運動不足と子どもの体

すくすく子育て
2020年8月29日 放送

外出自粛や梅雨どきの長雨などで、子どもの運動不足が気になっていませんか? 体重が急に増えてしまった⋯ 運動不足のせいなのか元気がない⋯。気になる子どもの運動不足について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
草川功(聖路加国際病院 小児科 医長/小児科医)
野井真吾(日本体育大学 教授/教育生理学)

子どもの運動量が減った。体力への影響は?

3歳の息子は、保育園が登園自粛になってから、運動量が減りました。友だちと一緒に遊んだり、力いっぱい動き回ることがなくなりました。人が少ない時間帯で散歩をしたり、家の中でも体を動かすような工夫をしていますが、以前と比べると動いていないと思います。今では、近くの公園まで歩くことも嫌がるようになり、運動不足で体力が落ちたのではないかと心配です。
(3歳3か月・1歳3か月 男の子のママ)

外で運動できない影響は、年齢によって違う

回答:草川功さん

外で運動できないときの影響は、子どもの年齢によって違いがあります。1歳ぐらいまでは、ハイハイ、つかまり立ち、伝え歩きなどができる程度なので、基本的に家の中で十分な運動ができます。2歳ぐらいまでは、歩き始めてもまだよちよち歩きなので、家の中でも外でも、大きな違いはありません。

でも、3〜4歳になると、走ったり、跳んだりできるようになり、家の中だけの運動では運動量を確保することが難しくなります。このくらいの年齢になってきたら、気をつけたほうがよいかもしれません。公園でしっかりと運動しなくても、散歩だけでもよいと思います。少しでも、外に出る機会を作ることが大事です。

家の中で、親ができることはありますか?

生活のリズムを整えることが基本

回答:草川功さん

子どもは、毎日、成長・発達を続けています。成長・発達をしっかりと促進してあげるために、まずは生活のリズムを整えることが大切です。いつもと違う生活をしていると、どうしても楽ができるほうに寄っていってしまいます。食べる・寝る・排せつする、を基本に整えていきましょう。
生活のリズムを整えて、成長・発達という土台をしっかり持つことで、体力もついてくると思います。

生活のリズムを整えるには、どうしたらいい?

「セロトニン」を意識する

回答:野井真吾さん

生活のリズムを整えるために、「セロトニン」を意識してみましょう。セロトニンは、脳内で働く神経伝達物質で、“元気のもと”だと考えてください。よく知られている働きは、イライラや緊張を和らげる精神安定作用です。おなかや背中、足腰の筋肉などに働きかけ、正しい姿勢を保つことにもつながっています。

セロトニンのもうひとつの働きが、夜の寝つきに関係しています。昼間、元気のもととして働くセロトニンは、夜になり暗闇を感じると、眠りのもととなるメラトニンという物質に変化します。日中に多くのセロトニンが分泌されると、夜の寝つきがよくなり、早寝・早起きにつながるのです。

太陽の光を浴びる・運動する

回答:野井真吾さん

このセロトニンの分泌を促すためのポイントが、「太陽の光を浴びる」と「運動」です。外で遊ぶことは、セロトニンの分泌につながるんです。これらを意識すると、生活のリズムが整ってくると思います。
いつも外遊びに行くのは大変ですが、家の中でもできることはあります。例えば、できるだけ太陽を浴びることができる室内の場所、例えば窓側で過ごすだけでもかなり違うと思います。


運動不足で急な体重増加!? どうしたらいい?

5歳の息子が、この4か月で、約4キロも体重が増えました。幼稚園が休園、児童館も休館になり、友だちと遊ぶことがなくなって、運動の機会が減りました。でも、食欲は以前と変わらず、同じ量を食べています。発育曲線で見ても、今ではやや太り気味です。大人であればダイエットなども考えるところですが、子どもの急な体重増加は、どうしたらいいでしょうか?
(5歳 男の子のママ)

おやつの回数・量を見直す

回答:草川功さん

おうちでの生活が長くなって、おやつの回数がいつもより増えたり、子どもがぐずったときに食べさせたりして、少し食生活が乱れているかもしれません。ダイエットのような食事制限ではなく、まずは、おやつの量・回数を見直すなど、食生活の改善を考えてみましょう。

体重を戻すために、運動することも考えたほうがよいのでしょうか?

急に運動量を増やすと、ケガにつながることも

回答:草川功さん

運動が少ない生活に慣れた人や急に体重が増えた人が、急に運動量を増やすと、ケガにつながることがあるので危険です。少しずつ体を動かすほうがよいでしょう。散歩をしたり、階段を上り下りしたり、いわゆる運動でなくてもよいのです。友だちと走り回って遊ばなくても、運動する方法はあると思います。

体重が増えたせいか、あまり体を動かしたがりません。歩いて出かけることも嫌がります。どうすればよいでしょう?

いろんな遊びを親子で試す

回答:野井真吾さん

おうちの中で、子どもが楽しんで体を動かす遊びを試してみましょう。いくつかの遊びを紹介します。

まずは、体を使ったじゃんけんです。「グー」は「両手で頭を抱え込んでしゃがむ」、「パー」は「両腕を上げて大きく広げる」、「チョキ」は「両腕を斜めに伸ばす」。体を大きく動かしてみましょう。

続いて、ティッシュキャッチです。上からティッシュを落としてキャッチするだけ。敏しょう性が高まります。

次は、片足フラミンゴ。両手を横に広げて、片足立ちします。どれぐらい続けられるか試してみましょう。長い時間倒れずに頑張ったら、ほめてあげてくださいね。

今度は、新聞紙を使った遊び「せまくなる新聞紙」です。新聞紙を半分に折って、その上に立ちます。半分ずつ小さくなるので、どんどん難しくなっていきますよ。姿勢を保つバランス感覚が育ちます。

次は、少しハードルが上がって「新聞走り」です。新聞紙を体の前に当てて、そのまま走ります。新聞紙が落ちないように走ってみましょう。

最後に、新聞紙を使った「紙鉄砲」。「パン!」と音が鳴って楽しいですよ。

いくつか遊びを紹介しましたが、子どもによって、自分からやりたがる、好きな遊びは違います。目が輝く瞬間が違うんです。大人も楽しみながら、いろんな遊びを一緒に試してみることが大切です。
子どもがワクワク・ドキドキできるような生活の積み重ねが、結果として心の身体的基盤である脳の育ちにつながります。子どもがワクワク・ドキドキできるツボを探してみましょう。


思うように体を動かして遊べない⋯ 子どもの心への影響は?

息子は、公園の遊具などで思いっきり遊ぶことが大好きでした。でも、外出自粛で、思うように体を動かすことができなくなりました。そのためか、家の中で跳んだり、走り回ったりするので、「静かに!走らない!」と怒ってしまうことが増えたんです。ちょうど里帰り出産だったこともあり、マンションだったので近隣への迷惑も気になりました。
そのうちに、順調だったトイレトレーニングで失敗が増え、他のことにも意欲をなくしているように感じてきました。片づけなくなったり、反抗することが増えたり、外で体を動かせないことがストレスになっているかもしれません。運動不足が、子どもの心に影響するのでしょうか?
(3歳1か月 男の子のママ)

ちょっと外を歩くなど、できることから

回答:草川功さん

里帰り出産で、ふだんと違う生活をしたり、急にお兄ちゃんになったり、いろいろなことが重なってしまったことが関係しているように思えます。状況がどんどん変わっていくことに影響されるのは、しかたがないかもしれませんね。外出自粛や、赤ちゃんのことを考えると、なかなか外出もできなかったと思います。
とはいえ、環境が変わらなければ、なかなか刺激を得ることもできません。どこかに遊びに行かないといけない、と思わなくても、できることの中で考えてみましょう。少し外に出て歩いてみるだけでも、少しずつ、ひとつひとつを積み重ねることで、変わっていくと思います。

まわりが明るくすることも大事

回答:草川功さん

トイレトレーニングが思うようにできなくなったことも、この時期はある程度しかたがないことだ、と受け止めてあげてください。お母さん自身も自分を責めずに、「まぁいっか」と思って、明るくとらえることが大事かもしれません。子どもは、まわりの影響を受けるものです。まわりが明るくなることで、お子さんも明るくなると思います。気持ちを切り替えてからまた、トイレトレーニングに挑戦してみてはいかがでしょうか。

子どもがワクワクできる工夫を

回答:野井真吾さん

生活の中で、無理なく子どもの意欲を引き出す工夫をしてみてはどうでしょう。例えば、食事を立食パーティ風にしてみる。夏は、なかなかプールに行けないかもしれないので、水中メガネをつけて少し温かいお風呂に入り、プール気分を味わう。寝るときは、懐中電灯を持って寝室に入り、キャンプごっこ。日常に少し変化をつける工夫で、子どもたちは家の中でも非日常を味わって、ワクワク・ドキドキできるはずです。それが、体を動かす意欲にもつながっていくと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです