パパが挑戦! だっこでつくる親子関係

すくすく子育て
2019年4月20日 放送

パパたちにお聞きします。上手に「だっこ」できますか? 
「だっこ」は、赤ちゃんとの信頼関係を育むために欠かせない行為です。
そして、子どもとの初めてのコミュニケーションの練習です。
でも、パパがだっこしようとすると、なかなかうまくいかないことも多いようです。
あなたは「だっこ」、できていますか?

専門家:
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)
岩佐寛子(日本助産師会/助産師)

「だっこは子育ての基本」と言われるのはなぜ?

赤ちゃんは、だっこされることで「ここは大丈夫」と安心する。

回答:汐見稔幸さん

赤ちゃんは、変化が少なく安定したお腹の中にいるとき、とても安心して過ごしていると言われています。しかし、生まれ出てくると、周りには今まで経験したことのない世界が広がっています。光がついたり消えたりしている。さまざまな音が聞こえてくる。目の前にいる人間が、自分にとって味方なのかどうなのかも分かりません。そうした変化の多い環境では不安になってしまうのです。そういう意味では、赤ちゃんにとって、この世界は不安だらけの世界です。
「だっこ」をすることで、そんな赤ちゃんに、お腹の中にいたときと似たような感覚にしてあげることができます。「ここは大丈夫だよ」と、安心させてあげる効用があると言われているのです。

ママだって、最初からだっこが上手なわけではありません。

回答:岩佐寛子さん

赤ちゃんは、安定して支えてあげることで、とても安心しますし、リラックスできます。ママは妊娠して出産し、少しずつママになる自覚ができていきますが、パパも同様に、赤ちゃんに触れることによって親としての自覚ができていきます。ですから、パパたちも、自分でだっこすると泣いてしまうからママにはかなわないと諦めず、赤ちゃんにたくさん触れてほしいと思います。実はママも、最初からだっこが上手なわけではありませんよね。ママだって、最初はぎこちなくても、赤ちゃんの様子を見ながら少しずつだっこに慣れてきたのです。パパもぜひ一緒にだっこに慣れていきましょう。


だっこが上手にできません。だっこの基本を教えてほしい!

寝かしつけの前に僕がだっこすると、背中をピョンと反らせて飛び出ようとします。お母さんだとピタッとおさまるのに僕だとそうならないのでいつも困っています。
(4か月の女の子のパパ)

だっこすると嫌がって蹴られたり、体をグーっと離されたりしてギブアップ。妻に預けるしかなくなってしまいます。妻にも、「もうちょっと頑張ってよ」と言われます。
(11か月の女の子のパパ)

ママの声に近づくように、声を高くして話しかけると泣きやむのかなあと思ってやってみたら、子どもは泣きやまないし、ママに気持ち悪いと言われました(笑)。
(6か月の男の子のパパ)

赤ちゃんが安心するだっこの基本

解説:岩佐寛子さん

横だき

1.いきなりだっこをすると、赤ちゃんがびっくりしてしまうので、予告してあげましょう。だっこをする前に「だっこしようか?」「ねんねしようか?」など、赤ちゃんに声をかけます。

2.頭を支え、ひじの所に持って行きます。そしてグーっと赤ちゃんを連れて来て、自分の体に近づけます。赤ちゃんのお尻ではなく、赤ちゃんの膝の裏に腕を添えると背中が自然に丸くなり、赤ちゃんがリラックスできる体勢になります。

縦だき

1.お尻に手を持っていき、手首ではなくひじでお尻を支えましょう。赤ちゃんの足はダランと下ろさずにM字の形にすると、お腹とお腹が密着してだっこが安定します。


2.だっこするときの姿勢は、まっすぐに立つこと。軸がずれると、だっこをしている人も疲れやすく、赤ちゃんも安定しません。

パパのためのだっこ・おんぶ講座

ある子育て支援施設では、だっこ・おんぶ講座を開催しています。この日はパパ向けの講座に3組の親子が参加しました。

基本的なだっこをレクチャーした後、さまざまなだっこひもを使ってコツを教えてくれます。共通するポイントは、パパから赤ちゃんの顔が見えるようにすることです。

続いて、サラシひとつで簡単にできるおんぶの方法も教えてくれました。

1.長さ5m 幅30cmほどのサラシの真ん中を赤ちゃんの背中にあてる。

2.サラシを両脇に通し、胸元で強く握る。

3.サラシを握ったまま背負う。


4.肩にかかるサラシを後ろへもっていく。


5.赤ちゃんの膝の裏にサラシをあてる。

6.胸の前で結ぶ。


おんぶは赤ちゃんの手足が自由になり、災害時に避難するときなどにも便利です。
最初は赤ちゃんも嫌がることがあるかもしれませんが、慣れてくると赤ちゃんが自らしがみつけるようになり、安定しておんぶすることができます。
最近では、こうしただっこやおんぶの講座が各地で行われています。


おんぶはだっこに比べ、赤ちゃんが感じる安心感はどうなりますか?

おんぶは、あまり安定しないように思えて少し怖いのですが、大丈夫でしょうか。だっこと比べて、赤ちゃんが感じる安心感はどうなりますか? 
(4か月の女の子のパパ)

おんぶは体が密着するので赤ちゃんは安心します。

回答:岩佐寛子さん

おんぶのほうが体が密着するので、赤ちゃんは安心します。おんぶひもなど、グッズによっても少し変わりますが、サラシを使うおんぶは、赤ちゃんは大人の肩越しに顔をのぞかせることができるので、例えば料理をしているところなどを、赤ちゃんが見ることができますし、社会性が育つとも言われます。
おんぶをする場合には、気をつけていただきたいこともあります。首がすわっていること、お座りができるようになっていることの確認が大事です。また、背負っていることを忘れず、ぶつけないように気をつけましょう。

昔は、長時間の仕事や移動の際にはおんぶをしました。

回答:汐見稔幸さん

みなさん、だっこのほうが顔が見えて安心だと思われますが、おんぶはしっかりと体が固定されて安心しますし、肌の温かさも伝わります。昔は、長時間仕事をしたり移動するときにはおんぶでした。合理的な方法なんですよ。


だっこで寝かしつけができません。パパだと寝ないのはなぜ?

パパだとだっこで寝かしつけができません。ついさっきまではニコニコとパパと一緒に遊んでいたのに、眠くなってくるとパパではなかなか寝なくて、ママを探し始めてしまいます。以前、ママの体調が悪いとき、最後までパパだけで寝かしつけをしようとしたら、だっこもダメ、添い寝もダメ、だっこヒモでだっこして、ようやく寝ました。でも、おろすとまた起きてしまって、寝るまでに1時間くらいかかりました。ママにだっこされると3分ぐらいで寝ます。ママがいなくても、寝かしつけができるようにするにはどうすればいいですか。
(10か月の男の子のパパ)

だっこを通じて子どもとコミュニケーションの練習をしましょう。

回答:汐見稔幸さん

子どもには、興奮させてほしいという欲求と、しずめてほしいという欲求の2つがあります。お父さんには「たかいたかい」など、興奮させてほしいと希望し、お母さんにはしずめてほしいと子どもが希望する傾向があることは実験でも確かめられています。興奮させることはお父さんのほうが上手だということを知っているのです。ですからお父さんがお母さんと同じように寝かしつけをするには、相当苦労すると思います。ですから、それまで一緒に遊んでいて興奮させてくれたお父さんが、急にしずめて寝かせようとすると、子どもが「今まで一緒に遊んでいたのに、どうして寝かせるの?」と思ってしまうのかもしれません。
だっこは子どもとの初めてのコミュニケーションの練習です。コミュニケーションというのは、「この子は今、どういうことを求めているのだろう」ということを感じ取ること。この姿勢でダメなら、これはどうかな?と試しているうちに、その子なりの求めていることが少しずつ想像できるようになります。
例えば、縦だきのほうがよく寝る子もいれば、横だきのほうがよく寝る子もいます。それは個性の違いのようなもので、それを見つけてあげることがだっこの練習なのです。
ですから、だっこでそれができるようになると、いろんな遊びや、複雑なコミュニケーションもその子の求めに応じてできるようになっていきます。ですから、だっこの正解を探すのではなく、だっこを通じて子どもとコミュニケーションができるようになる練習をすると考えるといいと思います。

「寝かしつけをしよう!」と肩に力を入れず、リラックスして。

回答:岩佐寛子さん

寝かしつけようと思って肩に力が入ってしまうと、その緊張感が子どもに伝わってしまい、なかなか寝ない要因になってしまいます。寝かしつけのだっこをする前には、パパも腕を回すなどして、ゆったりとした気持ちでお互いにリラックスできるようにだっこすることがポイントです。
また、パパがどうしても寝かしつけができないときには、ママとパパがしっかり話し合ってみましょう。寝かしつけはママがするけれども、パパがその間に食器を洗ったり家事をしたりすることで、ママの大変さが軽減されることもあります。寝かしつけにこだわるだけでなく、ママは何をしてほしいのか、コミュニケーションをとるようにしてください。

だっこでの寝かしつけには、まず、スキンシップで安心感を与えましょう

1. マッサージでコミュニケーション

足に赤ちゃんをのせて、声を出しながら背中をマッサージ。密着しているから、パパの声が赤ちゃんに響いて気持ちよくなっていきます。

2. 丸い姿勢でだっこする

前向きで赤ちゃんのひざの下に手を通して、背中が丸くなる姿勢でだっこし、足でリズムをとります。これはお腹の中にいたポーズに近いので赤ちゃんがよりリラックスします。

3. 縦だきで寝かしつけ

縦だきで寝かしつけにトライします。赤ちゃんは1、2ですでにリラックスした状態になっているため、縦だきをすると自分からしがみついてきます。体をピッタリ密着させてリズムをとり、背中を軽く叩いてあげましょう。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

発達に応じてだき方を工夫する。パパとママの仲がいいと、パパにも安心感を持つ

岩佐寛子さん

赤ちゃんの発達に応じて、だき方もぜひ工夫していっていただきたいと思います。また、子どもはママのことが大好きなので、パパとママが仲良くしていると、「パパは安心できる存在だ」と分かって安心します。パパとママが仲良くすることも大切です。

信頼する人とスキンシップをすると、対人関係のベースができる

汐見稔幸さん

信頼する人に体をくっつけたり、手をしっかりと握ってあげることは、心の安定にとても大きな効果があることが分かってきています。そういうスキンシップをしっかりとした人は、人の関係を不安に思うことなく、対人関係のベースができるようです。大きくなってもいろいろな折に、しっかりとだっこをしてあげてほしいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです