すくすく子育て
Eテレ 毎週土曜 午後9時~9時29分 [再放送] 翌週 土曜 午後0時~0時29分

いままでの放送内容

どうしてる? 赤ちゃんとのコミュニケーション

  • 放送日: 2019年6月1日(土)

「まだことばを話せないから、コミュニケーションを楽しめない」
「どれくらい働きかければいいかわからない」
みなさんもこんな気持ちになったことはありませんか!?
話しかけたり、歌ったり、絵本を読んだりしてみるけれど、ちゃんと聞いている? 喜んでいるの? 関心はあるの?
まだことばを話せない赤ちゃんへの働きかけ、どんな意味があるのでしょうか?

専門家:
榊󠄀原洋一(お茶の水女子大学 名誉教授/小児科医)
久保山茂樹(国立特別支援教育総合研究所 上席総括研究員/臨床発達心理士)

赤ちゃんの反応があまりなくても、話しかけることに意味はあるの?

ことばなどの発達にいいと聞き、子どもが起きている間はなるべく声をかけて遊んだり、絵本を読んだり、歌ったりして、一生懸命コミュニケーションをとろうとしています。でも、あまり関心がなさそうなことも多いので、こちらの働きかけは意味があるのかと不安になります。もっと笑ってくれると、こちらも声掛けのしがいがあるのですが、すごく笑っていることもあれば無反応のこともあり……。赤ちゃんの反応があまりなくても、話しかけることに意味はあるのでしょうか。
(5か月の女の子のママ)

月齢の低い赤ちゃんでも、関わりを受け止めてさまざまに反応しています。

回答:榊󠄀原洋一さん

わかりやすく笑顔になってくれるとうれしいものですが、赤ちゃんは、いつもそういう反応をしてくれるわけではありません。しかし、「反応」という意味で見ていくと、赤ちゃんは周りの人の関わりを受け止めて、それに対していろいろな方法で反応しています。
例えば、月齢の低い赤ちゃんでも、反応のひとつとして、近くにいる親や保育者の顔をよく見ていることが発達心理学の研究実験で証明されています。それは、スティルフェイス実験(無表情実験)というものです。
お母さんに突然無表情になってもらい、5分間、何の反応も示さないようにするのです。さっきまでニコニコしていたお母さんが無表情になって反応しなくなると、赤ちゃんは、「あれ? お母さんどうしたの?」とでもいうように、お母さんの顔に手を伸ばして触ったり、泣いてしまったり、どんどん不機嫌になっていきます。
このように、まだ話ができなくても、言葉がわかっていないようでも、親や保育者の様子を受け止めて、同時にさまざまな方法で自分の気持ちを表現し、発信していることがわかっています。


赤ちゃんの行動の意味を教えて!

視聴者から届いた動画で具体的な赤ちゃんの様子を見ながら、それぞれの赤ちゃんの行動の意味を教えてもらいました。

「ング、ング、アー!」と、何やらひとり言を言っているようです。(2か月の女の子)

ママが「ハロー」と声をかけると……。まだおしゃべりできないのに、「ハロー」。「アウアウ」と言うと「アウアウ」と応えます。(3か月の男の子)

ママがドライヤーをかけていると、怒ったように大きな声を出します。ドライヤーの音がやむとピタッと止まります。そして、そのまましばらく音がしないと、「アー、アー」と声を出します。(5か月の女の子)

「アー」「クー」など、クーイングからコミュニケーションは始まっている

回答:榊󠄀原洋一さん

赤ちゃんは、見えるもの、聞こえている音についてはよくわかっています。
例えば、ドライヤーの音が聞こえると大きな声を出して、ドライヤーが止まると自分の声もピタッと止めていますね。そしてさらに、「あれ、もう聞こえないの?」とでも言うかのように「アー、アー」と声を出しています。「ハロー」に対して応えている赤ちゃんも、お母さんの声をまねて声を出したら「ハロー」に聞こえたのでしょう。
こうした、母音を中心とした「アー」「ウー」「クー」という声は「クーイング」と呼ばれ、これが「マンマ」などの喃語(なんご)へとつながっていきます。大人の働きかけを見たり聞いたりしたことに対して、声を出すという反応をしています。赤ちゃんたちは、ほんとうにさまざまな形で発信しているんですよ。

パパに足を動かしてもらい、遊んでもらっている間はご機嫌だったのですが、パパが手を止めるとすぐに、両手を広げ、体を反らせて泣き出しました。(4か月の女の子)

ママがおでこに息をフーッと吹きかけると、満面の笑みで声を出し、とてもうれしそうです。(6か月の男の子)

おもちゃを落とした時、ママが「あー」と叫ぶと、すぐに「きゃー」と大きな声を出して応えました。(8か月の女の子)

おすわりしてママに向かって両手をパタパタ。「アー」「ウー」という声も出ています。何度も繰り返すうちにこんなに笑顔になりました。(6か月の女の子)

コミュニケーションの手段は意味のあることばだけではありません。

回答:榊󠄀原洋一さん

どのお子さんも、見えること、聞こえることに対して、声を出したり、手をバタバタさせたり、顔をニコっとしたり、大変豊かに受け止め、さまざまに反応しています。
私たち大人は、「コミュニケーション」というと「話をすること」「ことばのやりとり」などを想像しますが、赤ちゃんは、顔の表情や声、体の動きなどで豊かに表現していることがわかります。こうした赤ちゃんからの発信の始まりは、社会性獲得の始まりでもあると言えます。

最初はキョロキョロと周りを見回して……。気になるものを見つけ、手を伸ばしました。(6か月の女の子)

鏡に映っている自分を見ながら大喜び。鏡の中にママを見つけると、すぐに振り向きママにニッコリ。(11か月の女の子)

「共同注意」は人間が社会性を身につけ、他人の気持ちを理解する土台。

回答:榊󠄀原洋一さん

赤ちゃんが何かに手を伸ばす行為はリーチングと呼ばれていて、その手を伸ばしているものに関心を持っていることがわかります。
また、鏡を見ているお子さんの映像で大事なところは、お母さんのほうを振り返ったことです。「お母さん、見て、私が映ってるよ!」という気持ちで、お母さんの顔を参照しています。
このように、まだことばが話せなくても、非常に豊かな「コミュニケーション」つまり、「受信・発信」をしていることがよくわかります。
ことばを獲得する前の赤ちゃんは、主に視線と指さしでたくさんの情報を発信します。特に指さしは、周りの人に「ねぇ、あそこを見て」と伝えています。赤ちゃんが、「あっあっ、あっあっ」と言って指をさせば、皆さんも「なあに?」と言ってそちらの方向を見たくなるはずです。
このように、同じものを一緒に見る「共同注意」という動作は、私たち人間が社会性を身につけ、他人の気持ちを理解するための1番の土台であるといえるでしょう。これは8か月くらいから見られる行動です。私たちは、このようなやりとりを繰り返し、コミュニケーションをしながら少しずつ社会性を身につけていきます。

赤ちゃんがクーイングをしたり、手を伸ばしたり、指さしをするのは、それぞれどのくらいの月齢ですか?

自分の発信に周りが反応してくれる経験を積み重ねながら変化していきます。

回答:久保山茂樹さん

こちらは、赤ちゃんが1歳までにどのような発信をしていくかを表した図です。

生まれたばかりの赤ちゃんは泣くという表現しかできませんが、生後1か月ごろになると、「あー」「うー」などクーイングと呼ばれる声を発するようになります。これらの発信に周りにいる人たちが反応を繰り返していると、赤ちゃんは声をだして笑うようになります。
そして4か月ごろには物に興味がでてきて手を伸ばすようになるのです。
「こういう動きをすると、大人が何か反応してくれるんじゃないか」「見ていてくれるんじゃないか」と試してみると、周りの人が反応してくれる。「あ、私のことをまねしようとしている。見てくれている」ということが経験的にわかってくると、大人のやることもまねしてみようかとまねするようになります。この順番が大事なんですね。
大人としては赤ちゃんがまねしてくれるとうれしいのですが、赤ちゃんの立場に立ってみると、まずは自分のことをまねしてもらって、その後、大人のまねをしようという気持ちが育ってくるのです。こうして、まねができるようになってくると、指をさして、「あれを見てほしい」という行動が出てきます。
ここまでの目安がだいたい1歳くらいですが、この表でお伝えした月齢で何ができるかどうかということは、あまり気にする必要はありません。

赤ちゃんには一人で探索する時間も必要です。

回答:榊󠄀原洋一さん

もうひとつ付け加えておきたいのですが、赤ちゃんには、一人で周りの様子を見たり、自分の手を見たりする時間も必要です。
例えば、自分でガラガラを持ってじっと見つめているようなときは、赤ちゃんは、「これ面白いなあ」と観察しているのですが、そこにお母さんに一生懸命話しかけられると、「ちょっと待っててよ、今、これ見てるんだから」というようなときもあるかもしれません。
子どもは、一人で自分の周りを見て、指や手をしゃぶり、自分の身体を探索する時間も必要です。常に何か声掛けをしなくてはいけないということではありません。


赤ちゃんに何をしてあげればいいのかわからない。どれくらい働きかけてあげればいいの?

現在、育児休業中です。パパが仕事でいない日中は、2か月の娘と2人きりですごしています。コミュニケーションをとろうと話しかけたり、手を握って動かして遊んでみたりはするのですが、だんだん自分が飽きてきてしまいます。だっこして、間が持たなくなって、テレビを見たりして無言になってしまいます。自分の手が空いているときには常に何かしてあげなければいけないのにできていないという罪悪感も感じています。でも、どんなことをしてほしいと思っているのかがわかりません。親の働きかけは、どれくらいすればいいのでしょうか。
(2か月の女の子のママ)

赤ちゃんがコミュニケーションの出発点。シンプルに返すだけでもいい。

回答:久保山茂樹さん

とても一生懸命お子さんに関わろうとしていらっしゃる様子が伝わってきますね。
例えば、赤ちゃんが「あー」と声を出したときには、「あー」。「うー」と言えば、「うー」とそのままシンプルに返してあげるだけでもいいのかなと思います。そうすることで、赤ちゃんは、自分が発信したことをつかまえてくれている、わかってくれていると考えます。
大人は、赤ちゃんが「あー」と声を出すとこちょこちょとくすぐったり、なでてあげたりしたくなるのですが、そうすると、大人のペースでコミュニケーションが進み、赤ちゃんの発信に対して返したことにはなりません。赤ちゃんの「あー」には「あー」とそのままシンプルに返すだけでいいと思います。そうすれば、大人も楽ですし、赤ちゃんも、もっと声をだしてみようという意欲につながります。
シンプルに言葉を返す以外に働きかけの種類を増やしたいときには、スキンシップをしたり、優しく歌ってあげることも一つの方法だと思います。
声がかかるときに体に触れられて、それが心地よい刺激だと、この声は気持ちがいいな、もっと聞きたいな、私もだしてみたいという、コミュニケーションの意欲につながっていきます。例えば、「一本橋こちょこちょ」のような手遊び歌などもいいかもしれませんね。
また、お母さんがテレビを見ることが悪いということではありませんから、テレビなどから音楽が流れてきたときに、それに合わせてだっこしながら体を揺らしたり、一緒に歌ってあげたりするという使い方もあると思います。
大事なのは、赤ちゃんがコミュニケーションの出発点ということです。赤ちゃんが何か発信したことに対して、それを受け取って同じように返してあげるよというやり取りができるといいなと思います。


お風呂で赤ちゃんと二人きりになると気まずくて、どうすればいいかわかりません。

基本的に、父親の僕がお風呂に入れるようにしていますが、2人きりになって湯船でじっと見つめられると急に気まずくなってしまいます。必死で笑わせようとしてもなかなか笑ってくれません。どうすればいいのでしょうか。
(6か月の女の子のパパ)

どうすればいいかわからないときは、自分の話せることで話しかけてみる。

回答:榊󠄀原洋一さん

ふだん一緒に過ごす時間が少ないと、赤ちゃんにどのように関わればいいのかわからず、気まずくなることもあるかもしれませんね。そういう時は、「パパ、今日はお仕事大変だったんだよ」など、なんでもいいですから話しかけてあげるといいと思いますよ。赤ちゃんは、パパが何か話しかけてきているなということはわかりますから、そこからはじめましょう。

お風呂では赤ちゃんも体を委ねています。大人のペースで。

回答:久保山茂樹さん

ほんとにその通りだなと思います。お風呂では完全に赤ちゃんも大人に体を委ねていますから、大人のペースでどんどんお話ししてもいいと思います。ここだけの話ですが、私も仕事の愚痴を聞いてもらったことがありますよ。


赤ちゃんに話しかけるときは、声を高くしたほうがいい?

ママの声が高いので、私も声を高くして話しかけたほうがいいのかなと思い、そうしていますが、地声の低い声で話しかけてもいいでしょうか。
(11か月の女の子のパパ)

自然に高くなるという研究はありますが、こうしなければならないということはありません。

回答:榊󠄀原洋一さん

赤ちゃんや幼い子どもに話しかけるときには男性も女性も声の周波数が上がり、高い声になることがある研究で分かっています。日本人よりもヨーロッパの人たちのほうが高くなるという研究もあります。なぜかはわかりませんが自然にそうなるようです。
赤ちゃんは、お母さんの声に慣れていることが多いので、やっぱり低い声だと「あれ? 聞いたことがないな」という違和感を感じて、緊張することがあるかもしれませんね。
しかし、高くしなければいけないとか、低いほうがいいということはありません。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

ことばはまねで覚えます。まずは大人が赤ちゃんのまねをしましょう。

久保山茂樹さん

成長とともに見られなくなってしまう反応もありますので、ぜひ今しか見られない赤ちゃんの反応を夫婦で楽しんでくださいね。
そしてもう一つ、ことばは最終的にはまねで覚えます。もし、お子さんにまねをしてほしいと考えるなら、まずは赤ちゃんのまねをすることを基本にしていただければと思います。

子どもの発信に大人は全て返してあげなくてもいい。子ども一人の時間も大切。

榊󠄀原洋一さん

子どもはちゃんと見ていますし、自分で探索しています。子どもが出している発信の全てに反応しなくても構いません。子どもが一人で遊ぶ時間、静かにじっとしている時間があっても構わないということで、肩の力を抜いていただいていいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです