学びにつながる 遊びって? ~0・1・2歳 編~

すくすく子育て
2019年8月3日 放送

「子どもは遊びながら学んでいく」などと耳にしますが、本当なのでしょうか。
「どんな遊びでも学びにつながるの?」
「いたずらにしか見えない遊びもそうなの?」
2回にわたり、「学びにつながる遊び」について考えます。
今回は、0・1・2歳 編です。

専門家:
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)
井桁容子(保育士)

そもそも、「遊び」って何ですか?

そもそも「遊び」って、何ですか? 子どもが「学びにつながる遊び」をするために、親は何をしたらいいのでしょうか。

「遊び」は、ワクワクしながら自分の可能性を見つけ、試行錯誤する活動です。

回答:汐見稔幸さん

幼児教育の世界では、子どもを育てていく上で、「遊び」が一番大事だということが、だんだんわかってきています。赤ちゃんにとっては、見るもの、触るもの、どれも初めてのものばかり。大人からは「いたずら」にしか見えないことでも、子どもにとっては自分の可能性を見つけ、世界を知ろうと試行錯誤している行動なのです。遊んでいるとき、子どもの心の中はワクワクしています。ワクワクしながらいろいろなことに挑んでいく活動の全てを、幼児教育の世界では「遊び」と呼んでいます。

「赤ちゃんは何もわかっていない」という考え方を変えていきたい。

回答:井桁容子さん

大人が子どもたちの「遊び」のために何かをしてあげなくても、子どもたちは自分で遊ぶことができます。本当に生まれたての赤ちゃんでも、自分で遊んでいるんですよ。
生後3か月くらいになれば、自分の手を顔の前にかざすなどして、体を知ろうとします。そういうことも遊びです。子どもが何をしようとしているかをよく観察していると、その子が何にワクワクしているかがわかります。光をみて「うわーっ」と驚いている赤ちゃんもいれば、香りに気づいている子がいるかもしれません。
まずは、「赤ちゃんは何もわかっていない」という考え方を変えていきたいですね。大人は、忙しいとき、大事なところを見落としてしまいがちです。時間がある時に、じっと子どもの様子を見てみましょう。何もしていないように見えても、実はいろいろなことにワクワクしながら遊んでいるんですよ。


いたずらに見える困った遊び、どんな意味があるの?

おもちゃでも遊ぶのですが、実際の調理器具などで遊ぶほうが楽しそうに見えます。ティッシュペーパーなどを出して遊ぶときも、目をキラキラさせて楽しそうです。危なくない限りはやらせてあげたいとは思うのですが、ティッシュを大量に出されるとちょっともったいないなとも思います。いたずらに見える困った遊びにはどんな意味があるのですか?
(11か月 女の子のママ)

繰り返し取り組むことで、緩やかな階段を登るように発達していきます。

回答:汐見稔幸さん

いたずらに見えるような遊びにも、いろいろな意味があるんですよ。
ティッシュペーパーを一生懸命引き出しているとき、子どもは、「引っ張って、こうやって抜くことができるんだ」ということがうれしくて、ずっと繰り返します。このように興味関心を持って十分に遊ぶことでさらに好奇心が刺激され、自分でいろんなことにチャレンジしていく主体性のある子に育つと言われています。
あることができるようになると、うれしくなって、そのことを何回も何回もやりたくなる。そのとき、脳の中では、「そのことができる」ということを支える回路が、まず少しできたわけです。そしてそれを繰り返しやることで、その回路がどんどん安定していきます。

子どもの発達には「縦の発達」と「横の発達」の2種類があります。

  • 「横の発達」:少しできるようになったことを、もっとうまくできるようになるまで試行錯誤を重ねること。
  • 「縦の発達」:できるようになったことを土台に、もう一段上のスキルを身につけること。新たなことへチャレンジ。

青が横の発達、赤が縦の発達です。
横の発達が十分だと縦の発達はスムーズになります。「もうこれはできるから、次にもっと難しいことに挑みたい!」という気持ちが生まれ、また新しいチャレンジ、「縦の発達」に向かいます。
こうして、緩やかな階段をのぼるように発達していくんですね。

飽きずにやり続けているのは、不思議なことへの探究心が働いているから。

回答:井桁容子さん

ティッシュペーパーを何枚も引き出すのは、「おや、引っ張って取り出したのに、もう一回出てくるな」と、気づいているということです。「取ったはずなのにまだ出てくるぞ。どうしてかな?」と思っているのかもしれませんね。
子どもは、仕組みがわかったことはすぐに飽きてしまいます。飽きずにやり続けているのは、不思議なことへの探究心が働いているということなのです。

自分で考え工夫して、何かができるようになることが「学びにつながる遊び」。

回答:汐見稔幸さん

例えば公園に行ったとき、「ほら、ブランコはこうやって乗るんだよ」と大人が教えることもできますが、子どもが自分で、ブランコでどうやって遊ぶかを考えることもできます。
初めてブランコを見た子どもはきっと、「あれ、何だろう?」とまず思うでしょう。そして近づいていきます。座ろうとしても揺れるので、なかなかうまく乗ることもできない。なんとかして乗りたいと思って、自分で考え工夫して、どうすればうまく乗れるだろうかと試行錯誤することでしょう。
そんなとき、「何やっているの、こうやって乗るのよ」と教えたり、大人が乗せてしまっては、せっかく自分で試しているところを邪魔していることにもなるのです。いろいろと試す中で、子ども達は実体験を通して、「こうしたら揺れて怖いんだ」「こうしたら安定するんだ」などと学んでいます。そうしたプロセスを全部省略して、「こうしなさい」と結果だけを近道で教えてしまうと、確かに早くできるようになるかもしれませんが、そこでその子が得るものは少ないでしょう。
危険のない範囲で、子どもたちに試行錯誤をどんどんさせてあげること、そして何かができるようになること、何かについて知ること、そうしたプロセスの全てが「学びにつながる遊び」なのです。


赤ちゃんの驚きの能力

実は、赤ちゃんには大人には想像できない驚きの能力があるのです。
赤ちゃんの認知能力の専門家である小林哲生さん(大手通信会社研究員)によると、赤ちゃんは生まれながらにして数をある程度理解できるといいます。

動物は非常に数に敏感です。例えば、えさが多いものと少ないものがあるとき、多いほうを見分けられます。そのような動物が引き継いできた能力を、人間の赤ちゃんも持っているのです。直感的な数の把握能力を利用して、非常に幼い時期から数がわかるということかと思います。
(小林さん)

赤ちゃんは数を理解しているのか、この能力を調べるために、赤ちゃんが不思議だと感じたものをじっとみつめる行動“注視”を利用した実験を行いました。

まず、赤ちゃんにぬいぐるみを1つ見せます。

次に、カーテンを閉じてぬいぐるみを隠します。

カーテンの隙間から別のぬいぐるみを登場させ、そのままカーテンの後ろに隠します。

この後、カーテンを開けたときにぬいぐるみが2つではなく3つになっていると、赤ちゃんはじっと見つめる反応を示します。

この実験のように、1+1が3になっていると、赤ちゃんはその場面が不思議だと思い、じっと見つめます。それが“注視”という行動です。それと1+1が2のときを比べると、やはり赤ちゃんの様子に差が出るのです。通常のときは、当たり前のことが起こっているわけですから、じっと見つめません。
子どもが不思議に思っていることに興味を持って生活していただけると、子育てが今以上に楽しくなるのではないかと思います。
(小林さん)


幼児教育の現場で、「遊び」についての考え方はどう変わっているの?

幼児教育の現場では、「遊び」についての考え方が変わってきているということですが、具体的にはどんなことが変わってきているのですか?

正解を覚える教育から、みんなで答えを創り出す教育へ。その中心が「遊び」です。

回答:汐見稔幸さん

今の子どもたちが社会人になるのは、およそ20年後です。そのとき、どんな社会になっているでしょうか。一般的には、AI(人工知能)社会になるといわれています。機械的にできることは、どんどんロボットやAIを組み込んだ機械が行うようになるでしょう。ロボットやAIができることは彼らに任せるとして、そのとき、ロボットやAIには絶対にできない、人間にとって大事なことは何でしょうか。
一つは、答えが見つかっていない問題をどんどん解いていくことです。これからの地球は、温暖化などさまざまな問題が進んでいきます。そうした前例がない問題に対しては、みんなで話し合い、新しい答えを生み出していかないと、社会は持続できないといわれています。これからの時代を生きる子どもたちは、そういう力をつけていかなければならない。正解だけ覚えておきなさいという教育では、そういう人間は育ちません。小さいときから、みんなで答えを創り出すような教育に変えていかなければならないのです。
では、答えを創り出す力を身につけるための一番の活動は何か。
それが「遊び」です。「こうやったら面白い!」「こっちのほうがきれいだよ」などという要素を、自分なりにどんどん取り入れて答えを創っていく。大人はそれを励ましていく。その一番の基礎となることが、豊かな「遊び」である。幼児教育の現場もそのような考え方に変わりつつあります。


正しい遊び方を教えたほうがいい? それとも見守ったほうがいい?

できるだけ、息子のやりたい遊びに付き合ってあげたいと思っています。でも、粘土遊びをするといっても、息子は粘土をこねたり何かを作ることはせず、容器に入れてカラカラと振っています。私が電車を作っても、わざとそれを落としたり、「やらない!」といって他の部屋に行ってしまいます。
親としては、粘土遊びで指先が鍛えられるのではないか、創造力が豊かになるのではないかと期待もしますし、粘土の本来の遊び方のほうがもっと楽しいのにという気持ちが働いてしまいます。息子の遊び、どこまで見守って、どこまで教えてあげるべきなのか悩んでいます。
(1歳11か月 男の子のママ)

遊びに正解はない。粘土を容器に入れて振るのも「遊び」です。

回答:井桁容子さん

お子さんが粘土を容器に入れて振っていたのも、実は「遊び」です。振るとカラカラと音がすることを楽しんでいたのでしょう。大人は、粘土で音を楽しむとは、なかなか発想ができませんが、そういう視点を子どもから学ぶこともできますね。
その子が興味を持つ入り口がどこにあるのかを見極めるには、大人はまず、何も言わずにじっと観察することから始めましょう。遊び方の手本を見せてしまうと、いくら上手にできても、それは、大人のやったことのコピーです。創造性ではありません。子どもの遊びを豊かにしてあげるためには、子ども自身がワクワクしなければなりません。まずは自由にやらせてみる時間を大事にしていただきたいと思います。
子どもが興味を持ったら、その楽しみ方に対して共感し、そのすぐ横で自分なりの楽しみ方をして見せるだけでいいのです。楽しく遊んで見せるということは、お友達が横で遊んでいることと同じです。大人はどうしても正解を教えたくなり、教えられると子どもはおもしろくなくなってしまいますが、「こうしなさい」とやらせるのではなく、「こういうのも楽しいよ。もしよければ参考にしてね」という姿勢で遊んでみてくださいね。

「好きなようにやっていい」と思えると、「遊び」に広がりが生まれます。

回答:井桁容子さん

子どもが幼いうちは、「あなたの自由にしていいんだよ」という空気のなかで、大人が自分も自由に遊んで見せることがとても大事です。「自分が好きなようにやっていいんだな」と思うことができると、「遊び」に広がりが生まれます。一方で、「こうするのよ」と教えられ、子どもがまじめにそれをまねしたとき、例えば「粘土=型抜きをするもの」などと思い込んでしまいます。粘土はこねたり型を抜いたりするだけのものではなく、カラカラと音も出せるし、その中に入っている物を形を変えて入れたら、音が変わるかもしれない。それも「学び」につながります。
大人の固い頭で、一つだけの方法で遊びを教えてしまうのはもったいない。大人も、童心にかえっておもしろいことをすることをぜひ大事にしてください。

ふだん仕事をしているので、なかなか遊ぶ時間がとれません。寝る時間が遅くなっても、遊ぶ時間をとってあげたほうがいいのでしょうか?
(2歳 女の子のママ)

家事をしているところを見せるだけでも、子どもにとっては「遊び」。

回答:汐見稔幸さん

遊ぶ時間を取ることが難しい場合には、例えば食事の支度をするときに、台所で調理している横に座らせて、トントンと野菜を切っている様子などを見せてあげるといいですね。
野菜を切って「これ見て」と見せたり、時々ちょっと味見をさせたりしていると、子どもは半分参加している気分になるでしょう。そしてもう少し大きくなったら、実際に手伝ってもらうのもいいですね。そうすると、家事の時間が子どもにとっては「遊び」の時間になります。お父さんやお母さんと一緒にやっているんだという、子どもにとっての喜びの時間にもなりますね。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

「遊び」を通して世界を知る。子どもの「学び」に最も重要なのが「遊び」。

汐見稔幸さん

「遊び」は子どもにとって、自分が生まれた世界とはどんな世界なのかを知る過程です。子どもたちは遊びながら、少しずつ世界をわかっていきます。できるだけ豊かに遊ばせてあげることが、実は子どもの育ちや学びにとって、もっとも大事なことだということです。

子どもがさまざまなおもしろさに気づいていく。それで十分です。

井桁容子さん

粘土をケースに入れて振ったときの音や、ぬいぐるみの尻尾がボヨヨンとしていることなど、子どもはさまざまなおもしろさに気づいています。それこそが、十分な「遊び」であり「学び」です。欲張らず、子どもの様子をよく見て楽しんでくださいね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです