「がまん」って大事なの?

すくすく子育て
2018年8月18日 放送

がまんって本当に大事なの? 何歳からがまんを教えられるの? どうすれば自分からがまんできるようになる?
そんな「がまん」する力について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
森口佑介(京都大学大学院准教授 発達心理学)
大豆生田啓友(玉川大学教授 乳幼児教育学)

「がまん」ってどういうもの? 大事なもの?

最近「がまんする力」が重要だと聞きます。そもそも「がまんする力」とはどういうものなのでしょうか?

受け身でこらえる「がまん」と、自発的な「真のがまん」は違う

回答:森口佑介さん

一般的な意味での「がまん」は、人から押しつけられた意見や、居心地の悪い環境など、自分にふりかかる圧力にたえるような、受け身の姿勢に使われることが多いと思います。ですが、子どもの発達という視点で考えると、子どもが自分で考えて自発的に選びとる「がまん」が大事になります。これを「真のがまん」と言っています。
例えば、大好きなブランコの前に行列ができていたとき「順番を待てば乗れる」と考えて列に並ぶ、あるいは、欲しいおもちゃを見たとき「誕生日にプレゼントするから待っててね」というママ・パパのことばを信じて待つなど、目的のために自分で考えてがまんできる力が「真のがまん」です。

「マシュマロ・テスト」という実験を発端に、「がまん」が注目された

回答:森口佑介さん

「がまんする力」が重要だと言われる発端となったのは、「マシュマロ・テスト」という実験です。1960~1970年代にアメリカで行われ、子ども時代の「がまんする力」と、その後の学力・健康・経済状態などとの関係が調査されました。
実験では、子どもたちの「がまんする力」を「マシュマロ」を使って測りました。子どもにマシュマロを1つ見せ、「すぐに食べてもいいけど、15分待てたら2つ目のマシュマロをあげる」と伝え、その反応をみたのです。その後の追跡調査で、すぐに食べてしまった子どもたちに比べて、マシュマロを多くもらうために待つことができた子どもたちは、大人になってからの学力・健康状態・経済状態がよいという結果が出ました。この研究成果から、「がまんする力」は子どもの将来の社会的成果に影響する重要な要素だと、世界的に注目されるようになりました。
しかし、最近の研究からは、「マシュマロ・テスト」の結果に疑問が出されています。学力・健康・経済の状態は、家庭の経済状態や、親の社会的地位による影響のほうが大きく、この研究だけで「がまんする力」と将来の社会的成果との関連性を測ることはできないと指摘されたのです。
それでも、マシュマロ・テストはその後のさまざまな研究のきっかけとなり、5~10歳くらいの時期に「がまんする力」があることと、将来の健康や高い学力、経済力を持つ傾向との関連が、各国の研究者から報告されるようになりました。

保育の現場でも「がまんする力」は注目されているんですか?

注目されている「非認知能力」に関係がある

回答:大豆生田啓友さん

保育の現場では「非認知能力」が注目されています。「非認知能力」とは、意欲・自尊心・コミュニケーション力など、学力のように測ることができないけれど「人間として生きていく力」の基礎となるものです。その力のひとつに、自分の気持ちをコントロールする、自己抑制の力があります。これが「がまんする力」と関係しています。「非認知能力」の要素のひとつとして、大事だと考えられているのです。


いつから、どのように「がまん」を教えたらいいの?

息子には、きちんと“がまん”できる子に育ってほしいと考えています。でも、がまんが苦手ではないかと感じることがあります。例えば、ママが料理をするとき、はじめはひとりで遊んでくれますが、すぐにあきてキッチンに入ってきてしまいます。いちばん困っているのは食事です。息子は食事中におもちゃが欲しいと騒ぎ、食べることに集中できません。そんなときは、おもちゃを渡して、なんとか気をそらそうとしています。まだ1歳2か月なので、がまんさせるには、まだ早いのではないかとも思いますが、このまま子どもの好きにさせていいのか悩みます。がまんは、いつごろから、どのように教えたらよいのでしょう。
(1歳2か月の男の子をもつママ・パパより)

1歳代は「がまんする力」が育つ時期ではない

回答:森口佑介さん

お子さんは、がまんを教えるにはまだ早い年齢だと思います。1歳代は「がまんする力」が育つ時期ではないのです。また、子どもの「がまん」について考えるときは、一般的な意味での、受け身の「がまん」ではなく、自発的な「真のがまん」を念頭に置きましょう。「真のがまん」とは、自分の目的のために、自分で考えて「がまん」を選ぶ力のことで、4歳ごろから育ってきます。

では、この時期は何もしなくても大丈夫ですか?

子どもが安心できる環境をつくる

回答:森口佑介さん

1~2歳代は、子どもが安心できる家庭環境をつくることが大切です。例えば、親など周囲の大人が子どもに無関心な態度をとっていると、4歳以降に「がまんする力」が十分に育たないことがわかっています。
食事のときの様子を聞いていると、お子さんが「おもちゃが欲しいと伝えれば、とってもらえる」と思えるような、安心できる関係性ができていると感じます。

子どもが1~2歳のころは、親は具体的にどのような関わり方をすればよいのでしょうか?

意欲を育てることが大事

回答:大豆生田啓友さん

1~2歳代は、子どもの意欲を育てることが大事です。お子さんの様子を聞くと、いろいろなことに興味を持ち、とても意欲的に育っていると思います。食事の途中で「もうやだ!おもちゃが欲しい」とだだをこねるかもしれませんが、何かを要求することで自分の気持ちをコントロールしようとしているのです。まだ「がまん」とは言えないまでも、自分で気持ちを切り替えようとしている姿がみられるのは、パパ・ママへの安心感が育っているからではないでしょうか。


なかなか「がまん」ができない。どうしたら気持ちを抑えられる?

3歳5か月になる娘に、そろそろ「がまん」を覚えてほしいと思っています。でも、がまんがなかなかできません。例えば、公園でお友だちと遊んでいるとき、早く帰らなくてはいけない用事があっても「もっと遊びたい」と言って帰ろうとしません。何を言っても「ダメ」「帰らない」と、その場から離れません。嫌がる娘をだっこして、無理やり連れて帰ることもしばしばです。また、気になるものがあると、がまんできず、私の手を振りほどいてでも駆け出してしまうので、車にぶつかりそうになって、危ないと感じたこともあります。どうしたら、うまく気持ちを抑えられるようになるのでしょうか。
(3歳5か月の女の子をもつママより)

「自己主張」と「がまん」は、どちらも大事

回答:森口佑介さん

2~3歳のころは、自分の欲求を伝えようとする気持ちが大きく成長する時期です。お子さんのように自己主張するのも当然だといえます。また、自己主張と、がまんする力は、例えるならアクセルとブレーキのような関係です。どちらも、子どもが自分の目的を達成するために必要になる大事な能力です。

子どもの気持ちを切り替えてあげる工夫を

回答:森口佑介さん

子どもが、がまんできるためのポイントになるのは、気持ちを切り替えられるかどうか、という点です。子どもに「何かをしたい」という気持ちがあるとき、無理やり抑えつけても効果がありません。子どもの気持ちを、うまく切り替えてあげる工夫をしてみましょう。

家に帰ろうとしないときは、「家に帰っておやつ食べよう」と声をかけるなど、いろいろと工夫はしていますが、なかなかうまくいきません。

丁寧に子どもに関わることで、子どもは気持ちの切り替えを覚えていく

回答:大豆生田啓友さん

ママがいろいろな工夫をしながら、丁寧に子どもと関わっていることは大事なことです。そんな時に子どもは「自分がとても大事にされている」と感じるのです。どうしても子どもが言うことを聞かないとき、かかえて連れて帰ることもしかたのないこと。でも、そのとき子どもの様子をよく見てみてください。子どもが大暴れしていないのであれば、自分で気持ちを切り替えようと頑張っているのかもしれません。ママが試行錯誤しながら子どもに関わってきたことは、こうしたちょっとした時に、少しずつ子どもの成長としてみえてきているのではないでしょうか。


きょうだいの上の子の要求は、どこまで受け入れたらいい?

もうすぐ3歳になる長女と、まだ5か月の次女の姉妹を育てています。最近、長女が妹にいじわるをすることが気になっています。妹が遊んでいるおもちゃを取り上げたり、妹のマグカップを「自分が使う」と大泣きで主張したり。でも、「お姉さんでしょ」という理由で、がまんさせたくはありません。どこまで、長女の要求を受け入れてあげたらいいのか迷っています。
(2歳11か月と5か月の女の子をもつママより)

今は自己主張のアクセルが全開の時期

回答:森口佑介さん

もうすぐ3歳のお子さんは、自己主張のアクセルが全開の時期です。そのため、今がまんを覚えるのは難しいと思います。また、下の子ができると、上の子はさみしくなったり、不安になったりして、どうしても要求することが増えてきます。

受け入れてもらえた満足感で、気持ちを切り替えられる

回答:大豆生田啓友さん

要求自体に問題がなければ、受け入れて子どもに満足してもらうことも、ひとつの方法です。子どもが「受け入れてもらえた」という満足感を持てると、下の子へのいじわるにつながりません。満足感によって、気持ちを切り替えることができるのです。

ストレスを感じると、がまんが難しくなる

回答:森口佑介さん

がまんする力が育つには、子どもが安心できる環境づくりが大切になります。子どもが、さみしさや不安をストレスとして感じてしまうと、がまんすることがとても難しくなるのです。ですが、下の子がまだ小さい時期は、なかなか上の子に目が届かないと思います。そんなときは、ほかのご家族など、誰かが上の子としっかり関係を築きながら、安心できる環境づくりをするのがよいと思います。


がまん強すぎる子、どうすれば無理させずに気づいてあげられる?

4歳になる息子は、とてもがまん強い子だと思います。例えば、私が2人目を妊娠しているとき、息子が疲れているようだったので「だっこしようか?」と聞くと「ママのお腹が大きくて、僕をだっこすると重いだろうから言えなかった」と言っていました。とても聞き分けがよい子ですが、気づかないうちに、がまんをさせすぎていないかと心配しています。一方で、パパにはとても甘えん坊で、がまんの反動なのかと気になります。どうすれば、子どもに無理をさせずに、気持ちに気づいてあげられるでしょうか。
(4歳1か月の男の子と1か月の女の子をもつママより)

4歳は「がまんする力」が育つ時期

回答:森口佑介さん

4歳のころは、ちょうど「がまんする力」が育ってくる時期です。お子さんは、自分で考えてがまんする「真のがまん」が身についてきていると感じます。また、がまん強さには個人差がありますが、お子さんはがまん強いほうだと思います。

もっと、自己主張してほしいとも思っています。

「がまんしなくてもいいよ」が押しつけになることも

回答:森口佑介さん

がまんすることも、自己主張することも、どちらも子どもの“自主性”が大事になります。子どもに無理をさせているのではないかと考えると、どうしても「がまんしなくてもいいよ」と言ってしまいますが、これが押しつけになって、子どもの自主性を損なう場合もあります。お子さんの様子を聞くと、自発的ながまんをしているようですので、このままで大丈夫だと思います。

やさしい子であることを大事にする

回答:大豆生田啓友さん

ママのことが大好きで、とてもやさしいお子さんだと思います。相手の気持ちを、よくみて応じられている。一方で、パパには自分の感情をわがままに出して、うまくバランスをとろうとしている。ですので、あまり心配しなくても大丈夫だと思います。むしろ、お子さんがやさしいタイプであることを大事にされてはいかがでしょうか。

子どもの意見を聞くなどで、自主性を促す

回答:大豆生田啓友さん

「自分をなかなか出してくれない」と心配になる場合は、子どもの自主性を促す工夫をしてみましょう。例えば、子どもに何かを手伝ってもらうとき、「これはどうやったらいいと思う?」というように、本人の意見を聞いてみる。このような、子どもの自主性や自発性を大事にする場面を、意図的につくってあげることもひとつの方法です。

がまんできたときは、褒めてあげたほうがよいですか?

ふだんからよいところは褒める

回答:大豆生田啓友さん

相手を気遣うやさしさなど、子どものよいと思うことは、ふだんから本人に伝えることが大事です。ただ、「がまんできたからえらいね」といった褒め方を繰り返すと、子どもは「がまんできる子」という期待に応えなければいけないと感じて、少しずつ苦しくなってしまうかもしれません。その点には注意が必要だと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです