どうする? はじめての習いごと 芸術・知育編

すくすく子育て
2019年2月2日 放送

乳幼児期の習いごとは、いつからはじめたらいい? 選ぶときのポイントは? 何が子どもの将来に役立つの? そんな「習いごと」についての疑問やお悩みを2回にわたって取り上げます。
今回は、芸術系や知育系の習いごとについて考えます。

専門家:
河邉貴子(聖心女子大学 教授/幼児教育学)
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)

はじめての習いごとは、どういうポイントで選んだらいい?

まわりを見ていると、子どもに習いごとをさせるのが当たり前な気がして、子どもが出遅れないようにと焦りを感じています。毎日のように教室を調べて、スイミングや英語教室の見学にも行きましたが、どれも決め手に欠けます。
そんな中で、習わせてみたいもののひとつがピアノです。娘はおもちゃのピアノが好きなので、本物のピアノに触れさせたいと体験教室に行きました。教室の先生は「これはママみたいなかわいい音、こっちはパパみたいな音だね」と声をかけてくれるなど、工夫しながら子どもにピアノを体験させてくれました。娘も楽しんでくれたようです。
とはいえ、このまま決めてよいのかやっぱり悩んでしまいます。習いごとを選ぶポイントを知りたいです。
(2歳7か月の女の子をもつママ・パパより)

子どもが興味を持っているかは、うれしそうな表情でわかる

回答:河邉貴子さん

まわりの子どもたちと比較して「出遅れている」と考えるのではなく、本当に子どもが興味を持っているか、好きなことなのかという観点でみてあげてください。子どもがおもちゃのピアノが好きで、体験教室で本物のピアノにもうれしそうに触っていたのであれば、ピアノに興味を持っていると考えてよいと思います。そもそも、子どもは全く興味のないものには食いつかないものです。
また、親が先生の教え方や教室の雰囲気を心地いいと感じるかどうかも大事だと思います。習いごとをさせようとするのではなく、「楽しかったね」「うれしかったね」といった親子の気持ちを大事にしていきましょう。

子ども自身の物差しで考えて、他の子どもと比べない

回答:遠藤利彦さん

習いごとに関して、他の子どもと比べるという発想は持たないほうがよいと思います。子どもが、どのようなことに関心を持って、どれぐらい楽しめたか、興味がどれぐらい継続したか、など、子ども自身の物差しで考えたほうがよいでしょう。

心が豊かになることが習いごとの大きな効果

回答:河邉貴子さん

子どもが、習いごとの教室や先生に物おじすることなく、その子らしく自然でいられることも大事なポイントです。お話にあった体験教室の先生のように、子どもが興味を持てるように工夫をされているのは、とてもよいことだと思います。習いごとで出会った人が大切な友達になったり、教室がかけがえのない場所になることもあります。このように、子どもが「何かができるようになる」ことより、子どもの「心が豊かになる」ことが習いごとの大きな効果だと思います。


習いごとは、そもそも必要なの?

家では子どもに、歌を歌ってあげたり、絵本を読み聞かせたりしています。パパは卓球が好きで、ラケットやピンポン玉で遊ばせたりもしています。子どもに習いごとをさせる予定はないのですが、習いごとはさせたほうがよいのでしょうか、そもそも必要なのでしょうか。
(1歳6か月の女の子をもつママより)

文化に出会う機会が大切

回答:河邉貴子さん

私は、習いごとは「文化との出会い」だと考えています。習いごとでなくても、家で子どもに歌を聞かせたり、絵本を読んであげることも、すてきな文化との出会いだと思います。習い事というかたちでなくとも子どもにそのような機会を作ってあげて、親子で一緒に楽しむことが大切だと思います。私自身も小さいころに習いごとをしていませんでしたが、親が美術館や博物館によく連れて行ってくれていました。
また、子どもが3~4歳になり友達関係ができてくると、「〇〇ちゃんが〇〇を習っているから自分もやりたい」と自分から言ってくることがあります。そのときに、習いごとをどうするのか、子どもと相談しながら考えてみてはいかがでしょう。

家庭で幅広い経験ができているならそれで十分

回答:遠藤利彦さん

子どもにとっては、幅広い経験ができることが重要です。習いごとは、その手段のひとつにすぎません。例えば、家庭でいろいろな遊びができて、多様な経験をすることができる状況であれば、習いごとをしていなくても十分だと思います。


幼児期でなければ伸ばせない才能はあるの?

2人の子どもを育てていますが、習いごとはさせていません。私自身が幼児期の習いごとで何かが身についた実感がないのです。中学校高校で習ったダンスでは、自分の所作や姿勢がよくなったという実感があります。その一方で、幼児期からはじめないと伸ばせない才能があるのではないか、と気になることもあります。できれば感性の豊かな子になってほしいと思うので、今からはじめないと遅くなってしまう習いごとがあれば知りたいです。
(3歳3か月の女の子と6か月の男の子をもつママより)

幼児期にはじめないと身につかないものは少ない

回答:遠藤利彦さん

例えば、絶対音感は幼児期からトレーニングを受けておかないと後から身につけるのは難しいといわれています。ですが、絶対音感のように「〇歳からはじめないと身につかない」ことはとても少ないのです。また、プロの音楽家が必ず絶対音感を持っているわけでもありません。
子ども自身が「やりたい」と思っていることは、基本的に身についていきます。ご相談のママのように、小さいころの習いごとが生きていないと感じるのは、受け身であったためかもしれません。

経験が教養となり、ものの見方が変わる

回答:遠藤利彦さん

幼児期の経験が、教養になるという考え方もあります。例えば、バイオリンを習った経験がある人は、経験がない人よりも、バイオリンの演奏を聞いたときに多くのことを感じることができると思います。大人になって、人生を楽しむときに、そういった教養が生きてくるかもしれません。


知育系の習いごとをさせたほうがいい?

子どもの可能性を伸ばすために、小さいころからいろいろな環境に触れさせたいと考えていて、生後3か月からリトミック教室に通っています。最近は知育系の教室も気になっていますが、知育系の習いごとは本人が息苦しくなるのではないかと心配です。子どもには、ふだんから絵本や図鑑を見せていて、英語の絵本にも興味を示しています。そんな知的好奇心が強い様子をみると、教室に通わせたほうがよいのか迷ってしまいます。知育系の習いごとはどう考えればよいのでしょうか。
(2歳6か月の女の子をもつママより)

番組には、知育系の習いごとについて、以下のような質問もたくさん寄せられています。

  • 英語は幼児期から習わせたほうがいい?
  • 早く学習させることで勉強の苦手意識がなくなるのでは?
  • 遅れをとらないためには小学校に入る前に何を習わせておけばいい?

幼児期に身につける大事な力がある

回答:遠藤利彦さん

多くの親は、勉強ができて成績がよい子どもになってほしいと思い、幼児期から早期教育・知育教育を受けたほうがよいのではないかと考えがちです。ですが、いろいろな研究の結果、幼児期には「自分を大切にして自分を高めていこうとする力」を身につけることが大事だとわかってきています。例えば、子どもが、自分がおもしろいと感じたことに夢中になり頑張って続けることや、やればできるという感覚を持つことです。それが、子ども自身が「勉強がおもしろい」「続けたい」「頑張ろう」と思えることにつながるのです。同じように、人とうまく関わっていく力も大事で、先生や友達とうまくやっていくことにつながっていきます。このように、「自分を大切にして高めていこうとする力」や「人とうまく関わっていく力」が、結果的に、勉強ができて、よい成績をとることにつながっていくのです。

評価にさらされると興味・関心がなくなることも

回答:河邉貴子さん

子どもは、できる・できないといった評価にさらされたり、目標を決められてやらされると、途端に興味や関心がなくなることがあります。子どもにとっては、「本当に好きで、追及したいもの」に出会わせてあげることが大事だと思います。

親としては、小学校で勉強に出遅れてしまうことへの不安があり、基礎だけでも早く覚えたほうがよいのではと思ってしまいます。

幼児期に必要なのは頭を使う経験

回答:遠藤利彦さん

幼児期だからこそできることがたくさんあります。例えば、子どもが自分で選んで好きなことをできることです。この時期を小学校の準備期間と考えるのは、もったいないと感じます。幼児期の段階では、「何かができた結果」より、「頭を使う経験そのもの」が大切で、その経験がどれぐらい豊かにできるかが重要です。そして、子どもがいちばん頭をよく使うのが、自発的な遊びで夢中になっているときなのです。

子どもが夢中になって遊んでいるとき、親ができることはありますか?

容易に答えを与えず見守る

回答:遠藤利彦さん

子どもは「科学者」に似ているといわれています。興味を持ったものに夢中になって、どうなっているのだろうと疑問を持ち、考えて、仮説を立てて、実際にやってみようと実験する。うまくできなかったら、もう一度仮説を立てて、また実験する。子どもは、これが楽しくて、延々と繰り返しているわけです。そんなとき、親は容易に答えを与えず、見守ってあげることが大切です。


すくすくポイント
データでみる みんなの習いごと

気になる子どもの習いごと。スイミングやサッカー、リトミックやピアノや英語、最近ではプログラミングの教室もあります。ある調査によると、子どもが6歳になると、全体のおよそ8割が習いごとをしているそうです。


※「ベネッセ教育総合研究所 学校外教育活動に関する調査 2017」より

芸術系の習いごとでは「音楽」に関連するものが人気です。


※「ベネッセ教育総合研究所 学校外教育活動に関する調査 2017」より

スポーツ系の習いごとでは、「スイミング」が2000年以降不動の人気だそうです。


※「ベネッセ教育総合研究所 学校外教育活動に関する調査 2017」より

学習系の習いごとでは、2位に差をつけて、「英語」がいちばんの人気です。


※「ベネッセ教育総合研究所 学校外教育活動に関する調査 2017」より

そして、幼児期に「音楽や芸術の習いごとをするよりも、もっと勉強をしてほしい」と考える親が年々増え、2017年の調査では40%になっています。多くの親が、小学校に上がる前から、子どもに勉強をしてほしいと思っているようです。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです