こんなに違う? 子育ての価値観

すくすく子育て
2019年12月7日 放送

夫婦で子育ての価値観が異なることはありませんか?
教育方針、親としての自覚、子育てに対する温度差など⋯⋯。
さらに、世代間でも違う子育ての価値観、どう歩み寄ればいいのでしょうか?

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学 学長/発達心理学)
田中俊之(大正大学 准教授/男性学)

夫婦の価値観の違い、どうしたら分かり合えるの?

子どもが生まれてから、結婚当初は感じていなかった価値観の違いを感じることが多くなりました。息子は1歳ごろから、気に入らないことがあると私や夫の顔をたたくようになりました。他の子に手を出すと危ないと思い、私はすぐに叱りますが、夫は、「たたいてもかわいい」「まだ1歳だから分からないよ」と、息子を甘やかします。私が叱って、子どもが泣いていると、夫が「よしよし」と言って連れて行くので、私が悪者になってしまいます。
最近は、将来の進路など教育方針でも考え方に違いを感じています。話し合っても私だけがイライラして、何も解決せずに終わってしまいます。夫婦の価値観の違い、どうしたら分かり合えるのでしょうか。
(1歳2か月 男の子のママ)

夫婦でこれだけは共有したいというルールを話し合っておきましょう。

回答:田中俊之さん

家族も1つのチームだと考えると、そのチームに異なる価値観の人がいること自体は、むしろ強みだと思います。会社のような組織でも、1つの価値観のメンバーしかいないと、その価値観が通用しなかったとき組織がダメになってしまいますよね。
そして、夫婦の価値観の違いを認めた上で、 夫婦間で最低限のルールを真剣に話し合って決めておくとよいかと思います。社会学などではこれを「ルールのミニマム性」(ルールを決めるときは、最小限これだけは必要というものに絞り込むこと)と呼んでいます。例えば、「子どもが自分に自信を持てるように育てよう」「『あなたがいることに自信を持っていいんだ』ということは伝えようね」など、これだけは共有しようということを決めておくとよいですね。

話し合うときは相手の話を聞く姿勢で。

回答:大日向雅美さん

子育てのちょっとした方針の違いについて、ママは「とても大事」だと思い、パパは「大したことではない」と思っている。その違いにママはイライラします。パパだってモヤモヤしますよね。「なぜ妻はこんなに怒るんだろう?」と。
話し合いの時、なぜケンカになってしまうかというと、私もそうだったのですが、自分が正しいと思って自分の考えを伝える事に夢中になってしまい、相手がなぜそう言うのかを聞く余裕がなかったのかもしれませんね。
相手がなぜそこで怒るのか、なぜそんなに無頓着なのかは、何か理由があるはずです。「どうしてそう思うのか聞かせてほしいな」と、相手の思いに耳を傾けるようにすると、ケンカではなく話し合いになっていきます。
お子さんはまだ1歳なので分からないかもしれませんが、やがて、「自分のことをパパとママはこんなに一生懸命話してくれるんだ。それもお互いに相手の意見を聞こうとしてるんだ」ということが分かるようになります。そうしてパパとママが話し合っている姿を見るのは、子どもにとってとてもよいことだと思います。


パパの子どもへの関わり方がその場しのぎに見える。この温度差はしかたがないの?

結婚前に夫との価値観の違いを感じることはありませんでしたが、子育てが始まってから、時々、パパの行動にモヤモヤします。
人に関わる遊びが大好きな息子に合わせて、私は一緒にごっこ遊びをするようにしていますが、パパはDVDを見せるだけ。自分はソファで寝ています。その場しのぎのように見えてしまうこともあり、「ちゃんと子どもに関わって遊んでほしい」と思います。さらに、パパは子どもが言うことをきかないときに嫌いなキャラクターの名前で脅すこともあります。私は、善悪を自分で考えて行動できる子どもになってほしいので、脅すのではなく理由を伝えてほしいのですが、そうした考えをなかなかパパに言えません。一緒に子育てをするパートナーだと思っているので、私が一方的にこうしてほしいとは言いたくなくて⋯⋯。
私は仕事をしておらず、家で24時間子どもを見ていますし、夫は仕事もあり本当に限られた時間で子育てしているので、温度差はしかたがないと思いますが、私がふだん抱えている子育ての悩みを夫と共感できたらいいのになと思います。
(3歳2か月 男の子、6か月 女の子のママ )

子どもとのふだんの接し方を情報として伝えてみましょう。

回答:田中俊之さん

価値観の違いではないかもしれませんね。パパはお子さんとどう接したらいいかを単純に知らないだけなのかもしれません。「こういうおもちゃが好きで、こういう遊びをするとすごく喜ぶよ」という話を、シンプルに 情報として伝えてみましょう。そこでぶつかることはまずないと思います。ふだんの育児の中で、そうした情報をママのほうがたくさん持っていると思われるようでしたら、それをパパとシェアしてみてはいかがでしょうか。

細かいことの背景に、パパにも「向き合ってほしい」という思いがある。

回答:大日向雅美さん

パパの気持ちも思いやっていて、思慮深い方だなと思います。でも、もしかするといちばんの悩みは「パパにもっとこっちを向いてほしい」ということなのかもしれません。
日本の男性にありがちなのは、「妻は僕の気持ちを言わなくても分かってくれているはず」という思いです。これは、甘えと幻想です。私は、この番組を通して伝えたい。ママたちは「言おうか言うまいか」とこんなにためらったり悩んだりしているのですから、パパたちにもっと向き合ってほしいですね。
きっかけは「DVDを見せすぎないでほしい」などの細かいことかもしれませんが、ママの本当の訴えはその背景にある「向き合ってほしい」という大きな思いです。そのことを分かってほしいと思います。


子育ての価値観 パパたちのホンネとは!?

都内の子育て支援施設で、子育ての価値観について、パパのホンネを聞いてみました。

―― 妻と価値観が違う場合、あなたはどうしていますか?

  • 基本的には妻優先で言う通りにする。自分の意見は言うだけは言うけど、その意見が通るか通らないかは妻しだいです。
  • 話し合いです。比較的、納得するまで話します。
  • もめるのが面倒くさいので、「分かった、分かった」と言って、私が折れることが多い。

―― ママのほうが子育てに向いていると思う?

  • 寝かしつけなど、僕だとなかなかうまくいかないことがあるので、結果的に甘えてしまっている部分があるかもしれません。いろいろな場面で母親のほうがうまくいく場面は多いと思います。
  • 母親は母乳をあげるなど男性とは違う接し方ができるので、子どもとの距離感はやっぱり父親とは違うのかなという思いは若干ありますね。

―― 子育てに関われない理由。なぜ夫婦で話し合わないの?

  • 私の仕事が忙しくなってきて、子育てになかなか関われないと感じています。ですが、妻は何も言わないので、分かってくれていると思います。積極的に話し合ったとしても、子育てにより関わるためには、仕事の時間を減らさなくてはいけませんし、簡単に仕事を減らせるわけでもありません。夫婦だけで解決できる問題ではないと思うんです。

夫婦は対等です。お互いに本音を出してこれからどうするかを考えていきましょう。

コメント:田中俊之さん

夫婦で対等に話し合うことはかなり大事です。その結果、ぶつかることもありますが、ある程度お互いに本音を出していくこと、その上で「じゃあ、これからどうするか」を2人で根本的に考えていけるといいと思います。

親になったスタートは一緒。パパには本気で対等に向き合ってほしい。

コメント:大日向雅美さん

パパたちの意見を聞いて、もっと愚痴を言ったり怒ったりしてくれたらいいのにと思いました。一般的にママたちに話を聞くと、せきを切ったようにお話しくださいます。時には涙ぐんだり声を震わせたりして訴えます。でもパパは、高みから見ているような、客観的な視点でお話をされている。つまり、その時点でママの気持ちや苦しみとの間に線をお引きになっている。そこが、対等ではないと感じましたし、ママたちの寂しさにつながっていくのだと思います。
「子育ての価値観の違いがあっていい」ということは、みんな分かっているんです。それでもモヤモヤするのは、「本気で対等に向き合ってくれないのはなぜなの?」「2人で一緒に子育てしたいと思っているのに、私だけこんなに寂しさを味わわなきゃいけない原因は何?」という思いがあるからです。子育ての価値観の違いだと思っている悩み の源流はそこなんです。
「価値観の違い」という言葉で片づけてしまうと、お互いの苦しさや悩みが表に出ないまま、 「ママのほうが、子育ての適性があるから僕が折れます」となってしまいますよね。仕事があって関われないつらさや寂しさをパパがもっと語ってもいい。「子育ての経験が少ないからわからない」というようなセリフに逃げないようにしましょう 。親になったスタートはパパもママも一緒です。パパも本当に本気になってくれないと、永遠にきれいごとで終わってしまいます。


世代で違う子育ての価値観、どう折り合いをつけたらいいですか?

実の母との子育ての価値観の違いを感じています。母は高校を卒業して定年までずっと看護師をしていて、私は生後2か月ぐらいから保育園に預けられていました。そのため、母には「子どもにもっとじっくり向き合いたかった」という思いがあるようで、「三つ子の魂百まで。余裕のあるお母さんは3歳までは自分の手で愛情をたっぷりそそいで育てたほうが、余裕のある子どもに育つ」と言います。私も寂しかった経験があるので、自分の中でもどっちがいいのかとても悩みました。
1人目は幼稚園に入るまで自分で見ていましたが、下の子が生まれると仕事がしたいという思いが強くなり、悩んだ結果、1歳から保育園に入れました。
早くに父を亡くしたこともありますが、子育ても仕事も、夫婦2人ともできるほうが、もしものときでも子どもたちを育てていけると思うんです。 夫婦で1年ぐらい話し合った結果、夫が会社とも話し合って時短勤務になり、今はどちらかというと子育てをメインにしています。夫は、母に「妻がやりたいことがあるというので、僕も協力します」と言ってくれています。
母に「昔と違って女性も働いているし、男女関係ない」と話をしたら、「今も昔も母親は常にそばにいてあげなきゃいけない」と言われてケンカになります。世代で違う子育ての価値観、どう折り合いをつけたらいいですか?
(6歳、1歳9か月 男の子のママ)

価値観の違いがあるとき、お互いの違いに敬意を払えるかどうかが大事です。

回答:田中俊之さん

人はどうしても、自分が若かったころの価値観が定着し、その価値観で生きていくことが多い。もう一つ、この場合は、「自分ができなかったことを、 娘にしてほしい」という思いが加わっているので、さらにママに重圧がかかるのかもしれません。でも、本音をぶつけ合うことは必要だと思います。本音をぶつけ合う時のルールとしては、お互いの違いに敬意を払えるかどうかが大事だと思います。

夫婦で決めて実行していることについては理解してくれている。

回答:大日向雅美さん

パパは仕事をセーブして育児と家事をしていらっしゃいますが、お母さまもそこは認めていらっしゃいますね。実の母と娘の間では、お互いに人生を賭けてぶつかってしまいます。これは悪いことではなく、よくあることです。そこに大事な娘のパートナーが入ってくださって、「僕は妻の生き方を認めたいんです」と言ってくださっている。その事実こそが、時代は変わりつつあることを、お母さまに示すことになっていると思います。
誰しもそうですが、自分の人生というのは変えたくありません。でも、目の前にいる娘のパートナーがそう言ってくれるんだったら、もうこれ以上の証拠はありませんよね。だったら違いを認めて否定しないほうがいいかなということを、お母さまも頭では分かってくださっていると思います。お母さま自身の考えを言うことはあると思いますが、心の中では夫婦で決めて実行していることを理解してくださっているのではないでしょうか。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

尊重し合って「いいルール作り」を。お互いへの敬意を忘れないで。

田中俊之さん

「違いはあるけど尊重しよう」という気持ちがあれば、「いいルール」を作るところまで行けるのかなと思います。コミュニケーションするときは、お互いへの敬意を忘れないということを確認しておきましょう。

価値観の違いを乗り越えるには、相手の人生に興味・関心・愛を持ち、人生を語り合うこと。

大日向雅美さん

価値観の違いを乗り越えるには、相手の人生に興味、関心を持つ。愛を持つ。そして、自分の人生も自己肯定を持って伝えることです。つまり、人生を語り合うことだと思いました。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです