聞いてみよう! 世界の子育て

すくすく子育て
2018年6月23日 放送

最近、増えている日本に住む外国出身のパパ・ママ。しつけのしかたは日本と違いがあるの? 外国のパパってどんな子育てしているの?
気になる世界の子育てについて聞いていきます。

専門家:
榊󠄀原洋一(お茶の水女子大学名誉教授 小児科医)

祖国と日本のしつけに違いを感じる?

叱り方や褒め方などのしつけのしかたは、世界と日本でどのような違いがあるのでしょうか。
みなさんに聞いてみました

フィンランド出身のパパと日本出身のママのご夫婦

パパ ママが娘を怒っているところを見ると、しつけの違いを感じることがあります。日本では「他人に迷惑をかけないように」と、小さい子でも厳しめですが、フィンランドなどのヨーロッパでは、そこまで厳しくないように思います。例えば、電車で座っていて、子どもの足がとなりの人にぶつかったら叱りますが、走り回るぐらいでは叱りません。私が子どもだった30年ぐらい前は、フィンランドでも厳しい面がありましたが⋯。
ママ フィンランドでは、「子どもは見守る」という部分が多く、パパから見ると、私がいつも怒っているように感じるようです。

アメリカ出身のパパと日本出身のママのご夫婦

パパ アメリカでは、子どもが何かうまくできたら、手をたたいて「イェーイ!」と歓声をあげます。そうすれば、子どもはうれしくなって「またやりたい」と思う。子どもが悪いことをしたら、“タイムアウト方式”がとられます。少しの間、部屋の隅や自分の部屋で、子どもをひとりにするんです。この時間に、子どもは自分が悪いことをしたと気づくのです。

中国出身のパパとママのご夫婦

ママ 中国では、子どもを叱るとき、「どうして○○をしたの?」のような質問形式が多く、どこが悪いのかをちゃんと説明してあげます。私が子どものころは褒められることは少なかったですが、今は、具体的に何がよいのかを伝えて褒めています。全体的には、褒めるより、叱る割合が少し多いと思います。

国によって、しつけの考え方が違うものなのでしょうか?

同じ国でも家族や時代によって考え方が違う

回答:榊󠄀原洋一さん

まず、同じ国でも“家族”によって考え方がかなり違います。そして、時代とともに変わってきている国もあります。中国では、かつては「厳しく育てる」でした。ですが、中国の幼児教育の学会などで話を聞くと、厳しくするより子どもの意見を聞いてあげるほうが、子どもがよく育つことがわかってきて、最近は褒めてあげるようになってきているといいます。

文化や社会的背景、時代によっても考え方が違う

回答:榊󠄀原洋一さん

「親は子どもに何を望むのか」を日本とアメリカで調査したところ、日本では「協調性」、アメリカでは「独立心」を望む親が多くいました。アメリカでは「自分で決める子になってほしい」と考える親が多いわけです。そこには、文化や社会的背景があると思いますが、その上に個人差や時代による変化があります。どこがいい、悪いではなくて、社会背景と時代の変化によって考え方が変わってきていると感じます。


子連れ家族への社会のサポートは、世界と日本でどう違う?

子連れ家族へのサポートについて、世界と日本ではどのような違いがあるのでしょうか。
みなさんに聞いてみました

カナダ出身のパパと日本出身のママのご夫婦(カナダ在住)

ママ カナダでは、社会も人も子育て世帯にとても寛容で、協力や配慮を日常生活のちょっとしたところで感じることができます。例えば、バスには、イスを畳んでベビーカーをそのまま乗せることができるスペースがあります。その席を快く譲ってくれるのは当たり前のことで、ラッシュ時でも同じです。譲ってくれない場合も、周りの乗客が「ベビーカーがいますよ」と声をかけてくれます。町全体が親戚のような感じです。

アメリカ出身のパパと日本出身のママのご夫婦

パパ 私の出身のニューヨーク市では、みなさん子連れ家族を気にかけてくれますが、席を譲ってくれるかどうかは地域によります。市の中心部やクイーンズ地区北部なら「ここに座って」と言ってもらえます。

フィンランド出身のパパと日本出身のママのご夫婦

パパ 子連れ家族は、いろいろな部分で助けてもらえます。ベビーカーでバスに乗るときは親も子も無料です。東京の電車では、赤ちゃんを抱いていても優先席を譲ってもらえないこともあり驚きました。
ママ フィンランドでは、産まれる少し前に「アイティウスパッカウス」というダンボールに入った育児グッズを各家庭に届けるシステムがあります(※1)。
※1 フィンランド社会保険庁が支給しています。育児グッズおよそ50点が入ったパッケージが、妊婦健診を受けたすべての妊婦さんにプレゼントされます。育児グッズか現金支給かを選択できます。

中国出身のパパとママのご夫婦

ママ 地域のみなさんは子連れ家族に親切で優しいです。席を譲ってくれるなど、いろいろなことで助けてくれます。

支援を見える形にするのはいい制度

回答:榊󠄀原洋一さん

日本でも、地域から出産育児一時金などが支給されます。フィンランドの育児グッズの支給は、支援を見える形で行っているので、とてもいい制度だと思います。

これらの違いは、国民性の差でしょうか?

都市部と地方の違いもある

回答:榊󠄀原洋一さん

都市部では「声をかけないほうがお互いのため」という個人主義の考えもあって、気遣う気持ちはあるけど、声には出さないところがあると思います。日本でも、昔から地方では、みんなが話しかけてくれたり、子どもがいると声をかけてくれたりするような文化がありました。その差が表れていると思います。


世界のパパの育児への関わり方はどう違う?

パパの育児への関わり方は、世界と日本ではどのような違いがあるのでしょうか。
みなさんに聞いてみました

カナダ出身のパパと日本出身のママのご夫婦(カナダ在住)

パパ 男性が子育てをするのは一般的です。日本には“イクメン”という言葉があると聞いてとても驚きました。子育てや家事をするのは当たり前で、やらなかったら離婚問題につながりかねません。また、夫婦二人の時間も大切だと考えられています。そのため、祖父母などに子どもを預けて二人だけでディナーに行くことも一般的です。
ママ 父親ひとりで子どもとランチしていたり、ベビーカーを押していたりする姿をよく見かけます。カナダでは、1世帯につき1年間の育児休暇をとることができるのですが、「最初の半年をママ、後の半年をパパ」のように自由に割り振ることができます。父親が育休をとることも珍しくありませんし、とりにくい雰囲気もありません。

アメリカ出身のパパと日本出身のママのご夫婦

ママ カナダと基本的に同じですが、日本とは前提が違うような気がします。日本では、父親にとって子育ては“手伝う”感覚が多いと思います。アメリカでは、二人で子育てするのが当たり前なので、そこに“手伝う”や“積極的”という感覚はありません。

フィンランド出身のパパと日本出身のママのご夫婦

ママ 例えば、妊娠のときの検診は必ずパートナーと行きます。そのとき、仕事を中抜けできるシステムがあります。産んでからも育休をとるのが一般的で、父親休暇は9週間あります。
パパ 子どもが産まれたときに2週間、ママの職場復帰後に7週間の育児休業をとりました。以前から父親が休むことはありましたが、育児休業の期間は少しずつ延びてきています。

中国出身のパパとママのご夫婦

ママ 最近は、父親が育児に積極的に参加しています。とてもうれしいことだと思います。かつては、男性はほとんど育児に参加していませんでした。私が子どものころも、母親は専業主婦ではなく仕事をしていましたが、父親が育児をすることはなかったと思います。

全体的には二人で育てる方向へ

回答:榊󠄀原洋一さん

明治時代、イザベラ・バードというイギリスの旅行家が日本の東北地方を訪れたことがあります。そのときの様子を、「父親が子どもたちをだっこして育てていることに驚いた」と書き記しています。かつてはそのような時代もあって、その後、母親が育てることが多くなり、これからは二人で育てようとなってきている。国や地域によってペースが少しずつ違いますが、全体的には二人で一緒に育てる方向に進んでいると思います。


日本での子育てに不安はある?

これから日本で子育てをしていく上で、不安に感じていることはないのでしょうか。
みなさんに聞いてみました

フィンランド出身のパパと日本出身のママのご夫婦

パパ フィンランドに比べて学校の宿題が多いと聞きます。子どもが大きくなって学校に行くようになったとき、のびのび遊ぶことができる時間が少ないのではないかと心配です。

日本でも、のびのび育てたいという理想はあると思いますが、日本の小学校・中学校は他の国と比べて忙しいのですか?

日本は宿題が多いといわれている

回答:榊󠄀原洋一さん

もちろん国によって違いますが、日本は宿題の量が多い方といわれています。基本的に宿題がない国もありますし、少ない国もあります。これも時代の流れや制度によって変わってくると思います。

アメリカ出身のパパと日本出身のママのご夫婦

パパ 中学校や高校では「みんなが同じでなければいけない」「全員が厳しい校則を守らなければならない」と聞きます。もし、自分の子どもが創造的なタイプで、“他の人の期待通りではなく自分の希望を通したい”と思ったときにどうなるのか心配です。

日本では、個人にあわせたカリキュラムを組むといった考えに進んでいるのでしょうか?

日本の教育も変わっていく

回答:榊󠄀原洋一さん

まだ、一斉授業が多いですが、文部科学省や教育の専門家は「創造的な子どもになるためには、詰め込みではないほうがよいのではないか」と考えています。例えば、社会情動的スキルが重要だとか、アクティブ・ラーニング(※1)がよいのではないかと真剣に議論されています。今までの慣習もあるので、すぐに変わるわけではありませんが、日本の教育も少しずつそういう方向に進んでいくと思います。子どもの特性に合わせた学習システムが選べるようになっていくのがよいと思います。
※1 受動的ではなく、能動的に学ぶことができるような学習方法


日本での子育てのよいところは?

外国出身のみなさんに、「日本での子育て」のよいところを聞いてみました。

中国出身のパパとママのご夫婦

ママ 保育園がとても便利です。中国では、幼稚園は多いのですが、3歳より小さい子どもを預ける施設がほとんどありません。あっても費用が高額です。

フィンランド出身のパパと日本出身のママのご夫婦

パパ 集団行動など、みんなで協力しあって、一緒にがんばる感じがよいと思います。

アメリカ出身のパパと日本出身のママのご夫婦

パパ とにかく安全なことです。子どもが一人で電車に乗っていることがありますが、アメリカでは絶対に目にすることができない光景です。
ママ パパは、ひな祭りやこどもの日など、子どものための行事が多いことをすごく喜んでいます。アメリカでは、子どものお祝いといえば誕生日しかありません。いろんな行事があって、そのたびにパーティーができます。

多様性を認める社会に

回答:榊󠄀原洋一さん

文化や社会、背景や時代によっていろいろな違いがあります。日本でも、いろいろな国の方が多くなってくると、多様性が増えてきます。このとき「どちらがいい」ではなく、コミュニケーションをして、それぞれの社会や文化、考え方の違いを認めていくことが大事です。「日本では、日本のやり方に従う」といった堅苦しい考え方ではなく、それぞれを取り入れて、いろいろな選択肢があるような方向に進んでいくと思います。日本だけではなく、世界中がそうなっていくと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです