疲れていない? 子どもの食事

すくすく子育て
2018年10月13日 放送

毎日の子どもとの食事、いろいろと気を配って疲れを感じていませんか? 栄養バランスを考え時間をかけて作っても食べてくれない⋯ なるべく楽しい食卓にしたいけど、しつけはどうしたらいいの?
そんな、子どもの食事に関する悩みを一緒に考えます。

専門家:
外山紀子(早稲田大学 教授/発達心理学)
太田百合子(東洋大学 非常勤講師/管理栄養士)

わが子のために、食事づくりはどこまで頑張ればいいの?

私の母は専業主婦で、食事を気にかけてもらい、いろいろと作ってもらった思い出があります。私も、子どもに手作りの料理を食べさせてあげたいと考えています。仕事があるので、夕食は毎朝5時に起きて1時間かけて作り置きするなど、頑張っています。ですが、頑張って作っても食べてくれないことがあります。そんなときはしかたなく、子どもが好きなチーズご飯を食べさせています。忙しい毎日で、栄養バランスを考えて手作りすることを心がけていますが、食べてくれない日が続くと心が折れそうになります。
わが子のために、食事づくりはどこまで頑張ればいいのでしょうか?
(2歳9か月の男の子をもつママより)

子どもに好き嫌いがある時期は料理を簡単に

回答:太田百合子さん

料理を頑張れば頑張るほど、よろこんで食べてくれるのではないかと期待してしまいます。ですが、期待し過ぎると、親子がお互いにつらくなってしまうこともあります。子どもに好き嫌いのある時期は、食べ残すのが当たり前だと思って、気持ちを楽にしましょう。料理も簡単にできるものでよいと思います。

親子で食べられる料理も

回答:太田百合子さん

子どものためだけの料理を作ると、食べ残しを捨てるほかありません。でも、親も一緒に食べられる料理であればアレンジができます。例えば、きんぴらごぼうの場合は、子どもが残しても、翌日に、きんぴらごぼうにお肉を足して、卵とじが作れます。ちゃんとした主菜になるのです。そのように、食べ残しがあっても「アレンジできる、ラッキーだ」と思えるくらいがよいと思います。
親としては、きちんと料理を作ってあげたいと思うでしょうが、「1週間に1度くらいは頑張ってみようかな」くらいの心持ちでいいのではないでしょうか。

食べてくれないときは、チーズご飯を食べさせていますが、それだけだと栄養のバランスが気になります。

栄養のバランスは1週間単位で

回答:太田百合子さん

実は、この時期は食べ物に好き嫌いがあるなど、食べ方にむらがあったほうがいいのです。こういった食行動は、成長発達の過程でなければならないものなのです。今はチーズご飯が好きかもしれませんが、1か月後には嫌いになってしまうかもしれません。その後、新しく食べたトマトが好きになったり、イチゴが好きになったり、好きなものが変わっていくのが子どもの好き嫌いなのです。
このような食べむらは、2歳代に多くみられ、3~4歳になると落ち着いてきます。子どもなりにバランスをとっていくわけです。栄養のバランスは、1日単位ではなく、1週間単位でみて、それなりに食べていれば大丈夫だと考えてください。

食わず嫌いは生存戦略

回答:外山紀子さん

食わず嫌いを含む子どもの好き嫌いは、新奇性恐怖というものが関係しています。新奇性恐怖とは、はじめて食べるものを警戒することです。未知の食べ物には毒性などのリスクがあるかもしれない、まずは用心しようという賢い生存戦略なのです。ですので、食わず嫌いをしたときは、「食べてくれない」と思うのではなく、「この子は賢い」と見方を変えてみましょう。
とはいえ、食わず嫌いはいずれ克服しないといけません。そのようなときは、周りの人が食べて見せることが大事だと思います。


お総菜を買って手抜きすることに罪悪感がある⋯

子どものために手作りの料理を心がけていますが、忙しくてばたばたするときもあり、スーパーでお総菜を買うこともあります。でも、子どもにお総菜を食べさせると、自分が手抜きをしているような罪悪感を抱いてしまいます。
(2歳2か月の女の子をもつママより)

視点を変えて、手抜きではなく賢く利用していると考える

回答:外山紀子さん

1日3回の食事を用意する以外にも、洗濯などの家事や、子どもに絵本を読んだりお風呂に入れてあげたり、毎日やることがたくさんある方もいると思います。このような場合は、視点を変えてみましょう。心理学でフレーミングと呼ばれる考え方です。
例えば、食事にお総菜を使うことを「手抜き」と考えるのではなく、視点を変え、お総菜を「上手に利用している」と考えるのです。今は食産業が発達して、いろいろな場所でお総菜が売られています。それらを、臨機応変に賢く利用しているんだと見方を変えてみることで、気持ちが楽になることもあります。

市販の食べ物だと食品添加物などが気になります。

食品表示を確認する。濃い味には気をつける

回答:太田百合子さん

市販の食品は、食品安全委員会でチェックされているので、問題なく使うことができます。お子さんの年齢であれば、食品を買うときに食品表示を確認することも大切です。香辛料やアルコールが入っていないか、カフェインは多くないか、などです。食物アレルギーのお子さんの場合も、必ず書いてあるので表示を確認するようにしましょう。
また、子どもは濃い味の食べ物に慣れてしまうと、どんどん濃い味が好きになってしまいがちです。一方で、1~2歳の子どもが1日に摂取してよい塩分量は、成人女性の半分程度です。ですので、濃い味の食べ物を避けるなど、気をつけたほうがよいと思います。
注意する点はあるものの、お総菜などの市販の食品を使うことで、料理や家事の時間が短縮でき、親の負担が軽くなります。子どもが自分で選んだお総菜はよく食べるといったメリットもありますので、賢く利用してよいのではないでしょうか。


楽しい食卓になるように頑張ったほうがいい?

毎日の食卓が静かで不安になります。平日はパパの帰りが遅いので、娘と二人で食事をしているのですが、娘はもくもくと食べて会話もありません。娘はせっかく食べることが好きなのに「食事ってつまんないな」と思わせてしまうのが、申し訳ないと感じています。楽しい食卓になるように、もっと頑張ったほうがいいのでしょうか?
(2歳4か月の女の子をもつママより)

小さなころは食事がおいしいと感じさせることが大事

回答:外山紀子さん

食卓が静かで楽しくなさそうとのことですが、お子さんが食べているときにシャキシャキとしたおいしい音が聞こえてきませんか? 会話がなくても親子が目を合わせてうなずき合うだけで十分なコミュニケーションになります。
そもそも、食事はレクリエーションではないので、親が無理に盛り上げないといけないと考える必要はありません。子どもが小さなころは、しっかり食べて、おいしいと感じることが大事です。

食べる環境を変えて楽しむ方法も

回答:太田百合子さん

例えば、料理をお弁当箱につめて食べる、外出して公園で食べるなど、ふだんの食事の環境を変えてみるのもひとつの方法です。これから、だんだんお友だちと過ごすことが好きになることもあると思います。そうなれば、豪華な料理を作らなくても、広場でお友だちと一緒に食べるだけで十分楽しめるのではないかと思います。


楽しい食卓としつけを両立するにはどうしたらいい?

長男の食事のしつけに悩んでいます。いつも元気よく食べますが、10分ぐらいで落ち着きがなくなります。いすから降りたり、遊びはじめたりしてしまいます。私としては、楽しい食卓にしたいので、あまり叱りたくはないのですが、ついついうるさく言ってしまうこともあります。
楽しい食卓と食事のしつけを両立するにはどうしたらいいのでしょうか?
(3歳の男の子と1歳5か月の女の子をもつママより)

集中できる時間を踏まえて、食事の時間を考える

回答:外山紀子さん

食事のしつけには、食器の持ち方や箸の使い方などいろいろとありますが、そういったことはおいおい獲得していきます。3歳頃までは、食事の時間に座っていられるなど、集中して食べられるだけで十分です。ただ、遊び続けるようであれば、食事の時間を区切ることも考えてみましょう。3歳ぐらいであれば、集中できる時間は10分程度です。それを踏まえて、食事は20~30分でおしまいにする。立ち歩いても食べさせてもらえる状況が続いていると、「それでいいんだ」と学習してしまいます。ときには断固とした態度で、30分で切り上げてみましょう。切り上げたときは、次の食事までは何もあげないといった切り替えも大事ではないでしょうか。

食事の盛りつけ量を変えて、完食する達成感を経験させる

回答:外山紀子さん

食事に時間がかかるのは、食事の盛りつけ量が多いことが原因かもしれません。その場合は、控え目に盛りつけて、全部食べたらおかわりするようにしてみましょう。このとき、子どもに「全部食べられた」と完食する達成感を経験させることも大事なことです。こういった工夫も楽しい食事につながると思います。

食事中に動き回ると、ついつい怒ってしまいます⋯

食事前の楽しい時間が食べる意欲につながる

回答:太田百合子さん

この時期は、子どもがこのような振る舞いをすることが当たり前だと考えてください。その上で、食事を楽しくするための工夫をしましょう。例えば、食事を準備するときに、きゅうりを一緒に洗ったり、型抜きしたり、味見当番をしてもらったり、親子でいろいろなやりとりをします。そういった食事前の楽しいことが、食べる意欲につながるのです。

ガミガミより気持ちを伝える

回答:太田百合子さん

親がガミガミうるさく言っても、子どもにとっては言葉もよくわからず、ただ嫌な思い出になってしまうかもしれません。叱りたくなったら、「そういうことをされるとママは悲しいよ」など、親の気持ちを伝えるようにしてみましょう。子どもは、最初は意味がわからなくても、だんだんと人の気持ちを理解するようになっていくので、改善していくかもしれません。


すくすくポイント
理想の食卓のイメージ「一家団らん」について

理想の食卓「一家団らん」のイメージはどのようにしてできたのでしょうか。日本の家族の食卓の変化を研究している表真美さんにお話をうかがいました。

表真美さん
京都女子大学 教授/家族関係学

以前は「一家団らん」はなかった

実は、日本の食卓での一家団らんは、もともと一般的ではありませんでした。
およそ130年前(明治時代)の裕福な家庭の様子が描かれている資料を見てみましょう。


「尋常小学校 修身」明治25年

家族そろって食事をしていますが、ひとりひとり別々のお膳で食べています。また、食事中に話すことは行儀が悪いと考えられていたので、会話は厳禁だったそうです。一家団らんとは、ほど遠い雰囲気だったのです。
裕福でない家族の場合も、一家団らんはなかったようです。当時は、ほとんどの人が第一次産業(農林水産業)を仕事としていました。家族が一緒に暮らしていても、毎日の仕事が精いっぱいで、一緒に集まって一家団らんをするような余裕はなかったと考えられます。

一家団らんが理想のイメージになるまで

その後、産業が発展し、次第に家から離れた職場に通って仕事をする人が現れはじめます。それとともに、家を預かる専業主婦も誕生したのです。高度経済成長の時代に入ると、外で働く夫と専業主婦の妻という分担が急激に進み、食卓の様子にも大きな変化が現れました。
父親が外で働いているため、家族と一緒に過ごす時間が減り、食事のときが家族で集まる貴重な場になってきたのです。以前は、食事中に話すことは行儀が悪いと言われていましたが、話してもよいという風潮になり、家族が団らんして食事をするようになっていきます。
さらに、ホームドラマやアニメの影響もあり、楽しい一家団らんが理想のイメージになっていったのです。そして多くの主婦たちは「一家団らんをすべき」という思いを抱くようになっていきました。

現代の食卓の姿

現代では、ライフスタイルの変化と共に、一家団らんの姿も変わってきています。例えば、長時間労働や、子どもの塾通いなどの影響で、家族の食事の時間がそろわなくなっているのです。
「一家団らんをしなければならない」と思いつめずに、それぞれの家族なりの団らんの姿を模索するとよいのではないでしょうか。我が家で無理なく楽しめる一家団らんの方法を考えてみましょう。


食事と思い出について

人とのつながりの中で日々の食事がある

子どもの頃の「食事に関する思い出」を調査したことがあります。みなさんの思い出の振れ幅は大きく、とても嫌だった、とても楽しかったといった声がありました。それだけ「食べること」は感情が込められた出来事なのです。また、思い出を語り出すと、親のこと、お友だちのこと、学校の先生のことなど、話が止まらないことも印象的でした。人とのつながりの中で日々の食事が営まれているのだと感じました。
(外山紀子さん)

食事の“背景”を大事にする

「食事の思い出」を考えると、食事そのものではなく、その時の、いろいろな背景が思い浮びます。その背景を大事にするといいのではないでしょうか。何を食べたか食べなかったかだけではなく、子どもには食事の背景や楽しかった思い出をたくさん作ってあげられるといいですね。
(太田百合子さん)

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです