ばして、可能性を上手に広げてあげるのが、名コーチだと思います。
苦手を克服するためには、まず子どもの持っているよさを、個性としてたくさん見つけてあげましょう。そして、いいところを膨らませていく。すると、自分の得意なことを苦手な部分にも応用して、克服できるようになります。はじめから苦手なことを「克服しよう!」と言ってやらせても、かえって嫌になってしまいます。
例えば、国語が好きで数学が苦手だったら、文章で数学を説明している本を読んでみる。好きな方法で数学に触れることで、そのおもしろさに気づくこともある。すると、別の意味で数学が得意になるかもしれませんよね。得意なことを膨らませて、苦手なことを覆いかぶせていくのです。


親の思いでやらせると、可能性を狭めることになる?

私は体育大学出身で、学生時代はライフセーバーとして活動していました。2人の子どもたちにはプロのサーファーになってほしいという夢があり、私がサーフィンを教えています。幼いころからスイミング・体操・スケートボードなど、サーフィンに生かせる習い事もさせています。子どもの身体能力が発達するといわれる時期に、能力を伸ばしてあげたいと思っています。
息子はサーフィンが好きで、プロサーファーになりたいと言っています。私の押しつけではなく、楽しんでやっていると思うのですが、サーフィンが中心になって、どこかに遊びに出かけることはありません。子どもも望んでいるなら、親がやらせたいことをやらせてもいいのでしょうか。
(7歳 男の子・4歳4か月 女の子のママ)

一緒にやっているうちに子どもが好きになれば、特に問題ない

回答:汐見稔幸さん

お子さんは、ママが喜んでやっているところを見て「ママ、かっこいい!」と思っているはずです。だからこそ「プロサーファーになりたい」と思っているのです。子どもが何を好きなのかは、なかなか分かるものではありません。見つけるには苦労しますが、実際にママがしていることを一緒にやるうちに「これはおもしろい!」と思えたら、子どもがひとつ好きなことを見つけたことになります。やっておられることは合理的で、特に問題があるとは思いませんよ。

子どもは、自分で好きなものを見つけるようになる

回答:汐見稔幸さん

今後、小学校などで新しい友達と出会うことになると思います。また、いろいろな映画やテレビを見たりもする。そこで、好きになるものが必ず出てきます。今、お子さんはサーフィンというしっかりとしたものを持っているので、おそらく、あまり動じないでやっていけるタイプの子だと思います。


専門家からのメッセージ

汐見稔幸さん

子どもの可能性を伸ばすために、親はどう関わればよいのか —— それは、どんな家庭をつくるのか、どんな人生を送るのかのように、多様なパターンがあっていいと思います。
昔のような「バカ者!」といった言動だけは、絶対にやめてほしいですね。今は、昔と違って子どもたちだけの世界になれることが少なく、子どもだけで「誰に何を言われても僕は僕だ」という考えになるのが難しい。そのため、親が自分をどう思っているのかが、いちばんの子どものエネルギーになるのです。「この子はひょっとしたらおもしろい子になるのではないか」という姿勢で接することを大事にしてほしい。その後は、多様な方法があっていいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです