どうする? はじめての習いごと 運動編

すくすく子育て
2019年2月9日 放送

習いごとが子どもに向いているかどうか、どう判断したらいい? 教室に通うのを嫌がったらどうする? そんな「習いごと」についての疑問やお悩みを2回にわたって取り上げます。
今回は、運動系の習いごとについて考えていきます。

専門家:
榊󠄀原洋一(お茶の水女子大学 名誉教授/小児科医)
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)

スイミングは丈夫な体づくりに効果があるの?

6か月になる息子をスイミング教室に通わせはじめました。スイミングで体力がつくというイメージを持っているのですが、丈夫な体づくりに効果があるのでしょうか。もうすぐ保育園に入れることも考えていて、集団生活で病気をもらっても負けないような、丈夫な子に育ってほしいと思っています。
(6か月の男の子をもつママ・パパより)

スイミングは基本的な体力づくりに適している

回答:榊󠄀原洋一さん

小さい子どもの場合、体に大きな負荷が掛かるような運動はよくありません。水泳は、水中で体を動かすので体への負荷が少なく、小さい子どもにも適しています。全身を使った運動でもあり、基本的な体力をつけるためにはよい運動です。心肺機能を鍛えることにもつながります。

運動能力と免疫力は違う

回答:榊󠄀原洋一さん

「体力」という言葉には、体を動かす運動能力と、病気への免疫力の、2つの意味があります。運動することと運動能力には関連がありますが、免疫力については簡単にはいえません。基本的に運動しているほうがよいとされつつも、運動をしていない子どもが風邪をひきやすいわけでもないのです。

乳幼児に運動の機会をつくってあげる

回答:遠藤利彦さん

近年、乳幼児期の子どもたちの運動量が減少しているのではないかという指摘がされています。保育施設に園庭がなかったり、安全に遊ばせることができる公園が近くになかったり。そのような環境で、運動する機会が大きく減って、子どもたちの運動量が限られている場合があります。親が意図して、子どもに運動できる機会をつくってあげることも重要です。運動系の習いごとが、その役割を補う部分もあると思います。


習いごとを親の都合でさせていい?

8か月になる双子と、4歳になる双子の、4人の子どもたちを育てています。4歳の双子は元気いっぱいで、いつも保育園の帰りに、1時間ほど公園で遊ばせています。それでも体を動かし足りないようだったので、2人を体操教室に通わせることにしました。家事や育児で手一杯な私にとって、教室で子どもをみてもらえることも理由のひとつです。子どもたちは楽しんでいますが、親の都合で勝手に決めた習いごとなので、申し訳ない気持ちがあります。
最近わかったことですが、双子の1人は折り紙や絵を描くことも好きなようで、運動系よりも芸術系が向いているかもしれないと思うようになりました。でも、私が忙しくて余裕がないので、そのまま体操教室を続けています。こんな親の勝手な都合で、習いごとをさせていいのでしょうか。
(4歳の双子の男の子と8か月の双子の男の子をもつママより)

子どもたちは楽しんでいる。教室を育児サポートと考えてもいい

回答:遠藤利彦さん

もともと「集団共同型の子育て」が、人という生き物の子育ての形態だったといわれています。家族だけでなく、血縁関係のない人でも、みんなで一緒に助け合いながら子どもを育てることが当たり前なのです。ご相談のママは親の都合で習いごとをさせているという罪悪感を抱いていますが、思い悩む必要はありません。
ママは「親が勝手に体操教室を選んだ」と言いますが、きっと、子どもたちの適性を潜在的に感じて「体操なら子どもたちが楽しめるだろう」と考えたのではないでしょうか。また、体操教室に育児をサポートしてもらっているという気持ちでもよいと思います。子どもたち自身も楽しんでいますので、大丈夫だと思います。

体操も折り紙も協調運動

回答:榊󠄀原洋一さん

体操をするとき、バランスを保って、体全体をうまく動かしていきます。このようないろいろな動作をまとめる運動を協調運動といいます。実は、折り紙を折ることも、指先の細かい動きの協調運動なのです。お子さんは協調運動が発達しているのではないかと思います。

罪悪感を抱く感受性を大事に

回答:榊󠄀原洋一さん

ご相談されているママは、子どもに対して罪悪感を抱く感受性があります。4人の子どもたちを育てて、これだけの感受性を持ち続けるのはすごいことだと思います。アメリカの研究で、感受性が強い保育者に育てられた子どもは、よく育つということがわかっています。親が罪悪感を抱いてもよいのです。それだけの感受性があれば、子育てで間違えることはないと思います。


習いごとが子どもに向いているのか見極めるには?

2歳になる息子をスイミングとリトミックに通わせています。でも、本当に子どもに向いているのかわかりません。例えば、教室でよそ見をして違うことをやっていたりします。息子はまだ言葉が話せないので、楽しいかどうかを聞くこともできません。習いごとが向いているのかを見極める方法はありますか?
(2歳1か月の男の子をもつママより)

子どもが好きかどうかをみる

回答:榊󠄀原洋一さん

習いごとが子どもに向いているかをみるポイントは、子どもが「それが好きかどうか」です。好きであれば、向いていると考えていいでしょう。ただし、習いはじめのころは本人もわからないと思うので、しばらく様子をみて、本人が喜んでいるかをみてみましょう。

技術としての運動に向いているかは、5~6歳を過ぎてから

回答:榊󠄀原洋一さん

サッカーや水泳などの才能といわれるような「運動の技術」が子どもに向いているかどうかは、この年齢(2歳)ではわかりません。体の運動能力が伸びて、いろいろなことができるようになるのは、5~6歳を過ぎてからです。その時期まで習いごとを続けていれば、向いているかがわかってくると思います。

習いごとが好きかどうかは、どこをみて判断すればよいですか?

好きかどうかは子どもの表情で判断

回答:榊󠄀原洋一さん

子どもの気持ちは、率直に表情に表れます。本人がうれしいときは、うれしそうな表情をします。子どもがそのような表情を見せているのであれば、それが好きだと考えて間違いはないでしょう。

好きなものをじっと見る傾向がある

回答:遠藤利彦さん

子どもは好きなものを“じっと見る”傾向があります。表情から読み取れないときでも、子どもがじっと何かに関心を持って見ているのであれば、「それが好きなのでは」と判断するひとつの材料になると思います。


習いごとに通うのを嫌がるときは、どうしたらいい?

子どもをスイミングとピアノの教室に通わせています。でも、スイミングのレッスンに行くたびに、子どもが嫌がって泣きます。それでも、レッスン自体を嫌がることはなく、終わった後は楽しそうにしています。子ども自身も上達しているし、できるようになったことを本人がうれしそうに話してくれることもあります。子どもを泣かせてまで習いごとをやらせるべきなのか悩みながらも、とても意味があるようにも感じて、親の頑張りどころなのかなと思っています。習いごとに通うのを泣いて嫌がるとき、どうするのがよいでしょうか。
(3歳7か月の男の子をもつママより)

ウォームアップに時間がかかる場合も

回答:遠藤利彦さん

子どもが泣いている理由を見極めることも大切だと思います。スイミング自体が嫌で泣いているのではなく、家を出て非日常的な場所に行こうとすることが嫌なのかもしれません。
また、ウォームアップに時間がかかる気質の子どももいます。ちゃんとできるけど、できるようになるまで少し時間がかかるわけです。お子さんはそのようなタイプかもしれません。

休ませた後、本人が「行きたい」と言えばチャンス

回答:遠藤利彦さん

1~2回ほど、スイミングを少し休ませるのもひとつの方法です。休ませたとき、本人が「水泳は楽しかった」と感じて、「また行ってみたい」と言えばチャンスです。スイミング自体が好きかどうかを判断するためには、子ども自身が落ち着いて考えることができる機会をつくってあげることも大切です。

「好きでやりたい」という気持ちをうまく支える

回答:遠藤利彦さん

乳幼児期は、子どもの「好きでやりたい」気持ちをうまくとらえて、その気持ちを支えてあげることに力点を置いたほうがよいでしょう。1度でも「水泳は楽しい」という感覚を味わった子どもであれば、きっと「もう一度やってみたい」と考えると思います。

私は、幼稚園から小学校の高学年までスイミング教室に通っていました。はじめは楽しかった記憶があるのですが、だんだんと嫌な気持ちが出てきたことを覚えています。親から、全種目が泳げるまでは頑張ろうと言われていたんです。大人になった今では、最後は全種目泳げるようになったこともあり、やめなくてよかったとも思えます。とはいえ、嫌だったことも事実で、続けることがよかったことなのか疑問が残っています。
(6か月の男の子をもつパパ)

スポーツは楽しむことが重要

回答:榊󠄀原洋一さん

スポーツクラブでコーチが付いて運動しているような子どもと、鬼ごっこなど自由に遊んでいるような子どもが、その後どうなっていくのか追跡調査した研究がアメリカで行われました。調査の結果、子どもが青年期になってスポーツを楽しんでいる割合は、自由に遊んでいた子どもたちのほうが大きいことがわかったのです。
運動の重要なポイントは「楽しみ」です。競技になると、競うことでの「つらさ」が出てきます。特に挫折の経験がある子どもは、よい思い出が残らず、スポーツを楽しむ機会が減ったのではないかと思われます。大人になって「よかった」と思える人がいる一方で、「つらかった、本当に嫌だった」と感じる人もいます。

達成感は重要な経験。小さいうちは楽しいを尊重

回答:遠藤利彦さん

スイミングをつらいと感じる一方で、全種目泳げるようになったときは達成感があったと思います。達成感は、子どもが大きくなったときに重要になる経験です。そして、スイミングをはじめたころの、乳幼児期の「楽しかった」という記憶があった。それらが、「大人になった今では、よかったと思える」ことにつながっているのかもしれません。子どもが小さなころの習いごとは、本人の「楽しいからやりたい」という気持ちを尊重してあげることがいちばん大事だと思います。


すくすくポイント
子どもの体の発達と習いごと

子どもの体の発達の面から「運動系の習いごと」について考えてみましょう。

例えば、人がボールを蹴るときは「ボールを目で見て、足を動かして、ボールに当てる」という動作を行います。このとき、目・脳・体にある神経に信号が伝わって、ボールを蹴ることができるのです。

大人の場合、神経の信号が伝わるスピードは、およそ時速200km/hといわれています。ところが、乳幼児の場合は、大人の3分の1のスピードです。3歳くらいの子どもは、基本的な体の機能や構造はでき上がっていますが、神経系の働きがまだ整っていないため、神経の伝達スピードが遅くなります。基本的な運動はできていても、まだ発達の途上なのです。

どんなに運動神経がいいと思う子どもでも、2~3歳ではできないことがあります。例えば、ピアノを速く弾くことは、生物学的・医学的にできないのです。そのほか、何秒か片足立ちでとどまることも、3~4歳の子どもにはできないのです。運動神経が成熟するまでには6~7年かかります。早くからいろいろな運動を経験させればできるというものではありません。
(榊󠄀原洋一さん)

体ができあがってからでないと、できない運動もあります。
運動系の習いごとをさせるときは、体の発達段階も考えてみましょう。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです