どう乗り切る? イヤイヤ期 ~なぜイヤイヤをするの?~

すくすく子育て
2020年1月11日 放送

2歳前後の子どもに現れるイヤイヤ期。多くのママ・パパが悩む、このイヤイヤ期について2回にわたり特集します。今回は、どうして子どもがイヤイヤをするのか考えます。

専門家:
井桁容子(保育士)
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)

イヤイヤ期はどういう時期なの?

「イヤ」を繰り返し、「好き」を見つける自分探しの時期。

回答:遠藤利彦さん

子どもが「イヤ!」と言い続けるのは、「これは違う」という気持ちがあるからです。そうやって、「イヤ」を繰り返すうちに、自分が好きなもの、自分がしたいことが少しずつわかりはじめます。イヤイヤ期は、このように自分を探していく時期だと考えてみましょう。

全力で「イヤ」と言えるのはイヤイヤ期だけ。

回答:井桁容子さん

人生の中で、まわりのことを考えずに全力で「イヤ!」と言えるのは、この時期だけです。子どもが「イヤ」と言っている様子を見ていると、「今のうちに思いきりやっておこうね」と応援したい気持ちになります。


どうして子どもはイヤイヤするの?

私が娘のオムツを替えようとしても「イヤ!」、ベビーカーでお出かけしようとしても「イヤ!」。「イヤ!」と言われると、そこから会話が進まなくなるので困っています。どうしてこんなにイヤイヤをするのでしょう。
(2歳1か月 女の子のママ)

寒い時期になると、子どもに上着や帽子などを着せてしっかり防寒したいのですが、「イヤ」と言って全然着てくれません。無理に着せても、泣いて脱いでしまうので、風邪をひかないかと心配です。どうしてそんなにイヤなのでしょうか。
(1歳10か月 男の子のママ)

電車の中でイヤイヤされることが多いです。「ベビーカーから降ろして!」とイヤイヤがはじまり、降ろしてもおさまらず、座席に座らせても「イヤ!」と言って叩いてきます。一体どうしたいのでしょうか。
(1歳6か月 女の子のママ)

まだ“やりたいこと”を主張できず「イヤ」と言ってしまう。

回答:遠藤利彦さん

イヤイヤ期の子どもは、心の成長にともない、いろいろなことがわかりはじめます。すると、「あれもやりたい、これもよさそう」という思いがふくらんでいきます。でも、その気持ちは漠然としたもので、まだ“やりたいこと”を具体的に主張することはできないのです。一方で、「これはやりたいことと違う」についてはわかるので「イヤ」と言ってしまいます。
「違うこと」はわかるけど、はっきり「したいこと」が言えない。子どもの中ではフラストレーションがたまってしまい、子ども自身も困っているのです。親を困らせたくて「イヤ」と言っているわけではありません。
自分についての理解の水準が高まっていく時期でもあります。自分がどんな存在で、何が好きなのかわかっていくのです。“自分探し”が急速に進む、大事な時期だと考えてください。


イヤイヤ期と子どもの自分探し

子どもはどのように“自分探し”をするのか、自分探しとイヤイヤ期がどう関わっているのか、子どもの成長にそってみていきましょう。

1歳ごろまで

まだイヤイヤをしない時期。赤ちゃんは鏡に映った自分を見ても、それが自分だと認識していません。自分の姿や特徴がまだよくわかっていない状態です。

1歳半~2歳ごろ

自分の特徴や性別を認識しはじめます。鏡やカメラに映った自分の姿を見て「自分」だとわかるようになります。「自分」がわかるようになると、「自分以外の人」もはっきり認識するようになります。そのために、自分以外の人に対して「恥ずかしい」という感情や、友達と自分を比較して「うらやましい」という感情などを抱くようになります。
このように、自分と他者との区別がはっきりしてくるころに、イヤイヤ期が現れます。人が提案してくることは、例えそれが親であったとしても、「自分がやりたいこととは違う」と感じるようになるからです。「違う」という意思ははっきりしているのに、「これが好き」という好みが確立していないので、「イヤ」としか主張できないのです。
子どもはこのような経験を積み重ねることで、自分の好みや心地よい状態などを発見していきます。

2歳半~3歳ごろ

さらに“自分探し”が発展していく時期です。「人からどう見られているのか」を意識しはじめます。例えば、「○○ちゃん、すごいね」など、人からの評価に気づくような機会をもつことで、自分探しが進んでいきます。
また、自分の行動に対する、相手の反応も意識するようになります。例えば、友達のおもちゃを取ってしまったとき、相手の反応を見て「悪いことをしてしまった」と罪悪感などの複雑な感情を抱くようになります。
このような経験が、人の気持ちへの理解につながります。“他の人への思いやり”などの大人に近い感情が持てるようになると、やがてイヤイヤ期も落ち着いていきます。


「イヤ」という気持ちをわかろうとする姿勢で関わっていく。

コメント:井桁容子さん

この時期の子どもは、「人と自分はどんな関係にあるか」を学んでいきます。その過程で出会う人の対応は、他の人に対する「信頼感」に影響します。そのため、子どもと関わるときは、大人の考えを押し付けるのではなく、子どもの気持ちをわかってあげようとする姿勢が大切です。例えば「イヤ」と言ってきたときに「何がイヤなの?どうしたかったの?」と聞いてあげることが大事なのです。


原因がわからないイヤイヤ。どうやって対応したらいいの?

息子のイヤイヤ期がひどくて困っています。イヤイヤになると自分の用事が予定通り進まなくなるので、できるだけ子どもの要求に応えて、イヤイヤの状態にならないようにしています。例えば、子どもが「あっち」と指さしをすれば、「なにかな?これかな?」と言いながらおもちゃを取ってあげたりします。
でも、どんなに気を配ってもイヤイヤになるときはなってしまいます。まだ言葉が話せないので、何が言いたいのかわかりません。原因がわからないイヤイヤには、どうやって対応したらいいでしょう?
(2歳 男の子のママ)

イヤイヤの原因をわかろうとする姿勢が大事。

回答:井桁容子さん

お子さんが欲しいものを「なにかな?これかな?」と言いながら探してあげていますね。そのように、根気よく子どものイヤイヤの原因をわかろうとする姿勢が大事です。欲しいものがわからなかったとしても、「わからなかったね」と言って抱きしめてあげる。親子がお互いに「どうやったら伝わるかな」と努力しようとする関係が大切です。

子どもの要求を言葉にしてあげる。

回答:井桁容子さん

親が子どもの気持ちを察するあまり、何でも取ってあげる「子どもの手の代わり」になってはいけません。何かをしてあげるときは、「“ボール”が欲しかったのね」のように子どもが求めていたことを言葉にしてあげることが大切です。言葉にすることで、子どもは「自分の要求を受け止めてもらえた」と確認できるので、気持ちが落ち着いていきます。また、「自分はこうしたかったんだ」という“自分探し”への手助けにもなります。
こうしたやりとりを重ねていくことで、子どもも「自分の思いを言葉にしよう」としていきます。イヤイヤの対応を“意思疎通の練習”と考えるのもいいですね。

親の余裕や時間がないときは、丁寧な対応をするのが難しいのですが、どうしたらいいのでしょう?

余裕があるときに楽しい時間を共有する。

回答:井桁容子さん

誰でも忙しいときは難しいですよね。でも、イヤイヤの保険になるような方法はあります。それは、ママ・パパが余裕のあるときに、子どもと楽しい時間を共有することです。
例えば、子どもが機嫌よく遊んでいるとき、安心して子どもひとりで遊ばせていることはありませんか? そんなときこそ、親が子どもと関わって、子どもの「楽しい」に共感してあげます。すると、子どもに「ママ・パパは自分のことをわかってくれている」という下地ができるのです。
「楽しい」を共有した感覚があれば、ママ・パパに余裕がないときでも「今は忙しいのかな」と思うようになるなど、子どもの側の理解の幅が広がっていくのです。

イヤイヤの原因がわからないときには、おやつをあげて機嫌をとってしまいます。ダメだとわかっているのですが、悩んでいます。
(2歳1か月 女の子のママ)

動画を見せるとなぜか泣きやむので、対応に困ると、ついつい動画に頼ってしまっています。
(1歳10か月 男の子のママ)

自力でイヤな状態を立て直そうとすることが大事。

回答:遠藤利彦さん

忙しいときに、お菓子や動画に頼るような対応が必要になることもあるでしょう。でも、子どもが“ネガティブな感情”を経験することも大事なことです。
子どもは、「イヤ」な状態のままでいいと思うはずはありません。子ども自身が考えて、自分から助けを求めたり、アクションを起こしたりします。子どもが自分の力で、イヤな状態を立て直そうと動くこと自体が、とても大事な経験になります。心のたくましさにもつながっていくと思います。


ひとりでイヤイヤを受け止め続けて疲れたときは?

いつも子どもと2人きりで過ごしています。イヤイヤをされたときに、どうしていいのかわからず、自分が泣きたくなることがあります。
(1歳10か月 男の子のママ)

ひとりで子どもをみることが多く、イヤイヤの対応に困っています。例えば、洗濯物をたたんでいるとき、私を手伝ってくれようとしますが、うまくできないと怒りはじめます。そこで、私が「こうやるのよ」と手を貸そうとすると、さらにイヤイヤが激しくなってしまいます。
(2歳1か月 女の子のママ)

子どもの「イヤ」は全否定ではない。

回答:遠藤利彦さん

子どもの「イヤ」は、全てを否定しているわけではありません。例えば、親が手助けしようとすると「イヤ」となるような場合、子どもは「手助けはうれしい。でも、違うところを助けてほしい」と思っているのかもしれません。でもまだ、子どもはその気持ちを言葉で伝えることができないので、「イヤ」と言うしかないのです。こういったケースが意外に多いと思います。

子どもと一緒に揺れてあげることも大事。

回答:井桁容子さん

子どもに理想の対応をしようとし過ぎる必要はありません。子どものイヤイヤの気持ちに、親が一緒になって揺れてあげることも大事なことです。例えば、子どもと一緒に泣いてもいいと思います。「一緒に泣いたらスッキリしたね」といったことがあっていいのです。子どもが「自分と同じだ」と感じて、「泣かなくてもいいよ」と言ってくれるかもしれませんよ。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです