教えて! 子どものケガの手当て

すくすく子育て
2020年5月23日 放送

子どもは思わぬケガをすることがありますよね。子どもが血を出したり、頭を打ったりしたときの応急処置は? どんなとき病院に行くべき? 子どものケガの手当てについて、専門家に聞いてみましょう。

専門家:
福井聖子(大阪府小児救急電話相談事務所長/小児科専門医)
白石裕子(東京工科大学 医療保健学部看護学科 准教授)

子どもが頭を打ったとき、どうしたらいいの?

2歳6か月になる娘は体を使った遊びが大好きで、よく頭をぶつけます。自分で踏み台を持ってきて、妹のベビーベッドにのぼったこともあります。落ちて頭を打ったことも。そんなとき、家で様子を見たほうがいいのか、病院に行ったほうがいいのか迷います。危ないのはどんなときでしょうか?
(2歳6か月 女の子のママ)

頭を打ったときは、年齢・高さ・場所にも注意する

回答:福井聖子さん

子どもが頭を打つと、どうしても打った部分や子どもの様子ばかりを見てしまいます。ですが、そのときの状況から、危険度を考えることも大切です。年齢・高さ・場所の3点に注目してみましょう。

特に要注意なのは、まだ頭が柔らかい6~7か月以下の赤ちゃんが、1m以上の高さから、衝撃の強い場所(石やコンクリートなど)へ転落した場合です。もう少し大きな子どもでも、1m以上の高さから落ちて、衝撃の強い場所で打った場合は心配なケースです。

すぐに病院に行ったほうがいいのは、どういうときですか?

親が受診を迷わないとき

回答:福井聖子さん

すぐに受診が必要な状態は、意識がない・けいれん・大量出血・様子がいつもと違うなどです。

  • 意識がない(短時間でも)
  • けいれん
  • 大量出血
  • 様子がいつもと違う
  • 打ったところが異様にへこんでいる
  • 変によく眠って起きない
  • 手足のまひ
  • ひどい頭痛
  • おう吐を繰り返す など

おそらくは、これらは受診を迷うような状態ではないと思います。救急車などで、すぐに病院に行ってください。
受診を迷う場合は、子ども本人の状態がそれほどでもないときが多いので、しばらく様子を観察してください。

子どもの様子を見るとき、どのような点に注意すればよいですか?

経過時間を意識しながら、早い段階で症状を見つける

回答:福井聖子さん

まずは経過観察する時間の目安を知っておきましょう。発生から6時間までが要注意です。何か大きなことが頭の中で起きている場合は、6時間以内で症状が出やすいといわれています。続いて24時間、さらに48時間経過して何もなければ、おおむねひと安心といえるでしょう。その間、痛がったら冷やしてもよいでしょう。
早い段階で症状を見つけることが大切です。次のポイントに注意して観察してください。

  • 顔の表情・顔色
    まずは、顔を見ます。ぼーっとした表情をしていたり、いつもと受け答えが違ったりする場合は、意識に支障が出ているのかもしれません。顔色が悪いときにも注意しましょう。
  • 元気さ
    頭の中で何かが起こっている場合は、元気がなくなるので、元気さもポイントになります。
  • おう吐を繰り返すか
    子どもは、何でもないことで1~2回はおう吐することがあります。熱が出ていたり、下痢をしていたりするなど、おう吐の原因が他に見当たらないのに何度も繰り返すときは要注意です。
  • 頭痛が続くか
    子どもが大きくなってくると、痛みを我慢してしまうこともあります。頭痛が続くかどうかもポイントなので、注意してみてあげてください。

症状が出たら病院に

回答:福井聖子さん

症状が出ていないときは、おおむね脳の働きに異常はありません。例えば、CTによる検査は、検査時の異常を見つけるもので、「これから症状が出る」と予測ができるわけではありません。そのため、病院に早く行き過ぎても、検査で何もわからないことがあります。早めに症状を見つける、症状が出てきたら病院に行く、そのように考えてください。

日常生活の中で様子を見る

回答:白石裕子さん

「なにか変だ」と思ったら受診するようにしてください。このとき、症状がないか?とものすごく注視するのではなく、日常生活の中で様子を見る程度でよいと思います。

打ったところを冷やすために保冷剤を使うのですが、子どもが嫌がります。どうすればよいでしょう?

無理に冷やす必要はない

回答:白石裕子さん

必ず冷やすことが必要なわけではありません。無理に冷やさなくてもよいでしょう。嫌がるのは元気な証拠と考えてみてはいかがでしょうか。


すり傷・切り傷・刺し傷など、血が出たときの応急処置は?

息子は、歩けるようになってから、ちょっとした生傷が絶えません。また、気になるものは自分で確かめようとして、すぐに手を出してしまいます。先日、公園でトゲのある植物を触ったようで、血を出していました。そのときは、ウェットティッシュで拭いて、家に帰った後にばんそうこうを貼りました。すり傷や切り傷、刺し傷など、すぐにできる応急処置があれば知りたいです。
(1歳2か月 男の子のママ)

傷を水道水で洗い流して、ハンカチなどで止血する

回答:白石裕子さん

公園など、外でケガをしたときは、まず、水道水で傷口をきれいに洗い流してください。消毒液がなくても、水で大丈夫です。きれいになるまで流せば、ばい菌も流れていきます。冷たさで少ししみるかもしれませんが、消毒液のような皮膚への刺激はありません。
その後、タオルやハンカチなどで押さえて止血します。ときどき血が止まっているか確認してください。

以前は、傷口は乾かして、かさぶたにして治すのがいいと聞いていましたが、最近の新しいタイプのばんそうこうは違うんですか?

人工的にかさぶたの役目をはたす

回答:白石裕子さん

傷口にできるかさぶたの下は、湿った環境になっていて、新しい皮膚が作られて、傷口が治っていきます。新しいタイプのばんそうこうは、人工的なかさぶたのようなものです。かさぶたの役目をはたして傷を治していきます。

新しいタイプのばんそうこう

新しいタイプのばんそうこうは、傷口に当てる部分が、ガーゼではなく、湿った環境を保つ作りになっています。水道水で傷口をきれいに洗った後に貼ります。
※説明書に従って使用してください

傷口からは透明な体液が出てきますが、その中には傷を治す成分が含まれています。これを傷口にとどめ、治りを促すのです。この方法は、自分自身の治癒力を利用しているので、消毒液を使うと治りが遅くなることがあるそうです。

様子を見ながら、毎日、あるいは数日に1回、貼り替えます。傷の周辺が赤くなったり、うみが出てきたりしたら、使用を中止して医師に相談しましょう。

コメント:福井聖子さん

新しいタイプは、自分自身の治す力で治していこうという考え方でつくられています。かといって、これまでの消毒で治す方法が決定的に間違っているわけではないので、それぞれ、どのように治していくのかを理解したうえで選んでいけばよいでしょう。


遊びの経験も大事だけど危険は避けたい。どう考えたらいい?

息子は外遊びが大好きですが、少し前に、大きめの滑り台でバランスを崩して手すりに目の上をぶつけてしまいました。それが原因なのか、恐る恐る手でブレーキをかけながら滑るなど、急に慎重になってしまいました。少しずつ解消されているとは思いますが、怖い思いが残っているのではないかと心配です。のびのびと遊ぶ経験も大事だけど、事故やケガの危険も避けたいと思っています。どのように考えたらよいでしょう?
(1歳8か月 男の子のママ・パパ)

子どものチャレンジの範囲内と考える

回答:福井聖子さん

1歳代の子どもは怖いもの知らずで、親が気にかけていても、いつの間にか「危ない!」と思うようなときがありますよね。親は「ああすればよかった」と反省してしまいがちですが、ある程度はしかたのないことだと思います。
また、お子さんがブレーキをかけているのは、失敗から学習して自分で加減できている、すばらしいことだと思います。自分でわかることが少しずつ増えて、子どもなりにいろんなことを考え始める時期でもあります。子ども自身が「ちょっと危なそうだな」と思いながら行動を起こして、結果的にケガをしても、それは子ども自身のチャレンジや冒険の範囲内だと思います。大きな事故やケガは防がなくてはなりませんが、小さなケガは子どもの成長につきものです。

子どもの発達段階とケガ~転び方~

子どものケガは発達段階によって異なります。転び方を例に見てみましょう。

歩き始めから1~2歳くらいは、転んでもすぐに手が出ません。頭から突っ込んで転ぶため、顔のすり傷や打撲が多くなります。視力が低く、視野も狭く、視点も低いので、段差などが近づかないと見えていないこともあります。

3歳くらいになると、個人差はありますが、よく体を動かして遊ぶようになります。このころから、手やひざをつくことができるようになり、手のひらやひざのすり傷、手足の打撲が多くなります。視野はまだ狭いです。

小学生でも低学年の場合は、まだよく転びます。視力は成人並みでも、視野はまだ狭い状態です。
5年生くらいになると、個人差はあるものの、転びそうなときにふんばったり、とっさのバランスをとったりできる子も出てきます。視野も大人並みになります。

大人は子どもが転んだときに危なくないように注意

回答:福井聖子さん

1~2歳ぐらいは、全体的に体の動きも荒いので、転ぶことを前提に考えましょう。例えば、転んだときに尖ったものがあると刺さってしまうことがあります。大人は、そのような危険がないように気をつけてください。

小さいうちに上手な転び方を身につける

回答:福井聖子さん

転ぶときに、とっさに手が出るような動作ができるためには、転び方の練習が必要だと思います。小さい子どもは、体重も軽く、身長も低いので、転んでも大きなケガにはなりにくい傾向があります。大きくなってうまく転べないと、ケガが大きくなりかねません。小さなうちから、走り回って遊ぶなど、上手な転び方を、身をもって学んでいけるとよいですね。

子どもが転んだとき、親はどんな対応をしたらいいでしょうか?

「痛いの痛いの飛んでいけ!」は効果的

回答:福井聖子さん

漢字で「手当て」と書くように、手を当てると痛みが和らぐといわれています。だっこして、痛い部分をさすって、「痛いの痛いの飛んでいけ!」と言う。すると、触覚と痛みの感覚がわからなくなって、痛みが減るという話もあります。さすってあげると、子どもは安心感を得られるとともに、「痛いというのはこういうことなんだ」と学べます。

3歳くらいからは転び方を褒めてあげる

回答:福井聖子さん

3歳くらいになって、手をついて転ぶようになったら、上手に転んだことを褒めてあげてください。手をついてケガをしてしまうと、親はつい注意をしたくなりますが、「上手に転んだね」「このケガだったら、こうしようか」のように声をかけてみましょう。転んでも叱られない、親はちゃんと対応してくれるということを、子どもに学んでほしいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです