きょうだい育ての悩み

すくすく子育て
2019年10月19日 放送

今回のテーマはきょうだい育ての悩み。
きょうだいがいれば、ケンカやトラブルは日常茶飯事。
平等に育てたいけれど、なかなかうまくいきません。
みんなはどうしているの? 専門家と一緒に考えます。

専門家:
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)
宮里暁美(お茶の水女子大学 教授/保育学)

上の子と下の子、どちらを優先すればいいの?

2歳の女の子と1歳の男の子がいます。上の子のほうが話も理解ができるので、どうしても手がかかる下の子を優先しています。すると、いつも上の子の機嫌が悪くなります。私自身は二人とも大好き。同じ愛情を注いでいるつもりなのですが⋯⋯。上の子が悲しい顔をしているのをよく見るので、2人を寝かしつけた後に反省する毎日です。どうしたら2人に嫌な思いをさせずに平等に子育てをしていけるのでしょうか。
(2歳7か月 女の子、1歳1か月 男の子のママ)

うちは2歳と0歳のきょうだいですが、できるだけ上の子を優先しています。上の子のほうがよく分かっているので、泣いたときにママに放っておかれたとか、寄り添って抱きしめてくれたとか、そういう記憶が残ると聞いたことがあります。下の子は、記憶には残らないかなと思うので。遊ぶときにも、下の子が邪魔をすると、上の子が嫌がるのでなるべく下の子を離すようにしていますが、どうしても妹が近づいていってしまい、お兄ちゃんが手を出します。こんな風に上の子を優先していても、なかなか妹を受け入れてくれる様子がありません。どうすればいいのでしょうか。
(2歳10か月 男の子、10か月 女の子のママ)

どちらを優先するか決める必要はありません。感情の記憶は残ることを知っておきましょう。

回答:汐見稔幸さん

上の子に配慮してあげることは大事なんですよね。でも、どちらを優先とか優先じゃないとか、二分法で分けてしまうのは少し違うような気がします。上の子にも時々ちゃんと配慮してくださいよ、というくらいでいいと思います。どちらも大事に決まっているのですから。
ここで、少し気をつけてほしいのは、「0、1、2歳ぐらいの子どもは記憶に残らない」という言説が広がっていることです。そのくらいの時期は、「あのときに誰が何をした」などという細かいエピソードはそんなに残りませんが、感情は残ります。例えば、一生懸命泣いて訴えたのに無視されて寂しかったとか、何もしていないのにお兄ちゃんにたたかれて嫌だったとか、そういうネガティブな感情は残っていくといわれています。また、ポジティブな感情もちゃんと残っていくといわれています。
きょうだいが増えていくと、そこで一つの社会ができます。みんなで暮らしていると、その喜びも悲しみも膨らんでいく。きょうだいは人生に膨らみを与えてくれるものでもあるといえるでしょう。ですから、ケンカやもめごとなどいろいろありますけれども、社会生活をするための大事な練習をしているのだと思って育てていただければと思います。


きょうだいを育てる3つのポイント

1. 上の子に「あなたのことも大事」と伝える

下の子にどうしても手がかかる時期ですが、上の子に「あなたのことも大事だよ」と伝える時間を作ること。

2. 上の子に下の子のお世話を手伝ってもらう

上の子に、下の子のお世話を手伝ってもらうことです。そして、親が頼んだことを上の子がしてくれたら、「お兄ちゃんお姉ちゃんはさすがだね、助かるわ」と上の子を立ててあげること。

3. きょうだいが一緒に体験する機会を増やす

きょうだいが一緒に体験する機会を増やしてあげること。
一緒に何かを作るなどの経験を通して、下の子が「お兄ちゃんお姉ちゃんはすごいな」と思えるような状況を作りましょう。


きょうだいゲンカ、お姉ちゃんの我慢が心配です。

4歳と3歳の年子のきょうだいのケンカに悩んでいます。DVDをどちらが先に見るか、クレヨンを使う順番など、もめ始めると、いつも弟がだだをこね、だいたいお姉ちゃんが折れて弟に譲ります。なるべくお姉ちゃんに向き合う時間を取るように心がけてはいますが、いつも我慢するお姉ちゃん、このままだと性格に影響が出るのではないかと心配です。
(4歳11か月 女の子、3歳8か月 男の子のママ)

砂場遊びや粘土遊びなど、所有者がハッキリしていないもので一緒に遊んでみましょう。

回答:宮里暁美さん

所有者がハッキリしているもの、順番があるものなどはもめごとが多くなります。一面の落ち葉の中や砂遊び、粘土遊びなど、所有者がハッキリしていないものなら一緒に楽しむ状況になると思います。一緒に遊ぶ中で、「これは嫌だ」と自分の意思をお姉ちゃんが言えているようなら大丈夫ですね。また、それをお母さんやお父さんが聞いてくれていれば、気持ちを表現することができますので、そこはこれからも大事にしてほしいですね。

ケンカをするのは自己主張をしている証拠。我慢できるのは社会性の育ちでもあります。

回答:汐見稔幸さん

それぞれが自己主張をすると、社会的な配慮が十分できない段階では必ずぶつかります。自己主張するからけんかになるのですから、けんかがない人は自己主張をしていないということになりますね。ただそのときにそれをどう避けるか、対処するかにそれぞれが知恵を巡らせるわけです。
お姉ちゃん、とても上手に自己主張をしています。この子にこれ以上言ってもかえって大変になるだけだから、私はサッと引いてあげればいいというくらいのことを自分で考えて判断している。これは社会性ですよね。「我慢している」という面ももちろんあるのですが、上手にその場を切り抜ける術を自分で発見している面もあると思います。

きょうだいのケンカの仲裁、親はどう関わればいい?

「どっちが悪い」と決める裁判官にならないように、お互いの気持ちを伝えてあげて。

回答:汐見稔幸さん

ケンカをした時に大人が介入して、「あなたが悪いでしょ」と裁判官になってしまうと恨みが残りますね。きょうだいゲンカは、しょっちゅう起こるものですし、どちらが悪いか分からないものです。ですから、そういう方向には収めない方がいい。
「何をしたかったの?」などを聞いて、相手の子に「○○したかったって言ってるけど、ダメなの?」と伝えてあげることですね。こちらが裁判官にならないという配慮だけはしてあげてください。


5歳になっても赤ちゃん返り。大丈夫でしょうか?

赤ちゃん返りは、2~3歳ぐらいの子が、下の子が生まれたときにやるものかと思っていたのですが、うちの子は5歳になっても「ママ、食べさせて」「ママ、着替えさせて」と言うようになりました。今までできていたことも少しできなくなっているようです。大丈夫でしょうか。
(5歳 男の子、3歳 女の子、9か月 男の子のママ)

赤ちゃん返りは嫉妬心から。三角関係の中で少しでも気を引こうとしています。

回答:汐見稔幸さん

赤ちゃん返りは、下の子にお母さんの愛情が向いてしまって、今まで自分が独占していたものができなくなったということで、いわゆる嫉妬心から起こります。つまり、ある種の三角関係のような状態です。そこで、「赤ちゃんみたいにしたらこっちを向いてくれるかな」と思って赤ちゃん返りをするようです。大体6歳から7歳ぐらいまでが幼児期で、その後は親の知らない世界を作りたがるようになり、自我が育って親ばなれしていきます。5歳というとその前の年齢ですから、今抱えている嫉妬心を全部表現しておきたいとなっているのだと思います。


自治体の子育て支援

兵庫県明石市は「こどもを核としたまちづくり」を掲げ、きょうだい育ても安心してできるように支援をしています。

2012年までは緩やかな人口減少が続いていた明石市ですが、その後は6年連続で人口が増加しています。人口を押し上げたのは子育て世帯の転入。近隣の自治体から移り住む人が多いといいます。

例えば、2013年から「中学生までの子どもの医療費が無料」、2016年から「第2子以降の保育料が無料」となりました。どちらも所得制限なしというのが特徴です。明石市は全国に先駆けて子育て世帯の経済的な負担の軽減に力を入れてきました。
(全国的には2019年10月から幼児教育・保育の無償化スタート)
子育て世代が増えた結果、市内で生まれる赤ちゃんの数は2015年から増加。また、第2子も増えています。市では、予算だけでなく職員も増やして子育て支援に力を注いできたのです。

全国には、明石市以外にもきょうだい育てに力を入れる自治体があります。
家事育児支援サービス、子育て支援パスポート、子どもの送迎、タクシー利用券、子育て応援券、協賛店舗での割引など、きょうだい育てを応援するさまざまな取り組みがなされています。社会が応援してくれる仕組みがあると、きょうだい育ても心強くなりますね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです