シングル子育て

すくすく子育て
2020年9月5日 放送

私が病気になったら子どもをどうしたらいいの? 離れて住むもうひとりの親のこと、どう説明したらいい? そんなシングル親の子育てについて、専門家と一緒に考えます。

専門家:
赤石千衣子(NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ 理事長)
福丸由佳(白梅学園大学 教授/臨床心理学)

今回のテーマについて

赤石千衣子さん

シングルで子育てをしている方には、ひとりで頑張らなくてもいいよ、と言いたいです。過度に自分の責任だと思って、頑張り続ける方がとても多いのです。今回の話を聞いて、誰かに頼ってみようと思ってもらえるとうれしいです。

福丸由佳さん

シングルになる、ならないも含めて、親御さん自身がとても悩んで葛藤していることが多いと思います。家族にはいろいろな形があります。これが「正解」と言えるものはありません。そんな大きなテーマだと思います。


もうひとりの親のこと。子どもにどう伝えたらいい?

娘の生後まもなく、元夫と別居して、そのあと離婚しました。別居してから、パパが娘に会いに来ることはありません。娘はパパの存在を知りませんでした。
でも、保育園に通うようになり、うちにはいないけど、パパがいる家があるとだんだんわかってきていると感じます。いつかパパのことを聞かれたとき、どう説明しようかと悩んでいます。ウソはよくないと思いますが、どこまで正直に言うのか、どのタイミングがいいのか、経緯も含めて正しく伝えることがよいことなのか⋯ 答えが見つかりません。
(2歳 女の子のママ)

子どもが小さいうちは、子どもがわかることを伝える

回答:赤石千衣子さん

「もうひとりの親のことを伝えにくい、どうしたらいい?」という質問を、よく受けます。みなさん困っているんですよ。パパがいること、パパがあなたのことを大切に思っていることは、伝えておきたいですね。子どもが小さいうちは、子どもがわからないことまで伝えなくてもいいと思います。
シングルの子育てが描かれた絵本を読み聞かせながら、「うちもこうだねぇ」と話してみるのもいいかなと思います。

いろんな大人に支えられていることを知るのはよいこと

回答:赤石千衣子さん

もうひとりの親に会えるかどうかは、ご家庭の事情によりますね。「会えるといいね」ということしか言えない方もいると思います。
私もシングルマザーでしたが、子どもをはじめて会わせたのは3歳のときでした。子どもが、世の中には「お父さん」という存在がいるらしい、と知ったころだったと思います。子どもはとてもうれしそうにしていて、ひとりで育てている私から見れば、いいとこ取りだなと思いました。でも、子どもが「自分はいろいろな大人に支えられている」と知ることはいいことだと思います。

子どもの視点で考え、子どもが「大切にされている」と思えるように

回答:福丸由佳さん

親にとっての離婚と、子どもにとっての親の離婚は大きく違います。パパとママは仲よく暮らしたかったけど、それが難しくなったから別々に暮らすことを決めた —— まずは、そのような客観的な事実を淡々と伝えることが大事です。

親の離婚によって、子どもはさまざまな“気持ち”を経験します。子どもの年齢や状況によって反応に違いがありますが、「離婚を経験する家族向けのプログラム」を実践する中で、子どもは次のような感情を抱きやすいと感じています。

  • 残った親もいなくなって、自分は見捨てられるかもしれない、と心配になる。
  • 両親が別れたのは自分のせいかもしれない。いい子にしていれば両親が仲直りするかもしれない、と考える。
  • この先どうなってしまうのか不安になる。
  • 一方の親から、もう一方の親の悪口を聞いたような場合などは、両親の間で板挟みになってしまう。

このような傾向を考えると、「あなたが生まれたとき、パパもママも喜んだよ」と伝えるなど、子ども自身が「自分は愛されている、大切にされている」という感覚を持てるようにすることが、とても大事だと思います。


離れて暮らすパパに会いたいと言われたら、どう答えたらいい?

3歳の娘はパパのことが大好きでしたが、夫とは半年前から別居しています。娘がパパの話をすることはほとんどないのですが、「会いたい」と言うときもあります。そのときは、「会いたいね。パパも会いたがっているよ」と娘の気持ちに共感するようにしています。
娘のことを考えて、先日はじめてパパと面会しました。娘はとても喜んでいましたが、面会が終わり、別れる時間になると、「パパがいい」と言って大泣きしてしまいました。会うことで、かえって娘が傷つくのではないか⋯ そう思うと心配です。離れて暮らすパパに会いたいと言われたら、どう答えたらいいのでしょうか。
(3歳 女の子のママ)

子どもが「会いたい」と言ってもいいと思える親子関係を

回答:福丸由佳さん

お子さんのいろいろな姿を見ると、親として迷ったり、葛藤することもあって難しいですよね。
成長とともに、子どもが自分のルーツを知りたいと思うのは自然なことです。このとき、子どもが会いたいと思ったときに、親に「会いたい」という気持ちを表現してもいい、言ってもいいんだと思える親子の関係でいることが大事だと思います。親は、子どもの「会いたい」気持ちを受け止めることが大切だと思います。
例えば暴力などが心配であれば、子どもの安全を考えて、安心して会える環境を整えてあげることも大事になります。

3割の方が面会交流を決めている。面会を支援する団体もある

回答:赤石千衣子さん

相手の所在がわからなかったり、会うと暴力的になるなど、子どもにとってよくない場合は会わせることができません。そうなると「いつか会えるかな」のような、含みを持たせた言い方しかできませんね。
もし会える状況であれば、会わせていいと思います。最近では、話し合いを行う調停で、面会交流を決めることも多いようです。3割ぐらいの方が面会の約束をしています。面会の交渉の中で、相手の言葉に傷ついたり、いろいろなことがありますが、面会交流支援団体もあるので調べてみるのもいいですね。例えば、面会の見守りや付き添い、受け渡しをお願いするなど、いろいろな方法で支援してもらえます。

面会後、子どもが「パパに会いたい」と泣いてしまいます。心が傷つかないか不安です。

また会う機会があるという見通しを持たせる

回答:福丸由佳さん

面会することで、お子さんが不安定になったり、親自身も複雑な気持ちになったり、いろいろと大変なことはありますね。お子さんが泣いてしまうのは、「もう会えないかも、見捨てられるかも」という不安が原因かもしれません。「会いたくなったら会えるよ」のように伝えて、お子さんが「また会う機会がある、これが最後ではない」という見通しを持てれば、安心するのではないかと思います。子どもにとって、先が見えない不安はとても大きなことです。子どもの安心を軸に考えて、伝えることができることは伝えてあげましょう。

親自身の負担やストレスのケアを

回答:福丸由佳さん

子どもに別居している親を会わせてあげようと頑張ることは、子どもを思ってのことだと思います。でも、そのために、自身が疲れてストレスを抱えることもあります。それは当然のことです。同居している親の負担やストレスをケアすることも大事です。

面会のときには自分の時間を持とう

回答:赤石千衣子さん

別れるだけの理由があったわけですから、やはり複雑な気持ちになると思います。どこかに、本当は会わせたくないという気持ちもありつつ、子どものためを思って会わせている。だからこそ、面会のときは、自分のための時間を持ってみましょう。息抜きをしたり、好きなことをしたり、少しでも自分にご褒美をあげないといけない、と思います。


ひとりで子どもをちゃんと育てられるのか心配⋯

仕事をしながら娘をひとりで育てています。まだ小さいので目が離せず、ちょっと出かけるときも、ゴミを出すときも連れて行かないといけません。大人の手がもうひとつあると楽だな、といつも思っています。実家は遠いので、何か月かに1度程度しか頼っていません。
今は在宅勤務なので、娘と2人きりの生活が続いています。そのストレスなのか、どなって言うことをきかせようとしたり、娘に感情をぶつけてしまうことがあります。もうひとり、誰か冷静に見てもらえる人がいれば、私にとっても子どもにとってもよいかもしれません。
何もかもひとりでこなす日々が続く中、子どもをちゃんと育てられるのか心配になります。
(1歳 女の子のママ)

手抜きすることは大事なこと

回答:赤石千衣子さん

保育園に行って、お迎えして、帰ってきて、食事もちゃんととる。とてもしっかりされていると思いました。だから、少し手抜きをしてもいいと思います。私がひとりで子育てをしていたころは、お風呂場の前にタオルをおいて、子どもを洗ったら体を拭いて、そのままタオルの上に寝かせて、その間に自分をざっと洗ったりしていましたね。ごはんも、うどんや納豆ごはんが多かった。そういう時期もあったんです。手抜きすることは大事だと思います。それから、誰かに頼っていいと思いますよ。

誰かに頼ることを考えると、相手も忙しいし、迷惑になるのではないかと思ってしまいます。

頼ることは、迷惑をかけるだけではない

回答:赤石千衣子さん

ある調査で、誰かに頼られた人は「信頼されている」と感じてうれしくなる効果もあるといわれています。迷惑をかけるだけだと思わなくてもいいんです。頼んで断られたとしても、「言いにくいことを断ってくれてありがとう」と返してみましょう。やっていただけたら、「ありがとうございます」と伝える。そのような関係で、少しずつ頼んでいくことも大事だと思います。

ひとりで抱え込まず、話をしたり情報交換ができる場を持ってほしい

回答:赤石千衣子さん

もともと専業主婦であったり、いろんなことをパートナーが決めていた場合は、ひとりで物事を決めていくことに自信を持てず、自分で決めるのは大変だと思う方も多いでしょう。子どもを育てること、人間を育てることの責任も、重圧になっている方が多いと思います。そんな気持ちになるのは、自分が大事なことをしているとわかっていることで、とてもよいことだと思います。
それだけに、シングルの親は何もかもひとりで抱えがちです。例えば「こんなとき、みんなどうしているのかな?」と、同じような立場で子育てしている方に聞きたいときもあると思います。そのような話ができるママ友やシングルマザーの友だち、あるいは情報交換ができる場を持ってほしいと思います。

シングルファーザーの場合はいかがでしょうか。

シングルファーザーは頑張り過ぎる傾向がある。まわりを頼ってほしい

回答:赤石千衣子さん

情報交換をしたり、自分の悩みを話したりすることは、シングルファーザーのほうが、ハードルが高いと感じています。比較的人数が少なく、頑張り過ぎる傾向もあります。やはり、もう少しまわりを頼ってほしい、頼れる人や場を見つけてほしいと思っています。親も子も楽になるはずです。

信頼できる人が子どもの周りに複数いることはとても大事

回答:福丸由佳さん

子どもにとって、1対1の親だけでなく、親戚や友だちの親など、信頼できる人が複数いるといいですね。子どもが相談したいと思ったときに、気持ちを話してもいいと思える、信頼できる人がいることが大切です。実際に相談をしなくても、もしものときは頼れる、自分のことを大事に思ってくれている人がいる。子どもがそう思える人が複数いることが、とても大事だと思います。

子どもが大きくなってきたら、親が子どもに相談するなど、子どもの声を聞く姿勢を見せていると、子どもも困ったときは誰かに相談しようと思えるようになるそうです。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

子どもは子どもなりに、親の頑張っている姿を見ている

福丸由佳さん

私の研究室には、これまでいろいろな家庭の事情を持つ学生がいました。シングルで寂しかったという人もいれば、そんな子どもの気持ちがわかるから保育者になって寄り添いたいという人もいます。子どもは子どもなりに、親の頑張っている姿をしっかりと見ている、と思います。

ひとりで頑張らないで!

赤石千衣子さん

多くの方が、新型コロナで生活が大変になっています。私たちは、そんな方々を支援する活動をしていますが、ぜひ、助けを呼んでほしいのです。本当に「助けて」と言ってほしい、伝えてほしい、と思っています。今は、本当に大変な時代だから、「ひとりで頑張らないで」と言いたいのです。とても大事なことなんです。

「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」では、電話やメールでのご相談も受け付けています
https://www.single-mama.com/


シングル子育て 〜 元夫と協力して

シングルの子育てでは、人に頼ることが大事です。最後に、元夫と協力して子育てをしているママの話を伺いました。

小学3年生の息子と2人で暮らしています。2年前に離婚しましたが、今も元夫と共同で子育てをしています。

離婚時に、月に2〜4回会う取り決めをしていたものの、はじめはなかなか話すこと自体が難しい状態でした。でも、元夫から「困ったことがあったら、何でも、いつでも言っていい」と歩み寄りの姿勢を示してもらえて、私の心境も変わってきたんです。

それからは、週に1回以上、息子はパパに会いに行きます。パパは息子の勉強をみてあげたり、習い事の送迎をしたり、私の用事があるときは息子を預かってくれたり。ときには、3人で食事をすることもあります。
元夫は「離れたことで夫婦ゲンカがなくなり、子どもにとってよかったと思う。お互い感謝する機会が増えた」と言います。

子どもと2人だけで暮らしていると、どうしても1対1の関係に煮詰まってしまうことがあります。そんなときは、元夫に連絡ができるので、精神的にもとても助かっています。

頼れる誰かがいることで、子どももシングルの親も楽になれる。負担を抱え過ぎず、子どもも親も笑顔でいられるよう、上手にまわりの人に頼ってくださいね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです