どう育てる? 子どもの体力・運動能力~3・4・5歳~

すくすく子育て
2020年2月8日 放送

子どもの体力・運動能力についてのシリーズ、2回目は、本格的に体を動かせるようになる3歳以上の子どもについて。
「子どもの能力を伸ばすには何をすればいい?」
「すぐ疲れる。歩きたがらない。これって体力がないの?」
元気で運動好きな子に育ってほしい。そのために、できることはありますか?

専門家:
吉田伊津美(東京学芸大学 教授/幼児教育学)
野井真吾(日本体育大学 教授/教育生理学)

歩くのを嫌がり転びやすい子。運動が苦手なの?

幼稚園やお出かけの帰り道、歩かなくなることがよくあります。また、つま先が上がっていないのか、よくつまずいて転びます。うちの子は運動が苦手なのではないかと気になっています。
(3歳9か月 男の子のママ)

多様な動きを経験することで、できることが増えていきます。

回答:吉田伊津美さん

3歳では、まだ運動が得意か苦手かというのは分からない時期だと思います。一定の動きがスムーズにできるようになるには、体を動かす経験の量が必要です。いろいろな動きを経験することで、これからできることが増えてくると思います。
3歳ぐらいの子がよく転ぶ理由は2つあります。1つはプロポーションが大人と違うこと。頭が大きく手足が短いため重心が高くなり、大人に比べて安定感がありません。もう1つは動きのぎこちなさです。まだ、状況に応じてうまく体を動かせないためです。

手をだらんと下ろしたままドタドタ走っていて、うまく走れないようです。走り方を教えたほうがいいのでしょうか。

走り方を教えなくても、走る経験を通して合理的な動きを身につけていきます。

回答:吉田伊津美さん

走り方を上達させるために大人が教える必要はまだありません。走る経験を重ねるなかで、無駄を省いて合理的な動きができるようになっていくのです。大人が教えなくても歩けるようになっていくのと同じですね。


発達にともなう子どもの走り方の変化

発達にともない、子どもの走り方は変わっていきます。


※文部科学省「基本的動作の調査」より

はじめは、腕を振らずにぺたぺたと足だけで進む「パターン1」。「パターン2」は腕を振ってはいるものの、左右のバランスがとれていない状態です。走る経験を重ねることで、少しずつ足を蹴り上げ、大きく両腕を振ることができるようになっていきます。
最終的には、腕を大きく振り、膝をしっかり伸ばしてスムーズに走る「パターン5」になるのです。
最近の3〜5歳の子どもたちの9割以上が、パターン1か2の走り方です。たくさん走ることで走り方は変わっていきます。

「運動神経」? 「運動能力」?

私たちがよく使う「運動神経」という言葉は、運動の能力を指すことが多いようです。この「運動能力」は、総合的な「体力」と密接な関係があります。
「体力」は、さまざまなとらえ方がありますが、一般的には、「精神的要素」と「身体的要素」に分類されます。このうち、「身体的要素」には、病気などに抵抗する力である「防衛体力」と、筋力や敏しょう性などの体を動かす力、「行動体力」があります。

「行動体力」が「運動能力」にあたるとされていますが、意思や意欲などの「精神的要素」も運動能力に大きく影響します。
3歳の時点では「行動体力」や「精神的要素」はまだ発達しておらず、「運動能力」はこれから育つ段階です。


子どもたちに、元気に体を動かして遊んでもらうにはどうしたらいいでしょう?

おもしろそうな場所、仲間、扱いやすい道具・遊具などがあると楽しく遊べます。

回答:吉田伊津美さん

元気に遊ぶためには、「おもしろそう」「楽しそう」と思えることが重要です。おもしろそうな場所、一緒に楽しめる仲間、扱いやすい道具や遊具などがあると、遊びが楽しくなると思います。
例えば、ボール遊びをするとき、大人用のサッカーボールのような重くて硬いものよりも、子ども用の柔らかく扱いやすいボールのほうが楽しく遊べます。その子が楽しめるものかどうかを考えてみるとよいでしょう。また、公園などに行くと周りでボールを蹴っている子がいるので、それが刺激になって、自分も同じことをやってみようと思うこともあります。そのような環境による影響も大きいと思います。

子どもの目が輝いてワクワクドキドキしていることが原動力になる。

回答:野井真吾さん

何よりも、子どもが楽しいかどうかが大きなポイントです。目も輝いてワクワクドキドキすることが原動力になると思います。その原動力があれば、体を動かす遊びの継続も期待できるのではないかと思います。


すぐ疲れてしまうので、体力がないのではないかと心配です。

公園に遊びに行くと、帰りなどは疲れて歩かなくなり、泣き出すこともあります。同い年の友達と遊ぶときも、走って遊ぶとついていけないので、友達が手加減をしてくれているようです。体力がないのではないかと感じています。
(3歳10か月 女の子のママ)

周りの子と比べるとやる気をなくしてしまうこともあります。

回答:吉田伊津美さん

周りの子と比べて評価してしまうと、子どもにとってはやる気がそがれ、「どうせできないよ」と思ってしまうことにもつながります。楽しんで取り組めることの積み重ねが、運動の質を高めていくと思います。

大人が本気で逃げ回るなど、楽しく動ける仕掛けをしてみましょう。

回答:野井真吾さん

例えば、遊びの一つとして、大人と鬼ごっこをしてみるのはどうでしょうか。大人が本気で逃げ回ったら、子どもは本気で追いかけてくると思います。逆に大人が本気で追いかけると、子どもは声を上げて逃げ回るでしょう。そうして楽しみながら、子どもたちが思わず動いてしまうような仕掛けを作ってあげるといいですね。

本当に体が疲れているのか、「もうやりたくない」という気持ちかを考える。

回答:吉田伊津美さん

遊んで帰るときに「もう疲れた」と言うのには、たぶん2種類あると思います。1つは本当に疲れて動けないとき。もう1つは、例えば泣いてしまうようなときには、「もうやりたくない」という気持ちが「疲れた」という言葉として出てしまうこともあるかもしれません。

疲れやすい子の増加が心配されている

回答:野井真吾さん

子どもの「疲れやすさ」は長い間心配されているテーマです。例えば、1978年から行われている「子どもの体のおかしさに関する調査」があります。保育・教育現場の方が、「こういう子が最近増えている」と思ったらチェックを入れるという直感に基づく調査です。

2015年、保育所での調査では、上位に、「背中ぐにゃ」「じっとしていない」「床にすぐ寝転がる」「夜、眠れない」「すぐ『疲れた』と言う」などがあがっています。

これらは、行動体力や運動能力の問題ではなく、体の疲れをとるなどの「防衛体力(自律神経系・免疫系・ホルモン系など)」の心配と考えることができます。
また、別の調査によって、日本の子どもは自律神経の中でも交感神経が過敏に反応していることが分かってきました。交感神経が反応するということは、さまざまな刺激に反応しているということなので、疲れにつながるといえます。

「光・暗闇・外遊び」を意識して、生活リズムを整える

回答:野井真吾さん

子どもの自律神経を整えるために大切なのが生活リズムです。そのポイントとして「光・暗闇・外遊び」を意識してみましょう。
眠りのホルモンと言われているメラトニンに関する研究によると、メラトニンの分泌のためには、昼間、太陽の光を浴び、身体活動や運動をすること、夜は暗さを感じることが大事だと分かっています。

  • 昼間:太陽の光を浴び、運動すること
  • 夜:暗さを感じること

例えば、朝はカーテンを開けて朝日を感じる。外遊びは、光を感じながら運動することになります。夜は部屋の照明を半分くらいの明るさに調整するなど、暗い環境を作ってみましょう。
これらを意識することでメラトニンの分泌が促進され、結果的に早寝が実現します。早寝になれば早起きになり、早起きになればおなかもすいて朝ごはんも食べられるようになります。生活リズムが整ってくるので、疲れが取れやすい体になっていきます。

心の育ちも大切

回答:野井真吾さん

「体力」を「精神的要素」と「身体的要素」に分類して考えたとき、精神的要素である心の育ちも大切です。心の育ちには「ワクワクドキドキ」できるような生活が大事だと言われています。


子どもがワクワクドキドキできる「じゃれつき遊び」

「ワクワクドキドキ」って、どうすればできるのでしょうか。
子どもが「ワクワクドキドキ」する活動を7年前から実践している保育園を訪ねました。

体操で体をほぐした後、一斉に「じゃれつき遊び」がはじまります。
3歳から5歳までの子どもたちと先生が、大声を出したり、抱きついたり、追いかけっこしたり、好きなように遊びます。マットを台にしてジャンプする、マットに体当たりするなども、子どもが自分たちで考えました。
大人は危ないことがないよう注意しながら、本気で相手をします。激しすぎるのではないかと思う遊びもありますが、これまでに大きなけがはありません。遊ぶなかで自然に加減を覚えていくようです。

15分たつと、遊びは終了。大きな声で指示をしなくても、子どもたちはあっさり集まって片づけ始めます。
部屋に戻ると、次の活動にスムーズに移ります。気持ちの切り替えも上手にできているようです。

じゃれつき遊びをはじめて7年。子どもたちにはどのような変化があったのでしょうか。

園長「子どもたちが転んだときに(体を支えるために)手が出るとか、友達同士でぶつかりそうになったときに体をそらすとか、そういうことが自然にできていることが見ていてわかりますね」

このほかにも、次のような変化があったと言います。

  • けがが減った。 
  • 運動能力が上がった。
  • 遊びで満足するので、ふだんの落ち着きが生まれ、活動に集中できるようになった。

思いきりじゃれあうことで、心も体も元気になっていくんですね。

「ワクワクドキドキ」することで心にもよい影響がありそうです。

コメント:野井真吾さん

まさに「ワクワクドキドキ」していますね。子どもたちが興奮をむき出しにして、自ら遊んでいます。あの瞬間に、体だけでなく心も開かれて、心の身体的基盤である前頭葉を育てることに役立っているのではないかと思います。

「逆さま」「回転」などの動きが経験できることが効果的。

コメント:吉田伊津美さん

遊びながら、逆さまになったり、回転したりしていますから、さまざまな動きの感覚を身につけていると思います。ただ動きを身につけさせようと思ってやらせるのではなく、楽しくやっているうちに、結果として動きもいろいろと育っていくというスタンスがいいと思います。


家でできる「じゃれつき遊び」のヒント

じゃれつき遊びの準備

  • 部屋を片づける
  • アクセサリーやめがねは外す
  • 服のファスナー(金具)やひもなどに注意する
  • はだしになるほうがよい(爪を切る)
  • 目に指などが入らないよう注意する

空飛ぶじゅうたん

シーツや毛布など大きな布の上に子どもが寝転がり、落ちないようにしっかり包み込みます。ゆっくり持ち上げて左右に揺らします。様子を見ながら、はじめはゆっくり揺らしましょう。

動くじゅうたん

布の上に子どもが座り、落ちないように、子どもはしっかりと布を持ちます。大人がそれを引っ張ります。しっかり布を握れない時期の子どもは、布で体ごと包んでから引っ張りましょう。

グーパージャンプ

大人は座って、足を開いたり閉じたり。子どもはその中に入って足でグー、パーとジャンプし、大人の足をとび越えます。子どもがとびやすいように、足の開きを調整しましょう。

空までジャンプ

向かい合って手をつなぎ、1、2、3でジャンプ! タイミングを合わせて大人は手を少し上に上げます。子どもは自分だけでジャンプするよりも高くとぶことができます。子どもの肩や手首をいためないように注意しましょう。

空中散歩

大人と両手をつないで歩きながら、1、2、3で子どもはジャンプ、タイミングを合わせて持ち上げます。子どもの肩や手首をいためないように注意しましょう。

ぐるりんぱ

向かい合って手をつないだまま足で登って、逆上がりのようにそのままぐるっと回転します。

おさるの木登り

「ぐるりんぱ」が簡単にできるようなら、「おさるの木登り」をしてみましょう。大人が木になって、子どもはおさるさんになります。木にしがみついて周りをぐるっと一周します。子どもがしがみつきやすいように大人が体を動かしてあげてもいいですね。

じゃれつき遊びにルールはありません。好きなように思いきり動く遊びです。まずは、だっこ、くすぐりっこ、子どものまねから始めましょう。体を使ったスキンシップ遊びを、朝、布団の上で5分間やってみるのもおすすめです。
※夜、寝る前だと、興奮して眠れなくなってしまうことがあるので避けましょう。


運動が得意な子。運動能力を伸ばすには?

息子は体を動かすことが大好きです。走る、のぼる、サッカーのドリブルも上手にこなします。運動能力を伸ばしてあげたいと思い、外遊びもしますし、家の中でもマットを敷いたり、跳ぶ場所を作ったり、布団の上ででんぐり返しをしたり、自己流で体操を教えています。でも、プロに教えてもらったほうが正しいやり方も身につくし、変なクセもつかず、けが防止にもなるのではないかと思っています。何か習いごとなどをしたほうがいいのでしょうか。
(3歳6か月 男の子のママ)

教えすぎて「発達欲求」を潰さないことが大事。

回答:野井真吾さん

何度も繰り返して楽しそうにやっていたり、目を輝かせて「ワクワクドキドキ」していたりすることが大事です。また、あまり教えすぎないほうがいいと思います。子どもには、「もっとこんなことができる」「もっと力を伸ばしたい」といった「発達欲求」があります。大人がレールを敷いてしまうと、その発達欲求を潰してしまう場合もあるのです。

「その子にとってやりやすい動き」が基本的に正しい動きです。

回答:吉田伊津美さん

特定の専門的な指導はもっと先でいいかと思います。今、ある特定の動きがとても上手になったとしても、ほかの動きは不器用になってしまう可能性もあるのです。可能性を広げるという意味でも、今、いろいろな動きの経験をして、いろいろな動きを身につけておくことが必要です。
「正しい動き」を教えたほうがいいのではないかということですが、このくらいの幼児の時期には、その子にとってやりやすい動きが基本的に正しい動きだと思います。もちろん、危ないときは少し制限をすることも必要ではありますが、幼児期はトレーニングとして繰り返し練習をさせて身につけさせるのではなく、楽しい経験の中で遊びながら体を動かす結果として、動きが身についていきます。この時期にトレーニングとしてやると、「ワクワクドキドキ」がなくなって、やりたくなくなるという影響があるかもしれません。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

いろいろな種類の動きを経験することが大事 目先の成果やできばえにこだわらないで

吉田伊津美さん

運動は、できる・できないが見えやすいのですが、幼児期にいちばん必要なのは、いろいろな種類の動きを経験して身につけるということです。目先の成果やできばえにこだわりすぎないでいてほしいと思います。

子どもの目が輝く瞬間を見逃さない 大人も元気に子どもと楽しく遊ぶ

野井真吾さん

一つは、子どもの目が輝いたなと思う瞬間を見逃さないようにすること。もう一つは子どもを元気にしたい場合、周りの大人の元気も大事だということです。無理のない範囲で、子どもと一緒に大人も楽しく遊ぶ。そういうことも子どもの元気につながるのではないかと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです