見守る子育てって難しい?

すくすく子育て
2020年10月17日 放送

子どもといると、よかれと思って口出しし過ぎてしまうことがありませんか? 子どもの自主性を尊重して「見守る」ことが大事だと言われていますが、なかなか難しいですよね。見守る子育てについて、専門家と一緒に考えます。

専門家:
柴田愛子(保育施設代表)
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)

今回のテーマについて

親が口を出してしまうのはどうして?

汐見稔幸さん

「このぐらいの年齢なら、これぐらいできて当然」と考えたり、「少しでもまわりの子よりできる子になってほしい」と思ったり。そのような理由から、過干渉型の育児になってしまう親が多いと思います。

子どもを見守るとは、どういうことだと思いますか?

柴田愛子さん

大人は、“子どもは教えられたことだけを学んでいく”と考えがちですが、子どもには“自ら育とうとする力”があります。遊びを通して、興味を広げたり、探求心を育てたりしながら自分を豊かにしていきます。そこで大人が口を出し過ぎると、子どもの中でいろいろなことが熟す時間が削がれてしまいます。慌てないで待ってあげることが、見守ることだと思います。


子どもの遊びについ手を出してしまう。どう見守ればいい?

2人の娘はよく積木で遊んでいますが、つい「こうしてみると面白いよ」と言って手出ししてしまいます。見ているだけでは発展がないので、よかれと思ってやっているのですが、娘に「やだ!」と嫌がられることもあります。
(2歳・5歳 女の子のママ)

乗り物が大好きな息子に、いろいろな乗り物を組み立てられるブロックを買いました。でも、アイスクリームなどを作って、想像と違う遊び方をします。子どもが自分でどう遊ぶのか試していくことも大事だと思いますが、説明書通りに遊んだほうがもっと楽しめるのではないかと思うこともあります。
(3歳7か月 男の子のパパ・ママ)

子どもの自主性を伸ばすため、過干渉・過評価にならないように

回答:汐見稔幸さん

今、保育や育児では「見守る」がキーワードになっています。家庭で育児をする比率が非常に高くなり、昔のように子どもたちが自由に外遊びをするなど、自主性が育つ機会が少なくなったからではないか、と思います。子どもが目の届くところにいると、行為や遊びに対して、どうしても注文をつけたり、過剰に評価したりすることが増えていきます。私は、それを「過干渉・過評価の育児」と呼んでいます。
子どもは、自由に試行錯誤して「わかった」と実感するような体験をたくさんしておくことが大切です。「その方法はムダだよ」「この通りにすればできるから」といって育ててしまうと、これからの社会をうまく生きていく力が十分に育めなくなる可能性もあります。子どもの自主性・自発性を伸ばすために、少し引いて、過干渉・過評価にならないようにしましょう。

見守るは、黙って子どもを放任することではない

回答:汐見稔幸さん

“見守る”ことが原理になってしまい、何も言ってはいけないとなるのは本末転倒です。見守ることは、黙っていることでも、子どもを監視することでも、放任することでもないのです。
例えば、「それは危ないからやめておこうね」などの声をかけることは問題ありません。必要なときにはアドバイスをする。どうしても行き詰まっているときには、「ちょっとこっちから見てごらん」のようなヒントを与えてあげる。子どもに、もう少し先を考えるためのポイントを与えるような関わり方がいいでしょう。
見守ることは、「子どもの上手な応援団」になってあげることだと思います。


子どもの遊び。どんな言葉をかけて見守ればいいの?

子どもの遊びを見守るように心がけていますが、どんな言葉をかけていいのかわかりません。今は、遊んでいるときに、子どもが「できたよ」と言ってきたら、「できたね」とこたえるなど、繰り返しで反応するぐらいしかできていません。例えば遊びが行き詰まったときに、もっと遊びが広がるようなことが言えるといいのにな、と思いますが、なかなか言葉が見つかりません。
(2歳11か月 女の子のママ)

子どもがどんな気持ちなのかを見つけることが大事

回答:柴田愛子さん

子どもが「できたよ」と言ったら「できたね」とこたえるのは、上手な対応だと思います。子どもが言ったことを繰り返して言うと、子どもは「ママは自分のことをわかってくれている」と感じて、気持ちが落ち着き、次のことを考え始めることができます。今度はこうしてみようかな、ああしてみようかな、と遊びを広げることができます。
子どもが、今どんな気持ちでいるのか、何を面白がっているのかなどを見つけて、子どもに寄り添った言葉をかけることが大事かもしれませんね。

子どもの遊びを応援するには、どんな言葉がけがいいのでしょうか?

子どもを見守るときの言葉がけのポイント

回答:柴田愛子さん

私が言葉をかけるときは、子どもがどんな気持ちでいるかを見極めた上で、次の2つのポイントを意識しています。

①視野を広げる
子どもの視点を変えたり、興味を深めたりするような、視野を広げる言葉がけです。例えば、ブランコをこぐ子を手伝うとき、「空まで行けそう?」と声をかけてみると、「空まで行けそう!」と子どもが言うように。遊び心をもって声かけすると、大人も楽しく子どもとつきあえますよ。

②想像力を膨らます
遊び心を刺激して、想像力を膨らますような言葉がけです。少し前に、こんなことがありました。子どもの足元にスプーンが落ちていて、私が「あら、スプーンが落ちてるよ」と言ったら、「さっきは、あそこに落ちてたよ」と指さしたんです。聞くと「次は、そこに落ちたよ」と言います。そこで、私が「このスプーンは歩けるのかしらね」と言うと、子どもたちから「こびとが運んでいるのかな」「お兄ちゃんはこびとを見たことがあるんだ」と話が盛り上がっていきました。もし、最初に「拾ったほうがいいね」と言っていたら、スプーンを拾って終わりだったでしょう。でも、子どもは現実を事実として受け止めるより、そこに遊び心のような何かが混ざっています。その遊び心を刺激すると、広がっていくのです。子どもと接している大人の想像力も大切ですね。


親が先回りしてやってしまうと、成長の妨げになる?

息子は運動が得意で、ジャングルジムでも自由に遊ばせています。服も上手に着ることができます。でも、本当は自分でできるのにボタンを「留めてほしい」と言ってきます。同じように、自分でできることをたびたびお願いしてきます。
成長のためにも自分のことは自分でできるようにと考えていますが、夫婦共働きで2人とも忙しくて、子どもにやらせる余裕がなく、結果的にママやパパがやってしまうことになります。やってあげることが成長の妨げにならないか心配です。
(3歳11か月 男の子のママ・パパ)

“やってあげる”と“任せる”にメリハリをつけてみる

回答:柴田愛子さん

自分でできることが分かっていても、待っていたら時間がかかりますよね。いつも子ども優先では、1日が回りません。例えば、忙しい朝は「サービスだよ」と言ってやってあげる、時間があるときは子どもに任せて待ってあげる。そのようにメリハリをつけるのもよいでしょう。やってしまうことで、その子の成長が止まることはありません。子どもの成長はそんなにやわなものではないんです。


子どもに自主性がなくなった。どう見守ればいい?

長女は、今まではっきり主張する子でした。例えば服は自分で選び、親が決めてしまうと反抗することもありました。でも、弟が生まれて1年が過ぎたころから、着る服から、どんな遊びをするかまで「ママが決めて」と言うようになりました。私が口出しし過ぎたのかもしれません。子どもに自主性がなくなったとき、どう見守ればいいのでしょうか?
(3歳8か月 女の子、1歳5か月 男の子のママ)

充電期間だと考えて、手をかけてあげていい

回答:柴田愛子さん

ママが、どうしても下の子に手がかかる時期ですね。上の子は3歳8か月ごろで、ちょうどイヤイヤ期でもある。本当は、自己主張して突っ走っていきたいけど、下の子にかかりきりのママのところに戻りたくなったのでしょうね。
おそらく何か疲れてしまって、ママに甘えたいのかもしれません。焦る必要はありません。これは充電期間だと考えてください。子どもが手をかけてほしいと言っているときは、親も手をかけてあげていいと思います。

一般的に、子どものやることに口を出したり手を出したりし過ぎると、子どもの自主性が失われてしまうものですか?

口を出し過ぎるのはよくない。無意識に言っていないか注意を

回答:柴田愛子さん

あれしなさい、これしなさい、今日はこれで遊んで、今度はこっちよ。そのように常に口うるさく言うのは、やはりよくありませんね。
おしゃべりな人は、無意識に指示や命令語が多くなりがちなので注意しましょう。子どもは、次々に言われると、落ち着いて考える間がなくなり、心が動かなくなってしまいます。最初は反応していても、次第に面白いという感性がなくなって、言われたらやるという義務になります。それで無気力になっていく例もあるのです。


子どもをどう見守るのか 〜 保育施設でのケース

柴田愛子さんが代表を務める保育施設には、2〜5歳まで100人ほどの子どもたちが通っています。そこでは、どのように子どもたちを見守っているのでしょうか。子どもの「やりたいこと」を尊重する、柴田さんの見守り方を見せていただきました。


ここは、2〜3歳児のクラスです。男の子が、ピアノの鍵盤を触りながら行ったり来たりしています。音の変化を楽しんでいるのかな? でも、手に持っているのは金属製のミニカーです。これではピアノが傷ついてしまいます。

柴田さんは「ミニカーだと傷ついちゃうから、手でやってみて。ビューって」と声をかけます。でも、ちょっとやりにくそうです。

柴田さんは決してやめさせません。「もっと柔らかいものはないかな?」と言って、一緒に別の方法を探します。

探してきたぬいぐるみでやってみると、うまくできたようです。このように、子どもの「やりたい」という気持ちを応援しているんですね。


こちらでは子どもたちが白いひもを見つけてきました。どうやら、ひもを麺に、段ボールをどんぶりにして、ラーメンに見立てたようです。柴田さんは「大きなラーメンね。いっぱいあるね。どれどれ、チュルチュル、ああおいしい」と声をかけます。すると、柴田さんに刺激されたのか、子どもたちがラーメンの具になるものを持ってきました。

あれ? いつのまにか、段ボールのどんぶりがお風呂に変わったようです。遊びながら、子どもたちの想像力がどんどん膨らんでいきます。柴田さんは、その変化に気づいて遊びを後押ししていくのです。


今度は、おもちゃにしていた電話が壊れています。男の子が投げつけてしまったようです。

さすがに叱ると思いきや、柴田さんは「壊れちゃったね。でも、ちょっと見て。中はこんなになっているよ。線がいっぱいだね」と声をかけます。投げつけたことを叱らずに、電話の中身に興味を持たせようとしているんです。

周りの子どもたちも、興味津々です。責めることなく、視点を変えて、気持ちを別のところに向けさせました。


 
その後、男の子は壊れた電話を元に戻そうとしていました。一度興味を変えたことで、自分のやったことに向き合っているんですね。


背景にある子どもの気持ちに共感することが大事

コメント:汐見稔幸さん

子どもは、よく大人にとって都合の悪いことをします。そこで「ダメ」と言うのではく、どうすれば子どもたちが自分自身で考えてくれるのかを想像して、仕掛けてあげる。柴田さんはそのように応援しながら、子どもたちに合わせて対応を修正していますね。
ピアノが傷ついたらどうしよう、というシーンがありました。そこで、頭ごなしに叱るのではなく、「子どもはこういうことをやりたがるよね」とわかった上で対応していました。大人の論理だと「そんなやり方はダメよ」となりますが、やりたがっている中身については共感しているわけです。「認めるよ。場合によっては応援するよ」という姿勢は、家庭でもできるのではないでしょうか。
子どもがやりたがっている、その背景にある気持ちに共感すること。共感した上で、難しいときには「こんなやり方もあるね」といった代替案を示してあげる。私は、それも親の仕事ではないかと思います。

子どもが小さいころは、しつけが押しつけになりがち

コメント:柴田愛子さん

感性と本能で生きているような子どもたちに、しつけばかりでは難しいと思います。私たち大人には分かりにくくても、彼らの思いがあります。それを大人の都合で制限すると、大人にとっては居心地がよくても、面白いと思ったことに挑戦する子にはなりません。モヤモヤを吐き出すこともできず、内にため込んでしまうかもしれません。
小さい子どもにとって、しつけは押しつけでしかありません。その上で身につけてほしいことであれば、しつけてもよいのではないでしょうか。例えば、安全や人を傷つけるようなことです。そのほかのことも、子どもが成長して、自分の気持ちをきちんと認識できるようになったときに身につきます。人が怒ったり泣いたり、ものが壊れたりすることと、自分の気持ちが因果関係で結びつくようになり、自分でコントロールできるようになっていくのです。
だから、今できないことを、急いでできるようにさせることは、あまり必要ではないと思います。

やりたいことを可能な限り尊重することが大事

コメント:柴田愛子さん

子どもの「やりたい」という気持ちを尊重すると、うれしいことや悲しいこと、思いがけないことなど、いろいろと付随してきます。このとき、頭も一緒に動き始めるんです。ああしてみよう、こうしてみようと、いろんなことを考えて実行する。子どもの「やりたい」が、総合的な学びにつながると思うのです。
やりたいことはとことんやって、達成感を得る。すると、次につながっていく。この繰り返しが大きくなっていくことが大切だと思います。子どもたちの成長を焦らずに見守りたいですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです