子連れ外出の不安

すくすく子育て
2019年8月24日 放送

子どもと一緒にお出かけするとき、ふとよぎる不安や悩み。
「外出先で理由もわからず突然泣いてしまうので、どうあやせばいいのかわからない」
「周りの人の迷惑を考えると、電車で泣いたときは一度降りたほうがいいのかな」
多くのママやパパたちが周りの目を気にして悩んでいるようです。
皆さんは、子連れ外出で困ったこと、ありませんか?

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学 学長/発達心理学)
大豆生田啓友(玉川大学 教育学部 教授/乳幼児教育学)

電車の中で子どもがぐずるといたたまれない。どうしたらいい?

息子は人見知りも場所見知りもします。電車に乗るとぐずってしまうので気が気ではありません。泣き声がとても大きく、泣き始めると電車の中では全く泣きやみません。家では、あやすと泣きやむのに不思議です。
お出かけのときは、絵本、おもちゃ、携帯電話、お菓子、ジュースなどあらゆるものを持参して気を紛らわせています。本当は、あれこれ与えるのは子どものしつけにはよくないと考えていますが、子育ての方針を曲げても、電車の中で周りに迷惑をかけずに過ごしてくれたらすごく気が楽になります。泣いたときはいつも、迷惑にならないように一度電車を降りて子どもが泣きやんでから次の電車に乗ったほうがいいのかと迷います。
(1歳9か月 男の子のママ)

「泣いてもいいよ」「大丈夫」という空気をみんなで作っていきたいですね。

回答:大日向雅美さん

胸が痛みますよね。それに、泣くたびに降りて、泣きやむのを待ってまた乗ってということでは、なかなか目的地にたどり着けません。また、ポリシーを曲げてでも静かに過ごしてほしいとおっしゃっていましたが、子育てでは、たまには、そのように「まあいいか」ということがあってもいいのではないでしょうか。
それからもう一つ、「周りに迷惑がかかる」ことをとても心配をされているようですね。確かに、子どもの泣き声を「うるさい」と思っている人もいるかもしれない。だけど、「ちょっと声をかけてあげたいな」「うるさくないよ」と思っている人もけっこういるんですよ。

「WEラブ赤ちゃん 泣いてもいいよプロジェクト」をご存知ですか?
このプロジェクトは、泣いている赤ちゃんや、泣きやませなければと追い詰められがちな親たちを温かく見守り合えるようにと始まったもので、現在、全国21の自治体(2019年8月)に広がっています。
「みんながみんな、赤ちゃんや子どもの泣き声をうるさいと思ってはいない。泣いてもいいよ」とメッセージを、ステッカーやキーホルダーなどで意思表示する取り組みです。
実は私も、お子さんが泣いて困っている人を電車で見たことがあります。声をかけたい気持ちはあったのですが、私はその方に声もかけられないまま電車を降りてしまいました。とても反省しました。電車の車両にこのようなポスターがあれば、勇気を出して「大丈夫よ」と声をかけてあげることができたかもしれないと思います。そして、このようなステッカーやキーホルダーをつけている人が増えたなら、電車の中の雰囲気もどんどん変わっていくでしょうね。

親子ともに、気持ちをリセットするとお互いに落ち着きます。

回答:大豆生田啓友さん

電車では、家にいるときと違って泣きやまないというお話でしたね。例えば、電車が好きで乗ることを楽しみにしていたとしても、いざ乗ってみると泣いてしまうこともよくあります。電車の中にはたくさんの人がいて、聞いたことのない音が聞こえたり、揺れたりします。その子にとって、電車を外から見ていたのとはずいぶん違う状況ですから、「こんなはずじゃなかった」と思ってしまうのかもしれません。
そうだとしても、親としては周りの目が気になります。どうすればいいか困りますよね。私の場合は、電車で子どもが泣き出したときには、次の駅で降りていました。もちろん、急いでいないときですが。周りに迷惑がかからないようにというだけでなく、その子にとっても親自身にとっても、一度降りると気持ちのリセットができることがあります。時間が許せば一度降りるのもよいかと思います。
そして、その親子にどのように周りの人たちが温かい目を注ぐかどうかも大事なポイントですね。私はいつもキャラクターのシールを持ち歩いていて、電車で泣いている子どもを見かけたときには、タイミングを見て、「このシール、どう?」と声をかけることがあります。これは、私もちょっと度胸が必要ですが、8割くらい成功しています。

それでも泣きやまないときはどうしたらいいの?

泣きやまないときは無理に泣きやませず、周りの人に思いを伝えてみましょう。

回答:大日向雅美さん

子どもは、泣きやまないときは、何をしても泣きやみません。むしろ、泣きやませようと緊張するとそれが伝わって、もっと泣きやまなくなります。そんなときは、ちょっと周りを見て、「うるさくてすみません」と一言伝えてみてはどうでしょう。そうすると、周りの人たちも反応しやすく、「そんなことはないですよ」と言ってくださる人も多いと思います。
本当は、子どもが泣くことは、すまないと思うことでも迷惑でもありませんが、それでもあえて公共のマナーの一つとして、「ご迷惑をおかけしています」という気持ちを持っていることを伝えると、周りの人も呼び水のように「大丈夫よ」と言いやすいかもしれませんね。


外出中に困ったとき、0歳の息子をスマートフォンであやしていい?

6か月の息子と外出する際、泣きやませるにはスマートフォンが一番効果的だと感じています。本人も物珍しいのか、見せるとすぐに泣きやむのですが、0歳の息子に電子機器を渡していいのかということや、依存してしまうとどうなるのかなどが心配です。「0歳の子にスマートフォンを持たせている」と非難されるようで、周囲の目も気になります。
(6か月 男の子のママ)

親子共に楽な気持ちで過ごせる手段としては、スマホも使い方次第ですね。

回答:大豆生田啓友さん

これは、多くのママやパパたちにとってすごく悩ましい問題だと思います。確かに、子どもが小さいうちからスマホにすべてを任せてはいけないというのはその通りだとは思いますが、一時的にスマホを見ることで子どもの気持ちが落ち着いたり、ママも少し楽な気持ちでその場を乗り越えられたりするのであれば、手段としてそれほど子どもにとって大きなマイナスだとは思いません。スマホだから必ずダメだということではなく、使い方次第なのではないかと思います。

その様子を見ている周りの人も、ぜひお子さんをあやしてあげてほしい。

回答:大日向雅美さん

ご質問をうかがって、反省すべきは私たち周囲のほうだと思いました。“スマホを見せているママを、周囲はそんな目で見ている”と、ママたちは感じているわけです。
電車では、大人はみんなスマホを見ていますよね。それなのに、ママが子どもに見せると、「しつけができていない」「自分であやさないでスマホに任せて」なんて思うのは、もうやめましょうと、この機会に伝えたいですね。周りの人たちがもしそう思っているのだとしたら、その人自身がまずスマホをやめて、子どもをあやせばいいと思います。
ママもパパも「苦肉の策」でスマホを与えているわけです。そうじゃない人も一部にいらっしゃるかもしれませんが、大半は、ドキドキしながら子どもと電車に乗って、静かにしてほしい、でもスマホに頼る親だと見られているのではないか⋯⋯、などといろいろ思い巡らせているのではないでしょうか。そんなママ・パパたちが、追い詰められているとしたら、そう思わせる周囲のほうが変わらなければならないと私は思います。


公共交通機関でのベビーカー問題

電車やバスにベビーカーで乗ることに不安があるというママやパパたちの声も多く聞かれました。
皆さん、実際に乗るときにはどのような工夫をしているのでしょうか。

ベビーカー2台を使い分ける。

用途に合わせてベビーカー2台を使い分けている人もいます。

タイヤが大きくて押しやすいベビーカーを使っているが、たたむと前輪が上に来て自立せず、周囲への邪魔になってしまうと心配したあるママは、電車などに乗るときには、折りたたみがしやすく周りの人の迷惑になりづらいベビーカーを別に用意したということです。軽いので、だっこしながらでもたためて便利だそうです。

ベビーカーを持っていない。

ネットなどで子連れ外出をするママたちへの非難の声をみて、お出かけ自体が嫌になってしまったという人もいます。このママは、電車で30分以上の移動は難しいと感じています。電車で2時間のところに住む祖父母を訪ねるのも怖い、と思ってしまい、祖父母の方が孫の顔を見に来てくれているといいます。


さまざまな選択肢を試して、一番出かけやすい方法を見つけましょう。

コメント:大豆生田啓友さん

学生向けに子連れ外出を体験するワークショップを行ったことがあります。赤ちゃんの人形をだっこして、ベビーカーを持って、大きなバッグを持って電車に乗るというものです。学生たちはみんな、「これでさらに赤ちゃんが泣いたり動いたりすると大変!」と、声をそろえていました。
あまり気兼ねし過ぎて外出しなくなってしまうのは、親子ともにつらいと思います。ベビーカーを2つ用意したり、だっこひもで対応したり、いろいろな方法があると思いますので柔軟に考えながら用意するといいですね。それぞれが一番出かけやすい方法があると思いますので、いろいろな選択肢を試してみることが大事だと思います。

工夫や気遣いは必要です。「お互いさま」という状況ができるといいですね。

コメント:大日向雅美さん

ベビーカーを「たたむ・たたまない」以前に、ベビーカーが電車に乗れるようになったことはとてもいいことですね。私が子育てをしていたころは乗せることさえできませんでした。乗せても絶対にたたまなければなりませんでした。でも、親1人で子連れで外出した際、ベビーカーをたたむのは大変ですし、なかなか難しいですよね。たたまずに乗せられるような時代になって本当に良かったと思います。
ただ、一方で、客観的に見るとベビーカーは大きくて、混んでいるときには、乗せる方も、他の乗客にとってもお互いに大変ですよね。ですから、質問や悩みを寄せてくださる皆さんのようにいろいろと工夫されていることはとても賢明だし、すてきなことだと思います。ごくたまに、周囲に気配りもなく乗っている方がいるので、そういう方がネットなどで批判を受けているのでしょう。それは本当に残念です。たたまなくても良いようになったのであれば、そこに、それぞれが工夫や気遣いをして、「お互いさま」という状況ができるといいですね。


外出先で子どもが騒いだとき、どう注意すればいいの?

スーパーで子どもが騒いでいたのを注意しなかったら、他の人から「親ならちゃんと叱りなさい」と言われました。逆に子どもが騒いだり走ったりするのを大声で怒ったら「そんなに怒らなくもいいのに」と言われました。私はどうしたらいいのですか?

周囲の人は、批判をするのではなく、ぜひお手本を見せてほしいですね。

回答:大日向雅美さん

公共の場というのは、「公を共にする」と書きます。だから、ママもパパも迷惑をかけないようにしたいと何度も何度もおっしゃっていましたね。一方で、その場にいる他の人たちには、そんなママやパパを応援していただきたいものです。また、いけないことをしたり騒ぎすぎている時には子どもを注意する義務も大人の側にあると思います。「親のしつけがなっていない」「怖く叱りすぎている」と言う前に、周囲の大人が子どもへの声のかけ方のお手本を見せてあげるべきだと思います。公共の精神について、私たちはもっともっとお互いに学び合わなければいけないと改めて思いました。


公共の場で子どもがぐずった時、0歳の子をどうあやす?

ベビーカーを押して動いていると気持ちよさそうにしていてご機嫌ですが、お散歩中も、電車の中でも止まるとすぐにぐずってしまいます。さらに、公共の場で興奮して甲高い声を出してしまうことも悩みの種です。騒いだとき、「シーッ」「ダメだよ」と言ってもわからないのですが、周りの人に「私は迷惑にならないように気にしています。静かに過ごせるようにしています」と伝えるために言っています。息子はさらにテンションが上がって喜んで、騒いでしまうこともあるのですが、このようなときはどうすればいいのでしょうか。
(10か月 男の子のママ)

子どもの大きな声に小さな声で返すなど、その子に合う方法を探しましょう。

回答:大豆生田啓友さん

こうすれば確実にぐずらなくなるという方法はありません。子どもは泣くもの、ぐずるものですから、そこは大前提にしなければいけない。一つ言えるのは、あやすとかえって興奮するなど、逆効果の場合もあるということは知っておいたほうがいいですね。具体的な方法をひとつ挙げるとすれば、じっとその子の様子をよく見て、子どもがしようとしていることに、「ああ、こうなの、そうなのね。いやだねえ」など、小さな声で語りかけてみるのはどうでしょうか。保育士は、子どもが興奮してワーッと騒いでいることに対しては、大きな声で返さず、落ち着いて、小さな声でゆっくり声をかけることがよくあります。
ただ、それも必ず効果があるというわけではありません。結局はその子に合うやり方を探していくしかないんですね。


子どもたちのぐずりを切り替える技 保育園の対応は?

日々子どもと接している保育士は、子どもがぐずったときどんな対応をしているのでしょうか。東京都世田谷区にある保育園で話を聞きました。

<気分転換グッズを使う>

子どもたちの目をひく色の絵の具を溶かしたボトルや、100円ショップで売っているケースに小石やビーズを入れ音が鳴るようにしたおもちゃなどであやします。子どもが握りやすく手軽に作れます。

キラキラ光るテープはパリパリと音もして子どもが楽しめ、持ち歩くにも最適です。

1歳を超えた子どもにはバンダナが万能アイテム!

絵本やおもちゃをバンダナで包んでバッグのようにして持たせてあげると、それだけでいつもとは違うアイテムになり、うれしそうに手に持って遊びます。帽子のようにしてあげて、鏡でその様子を見せるととても喜び、気分転換になります。

また、バンダナであおぐだけでも気分が変わります。カバンに1枚入れておくだけでいいので、かさばりません。

<子どもの気持ちを受け止める>

  • 1歳児クラス/シャワーで泣いてしまった子には?
    その子の気持ちがどういう気持ちなのか考えながら、「何が嫌だったのかな?」「暑かったのかな」「ぬれたのが嫌だったかな」と、考えながら声をかけるようにしています。すると、だんだん落ち着いていきます。

  • 2歳児クラス/床でぐずっている子には?
    「ぎゅーってする?」と聞いて、ハグして気持ちを落ち着かせてから話をします。「大丈夫? お話できそう?」などとゆったりと声をかけると子どもも落ち着きます。大人が焦ると、子どもにもその焦りが伝わってしまうので、まずは大人自身が落ち着くようにします。

<見通しを持たせる>

子どもは、少し先の見通しがつくと落ち着きます。幼児期になれば、話せば子どもにもある程度は伝わります。園では外で遊ぶときに、“お部屋に戻りたくない”という子には、あらかじめ、「もう少ししたらお部屋に入るよ」などと言っておいて、見通しを持たせています。
例えば電車に乗っているときなら、「着いたらいっぱい遊ぼうね」「駅に着くまでは、外の景色を見てみようか」などと、あらかじめ伝えておくといいと思います。

保育園でも、絶対に効果があるという方法はなく、子どもの様子を見ながらあの手この手で試してみるのが基本だということでした。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです