すくすく子育て
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いままでの放送内容

生まれつき? 育て方? 子どもの能力を伸ばすには

  • 放送日: 2019年4月13日(土)

子どもの能力は生まれつきなのか、それとも育て方なのか。気になりませんか?
自分に苦手なことがあると、「私に似てしまったらどうしよう」とちょっと心配。
さらに、最近気になるのは、スポーツや将棋・囲碁の世界で活躍している子どもたち。
あの能力は生まれつきなの? それとも育て方なの?
最新の研究で、「行動や能力すべてに遺伝の影響がある」ということもわかってきているようです!

専門家:
榊󠄀原洋一(お茶の水女子大学 名誉教授/小児科医)
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)

親の苦手なところは似てほしくない。遺伝の影響を教えて!

私はスポーツが得意で、学生時代はバレーボール部のエースでした。息子は運動神経は私に似ているようで、身体を動かすのが大好きです。でも、私は勉強が苦手だったので、学力については私に似てほしくないと思っています。遺伝の影響を教えてください。
(3歳4か月と1歳1か月の男の子のママ)

行動遺伝学者に聞く 遺伝と環境の関係

慶應義塾大学教授 行動遺伝学 安藤寿康さん

これまで、のべ1万組のふたごを調べた結果、心や行動にも遺伝が深く関わっていることがわかりました。運動神経、学力、人の気持ちを察すること、努力する傾向が強いか弱いかなどにも、遺伝的影響は同じようにあります。

グラフのように、IQは50~60%、外向性などのパーソナリティは30~50%の遺伝の影響があることがわかっています。
能力や性格に遺伝が影響するというと、「この親にしてこの子あり」「かえるの子はかえる」のように、親の能力や性格をそのまま受け継ぐかのように受け止めがちですが、人間の能力は何百何千という遺伝子の総合、総和として現れているものです。同じ親からでも無限に近い組み合わせが生じます。

父親・母親のもつ遺伝子の対の片方同士が組み合わさり、両親とは違う新しい組み合わせができるため、子どもの遺伝子が両親やきょうだいと同じ組み合わせになることはなく、子どもには異なる新しい遺伝的素質、新しい能力が備わっているといえます。親が苦手だからといって子どもも同じことが苦手になるとは限らないのです。

子どもの得意な能力は、「初めてやるのに、うまくできた」「最初はできなくても、続けていくうちに、ものすごく、ぐんと伸びた」というところに現れることがあります。特に子どもが小さいうちは、その子が「何に興味関心を向けるか」がヒントになります。
子どもが親の苦手を受け継ぐのではと心配するより、いま子どもが何に興味関心を持っているかに目を向けましょう。


夫婦ともに英語が苦手です。子どもに遺伝の影響はありますか?

わが家は夫婦ともに英語が苦手です。私は小さい時に英語を習っていましたが、全く身につきませんでした。英語は必要だと思うので、得意になってほしいと思っています。遺伝の影響はありますか。
(3歳4か月の女の子と1歳3か月の男の子のママ・パパ)

語学の得手不得手には、遺伝の影響はほとんどありません。

回答:榊󠄀原洋一さん

英語が苦手という人は多いと思います。その原因の一つは、例えば小さい時に習い始めたとしても、日常的に使わないため、定着せず、身につかないということが考えられます。英語が必要な環境になれば話せるようになるものです。遺伝なのか、生まれつきの能力なのかということは、考える必要はありません。もちろん生まれつき聞き取りが得意な人や音感がいい人などは確かに英語の会話が早くうまくなることもありますが、私たちが物事を学ぶ時には、それが自分にとって必要かどうかということが非常に重要です。お父さんとお母さんが英語が苦手だとしても、そのことはほとんどお子さんに影響はありません。お子さんは自分が本当に必要な環境の中に入れば、英語も中国語も話せるようになります。

遺伝で説明されない部分は環境で説明される。

回答:遠藤利彦さん

先ほど、遺伝からどのくらいの影響を受けるかというお話がありましたね。
IQは50~60%、外向性などのパーソナリティは30~50%ということでした。では、遺伝で説明されていない部分は何かというと、このように環境で説明されます。

IQなら50%、半分は環境によって説明されるということになります。また、遺伝と環境は単純な足し算ではなく、その関係性はかなり複雑だということもわかってきています。遺伝に含まれることの中には、これから先、その子がどんなものを環境から選び、あるいは自分でどのように環境を作っていくかということにも影響すると言われています。

遺伝と環境の相互作用が「個性」につながる

持って生まれた遺伝子には、その子が発達するために必要な情報が書き込まれています。
仮に、音楽についての情報が書き込まれている子どもは、歌を聴いたり、楽器を演奏したりすることが好きな傾向があります。 その子の周りに音楽的なものがあると、子どもはそれを好んでやり始め、能力を花開かせていきます。自然に関心がある子どもであれば、虫や植物に触れる環境を好み、ものづくりに関心がある子どもであれば、もの作りができる環境を好むというように、遺伝と環境が相互に作用し合い「個性」となります。


子どもの能力を伸ばす環境、親ができることは?

子どもにいろいろなことを経験させて、能力の幅を広げてあげたいと思っています。
本物に似た音を聞かせて音楽が好きになればいいなと思い、息子におもちゃのピアノを購入しましたが、あまり興味を示してもらえません。私はパズルが苦手なのですが、子どもの頃、算数が得意な友達がパズルをやっていたので、パズルも買いました。私が一生懸命になればなるほど、息子の気持ちは離れてあまりパズルで遊んでくれません。
息子が今一番夢中になっているのは砂遊び。他の遊具には見向きもせず、砂をサラサラ落とすだけ。1時間ほど夢中になって遊んでいます。山を作ってトンネルを掘るとか、もっと建設的なことをしてほしい。砂を落とすだけでは何も役に立たなさそう。子どもの能力を伸ばす環境って、どうやって作ればいいのでしょうか。
(2歳7か月の男の子と5か月の女の子のママ)

「自発的に夢中になって遊んでいるとき」にいちばん頭を使っています。

回答:遠藤利彦さん

パズルはご両親があまり好きではないけれどお子さんにやってほしいということですね。ピースが全くバラバラのところから始めるのは大変ですから、取り組みやすいように、まずパズルの完成形を見せ、それを崩してやり始めるといいと思いますよ。
また、砂遊びですが、とても集中して遊んでいるようですね。夢中になっている時は、「科学者と同じ頭の働きが起きている」と言われています。科学者は、「これって何だろう」「きっとこうなんじゃないか」という仮説を立て、実際にやってみます。つまり実験をするのです。きっと、砂が落ちるとどうなるかを実験しているのでしょうね。
乳幼児期は、特に「頭を使う経験そのもの」が重要です。子どもは、「自発的に何かに夢中になって遊んでいるとき」にいちばん頭を使います。夢中になって遊んでいるときは、ぜひじっくり見守ってあげてください。


どうやって子どもの興味関心を見守ればいい?

娘はいろいろなことに興味があって、逆に一つのことに集中できません。例えば、滑り台に並んでいても、並んでいる間に砂場に行ってしまいます。よく言えば好奇心旺盛なのかもしれないのですが、集中力がない、落ち着きがないなと感じることがあります。子どもが能力を伸ばせるように興味関心を見守りたいと思いますが、親ができることはないでしょうか?
(3歳4か月の女の子と1歳3か月の男の子のママ)

2歳から3歳ぐらいは「自分探しの時期」

回答:遠藤利彦さん

乳幼児期、特に2歳から3歳ぐらいは、「自分探しの時期」と考えるといいと思います。お子さんは、「自分の好きなものは何かな?」と、探しているのです。この時期は、イヤイヤ期とも言われますが、「これやってみたけど、おもしろくないな」「やりたくないな」ということはすぐわかります。では、自分の好きなものは何かということは、まだよくわかりません。うまく探すことができたら、それこそそれに集中することができます。
こんな時期は、親としては、いろいろなところに連れていったほうがいいんじゃないか、いろいろな習いごとをさせたほうがいいんじゃないか、と考えがちですが、子どもにとっては台所用品だって、お風呂用品だって、なんでもおもちゃや遊び道具になり、実験の対象になります。子どもは、遊具が少なければ自分で探そうとしますし、あるいは何かに見立てて遊ぶこともできるのです。

私の娘は0歳なので、まだ何に興味があるのかわかりませんが、何歳ぐらいから興味関心を持つようになりますか?
(8か月の女の子のママ)

子どもの行動をよく見ると好きなものが見えてくる。

回答:榊󠄀原洋一さん

まだ歩けないうちは、何に興味があるかはわかりづらいですよね。2歳ぐらいになると、たいていの場合は一人で歩いて好きなところに移動ができるようになります。そして、立ったまま何かを触ったり、いじったりすることができるようになり、探索が始まります。
その時、お子さんがとる行動をよく見ていると、あ、この子はこれが好きだなということが見えてくると思いますよ。3歳、4歳になるともっとわかりやすくなります。

息子は、私が一緒にいないと何かをやろうとしません。例えば、一人だとおもちゃにも興味を示しません。どうすればよいでしょう?
(1歳9か月の男の子のママ)

一人で行動できなくても心配はない

回答:遠藤利彦さん

一人で遊ぶことが楽しい子もいれば、人と遊ぶほうが楽しい子もいます。お子さんは、お母さんと一緒にすることに喜びを感じているのかもしれません。一人で行動しないことがあったとしても、心配しなくてもよいと思います。

子どもに関わってあげることは大事なこと

回答:榊󠄀原洋一さん

子育ての極意は、子どもが何に関心を持っているかを見守り、例えば子どもが親の手を引いたら一緒に行ってあげることです。基本的には見守って、求められたら応える。そんな関わり方ができていればだんだんその子の好みもわかってくると思います。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

持って生まれたものを心配するより、どう生かすかが大事

榊󠄀原洋一さん

両親の遺伝子からの組み合わせではありますが、子どもには親とは異なる新しい遺伝的素質、新しい能力が備わっているという話がありましたね。その持って生まれたものについて心配することはありません。残りの50%をどう生かすかということが大事だと思います。そしてそれは、子どもの興味や行動を見守るということです。

乳幼児期を大人のための準備期間にせず、自由に目的のない遊びをいっぱいさせましょう

遠藤利彦さん

自分はこういうことが不得意だから、将来この子が困らないようにと考えて、将来の準備、大人になるための準備だけに乳幼児期を当ててしまうのは、とてももったいないと思います。乳幼児期にいちばん大切なことは「自由に自発的に目的のない遊びをたくさんする」ということです。これを本当に大切にしてほしいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです