どう育てる? 子どもの体力・運動能力~0・1・2歳~

すくすく子育て
2020年2月1日 放送

子どもの体力・運動能力について2回に分けてお送りします。
まずは0歳から2歳くらいまで。
「最近、子どもの体力が低下していると聞くけど本当?」
「体力をつけるために、ハイハイをさせたほうがいい?」
元気で運動好きな子になってほしいけれど、赤ちゃんのころからできることはあるのでしょうか。

専門家:
吉田伊津美(東京学芸大学 教授/幼児教育学)
加部一彦(埼玉医科大学総合医療センター/小児科医)

今の子どもたちは、本当に体力が落ちているの?

最近、子どもの体力が落ちているという話を聞きました。1歳の息子はハイハイとよちよち歩きが中心で、まだダイナミックに動くことはありませんが、体力をつけたいと思ってスイミングに通っています。今の子どもたちは本当に体力が落ちているのでしょうか。最低限の体力をつけて、運動も楽しんでほしいと思っています。
(1歳1か月 男の子のママ)

4〜6歳の運動能力は、いくつかの項目で以前と比べて遅れがみられる。

回答:吉田伊津美さん

4〜6歳くらいの運動能力は、以前と比べて遅れがみられる項目があります。例えば、ボール投げ、立ち幅跳び(立って遠くに跳ぶ)などは約30年前と比べて半年ほど、体支持持続時間(両腕で体を支える)では約50年前と比べて1年半ほど遅れていると言われています。

0~2歳は、体力・運動能力をつけるための土台を作っている段階です。

回答:加部一彦さん

4~6歳のデータについては、外で遊ぶ機会が減り、家の中にこもっていたり、車に乗ったりする機会が増えていることが運動能力の低下に影響しているのではないかと考えられます。
「体力」は、さまざまなとらえ方がありますが、一般的には、精神的な要素と身体的な要素があります。身体的な要素には、病気などに抵抗する力「防衛体力」と、体を動かして運動する力「行動体力」があります。このうち、行動体力に含まれる、筋力や敏しょう性、瞬発力や持久力などが、いわゆる「運動能力」にあたるとされています。

赤ちゃんの時期は、運動をつかさどる中枢神経が十分発達していないので、まだ運動能力を育てる段階にはありません。赤ちゃんの発達が、首がすわる、寝返りをする、ハイハイをするなど、段階を踏んで進んでいくのは、中枢神経の発達に沿ってできることが増えていくから。1人で歩くということがこの時期の最初の目標です。大きな頭を支え、バランスを取って歩くのはとても大変なことなのです。0~2歳は、体力・運動能力をつけるための土台を作っている段階です。皆さんが気になっている体力や運動能力は、もう少し後のことではないかと思います。


もっと体を動かして遊んでほしい。どうすればいい?

10か月になる娘は、最近つかまり立ちができるようになりました。でも、「ハイハイをたくさんさせたほうがいい」と聞いたことがあります。立つようになってもハイハイをさせたほうがいいのでしょうか。また、体を動かすより手を細かく使って遊ぶほうが得意なようで、長い時間座ったまま遊んでいることもあります。
体力がつくよう、もっと自分から動く遊びをしてほしいのですが、どうすればいいのでしょうか。
(10か月 女の子のママ)

無理にハイハイさせなくてよい。

回答:加部一彦さん

ハイハイせずに歩くなら、歩いていいと思います。立つほうが運動としてははるかに難しく、難しいことができているということは、その前のことはほぼできているということです。できないのではなく、どちらかというとやらないということだと思います。無理にハイハイをさせる必要はありません。

大きな運動と細かい運動がバランスをとりながら発達していく。

回答:加部一彦さん

運動の要素には、体を大きく動かす―― 寝返りをする、お座りをするなどの「粗大運動」と、指先を使うような細かい運動である「微細運動」があります。この2つの運動がバランスをとりながら発達していきます。9~10か月ぐらいは、今まで握って持っていたものを指でつまめるようになるなど、微細運動が出てくる時期です。
細かな運動と大きな運動がバランスをとりながら発達するといっても、常に半々でなければいけないなど割合が決まっているわけではありません。子どもが、興味・関心の赴くままに動くことが、その子にとってのよいバランスだと思います。指先を使って遊ぶことが多いのであれば、今はそういう時期なのでしょう。1か月後、3か月後はまた違うことをしていると思います。
3~5歳になると、できることも運動量も増えていきます。親は、その子の状態に合わせて徐々に外遊びを取り入れ、増やしていくことを考えてあげるといいですね。

思い切り体を動かすことが運動能力全般を高める

回答:吉田伊津美さん

家の中でも、ボールで遊んだり、マットやクッションの上で遊んだりするような運動は大事です。筋力や柔軟性を上げるようなトレーニングではなく、体全体を思い切り動かすことが子どもの運動能力全体を高めていくと考えられています。ほかにも、だっこやパパやママの体によじのぼるなども十分な全身運動になります。たくさんスキンシップを取ってあげるといいと思います。


幼児期の基本的な動き

幼児期は「基本的な動き」を習得する時期です。

基本的な動きとは、歩く・走るなどの「移動する動き」、投げる・引くなどの「ものを操作する動き」、跳ぶ・転がるなどの「体のバランスをとる動き」などがあります。これらの動きは、繰り返し経験するうちに身につき、上手になっていきます。さらにいろいろなバリエーションの動きの経験を重ねることで「多様な動き」を身につけていくのです。

子どもが自発的に遊ぶ園のほうが運動能力が高い

全国の園を対象に調査を行ったところ、体操など特定の運動の指導を行う園と、行わない園では、指導を行わない園のほうが子どもの運動能力が高いという結果でした。
また、大人からの指示で遊びを決めることが多い園と、子どもが自分で遊びを決めることが多い園では、「子どもが遊びを決める園」のほうが、運動能力が高くなるという結果も出ています。

特定の運動についてやり方を教わるよりも、子どもが興味を持って自発的に遊ぶほうが、いろいろな動きを経験することができ、その結果、総合的な運動能力が上がると考えられます。幼児期は「遊びとして行う運動」をすることが大事なのです。

その前段階の赤ちゃんのころは、子ども自身が「やりたい!」「楽しい!」と思えるような遊びができるよう、手助けをしていきたいですね。


遊ぶ場所が少ない。これからの外遊びに影響はありませんか?

ふだんから車を利用することが多く、歩くことも体を動かすことも少ないので、今後、子どもが歩けるようになっても子どもが運動不足になるのではないかと思っています。そのため、今のうちからベビーカーで散歩に行くようにはしていますが、近所に遊ぶ場所が少なく、これからの外遊びに影響があるのではないかと心配しています。
(10か月 女の子のママ)

体を動かす機会が少ない場合、ふだんから積極的に動くよう意識する。

回答:吉田伊津美さん

幼児を対象としたある調査によると、物理的な環境要因と運動能力に何らかの関係があることがわかっています。例えば、きょうだいが多い子のほうが一人っ子よりも運動能力が高い、一戸建てに住んでいる子のほうが集合住宅に住んでいる子より運動能力が高い、集合住宅でも低層階のほうが高層階よりも運動能力が高いなどです。
だからといって一人っ子で高層階に住んでいるから運動能力が育たないということではありません。体を動かす機会が比較的少ないことが影響しているのだと思います。体を動かす機会が少ない場合には、家の中でも積極的に動けるような機会を作り、外遊びを増やすことが有効です。
家の中ばかりで生活している子どもは、外に出ることへのハードルが高くなる場合もあります。まだ自分で歩けない場合でも、ベビーカーなどで外出して外気に触れさせることも大事です。外は家の中よりも開放感があり、いろいろな刺激を受けるので、動きも大きくなる可能性があります。積極的にそうした環境に触れさせることも必要かと思います。

暑さ寒さを肌で感じることも大事。

回答:加部一彦さん

外出するときは、夏は紫外線対策、冬は防寒などに配慮する必要はありますが、暑さや寒さを肌で感じることもとても大事です。
ただ、幼児期は体温調整がまだ十分にはできません。暖かい部屋から寒い外に出るときや、とても体が冷えた状態ですぐに暖房が効いた部屋に入るときなど、急な温度変化には注意しましょう。衣服で調節するなどの工夫をしていただければと思います。


元気すぎて相手をするのが大変! どうすればいい?

2歳になったばかりの息子。動くのが大好きで目が離せません。相手をするのも体力勝負で大人が大変です。保育園の帰りにも、しばらく遊ばせないと、力が余ってしまい夜も寝ない。もうヘトヘトです。どうすればいいですか。
(2歳 男の子のママ)

簡単なお手伝いなど家の中の役割を与える。

回答:吉田伊津美さん

外遊びなどにつきあえる範囲でつきあってあげることはいいことだと思いますが、難しいようなら、家の中でできることを考えてみましょう。
2歳ぐらいになると、自分でできることも増えるので、例えば一緒にお皿を出したり、片づけたり、洗濯物をたたんだり。まだ上手にはできませんが、できる範囲でお手伝いを一緒にするなど役割を与えることで、子どもが充実感などを得られて少し落ち着いた状態になることもあります。


外遊びでは砂にお絵かきやどんぐり集め。活発になってほしいけど、どうしたらいい?

幼児教室で、「体力アップのためにたくさん歩かせてください」と言われたので、毎日公園に行くようにしています。でも、公園に行くと、走り回っているよりも砂にお絵かきをしたりどんぐりを集めたりする遊びが好きなようです。公園に小学生や幼稚園くらいの子がいると端っこで遊んでいます。こんな遊び方でいいですか?
(2歳10か月男の子、4か月 女の子のママ)

2歳児はまだ友達と一緒に遊べない。公園にいく時間帯も選んでみては。

回答:加部一彦さん

大きい子がいるなど、子どもにとって引っ込み思案になってしまうような環境があると、活発に走り回るのは難しいかもしれません。2、3歳くらいだと親から離れるか離れないかの変わり目でもあります。やっと離れてお友達のほうに行っても、お友達とはまだ一緒に遊べない。どこかで親を意識しながら遊んでいます。何か気になる要素があると、なかなかそちらに近寄ることができない一つの要因にもなるでしょうから、そういうことも考えて、公園に行く時間帯を選ぶことも大切かもしれません。

細かい手先の動き、しゃがんだり立ったりする動きも大切です。

回答:吉田伊津美さん

細かい手先の動きもとても大事な時期です。自分でやりたいことを見つけて砂に絵を描いたり、木の実で遊ぶ経験もいいと思います。また、そういう遊びをするには立ったりしゃがんだりもしています。これも体を使った運動です。今、小学生でもしゃがむことができない子がいます。トイレが和式から洋式になった、布団からベッドになったなど、生活の中でしゃがむことが減っているのです。しかし、地面にあるものを拾うときには、しゃがむ動きもできますね。
生活が便利になっているので、昔は必要だったいろいろな体の動きが必要ではなくなってきています。自動ドアは、押したり引いたりする必要はありませんし、水道も蛇口をひねらなくても自動で水が出るものがあります。そういう意味では、遊びの中で細かい動きをしていくことも大事な経験です。昔に戻ろうということではなく、昔は当たり前のように自然に経験していたことが、今は減っているということを、少し頭に置いておくことも必要かと思います。


家で体を動かす遊びのヒント

身のまわりのものでできる、体を動かす遊びのヒントを紹介します。

風船を使った遊び

風船に、こん包用の布テープを貼って包むと、やさしく跳ねるボールになります。すきまなくテープを貼れば、風船が割れにくくなります。いろいろな色のテープを使うと、気分も楽しくなりますね。

真ん丸なボールにならなくても、いろいろな方向に跳ねたり、転がったりして楽しめますよ。

ポリ袋を使った遊び

大きなポリ袋に空気を入れて結ぶと、大きなボールの代わりになります。

口を輪ゴムなどでしっかり閉じれば、こちらもなかなか割れません。
危なくないように、大人と一緒に遊ぶようにしましょう。

ボールがあれば、投げる、とる、転がす、つく、蹴る、運ぶ、踏むなど、楽しくいろいろな動きができます。ボールの大きさや形を工夫して、皆さんも親子で遊んでみてくださいね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです