パパの子育ての悩み

すくすく子育て
2020年10月10日 放送

どうしてパパがだっこすると嫌がるの? ママと子育ての方針が合わなくて困った⋯。理想のパパってどんなもの? そんなパパたちの悩みについて、専門家と一緒に考えます。

専門家:
大豆生田啓友(玉川大学 教授/乳幼児教育学)
多賀太(関西大学 教授/教育社会学)
福丸由佳(白梅大学 教授/家族心理学)

子どもに嫌がられてしまう。どうしたらいい?

絵本を読んでいる娘に近づいたとき、ママじゃないと思ったのか泣き出してしまいました。絵本を読んであげようとしても「イヤ!」と言われます。
(1歳1か月 女の子のパパ)

ソファでくつろいでいると、息子がなぜか気に入らない様子で「座っちゃダメ」と言ってきます。
(2歳4か月 男の子のパパ)

娘を着替えさせようとしたら、「パパはイヤ! ママがいい!」と泣き叫び、断固拒否されます。
(2歳3か月 女の子のパパ)

現在、週3日の在宅勤務で娘の世話をしていますが、なかなかなついてくれません。娘はかわいくてしかたがないし、小さいうちにできるだけ遊んで、なかよくしておきたいのですが、だっこしようとしても泣いて嫌がられます。ママのほうに行ってしまい、精神的なダメージも大きいです。
(1歳1か月 女の子のパパ)

楽な気持ちで地道に子どもと向き合う姿勢が大事

回答:多賀太さん

父親が長時間労働をしていると、どうしても子どもは母親のほうになつくものです。はじめから母親と同じぐらいなついてほしいと思ってハードルを上げてしまうと、苦しくなることもあります。そこで育児を放棄してしまうのではなく、もっと楽な気持ちで地道に子どもと向き合う姿勢が大事になります。

どれだけママが子どもと関わっているか考える

回答:福丸由佳さん

日常生活を考えると、ママのほうが子どもと関わっている時間が長い場合が多いと思います。子どものお世話やケアなど、ママの負担が大きいわけです。「見えない家事」という言葉がありますが、「見えない育児」もたくさんあります。子どもの食べこぼしを拭いたり、熱が出たときは病院や保育の手配をしたり。そのような部分にも関わっていると思います。
決して、パパが育児をしていないわけではありません。でも、ママがどれだけ子どもと過ごして、日常に関わっているかを考えてみましょう。どうしても何かあったら、子どもも「ママ」となってしまうと思います。

大きくなってからパパとの時間が増えることも

回答:福丸由佳さん

子どもにはいろいろな時期があります。「ママがいい」と言うこともあれば、「パパのほうが楽しい」と言うこともあります。例えば、小学生・中学生になって、子どもの好きなこととパパが得意なことがつながって、関わりができることもあります。男女に関係なく、大きくなってからパパとの時間が増える場合もあるのです。一概に「嫌われちゃった。ダメだな」と思わなくても大丈夫です。

自分の得意なところでアプローチしてみる

回答:大豆生田啓友さん

私は子どもが3人いますが、小さなころは同じような状態でしたね。特にぐずっているときは全くだめで、「パパはイヤ」と言われたものです。ほんとうに失敗だらけでした。
まずは、一緒に過ごした時間が大きい。ふだんからつきあっている人のほうが、関係ができるのは当然で、子どもも落ち着いて甘えることができます。関わりが少ないほど難しいと思います。
その上で子どもと仲よくなっていくために、自分の得意なところでアプローチしてみるのはどうでしょう。例えば、たかいたかいなど、体を使った遊びです。もちろん、安全には注意してくださいね。


夫婦で子育ての方針が合わないとき、どうすればいい?

妻と子育ての方針が合いません。例えば、子どもにどれだけおもちゃを与えるか。妻は「小さいころは親が制限したほうがいい」と考えていますが、私は制限するとかえって大人になったときに反動がくると思います。はじめから好きなだけ与えたほうが、ものに執着することもなく、物質的でないことに価値を感じてくれるのではないかと考えているんです。
方針の違いでたびたび妻とぶつかってしまいますが、仕事・家事・育児に追われて、なかなか話し合うことができていません。お互い心の中にため込んでしまっています。妻は「子どものことだからお互い譲れないところがあるし、子どもの考えがわからないうちは、すり合わせが難しい」と感じているようです。
(2歳9か月 男の子のパパ)

方針を決めようとすると息苦しくなる。基本的なことを共有しよう

回答:福丸由佳さん

方針を決めて解決しようとすると、息苦しくなってしまうかもしれません。基本的なことを共有するようにしてはいかがでしょう。「元気で、危なくないように」など、最低限の方針をおさえつつも、子どもが大きくなったら、子どもの意見も聞いて一緒に考えることができると思います。

衝突して悩むことは平等な夫婦関係をつくっている証し

回答:多賀太さん

違う環境で育ってきた2人が共同生活を営む中で、やり方の違いでぶつかるのは当然だと思います。かつては家父長制のように夫が全てを決めていた時期もありました。2人で衝突しながらも家事・育児で悩んでいるのは、以前のような主従のある夫婦関係ではなく、平等で民主的な関係をつくろうとしている証しだと思います。そのように、夫婦で話し合い、妥協点を見つけていく姿勢が重要です。

育児に完璧を求めないこと

回答:多賀太さん

仕事が自分の主な役割だと考えている男性が、育児や介護もやるべきだと思い過ぎると、完璧に育児・介護をしようと必死になってバーンアウトしてしまうことがあります。頑張り過ぎて、心身ともに疲れ、燃え尽きたように意欲を失うわけです。
男性も女性も、仕事と家庭を両立しようとするとき、全てに完璧を求めていたらバーンアウトしてしまいます。大過ない程度に、そこそこやっていく —— ときには、そのような姿勢も必要ではないでしょうか。

夫婦で譲り合いながら家事・育児の流儀を決めていく

回答:多賀太さん

家族心理学でマターナル・ゲートキーピングと呼ばれるものがあります。家事・育児は母親の役割という意識が強い女性が、自分の価値や存在意義を家事・育児に見いだし、そこに加わろうとした父親に門番のように立ちふさがりダメ出ししてしまうことをいいます。
父親が責任をもって主体的に家事・育児に参加していくのであれば、マターナル・ゲートキーピングのような考えがあることも踏まえ、夫婦で話し合いながら、お互いに譲り合って家事・育児のペースや流儀を決めていくことが重要です。夫婦のあり方が多様化している今、どのようなバランスがいいのか、それぞれの家庭で違ってきます。2人で話し合って、落としどころを見つけていきましょう。

子育てを中心的にやっている人への気遣いが大切

回答:大豆生田啓友さん

ママもパパも子育てについての考えを持っています。これからの時代は、夫婦2人とも自分の考えを持ちながら一緒に子育てをしていくのが大事だと思うので、とてもいいことだと感じました。
ここで注意したいことがあります。ご相談のパパは違うと思いますが、パパたちの中には、本やネットで得た子育ての情報をやたらと持ち出してしまうケースがあるのです。ふだん中心的に子育てをしている人にとっては、情報だけ出されてもたまらないですよね。中心的に子育てをしているのがママであるなら、ママへの気遣いを含めて、折り合っていくことが大切です。

場合によっては「ま、いっか」が大事

回答:大豆生田啓友さん

2人の考えは違いますが、どちらも正解なんです。だからこそ、2人で折り合わせていくしかありません。「僕が正しい」「私が正しい」ではないところを、どう見いだしていけるのか。場合によってはどちらかが「ま、いっか」と思えることが、とても大事になると思います。
子どもの様子をしっかりと見ている人の意見は優先したほうがいいでしょう。パパが外で働くことが多かったとしても、ママの意見や考えに耳を貸すこと自体が大切なことで、その上での自分の意見だと思います。


理想のパパとは?

父親としての適切な接し方があるのであれば、知りたいと思っています。私より、もっといい関わり方をしているパパもいると思うので、どのようにしているか気になります。
(1歳1か月 女の子のパパ)

昔は「父親は仕事で母親は家庭」のように、役割がある程度固定されていたと思いますが、今は、母親も仕事をしますし、父親も家事をするようになってきています。家族の形が変化する中で、今の「父親らしさ」はどのようなものなのか、疑問に思っています。
(2歳9か月 男の子のパパ)

パパ友づくりが鍵になる

回答:多賀太さん

現在、父親の家事・育児が進んできましたが、仕事や家計の負担は必ずしも減っていない状況です。そのため、どのように家事・育児と仕事を両立すればよいのか、理想のモデルを見つけるのが難しくなっています。また、家族のあり方が多様化しているので、同じような境遇の父親が身近にいないという問題もあります。
ただ、今はSNSなども発達しています。そういったツールで父親のコミュニティに参加するのもひとつの方法です。仕事や肩書を抜きに、同じ父親同士として、日頃の悩みやモヤモヤを共有できる場があれば、いろいろなタイプの父親と交流できます。自分と似た方と出会ったり、参考になるモデルが見つかったり。そうでなくとも、同じ立場で悩みを言葉にして語り合ううちに、自分なりの落としどころが見つけられることもあります。パパ友づくりが鍵になるかもしれません。

父親らしさより、自分らしさ

回答:大豆生田啓友さん

理想のパパを考えるとき、「父親はどうあるべきか」よりも、「自分らしさ」が大事になるのではないでしょうか。身近なパパ友のようなモデルをまねてみながら、自分らしい子育てを考えるのが、ひとつのポイントかと思います。

子どもとの関わりから親子関係が作られていく

回答:福丸由佳さん

生身の子どもとどう関わるのか、その関わりから親子関係が作られていきます。概念や理屈ではなく、その過程で「これが理想かもしれない」と思うこともあります。目の前の子どもとの時間の中に、たくさんのヒントがあるんです。そして、大事なのは子どもと笑える時間。この子がいてくれてよかった、この子の存在がいとおしいと思えたら、それがいちばんだと思います。

子育ては作っていくもの

回答:大豆生田啓友さん

「理想のパパ」を考えるより、実際に子どもにつきあって「おもしろい」と感じられることのほうが大切だと思います。
私は、ふだん大学生と関わることが多いのですが、大学生の女性たちにとって子育てや家事ができる男性は魅力的だといいます。逆に、男性もそのことに対する意識が明らかに変わってきた。仕事が100%ではなく、仕事と家事と子育てのバランスをはじめから考えるような世代に変わりつつあるのです。
理想を考えても、理想通りにいくものではありません。夫婦で、自分たちにとっての大事なことを出し合いながら、家庭や子育てを作っていくことが大事だと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです