メディアと子育て いいつきあい方とは?

すくすく子育て
2020年9月19日 放送

スマートフォンやタブレット、動画サイトやオンライン通話。新しいメディアの登場で、子育ての環境が大きく変わってきています。でも、どれぐらい見せていいのか、影響はないのか、心配になりますよね。今回は、メディアとのつきあい方を専門家と一緒に考えます。

専門家:
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)

今回のテーマについて

遠藤利彦さん

ふだん、お父さんやお母さんが使っているものに、子どもが関心を向けるのは当たり前のことですよね。ひとつの道具ですので、子どもの発達にとってプラスになるような使い方を考えていきましょう。


テレビやスマホ、何歳からどれくらい見せていいの?

子どもが8か月のころから後追いが激しくなり、なかなか家事が進まなくなりました。そこで、夕食の支度の間だけ、テレビで子ども番組を見せています。子どもの髪を切るときなど、じっとしてほしいときには、スマホで動画を見せることもあります。最近は、遠くに住んでいるおばあちゃんとオンライン通話をするようにもなりました。
できるだけテレビやスマホを見せたくないのですが、やむをえず使っています。子どもによくない影響はないか、何歳ぐらいならいいのか、どの程度の時間ならいいのか、気になります。
(1歳1か月 女の子のママ・パパ)

何歳・何時間などを決めるのは難しい

回答:遠藤利彦さん

現在、いろいろな指針や基準が発表されていますが、子どもの発達には個人差があり、子どもの好みもそれぞれなので、一概に、何歳なら何時間まで、1日に何回までといったことを決めるのは難しいと思います。

赤ちゃんのころ、あまりにも泣きやまないときに、ネットで話題の泣きやませ動画を見せると本当に泣きやみました。それから動画に頼るようになって、1歳9か月を過ぎると自分から動画をねだるようになりました。
ほっておくと2時間以上も見続けるので、「もう終わりね」と言ってやめさせます。でも、泣きわめいてしまい、近隣への迷惑が心配になり、結局見せてしまうこともあります。最近は、夜動画を見ながら、そのまま寝てしまうこともあります。成長に悪い影響が出るのではないかと心配です。
(1歳11か月 男の子のママ・パパ)

夜にスマホを見ると眠れなくなる

回答:遠藤利彦さん

スマホを見ると、画面からブルーライトを浴びることになります。ブルーライトは青空の中の光と同じようなもので、夜に浴びると脳が昼間だと勘違いして、睡眠を促進するメラトニンというホルモンが抑制されてしまいます。見れば見るほど眠れなくなってしまい、眠れないともっとスマホで面白いものを見たがり、悪循環に陥ってしまいます。

生活リズムを整えて夜早く寝るように

回答:遠藤利彦さん

短期的にはスマホの動画で静かにしてくれるメリットはありますが、長期的に見れば、寝る前に動画を見るのは、子どもの眠りを妨げ、成長によくない影響を与えてしまいます。どんなに眠そうでも朝早く決まった時間に起こす、ねだられても夜は絶対に動画を見せない日を決めるなど、少しずつ、生活のリズムを整え、早く寝るようにしていくほうが、結果的に近所迷惑にもならず、子どもにもいいのではないでしょうか。

体を動かせば疲れて早く寝るのではないかと思って、外で遊ばせようとしています。でも、あまり体を使った遊びが好きではありません。

見たり聞いたりすることでも、脳の活動で自然と疲れを感じる

回答:遠藤利彦さん

体を使った遊びといえば、走り回ったり、とんだりはねたりをイメージしがちです。実際は、子どもは動いていないようで意外と動いています。また、いろいろなものを見たり聞いたりすることで脳が働いています。そういった活動だけでも、子どもは自然と疲れを感じると考えてください。


長編アニメを毎日見ている。長く繰り返し見せて大丈夫?

長男は1歳7か月のころから、ママやパパが好きな長編アニメを一緒に見るようになりました。ストーリーや豊かな表現で、子どもの心を育むような内容であればいいのかなと考えています。今では、90分以上ある好きなアニメを毎日繰り返し見ています。見せている間に、次男の世話や家事ができるので助かっています。
一方で、アニメに子育てを任せているようで、罪悪感を抱くこともあります。愛情形成などに影響があるのか心配もあり、できるだけ一緒に見て、声をかけるようにしています。こんなに長く繰り返し見せて、大丈夫なのでしょうか。
(1歳11か月・5か月 男の子のママ)

ストーリーに夢中になるような体験は大切

回答:遠藤利彦さん

まずは、視力への影響を考えなくてはいけません。その上で、お子さんが集中して長編アニメを見ることができるのは、そのストーリーに夢中になって、何回も見直したいという気持ちがあるのではないかと思います。
みなさんも、幼いころ、同じ絵本をボロボロにすり切れるまで何回も読んでいたという方が少なくないと思います。ストーリーの中に自分を登場させてみたり、絵本の中のキャラクターと遊んでいる気持ちになったり、どんどん想像が膨らんでいく。子どもが、そのような体験をしていると考えると、決してマイナス面だけではないと思います。

親子共通の話題としてコミュニケーションの機会に

回答:遠藤利彦さん

アニメを一緒に見ながら子どもに声かけをするのは、よいことだと思います。アニメーションや物語を共通の話題にして、親子でコミュニケーションをとる機会になれば、子どものコミュニケーションの発達にとってプラスに働くこともあると思います。


メディアと子どもの目への影響

テレビや動画など、さまざまなメディアの影響を考えるとき、やはり気になるのが子どもの目への影響です。小児眼科医の富田香さんに話をうかがいました。

解説:富田香さん(小児眼科医)

見たいところに視線を動かす、見たいものにピントを合わせる。そういった眼球運動の力は、赤ちゃんが動き始めて歩き始めるころに、急速に発達します。眼球運動を発達させるのは、次のような4つの運動です。

走る・飛ぶなど、「自分から動く運動」。懸垂する・壁を押すなど、「力を入れる運動」。一本橋を渡るような、「平衡感覚を使う運動」。ボールを投げる・なわ跳びをするなど、「道具を使う運動」。これらの運動を、乳幼児期にバランスよく経験することが大事なのです。

家の中でも、絵本を読む、積み木を積むなど、指や体を使う遊びを通じて眼球運動が養われます。

スマホなどの画面を見るときは、画面の距離にピントが固定され、画面の大きさの範囲でしか眼球運動が起きません。特に、2歳くらいまでの乳児期は、スマホなどの画面を見せ続けることをできるだけ避けたほうがいいと思います。

例えば、周りに迷惑をかけたくないという理由で、やむをえずスマホを見せている方も多いと思います。ですが、子どもは泣いて騒いで当たり前で、それを許容しない社会に問題があると感じます。許容しない人が多いために、スマホに頼ってしまう。そのような悪循環が起きています。
親がスマホを見せてしまう気持ちもよくわかりますが、目への影響など、どのように見せるのかが大事なことだと知っておいていただければと思います。

子どもの目に与える影響についても知識をもって、長時間ひとりで見せていないか、メディアとのつきあい方、見直してみてくださいね。


おすすめのアプリや動画はある?

子どもの成長や発達を促す、おすすめのアプリや動画はありますか?

大人と子どものコミュニケーションを促すもの

回答:遠藤利彦さん

ひとつは、大人と子どものコミュニケーションを促す道具として使えるものがよいでしょう。例えば、一緒に見たり聞いたりしながら、「ここは○○だね」「これは面白いね」といった会話ができるようなものです。

現実の世界との橋渡しを助けてくれるもの

回答:遠藤利彦さん

もうひとつは、現実の世界との橋渡しを助けてくれるようなものです。例えば、動物がテーマのアプリを見ると、「今度は動物園に行ってキリンさんを見たい」と思えるような、現実の世界に対する興味につながるものです。使うことで、あそこに行きたい、これを見たい、自分もやってみたいといった、好奇心がかきたてられるものを考えてみましょう。


何歳から子ども自身のメディアツールを持たせたらいい?

子どもが1歳のころからタブレットでアプリを使わせています。動画やアニメなどは、1日1時間以内、寝る前に見ない、できるだけ親子一緒に見るなど、ルールを決めています。最近は、何歳からスマホを持たせるべきか、どうつきあっていけばいいのかについて考えています。
IT製品ありきの生活が当たり前になり、何が正解なのかもわからないからこそ、どう向き合えばいいのか。子ども自身のメディアツールは、どんな基準で使わせたらいいのでしょうか。
(1歳10か月 女の子のママ)

子ども自身が自発的にやりたいと伝えてきたときがスタート

回答:遠藤利彦さん

子どもによって個人差があるので、一概に何歳からがよいとは言えません。子ども自身が、強い関心を持って、自発的にやりたいという気持ちを伝えてくる。その段階がスタートだと思います。お父さんやお母さんが使っていることに関心を持ってきたら、一緒にやってみようかと声をかける。そのような誘い方でもいいのかもしれません。

将来を考えると、早いうちから始めて使えるようになるのがよいのでしょうか?

乳幼児期を児童期以降の準備期間にしないで

回答:遠藤利彦さん

乳幼児期を、子どもの将来のための時間、児童期以降のための準備に使うのは、とてももったいないことです。乳幼児期にしかできないことがあります。自分で動いて、五感を総動員して、いろんな遊びをする。結果的に、そういったことをしっかり経験できたほうが、大人になったとき、何かの問題に遭遇したときに柔軟に対応できたり、想像力を働かせて乗り切ったりできるようになる。そういった研究結果もあります。

デジタルメディアの発達、気候変動、新型コロナなどの未知の病気 —— ますます予測不可能になる世界をたくましく生き抜くためには、2つの力が必要だと言われています。

ひとつは「行為主体性」。自分で考えて、自分で判断し、自分で前に進み、自分の行動に責任を持つ力のことです。

もうひとつは「共同主体性」。他の人の違いを認め、話し合い、協力して物事を進められる力のことです。

この2つの力は、乳幼児期の五感を使った自発的な遊びの中で培われるのです。いうなれば、何かのためではない、目的のない遊びの中で、生き抜く力の基礎が身につくのです。

親自身がメディアの使い方を見直すことが重要

回答:遠藤利彦さん

ある調査によれば、0〜5歳までの子どもを持つ親は、子どもとデジタルメディア・インターネットとの関わり方について学ぶ機会がほとんどないという結果が出ています。


※平成30年度 内閣府 青少年のインターネット利用環境実態調査より

つまり、親自身もメディアとのつきあい方についてよく分かっていないのです。親自身が分からないことは、子どもにも伝えられません。親自身が、自分自身のスマホやメディアの使い方を反省することが重要です。例えば、だらだらと使っていないか、必要のないときでもつい触っていないか。そういったことを見直すこと自体が、子どもへの情報教育につながると思います。


デジタルメディアを子育てに生かす取り組み

デジタルメディアのよい部分を積極的に子育てに生かそうという取り組みも始まっています。

例えば、一部の保育園で使われている「デジタル連絡帳」。連絡帳の役割をアプリなどで行います。ママやパパだけでなく、おばあちゃん・おじいちゃんも登録が可能で、効率的に、必要な情報を素早く共有できます。


遠藤利彦さんが率いる研究センターでは、2018年から、デジタルメディアを活用した保育・幼児教育について研究を続けています。

こちらの幼稚園の5歳児クラスでは、七夕行事の活動にデジタルメディアを取り入れました。

乳幼児の耳や目にも優しいプロジェクターを使い、実際の天の川の映像をクラス全体で鑑賞しました。
都会に住む子どもたちは、初めて見る大きな天の川や、次々にあらわれる流れ星に歓声を上げます。大きな画面で、一緒に本物の星空を見たことで、子どもたち同士の会話がはずみ、七夕や星についてのイメージが膨らんでいきました。

翌日、プロジェクターで見た星空のイメージを、クレヨンや絵の具を使った創作活動で表現します。話し合いでさらに想像を膨らませながら、思い思いの個性的な星が描かれました。

1週間後、再びプロジェクターを使った鑑賞会です。子どもたちの描いた星が次々と映し出され、すべての作品が集まり、まるで天の川のようにスクリーンの上を流れていきます。みんなの手描きの作品が、音・光・動きを伴うデジタルの技術によって、一体感を増し、大きなスケールの作品になったのです。
見ていた子どもたちには、いろんな表現方法を一緒に楽しむという姿勢が自然に生まれました。


一方、こちらは同じ5歳児クラスの帰りの集まりの時間です。

“先週のことなんだけれども、面白いことがあったんです” —— そう言って先生が紹介したのは、「瞬間移動のマジック」を練習する男の子の動画。ふだんは、あまりみんなの前で話をしない男の子が何度もチャレンジする様子に、クラスの子どもたちは、「すごい!」「おもしろい!」と声を上げます。仲間の意外な姿に子どもたちは驚き、これをきっかけにして男の子とクラスメイトとの関わりが以前よりも深まったそうです。

適切な大人の関わりがあれば、デジタルメディアは、子どもたちの想像力を広げ、遊びをより豊かにし、仲間との関わりを促す可能性もあるんですね。
子どもに一番必要なのは、リアルな体験をたくさん積むこと。使うことで遊びや会話を増やしてくれるような、上手なメディアとのつきあい方を考えていきましょう。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです