コミュニケーションとことばの育ち

すくすく子育て
2020年7月11日 放送

子どものおしゃべり、まだ何を言っているのかわからない⋯⋯。外出自粛期間で家族以外に会えないと、ことばの発達が遅れる?
子どもと楽しくコミュニケーションをとりながら、ことばを育てていくにはどうすればいいのか、専門家と一緒に考えます。

専門家:
井桁容子(日本保育協会 保育実践研究企画/保育士)
久保山茂樹(国立特別支援教育総合研究所 上席総括研究員/臨床発達心理士)

まだ話せない赤ちゃんと、どうコミュニケーションをとればいい?

5か月ごろから、「あいあい」のような声を出すようになりましたが、まだ、ことばにはなっていません。まだ話せない時期は、どんなコミュニケーションをすればいいのでしょうか?
(9か月 男の子のママ)

応答的環境が大事

回答:久保山茂樹さん

赤ちゃんがコミュニケーションの出発点になる、ということが大切です。赤ちゃんは、泣けばおむつを替えてもらえる、あやしてもらえるなど、自分が発信すると何かしてもらえる、という経験を繰り返すことで、「声を出すことには意味がある」と学んでいきます。そのため、何かを発信すれば、返してもらえる「応答的環境」にいることが大切です。応答を繰り返すなかで、コミュニケーションが楽しくなり、ことばを覚える意欲にもつながっていきます。

赤ちゃんからの発信に、応答するにはどうすればいいでしょう?

赤ちゃんが声を出したとき、まねをして返す

回答:久保山茂樹さん

赤ちゃんに「声を出すことには意味があるんだよ」と教えてあげたいわけですね。そのためには、赤ちゃんが声を出したときに、その声をまねて返してあげるのがよいでしょう。3〜4か月ぐらいになると、赤ちゃんが声を出して、それをお父さん・お母さんがまねっこする、そんなやりとりが長く続くことがあります。とても楽しくて、かわいらしいですよね。こうしたやりとりから、赤ちゃんは、声を出すことがコミュニケーションになるのだ、とだんだん理解していきます。そんな場面を増やしてあげたいですね。

8か月のころ、自分から「いないいないばあ」をはじめました。親はどのように返したらよいでしょう?

赤ちゃんの期待通りに反応してあげる

回答:久保山茂樹さん

赤ちゃんは、自分が「いないいないばあ」をすれば、相手から反応があるとわかっています。つまり、反応への期待があるわけです。だから、赤ちゃんの期待通りに反応してあげることがとても大事なんです。期待通りにいかないと、ムッとしてしまうこともあります。
また、子どもは、同じことの繰り返しが、ものすごく好きです。何度も「いないいないばあ」をしてくることもあるでしょう。その繰り返しの中で、頭の中の働きが確実なものになっていくので、親はできる範囲でつきあってあげるといいと思います。

ほかにも、0歳の子どもに声をかけるときのコツはありますか?

目を見て、ゆったりしたリズムで、できるだけ静かなところで

回答:井桁容子さん

赤ちゃんの目をちゃんと見て、少し高い声で言ってみてください。そうすると赤ちゃんはこちらをずっと見てくれます。同じことばを、同じ調子で繰り返してあげるのも、赤ちゃんの安心感につながるのでいいですね。「おはよう。おはよう。いいお天気だねえ」―― そんな、ゆったりしたリズムが、赤ちゃんにとって聞き心地もよく、「ああ、わかり合えた」という時間になるんですね。赤ちゃんが「この人に何かを伝えたら、待ってくれる、聞いてくれる」と感じるリズムになるように、意識してみてください。
また、騒がしいところだと、大人の声の調子が聞こえにくくなります。できるだけ静かで、聞きやすい環境で話しかけてみてください。


単調な受け答えばかりのコミュニケーションになってしまう⋯⋯

子どもとのコミュニケーションが、同じような受け答えばかりになってしまい、悩んでいます。遊び相手をするときも、気付けば「すごいね」「すごいじゃん」ばかり言っています。娘が生まれるまで、子どもと接することが少なかったためか、どう関わればよいのかわかりません。単調な答えばかりで、発達に影響がないか心配です。
(1歳1か月 女の子のママ)

何がどうすごいのか伝えるといい

回答:井桁容子さん

生活の中には、いろいろなことばがあります。パパとママの会話や、テレビから聞こえてくることば、絵本の中にもたくさんありますので、発達に影響がないかと、考え過ぎなくても大丈夫です。
まずは、「すごい」と言うとき、何がどうすごいのかを伝えられるとよいですね。例えば、子どもがおもちゃの台車を押して、カーペットの段差を乗り越えたとき、「ちょっと引っかかったけど、グッと押して、上手に通ったね。すごいね」のように言えば、「ちゃんと見ているよ」という意味も伝わります。すると、子どもは「自分のしたことを、すごいと言ってくれる」と感じて、「もっと頑張ろう」「〇〇をしたら何と言ってくれるかな」という気持ちになります。自分のことが伝わったと思うと、それを表現したいと思うようになるんです。


子どもの「伝えたい」という気持ちを育てるには?

解説:久保山茂樹さん

「伝えたい」という気持ちが、コミュニケーションの始まりになります。コミュニケーションとは、誰かと誰かとの間で何かを共有することです。赤ちゃんは、共有するという仕組みを、少しずつ、時間をかけてつくっていきます。

コミュニケーションの発達のしかた

生後間もないころは、赤ちゃんの発信に大人が答えるという、応答的環境の中で「赤ちゃんと大人との関係」が育っていきます。
おすわりや、寝返り、ハイハイができるころになると、周りにある「もの」にも関心が出てきます。ものに手を出して触るなどして、「赤ちゃんとものの関係」がつくられていきます。ものに関わっているときは、周囲の大人に注意は向かず、ものだけに集中しがちです。
そして、9か月くらいになると、赤ちゃんは、大人とものを同時に意識し、共有できるようになります。「赤ちゃんと大人とものの関係」です。これを、「三項関係」といいます。

例えば、赤ちゃんが「アー」と言いながら、お母さんにおもちゃを差し出す。これは、赤ちゃんとお母さんとの間で、おもちゃを共有している状態です。あるいは、電車を見たとき、「アー」と指さしながらお父さんを振り返る。これも、赤ちゃんとお父さんとの間で、電車を共有しているのです。
こうしたことを積み重ねていく中で、「ことば」が生まれていきます。車を見て「ブーブー」と言うのは、ことばの始まりなんです。

「伝えたい気持ち」を育てるスイッチ

人と何かを共有する「三項関係」という仕組みができあがることで、赤ちゃんのコミュニケーションが広がります。三項関係がうまく働いて、ことばが育っていくには、3つのスイッチが入ることが大切です。

1)「楽しい」や「びっくり」など、心が動く体験をすると、思わず「アー!」「おぉ」と声を出すなど、表現をしたくなります。

2)子どもが「楽しかった」「びっくりした」と表現したときに、大人が「楽しかったね~」「びっくりしたね~」と言ってくれる。体験を子どもと大人が共有することも、子どもの伝えたい気持ちを高めます。

3)子どもが声や体で表現すると、何を言っているのかわからなくても、大人が「そうだね、〇〇だね」と返してあげる。そんな応答的環境にいると、子どもは自分の表現が通じたうれしさを味わい、「また表現したい」と思うようになります。

親にできること

「伝えたい」という気持ちを育てるために、親は、どんなことから始めたらいいのでしょうか。

まずは、子どもが夢中になって何かをしているとき、並んでそばにいるだけでも十分なのです。子どもは、誰かが寄り添ってくれることで、「自分がしていることを認めてくれている、興味を持ってくれている」と感じて、とてもうれしい気持ちになります。
このとき、あまり大人が声をかけ過ぎると、せっかくの遊びが中断してしまうことがあります。子どもが振り返ったり、手をつかんできたりすることがあれば、そのタイミングでしっかりこたえてあげましょう。

親子のコミュニケーションを自然に促す体験として「お散歩」がおすすめです。例えば、子どもが犬を指さしていたら、「ワンワンいたね」と声をかけてあげる。こちらからたくさん話しかけるよりも、子どもの心が動いたときに声をかけるのがよいでしょう。
ふだんの何気ないコミュニケーションの中に、ことばを育むヒントが含まれています。


子どものことばのレパートリーを、どうやって増やせばいい?

1歳5か月の娘がいます。ことばが増えてきましたが、もっとレパートリーを増やせたらと思っています。たくさん話しかけるのがいいのか、単語などことばを教えたほうがいいのか、大人が話しているのを聞いて覚えていくのか。何がよいのでしょうか?
(1歳5か月 女の子のママ)

感じたことを、ことばで表現する

回答:井桁容子さん

ことばは、いろいろな単語が言えることよりも、感じたことを表現する、表現したら相手がうれしそうだった、わかりあえた、などの経験が大切です。そして、「この気持ちを表現するのには違うことばもあるんだ」、「“美しい”“不思議”という表現もあるんだ」、と興味が広がっていく。
大人が「そうじゃなくて、○○でしょ」と言い直しをしていると、表現することに魅力を感じなくなります。ことばを話すとそれで評価されると思って、お話することが嫌になってしまうかもしれません。それよりも、ふだんの生活の中で感じたことを、「いい匂いね」「わぁ、きれいだね」のようなことばで表現して、子どもに聞かせてあげましょう。できればポジティブな表現がいいですね。


ことばの遅れが心配。どうすればいい?

1歳半の健診で、ことばが遅いと指摘されました。そのときは、弟が生まれたばかりで、「下の子ができて気持ちが不安定になっているのかもしれません。2歳までは様子をみてください」とアドバイスを受けました。でも、ほんとうに大丈夫なのか心配しています。様子をみるとは、どういうことでしょう?
(2歳・0歳 男の子のママ)

ことばを話す準備ができているか見極めるポイント

解説:久保山茂樹さん

様子をみるときに、子どもの中で、どのくらい言葉を話す準備ができているかを見極めるポイントがあります。

まず、からだの機能です。音が聞こえているか、かむ・飲み込む・声を出す、などの口の働きはどうかなどをみます。

次に、人への関心です。誰かと一緒に遊ぶのは好きか、人の言うことを聞こうとするかなどをみます。

そして、三項関係です。大人との間で体験を共有できるか、身振りや声のまねをしたり、指でさして伝えたりできるかどうかなどをみます。
これらができているようであれば、1歳半の時点ではそれほど心配しなくても大丈夫です。

2歳を過ぎても、意味のあることばが出ないと心配になってしまいます。

「音声のことば」以外のコミュニケーションに目を向ける

回答:久保山茂樹さん

ことばは、話しことばのような「音声のことば」だけではありません。

お出かけしたいときに靴を見せるのは、目で見てわかる伝え方「視覚のことば」です。身振り手振りなどを利用した伝え方「動作のことば」もあります。

ことばの発達は、個人差がとても大きいので、「音声のことば」だけでなく、それ以外の、いろいろなコミュニケーション手段にも目を向けてください。子どもの姿をよく見ていると、「視覚のことば」や「動作のことば」で表現していることがあるはずです。そこに注目して、視覚や動作のことばに、「外に行きたいのね」「ジュースが欲しいのね」のような音声のことばを乗せてあげましょう。

音声のことばの発達を促すには、どんな関わり方がいいでしょう?

繰り返し遊びの中で、表現が出てくる

回答:久保山茂樹さん

「高い高い」のように、体を使ったダイナミックな遊びをしていると、思わず「わぁー!」と声が出ることがあります。そこで、「3・2・1⋯⋯ ドーン!」のようにカウントダウンしながら、遊びを繰り返していると、最後の「1」が言えたり、「ドーン!」という声が出たりします。このような遊びで、ことばの芽が出てくることがあるんです。
また、繰り返しの遊びで、とても喜んでいるときは、すぐに繰り返すのではなく、ちょっと待ってみるのもいいですね。「あっあっ」「もう1回!」と言ってきますよ。待ち時間をつくることで、子どもの表現が生まれることもあるんです。

1歳7か月になる娘は、運動能力は十分に発達しているように思えますが、それに比べるとことばが遅いように感じています。いろいろと声には出すのですが、意味のあることばを話さないので心配です。
(1歳7か月 女の子のママ)

子ども自身が楽しそうにしていることが大切

回答:井桁容子さん

子どもはみんな違うので、1~2歳でも同じようにはいきません。おしゃべりはたくさんするけど、なかなか体を動かさない子もいます。今は、運動が好きなんだという見方をしてはいかがでしょう。遅くても早くても、子ども自身が困っていなければ、楽しそうに暮らしていることが大切です。

コミュニケーションの土台が育っているかどうかをみる

回答:久保山茂樹さん

子どもによって、運動やことばの発達の早さはそれぞれ違います。音声のことばが少なくても、コミュニケーションの土台が育っているかどうかをみながら、視覚や動作のことばで楽しくやりとりをして、過ごしてみましょう。どうしても心配な場合は、保健センターなどに相談してみてください。


親以外の人と会わなくなった。ことばの発達に影響はある?

2歳を過ぎてもことばが少なかったのですが、少しずつおしゃべりが増えていました。でも、新型コロナウイルスの影響で外出自粛になった期間は、親以外の人に会えない日が長く続きました。ことばの発達の遅れにつながるのではないかと心配です。
(2歳2か月 男の子のママ)

信頼する人とのコミュニケーションを積み重ねておく

回答:久保山茂樹さん

私は、親以外の人に会えなくても大丈夫だと思います。特に1〜2歳代の子どもは問題ないでしょう。自分が信頼できる家の人と、しっかりコミュニケーションを積み重ねておくこと。自分が発信すると受け止めてもらえるという経験が、ほかの集団でいかされるはずです。
外出自粛のとき、お父さん・お母さんたちは、「子どもとこんな関わり方で大丈夫だろうか、子どもの発達に影響があったらどうしよう」と不安になったと思います。でも、新型コロナと関係なく、家の人の育て方で、子どもの全てが決まるわけではありません。子どもには、持って生まれた力や、興味の方向性があります。親は、そのときどきで、子どもの興味や関心、好きなものに、ちょっとつきあうことを繰り返していれば、子どもはちゃんと育っていくと思います。

少しでもよかったと思えることを探しながら気持ちを切り替える

回答:井桁容子さん

子どもは、大人の様子をみて、「これは大丈夫なことかな、不安なことかな」と考えているんですよ。不安な気持ちが子どもに伝わると、親子で不安の相乗効果になってしまうかもしれません。
それよりも、大変だけど、少しでもよかったと思えることを探しながら、気持ちを切り替えたほうがいいと思います。背負い込まずに、みんなで楽しい方向に努力していくことが、大事なことだと思います。


間違って覚えていることば。直したほうがいいの?

電車や車が大好きな息子は、新幹線のことを「ぷっかっぴ」と呼びます。バスなど、他の乗り物は言えるのに、新幹線だけは「ぷっかっぴ」です。間違って覚えていることばは、直したほうがいいんでしょうか?
(1歳11か月 男の子のパパ・ママ)

「ぷっかっぴ」を受け止めて、「新幹線だね」と添える

回答:井桁容子さん

子ども本人は「新幹線」と言っているつもりだと思います。それが「ぷっかっぴ」という音になっているわけです。おもちゃの新幹線も、服に描かれた新幹線も、どちらも「ぷっかっぴ」と言っているので、同じだとちゃんとわかっているんです。いずれ、「ぷっかっぴ」が「新幹線」に修正される日がくると思います。それまでは、「ぷっかっぴ」を受け止めて、「そうだね、ぷっかっぴだね。新幹線だね」と添えてあげてください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです