お願い上手になろう!

すくすく子育て
2019年1月5日 放送

子育てや家事、仕事で毎日が忙しく、誰かに助けてほしいときもありますよね。でも、人に頼ったら迷惑にならないか? 私が頑張ればいい⋯ と思っていませんか? 「お願い上手」になる方法を一緒に考えましょう。

専門家:
倉石哲也(武庫川女子大学 文学部心理・社会福祉学科 教授/臨床福祉学)
吉田穂波(神奈川県立保健福祉大学 教授/産婦人科医)

子どものこと、お願いしたら迷惑じゃない?

仕事に復帰して4か月になりますが、育児や家事もあり毎日が大変で、誰かに頼りたいときもあります。例えば、病院に行くときに子どもを誰かにお願いできると助かります。でも、それが相手にとって迷惑にならないか心配です。同じように子育てをしている友達もいますが、相手も子育てをしているし、「いいよ」と言ってもらえても、本当は負担になっているのではないかと思ってしまいます。お願いすることは迷惑にならないのでしょうか?
(5歳9か月と9か月の男の子をもつママより)

まずは身近な人と会話をしてみる

回答:倉石哲也さん

今、子育て世帯が社会的少数派になっています。公共の場所では迷惑をかけてはいけないなど、気持ちが小さくなってしまうかもしれません。すると、人にお願いしようとしても「申し訳ない、私のわがままかもしれない」と、引け目を感じてしまうわけです。まずは、お願いごとでなくても、身近な人と会話をしてみましょう。職場の同僚と、子どものことを話したり、相手のことを聞いてみたりでよいと思います。

お願いすることは、相手のメリットにもなる

回答:吉田穂波さん

お願いすることは、信頼の証であり、相手にとってもメリットがあります。世界的な調査や研究で、誰かの役に立つことは、自己肯定感が上がり健康的にも心理的にもよいという結果が出ています。お願いされた相手の「誰かの役に立ちたい」という気持ちは、その人のためにもなるのです。


相手とケンカにならないようなお願いのしかたを教えて!

仕事をしながら、育児や家事のほとんどをしています。娘がイヤイヤ期に入ってからは、家事が思うように進まず、時間に追われる毎日に身も心も疲れを感じます。パパは育児や家事を全くしないわけではないのですが、もっと関わってほしいというのが本音です。パパには、今の状況を見て気づいてほしいと思いつつ、なかなかわかってもらえないようです。パパに何かをお願いするとき、言い方を間違えるとイラッとさせてしまうし、それなら私が我慢した方が⋯と思ってしまいます。お互いにイラッとしない伝え方があれば知りたいです。
(2歳4か月の女の子をもつママより)

パパには具体的にお願いする

回答:倉石哲也さん

パパにお願いするときは、具体的に伝えることがポイントです。例えば、お風呂掃除をお願いするときは、「洗剤と道具はこれ。ここをこう洗ってほしい」など、細かく伝えたほうがよいと思います。特に最初はしっかりと教えてください。そして「ここはあなたにお任せしましたよ」と信頼を伝えることも大事です。

「ありがとうのサンドイッチ」で感謝の気持ちを伝える

回答:吉田穂波さん

私も、以前は夫婦で勝敗を争うようなやりとりをしていましたが、今は相手への感謝の気持ちをふんだんに伝えることを心がけています。自分のお願いがきいてもらえるかどうかにかかわらず、その人の存在だけでもありがたいと思ってお願いするようにしています。そのような、お互いが気持ちよくなる伝え方を「ありがとうのサンドイッチ」と呼んでいます。

<ありがとうのサンドイッチ>

感謝の言葉「ありがとう」で、お願いごとをサンドイッチする伝え方です。
まずは、「○○さん、今ちょっといいでしょうか?」というように、相手の名前を呼んで都合を聞きます。続いて、「いつもゴミ出ししてくれて、ありがとう」のように、感謝の言葉を添えます。そして、「これをしてもらえると助かるな」など、具体的にお願いします。さらに、頼んだ後にも「聞いてくれて、ありがとう」と、感謝の言葉を伝えます。この「ありがとうのサンドイッチ」は、さまざまな相手に活用できる「お願いスキル」です。
(吉田穂波さん)


子育てのしかたが違う相手に子どもをお願いすることが不安⋯

私は、家族以外の人に子どもをお願いすることがとても不安です。例えば、おやつのあげ方が、我が家とは違うかもしれないと思うと、子どもをお願いしていいのか悩んでしまいます。でも、仕事に復帰する予定があり、今後は夫婦2人だけで子どもをみるのは難しいとも思っています。この不安にどう向き合えばよいのでしょうか。
(5か月の女の子をもつママ・パパより)

子育ての違いを体験することも大事

回答:倉石哲也さん

例えば、我が家では子どもに甘いおやつをあげていないのに、お願いした相手がチョコレートをあげてしまうなど、困ることがあるかもしれません。ですが、それを受け入れる寛容力を持つことも大切です。子どもに「○○のお宅ではお菓子をいただいたけど、うちは違うのよ」と伝えて、いろいろな考えがあることを親子で受け入れていくのです。
今後、子どもが思春期になって、「みんなスマホを持っている。私はどうしよう」と考えることもあるでしょう。今のうちから、いろいろな家庭の子育ての違いを体験して、親子で一緒に話していくことが、子どもの成長のためにもなるのです。


愚痴や弱音はどこで吐いたらいいの?

専業主婦でひとり息子を育てています。以前は子育て広場にも行っていたのですが、子どもは外が好きなので、最近はほとんど2人で外遊びをしています。一緒に散歩したり虫を捕ったりしています。こんな生活ができてありがたいなと思っています。
ですが、イヤイヤ期が始まり、大変なことが増えて、だんだんイライラがたまるようになりました。子どもが悪いわけではないのでグッと我慢していますが、モヤモヤがつのって、夜ひとりで泣いてしまったこともあります。この気持ちを誰かに聞いてほしいと思いますが、いつも子どもと2人で過ごしているため、ひとりで飲み込むしかありません。愚痴や弱音はどこで吐いたらいいのでしょうか?
(1歳7か月の男の子をもつママより)

愚痴を言いたいときは甘えたいとき

回答:倉石哲也さん

誰かのために一生懸命な人ほど、知らないうちに愚痴をこぼしたくなっているものです。愚痴は「甘えたい」という人間の欲求なのです。愚痴や弱音が言いたくなったら、「自分は誰かに甘えたい状態なんだ。頑張り過ぎているんだ」と、自分を見つめなおしてみましょう。自分で自分に声をかけることも、ひとつの方法です。

ママ友に、愚痴をおもしろおかしく話すことはできますが、それ以上は言えません。つらくて泣いてしまって、深刻な話になると、せっかくの楽しい時間を台なしにしてしまいそうで心配です。

ダメだと思ったらすぐに助けを求める

回答:倉石哲也さん

誰にも弱音を吐けず、ストレスやモヤモヤが子どもに向かってしまうことは避けなければなりません。そんなときは、すぐ誰かに助けを求めてください。例えば、時間や場所を気にせずパパに連絡をとって、まとまった話でなくても、叫んでしまってもよいのです。気遣いのある友人には、そこまで言うことができないと思います。その限界線を自分の中で決めておき、その境界を越えたら行動できるようにしておきましょう。


すくすくポイント
「お願い上手」への最初の一歩

子育てや家事で誰かに頼りたくても、なかなかお願いすることができない。そんな「お願いが苦手」な人でも、最初の一歩を踏み出せるような場所があります。

地域子育て支援拠点「ふらっとスペース金剛」(大阪・富田林市)は、そんな場所のひとつです。頼れる人がいなくて、孤独で苦しい子育てを経験したママたち自身が、15年前に作ったそうです。ママ同士がお願いしあう体験を、小さなことから少しずつ積み重ねていけるといいます。

ママ同士で頼りあう場所

こちらのママは、6か月の赤ちゃんを連れています。最近この場所に来るようになったといいます。この日は知り合いのママが誰もいないようでした。

それでも、「だっこしないほうが、泣かないんですかね?」と声をかけてくれるママがいたので、そのまま赤ちゃんをお願いしてみました。

ママは、少し離れて見守りながらお茶タイムです。
安心してお願いの第一歩が踏み出せたようです。

スタッフが仲介してママをつなげる

今度は、男の子(1歳9か月)のママが用事で外出する少しの間、子どもをお願いしていました。

ママの姿が見えなくなって泣いてしまった男の子を、お友達のママがだっこしてあげます。自分の子どもとお願いされた子どもを一緒にみているそうです。

実は、こんなママたちの関係は、「ふらっとスペース金剛」のスタッフが仲介役となることで広がっているといいます。はじめてのママ同士が直接お願いしあうことは難しいけど、スタッフが間に入ることでお願いしやすくなるわけです。
お願いしあうことを続けていくと、ママ同士の関係も深まっていきます。

「ちょっと見とくよ」「ちょっとだっこするよ」と言いあえる関係ができていれば、いざピンチになったときでも、子どもを預けることができると思います。この場所が、人に頼ってもいいという安心感や信頼につながればと思っています。
(ふらっとスペース金剛 相談役 岡本聡子さん)

子育ての相談やお願いをしたいとき

「ふらっとスペース金剛」のように、親子の交流や、子育ての相談もできる「地域子育て支援拠点(子育てひろば、子育て支援センターなど)」は、現在、全国に7000か所以上あります。
他にも、子育て中の「お願い」や「相談」ができるところがあるので紹介します。

ファミリー・サポート・センター(女性労働協会)

子どもの預かりや送迎などの育児支援を行っています。
www.jaaww.or.jp/service/family_support/

ホームスタート

無償ボランティアが訪問して、親子と一緒に家事育児やお出かけをしてくれます。
www.homestartjapan.org

無料のインターネット通話 NPO法人「リスニングママ・プロジェクト」

無料のインターネット通話で、ママの愚痴やモヤモヤを寄り添って聞いてくれます。
lis-mom.jimdo.com


私が「お願い上手」になったわけ

育休中で3歳10か月と4か月の女の子を育てている山口さん。以前は人にお願いすることがなかったけど、今は人に頼ることができるようになったといいます。それはどうしてなのでしょうか? お話をうかがいました。

山口さんは、パパの両親と2世帯住宅で暮らしています。子どもを両親にお願いすることもよくあるそうです。この日も、下の子を祖母にお願いしていました。祖母はよろこんで預かってくれるといいます。

下の子をお願いしたのは、赤ちゃんと一緒だと行けない場所に、上の子を連れて行くためです。長女に自然を体験させたかったのです。

お願い上手にも見える山口さんですが、以前は「自分で全部やりたい」と考えていて、あまり人に頼っていなかったといいます。そんな考え方が、第2子妊娠中のあるできごとで、大きく変わったそうです。

仕事の資料を作らないといけないのに、汚れた食器が山積みで、子どもは「寝なさい」と言っても寝てくれない。そんなイライラの上に、パパから「もっとうまくやれよ」と言われて、たまりにたまっていたものが弾けました。「こんなに頑張っているのに!」と涙を流して大げんかになって、プチ家出をしたんです。
その後、私も「このままではダメだ。2人だけで育てるのは大変だ」と思って、人に頼ろうと決めました。
(山口さん)

以前は、子育てで人に頼ると「母親失格では?」と考えることもあったけど、今では「お願いするのはいいこと」と考えるようになり、気持ちが楽になったそうです。そして、子どもに愛情を注いでくれる大人が、パパやママ以外にいることが、とてもありがたいといいます。

親が人にお願いする姿を子どもが見るのは成長につながる

誰かにお願いすることは、子どもの成長にとっても大事な側面があります。それは、大人が人にお願いする姿を、子どもが見ることです。その経験が、子ども自身が友だちに頼ったり、お礼を言ったりできることにつながります。子育てにとっても、子どもの育ちにとっても大事なのです。
(倉石哲也さん)

人に頼る境目を見極めるのも大人としての自立

私たちは、自分のことは自分でしないといけないと思いがちです。それが自立した大人だというわけです。でも、子育てや仕事に関しては、全部1人でやることが大人ではありません。ここまでは1人でできる、これはみんなでやる方がいいなど、自分ですることと頼ることの境目を見極めることが、本当の自立ではないかと思います。
(吉田穂波さん)

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです