子どもが急な発熱! 仕事どうする?

すくすく子育て
2019年6月15日 放送

子どもが急な発熱!
「職場に復帰したばかりで休みづらい」
「子どものことが心配だけど、仕事を急に休むわけにもいかない」
子どもへの心配と、仕事への責任感の間で悩んでいる人が多いようです。
そんな時、どうしたらいいの?

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学 学長/発達心理学)
阿真京子(一般社団法人 知ろう小児医療守ろう子ども達の会 代表)

子どもが急な発熱。子どもにも職場にも申し訳ない気持ち、どうしたらいいの?

2歳の息子がいます。社内では中堅で、産休育休を経て昨年4月に復職しました。
今の悩みは、急な発熱での保育園からの呼び出しです。今年の仕事始めには、出社後2時間で保育園から呼び出しの電話があり、気まずい思いで早退しました。職場で外線が鳴るたび、呼び出しかと思いビクッとします。
息子はぜんそくがあるので、一度体調を崩すと何日も続けて保育園をお休みすることが多く、夫婦で交互に仕事を休んでいます。息子がせきをすると夫はかわいそうだと思うようですが、私は先に「仕事どうしよう」と考えてしまいます。母親失格かなと思って胸が痛くなる時もあります。職場の人たちは理解があるのですが、私自身、心苦しい思いでいっぱいです。「仕事を辞めようか」「いや、別に続けていいよね」と悩みながら一年が経ちました。
子どもが病気になると、子どもにも職場にも申し訳ない気持ちでいたたまれなくなる。この気持ち、どうしたらいいのでしょうか?
(2歳3か月の男の子のママ)

ママであると同時に職業人であることに自信を。

回答:大日向雅美さん

電話が鳴るとビクッとするという心境で働くのは、本当に大変だと思います。「母親失格かもしれない」と考えていらっしゃるとのことですが、そんなことは全くありません。お子さんのことを第一に思いながらも、仕事のこと、職場への影響のことを一生懸命考えていらっしゃるのですから、母親失格なんかじゃない。ママであると同時に職業人であることに自信を持っていただいていいと思いますよ。

多くの親が、子どもへの心配と職場への申し訳なさの間で苦しんでいる。

回答:阿真京子さん

子どもの病気でみなさんが困っているのは、子どもが急に病気になること、見通しが立ちにくいこと、きょうだいでうつし合う家庭内感染などがあげられます。
また、『子どもの病気で仕事を休む時の気持ち』を、働くママとパパ300人以上に聞いたところ、次のような結果となりました。


※一般社団法人 知ろう小児医療守ろう子ども達の会調べ

「子どもが心配」の項目で「とてもそう思う」と「そう思う」を選んだ人を合わせると90%。「職場に迷惑をかけ心苦しい」については77%となりました。
多くの人が、子どもへの心配と、職場への申し訳なさの間で苦しんでいることがわかります。

一方、仕事を休まずに病児保育を利用する場合もあります。
利用者の中には「便利でありがたい反面、親としてこれでいいのか、家で見てあげたほうがいいんじゃないかという葛藤がある」と感じる場合もあるようです。
子どもを預ける時、「ママもパパも頑張るから、一緒に頑張ろうね」などというように、声かけをして乗り越えていくとよいでしょう。

<病児保育について>

病児保育は各地で増えていますが、定員や感染症の対応などについては地域によってさまざまです。事前に自分の住んでいる地域の状況を把握しておくようにしましょう。
また、地域によっては病児預かりを行っているファミリー・サポート・センターもあります。

「育児は本来母親がすべき」という社会の“こだわり”を払拭するべき。

回答:大日向雅美さん

子どもと仕事の心配で板挟み、さらに四面楚歌ともいえる状況に置かれているママたちもたくさんいらっしゃるはずです。子どもが熱を出すと心配ですよね。職場にも迷惑をかけているかもしれないと心を痛める。夫の協力もない、頼るあてもないという中で、どのようにしていけばよいかと悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。
私は、まず社会の人々の心の中のこだわりを払拭した方がいいと考えています。そのこだわりは、例えばこんな言葉で表されます。
「子どもが病気の時ぐらいはママが見るべきだ」
これは、働くお母さんに対して、「ふだんから子どもを見てないでお仕事しているんでしょう。だから病気の時ぐらいは⋯⋯」という意味も込められています。
このようなこだわりこそがママたちを苦しめている。こういうフレーズを使うことはもうやめてほしいものですね。

子どもの病気と仕事、みんなはどう工夫し、対応しているの?

子どもの病気と仕事にどう対応しているのか。番組に寄せられたみなさんの工夫をご紹介します。

父親が「看護休暇」を取っている。(2歳と5歳の子のパパ)

以前は私の会社でも「看護休暇=母親の制度」という印象があり、「父親が取るの?」という雰囲気がありましたが、それも次第に変わり、私以外の父親も休暇を取るようになりました。急な体調不良の時は看護休暇を取り、復帰したら仕事に全力で取り組み、バランスを取っています。

看護休暇(育児・介護休業法)

未就学児の両親はそれぞれ、子ども1人につき1年に5日(子ども2人以上の場合は10日)、看護のために休みを取ることができる。

病児保育を利用している。(1歳と6歳の子のママ)

可能なら仕事を休みますが、できない時は病児保育の手配をします。
病児保育は、施設に行くタイプ、自宅に来てくれるものなど、全部で4か所に登録しています。子どもの病状や自分の仕事の都合などに合わせて最適なものを手配します。

早めに休ませて長引かないように気をつけている。(1歳と6歳の子のママ)

仕事の状況が許せば、子どもが体調不良の時は、ギリギリまで粘らず、潔く早めに休ませています。そのほうが長引かないこともあるからです。
職場には、予定していた仕事の内容や緊急度の共有、休むことになりそうな期間などを、明確に伝えるようにしています。


子どもはどれくらい病気になるの?

子どもはどのくらいの頻度で病気にかかるものなのでしょうか。

保育園児の平均病欠日数は成長につれて減っていく傾向があります。

解説:野原理子さん(東京家政大学 家政学部栄養学科 准教授)

保育園に通う子ども達の病欠がどれくらいあるのか、5年にわたり、のべ1800人の調査を行いました。

子どもの年齢が上がるにつれて病欠の日数が少なくなっています。あくまで平均ですが、子どもを保育園に入れて復職した場合は、最初の1年での病欠がいちばん多く、その後減っていく傾向が見て取れます。

社会、会社、職場が、復職1年目に『看護休暇』の拡充などを利用して休みやすい環境を作っていくことが望ましいですね。
基本的には子どもが病気で保育園を欠席することが多いのは限定的な期間なので、少し先の見通しを持つことが重要です。

会社の人たちから子育て中の人は“使いにくい”“使えない人だ”などと思われることもありますが、子育て中の人は能力が高く、幾つもの仕事を並行して行うことができ、計画的に優先順位を決めることができます。
子どもの病気で急に仕事を休んでも対応できるようにふだんから備えもあり、危機管理能力も高い。
その人達を職場が大切に育ててくれたらいい人材が育つのではないでしょうか。

スケジュールを職場のチームで把握し、自分の仕事の進捗を共有しておく。
子どもが元気な日でも、もしかしたら翌日休むかもしれないと頭に置いて、いつでも引き継げるようにこちら側でも残しておくことが、ふだんからできる工夫かなと思います。


子どもの熱がきっかけで転職。子育て中のスタッフは必要とされていないの?

私は10年以上、介護スタッフとして働いてきましたが、昨年、上司から子育てに対するパワーハラスメントを受け、職場を去りました。
きっかけは、子どもの熱でした。看病のため、仕事を休んだのですが、その翌日から、上司から無視されたり、暴言を吐かれたりということが続きました。子育て中の同僚も、同じような目に遭っていました。
職場も人手不足で苦しい事情はよく分かっており、自分なりに精一杯頑張ってきたつもりでした。会社を辞めたいと上司へ申し出た時、「あなたの事情はどうでもよい」と言われ、泣くことしかできませんでした。「今は迷惑をかけるけれど、子どもが大きくなれば、また独身の時のように活躍できます!!」って大声で叫びたかったけれど、できませんでした。
「女性が輝く社会はどこ?」「子育てしやすい社会はどこにあるの?」「自分は社会から必要とされていないのでは?」と落ち込み、苦しい日々でした。
今は、別の業種ですが、子育てに理解のある職場で働いており、ここで頑張ろうと思っています。子どもが熱を出しても『おたがいさま』と言い合える。それが当たり前な社会になりますようにと、切に願うばかりです。
(1歳と5歳の子のママ)

めげる必要はありません。

回答:大日向雅美さん

子育て中のスタッフの事情を考えない職場は、いずれ立ち行かなくなるのではないでしょうか。その上、嫌がらせや暴言を吐くような上司は問題外ですね。そのような企業は、社会の流れから取り残されてしまうと、はっきりと言いたい。つらい経験だったと思いますが、めげる必要は全くありません。

子育て、介護などさまざまな事情があっても働くことができる職場を目指して。

回答:阿真京子さん

まず、子どもという存在について職場の人が理解していることが大事です。今の社会は、効率、便利、そして速さ、が求められます。しかし、子どもはそのような価値観で考えることができない、全くコントロールができない存在です。子育て中の人は、家に帰った途端に頭を切り替え、子どもに合わせて生活をしています。そして、子どもが病気になるのは誰のせいでもありません。親が働いているから病気になるのではないのです。
今、子育て中の人にとって働きやすい職場作りが、多くの企業で進められています。子育てを含めて、いろいろな立場にあるスタッフがいることで、社会のニーズに素早く対応できる、企業としての強みになると考えているようです。
私は、子育て世代と管理職世代が理解しあえるような講座をさまざまな企業で行なっています。管理職の世代の男性は、「子どもがこんなに病気をすること自体を知らなかった」という方が大半です。「自分たちはすごく子育て世代に対して配慮してきたつもりだったけれども、全く見当違いだった」とおっしゃった方もいます。講座終了後には、「子育て世代の悩みを、身近に感じることができた」という感想も聞かれます。
子育て、介護、病気など、さまざまな事情があっても働き続けることのできる職場は、お互いを理解し合うことから始まるのではないでしょうか。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

支え支えられてお互いさま。今は助けてもらうけど、余裕ができたら今度は自分が助ける。

大日向雅美さん

「支え支えられてお互いさま」という言葉をぜひ実践してほしいと思います。今は助けてもらうけど、自分に余裕ができたら、今度は私が助けましょうということで、お互いに支え合っていく。それが人間関係の基本です。

子どもには「一緒に頑張ろうね」。職場には「ありがとう」と伝えよう。

阿真京子さん

このまま「すみません」と言い続けるだけではなく、子どもには「一緒に頑張ろうね」、職場には「ありがとう」と伝えましょう。そして、次の世代に苦しい現状を受け継がせないためにも、私たちが次の世代の当たり前を作っていると考えてほしいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです