子育て家族のメンタルケア

すくすく子育て
2020年6月27日 放送

新型コロナウイルスの影響で長く続いた外出自粛の期間は、さまざまな形で子育て家族に大きな影響を与えました。また、ウイルスへの警戒が続く中、どのように過ごしたらいいのでしょう? こんなときにどう心の状態を保つべきか、専門家と一緒に考えます。

専門家:
吉田穂波(神奈川県立保健福祉大学 教授/産婦人科医)
市川香織(東京情報大学 准教授/助産師)
立花良之(国立成育医療研究センター こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科 診療部長/精神科医)

子どもの行動が変わってきた⋯⋯ どう対応すればいい?

1歳の子どもをみながら在宅勤務を続けていますが、子どもの行動に気になる変化がでてきました。特に心配なのは、母乳を頻繁に欲しがるようになったことです。授乳は1日1回ぐらいに減ってきていたのですが、5〜6回以上ねだるようになりました。どう対応したらいいのでしょう?
(1歳2か月 男の子のママ)

母乳を飲むことでストレスが癒やされる

回答:市川香織さん

母乳は子どもにとって、栄養だけではなく、安心できる安全基地の意味もあります。子どもはおっぱいに触れたり飲んだりすることで、ストレスを癒やしている可能性があるんです。外出が思うようにできない、あるいは世の中に緊張感がある時期には、こういった安全基地が必要です。母乳についても「3歩進んで、2歩下がってしまったけど、やり直せばいいか」のように、少し気楽に考えてみてください。
いずれ、おっぱいからは必ず離れていきます。今は、「子どもが満足するのであればこたえよう」と思えたほうが、ママの気持ちも楽になると思います。

飼っている鳥のエサを食べようとするなど、わざと危ないことをするようにもなりました。危ないことや、困った行動はどう対応すればいいでしょう?

オープンエンドの問いかけを

回答:吉田穂波さん

「そんなことをしたらダメでしょ」と叱るより、「おいしそう? それ食べたかったの?」のように、相手がクスっと笑えるような声かけをしてはどうでしょう。このような、答えを「はい」「いいえ」で制限せずに、思ったことを自由に答えてもらう質問のことを「オープンエンドの問いかけ」と言います。なぜそれをしたのか、どんな気持ちになったか、子どもの心に寄り添いながら聞き出す方法です。何かを伝えたがっているのだと考えて、気持ちを引き出してあげることが大事ではないかと思います。


子どものストレスを解消してあげるには?

感染対策のため、子どもたちを外出させず、お家の中や家の庭などで遊ばせています。でも、子どもが「コロナで公園に行けないのはヤダ! 砂場で遊びたい!」と泣き叫んでしまうこともあります。子どものストレスをどう解消してあげたらいいのでしょう?
(3歳6か月・1歳3か月 男の子のママ)

子どもが公園に行きたい理由を要素に分けて考える

回答:吉田穂波さん

子どもが公園に行きたい理由は、体を動かすことだけではないでしょう。公園で遊んでいる様子をみると、体を動かしたり、走り回ったり、友達に会ったり、発散したり、いろいろな要素に分けられると思います。そのひとつひとつの要素を、別のことに代えることができないか、子どものアイデアを聞きながら、一緒に考えてみましょう。
例えば、「楽しく体を動かしたい」の代わりに「子どもがダンスを考えて毎日発表する」、「友達に会いたい」は「オンラインで友達とおしゃべりする」 などです。
そして、毎回「いつまでも続くわけじゃない。必ず終わりが来るよ」と繰り返し伝えてあげると、少し安心するのではないかと思います。

ボディタッチなど、安心感が持てる関わりを

回答:立花良之さん

ストレスによって、子どもがイライラしたり、少し攻撃的になるのは正常な反応です。この状況が過ぎ去れば、自然と元に戻っていくと思います。
子どもがイライラしているときは、「(外に行けないから)ヤダヤダになっちゃうよね」と声をかけて、背中をトントンしたり、さすったりしながらなだめてあげましょう。このとき、ボディタッチなどのスキンシップで、安心感が持てるような関わり方をするのが有効です。


他の子どもと遊ぶ機会が減って、社会性の発達が遅れてしまう?

緊急事態宣言から、パパはずっと家で仕事、ママは週2回のリモートワークです。ママが出勤するときは子どもを保育園に預けますが、それ以外は家族3人、家で過ごしています。子どもが友だちや他の人たちと接する機会が極端に減って、ひとりで遊ぶ時間が長くなっています。このままでは、子どもの社会性の発達が遅れてしまうのではないかと心配です。
(4歳 女の子のパパ・ママ)

信頼し安心できる相手との関わりがあれば心配ない

回答:立花良之さん

子どもにとって、誰よりも大切なお父さん・お母さんと過ごす時間が増えることは、とてもよいことかもしれません。子どもは、親を最も信頼しています。そうした安心できる相手と、楽しく、たくさん関われるのであれば、お友達と遊ぶ時間が減っても、それほど心配する必要はありません。
社会性は、人と人との相互作用で伸びていきます。親子で一緒に過ごして、子どもの訴えや呼びかけなどに、親が敏感に反応してあげれば、子どもの社会性の発達にもよいのではないかと思います。


「コロナで死んじゃうの?」と不安がる。子どもの気持ちをどう受け止めたらいい?

先日、娘が大好きだったタレントさんが、新型コロナウイルスに感染して亡くなりました。それ以来、「コロナで死んじゃうの?」と何度も聞いてきたり、不安そうな様子を見せたり、べったり甘えてくることが多くなりました。子どものそんな気持ちを、どう受け止めたらよいでしょう。
(3歳6か月 女の子のママ)

安心感を持たせる説明を

回答:立花良之さん

子どもが不安や怖い気持ちを感じているときは、安心感につながるような説明をしてください。例えば「全員が亡くなるわけではない」「治療で治ることも多い」といったことを伝えてみましょう。
一方で、「手を洗わないと病気になっちゃうよ」「〇〇しないと大変だよ」など、子どもの不安をあおるような説明のしかたは避けてください。

子どもの場合、不安が体の症状となってあらわれることもあります。腹痛や頭痛、アレルギーの悪化などです。もし、今までと違う様子が見られたら、早めに対応して安心させてあげてください。


専門家に頼れない。産後直後、誰に助けを求めたらいい?

新型コロナウイルスの影響で、自治体の新生児訪問が中止になってしまいました。出産の直後だったので、気になることを専門家に見ていただけたり、相談できたり、とても助かると思っていただけに残念です。このまま自分なりの方法で大丈夫なのか心配になり、ネットで調べても人によって書いていることが違い、ますます混乱します。
外出もできず、誰にも会えず、最近は無気力になったと感じます。夫は家事や育児に協力的ですが、かえって自分が母親失格な気がしてつらくなります。誰に助けを求めたらいいのでしょうか?
(3か月 女の子のママ)

電話だけでも話をしてみて

回答:市川香織さん

新型コロナの影響で、新生児訪問だけではなく、いろいろな母子保健の事業が中止や延期、縮小になっています。ご相談のママのように、たくさんの方が予定していたサービスを受けることができなくなったようです。
でも、全てのサービスが停止しているわけではありません。保健センターの保健師たちは、積極的に動いています。ですので、電話だけでも話してみてはいかがでしょう。話をするだけで安心できたり、少し元気になることもあると思います。遠慮せずに保健センターを利用してみてください。

新生児訪問や集団健診が中止となった自治体でも、電話相談などの産後ケアは行われているところが多いそうです。個別の助産師訪問を、感染予防に努めながら継続して行っていた自治体もあります。困ったら、まずは「保健センター」や「子育て世代包括支援センター」へ電話をしてみてください。どこに聞いたらいいかわからない、というときは、母子手帳を交付してくれたところに問い合わせてみるといいと思います。
もし、ママが自分で電話するのがしんどい、というときは、パパや周りの人に、代わりに連絡してもらいましょう。

ネットで情報を集めようといろいろな記事などをみると、さらに不安になってしまいます。この気持ちを、どう解消すればよいでしょう?

気持ちが沈んでいるときはスマホを見がち。意識的に時間を減らして

回答:立花良之さん

気持ちが沈んで元気がないとき、人間の脳の機能は低下しています。そして、スマートフォンなどを見ているときは、脳の活動が非常に低いことがわかっています。そのため、落ち込んでいるときには、脳にとって楽な「スマホを見続ける」ことが起こりやすいのです。
また、気持ちが沈んでいるときは、何時間もネット検索を続けるなど、1つのことをしつこく繰り返す行動が起きやすくなります。その中で、不安をあおるような情報を見てしまうと、さらに気持ちが暗く落ち込み、余計に不安にかられてネットにのめり込むという悪循環に陥ってしまいます。
気持ちが沈んでいると感じたときはスマホやネットの時間を意識的に減らし、家族とのコミュニケーションや触れ合いの時間を増やしてみましょう。


自粛しない人にイライラしてしまう⋯⋯ どうしたらいい?

新型コロナウイルスの大変な状況を改善するには、ひとりひとりの意識が大事だと思います。私も、自分なりに一生懸命、自粛生活を送ってきました。楽しみにしていた子どもの入園式も中止になりました。
そんなとき、公園で遊んでいる家族を見ると、どうして自粛しないのと感じてイライラしてしまいます。私は頑張っているのに楽しみまで奪われる、自分が悪いのだろうかとモヤモヤしてしまいます。
(3歳6か月・1歳3か月 男の子のママ)

誰からもケアされないと自分を見失ってしまう

回答:市川香織さん

世界中で、多くの人が今までの日常とは全く違う状況に追い込まれています。小さな子どもを持つ人ならば、「この子を守るために、私が頑張らないといけない」と、ふだんよりも一層強く思って疲れてしまうはずです。気持ちが張りつめて、我慢して、誰からもケアされないまま過ごしている場合もあります。こういった状態が続くと、自分を見失ってしまいます。我慢を続けてうまくいかなくなってきたとき、自分を責めてしまうのは、よくあることなのです。

心が疲れたと感じたら、セルフケアを意識して

回答:立花良之さん

この状況で心が疲れてしまうのは、とても自然な反応だと思います。まずは、自分自身のセルフケアを意識してください。そんなときに、手軽にできるリラクゼーションとして、次のような「呼吸法」があります。

まず、肩を張って胸を開きます。呼吸が深くなり、効果が高まります。

次に、6〜10秒かけて、思い切り息を吐きます。妊娠中は肺活量が減っているので、4秒くらいでもいいでしょう。
吐ききると、鼻や口から自然に息が入って来ます。2秒かけて吸い込み、1秒息を止めます。

6〜10秒かけて息を吐ききり、2秒で自然に吸い込んで、1秒止める。この呼吸を、5〜10分ほど繰り返します。

このように、同じリズムで同じ動作を繰り返すことを「リズム運動」といいます。リズム運動をすると、脳内で「セロトニン」というホルモンの分泌が促されます。気持ちが落ち込んで鬱のようになっているときは、セロトニンが少なくなっている状態です。セロトニンが増えると、ストレスが和らぎ気持ちが安定してきます。

ウォーキングやジョギング、ラジオ体操なども、セロトニンを増やす効果的なリズム運動です。ぜひ、親子でやってみましょう。


おうちでの過ごし方アイデア

ウイルスへの警戒が続く中、どのように生活していけばよいのでしょうか。ひとつのケースとして、子どもと一緒にアイデアを出し合い、お家での過ごし方を考えたというご家族を紹介します。


9歳と3歳2か月の女の子、2か月の男の子、パパ、ママの5人家族。一番下の子が生まれたのは、新型コロナウイルスが流行し始めた3月上旬。同じころ、パパの在宅勤務がはじまりました。

当初は、家族がずっと一緒にいることに、戸惑いや不安、ストレスがあったといいます。
そこで、家族全員で知恵を絞り、家で楽しく過ごす「3つのアイデア」を生み出しました。

その① 毎日家族でラジオ体操

パパの発案で、毎朝6時半に家族全員で体を動かしています。体を動かすことで、頭もすっきりして、ダラダラしなくなったといいます。

その② 家族でカードゲーム

長女の発案ではじめたカードゲーム。頭を使いながら気分転換ができます。まだルールがよくわからない次女も、一緒に楽しい雰囲気を味わっているようです。

その③ 1週間の献立表

毎日メニューを考えるのが大変なので、1週間分の献立をまとめて考えます。長女は「給食みたい」と言って楽しみにしています。買い物の時間や回数が、買うものが決まっているのでぐっと減るそうです。

家族でアイデアを出し合いながら過ごしていると、子どもは子どもなりにストレスを抱えていることに気づいたんです。子どもも大人と同じように、ひとりの人として向き合って接してあげないといけないと思いました。お互いの接し方を考える、いいきっかけになったと思います。
(ママ)

緊張が解け始めたころに、どっと疲れが出てくる場合もあります。
つらいときは無理をせず、すぐに休みをとって、リラックスできる工夫をしてください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです