叱り方 これでいいの?

すくすく子育て
2018年4月7日 放送

困った行動を何度注意してもやめないのは、この叱り方では伝わっていないから? 褒めて育てたいのに叱ってばかり⋯。そんな叱り方に関する悩みについて考えます。

専門家:
遠藤利彦(東京大学大学院教授 発達心理学)
柴田愛子(保育施設「りんごの木 子どもクラブ」代表)

私の叱り方、これでいいの?

子どもが歩きはじめて、興味があるものすべてに手を伸ばすので目が離せません。引き出しの中を探ったり台所の扉を開いたり、日々行動範囲が広がるのに家の中の安全対策が追いつかず、子どもを注意して叱ることが増えていきました。
叱るときは、子どももひとりの人間として関わってあげようと思うので、目を見て、ダメな理由を説明するように心がけています。ですが、困った行動が収まることはなく、だんだんと声の調子が強くなってしまいます。油で遊ぼうとしたり、空き缶を触ったりすると「危ないからやめて!」と言いながら取り上げることもあります。
叱ってもやめないのは、伝わっていないからではないかと悩んでいます。こんな叱り方でいいのでしょうか?
(1歳1か月の女の子をもつママより)

発達段階によって、叱られる内容の理解が変わる

回答:遠藤利彦さん

理由を説明する叱り方は、よい心構えではないかと思います。目を見て、しっかり話しかけることで「本気で関わっているよ」というメッセージにもなります。小さいころは、まだ意味がわからないかもしれませんが、叱るときは必ず理由を伝えるようにしておくと、ゆくゆくは「世の中には、やっていいこと、悪いことがあって、そこには理由があるんだ」と理解するようになると思います。
叱られた内容をどれぐらい理解できるかは、子どもの発達段階によります。まず、0~1歳前後のころは、言葉の発達が未熟で、親の態度や表情から「これはやってはいけない」ということだけを理解します。1~2歳ごろには、言葉の理解が進み、何について叱られているのかを少しずつ理解しはじめます。そして、3~4歳ごろになると、個人差は大きいものの、叱られる理由だけでなく、叱っている親の気持ちも理解しはじめます。

1歳前後だと言葉の発達が未熟ということですが、危険なことをやめさせたい場合は、どう言うのがいいですか?

感情を込めて叱る

回答:遠藤利彦さん

危ないときには、叱ろうと考える前に声が出てしまいますよね。例えば、子どもが油を口に入れようとしたら、とっさに「絶対ダメ!飲んじゃダメ!」と声を出すと思います。でも、そのように感情を込めることで、本気度が伝わります。感情が乗った“叱り”は、子どもにとって大きなインパクトがあり、1度だけの経験だったとしても「ダメなんだ」としっかり伝わります。ですので、本当にダメなものについては、きちんと感情を添えて叱るようにするのがよいのではないかと思います。

危険から守るための工夫を

回答:柴田愛子さん

探求心旺盛で活発なお子さんだと思います。引き出しの中から不思議なものが出てきたり、台所の扉を開けると宝物が入っていたり、いろいろなことを発見したのではないでしょうか。
シンプルに「ダメ」と叱るのもひとつの方法ですが、「危ない」と叱っても、まだどうして危ないのかわからない時期は、子どもを危険から守るための工夫をするという方法もあります。例えば扉のストッパーなどがありますね。危険を伴うものに関しては、ダメと言い続けても言うことを聞いてくれないので、大人がどう危険を回避してあげるのかを考えてみましょう。
そのほか、台所はダメだけど衣類入れは触っていいなど、ダメじゃないところを用意してあげるのもひとつの方法だと思います。


イヤイヤ期の叱り方、どうしたらいいの?

子どもがイヤイヤ期真っ最中で、何を言っても言うことを聞きません。「だっこして!」と何度も言うのでだっこをすると「だっこ嫌!降りたい!」と言ってきます。食事のしつけもきちんとしたいと思っているのですが「食べたくない!おいしくない!」と、ここでもイヤイヤです。こうしたことが、一日に何度もあります。
本人が納得いくように言い聞かせようと思っていますが、うまくいかないときは「食べたらお菓子をあげる」と褒美でつって、それでも聞かないときはどなってしまうこともあります。
何を言っても聞かないイヤイヤ期の子どもは、どう叱ったらいいのでしょうか?
(2歳4か月の女の子をもつママより)

ダメと叱るより、親の気持ちを伝える

回答:遠藤利彦さん

イヤイヤ期は“他の人とは違う自分”を確立していく非常に大切な時期だと思います。やりたいことがあってもうまくいかず、気持ちが乱れて、ときには“自分はどうしたいのか”さえわからなくなることもあります。子ども自身も苦しい時期ですので、辛抱強く付き合ってあげてください。
この時期は「ダメ」と制止するような言い方より、「ママはちょっと悲しいよ」など、気持ちを子どもに伝えることを心がけていただくと、お子さんとのコミュニケーションの幅が広がっていくのではないかと思います。

「ご飯を食べたらお菓子をあげるよ」というように、ご褒美をあげる作戦は問題ないのでしょうか?

正論だけでいけるわけがない

回答:柴田愛子さん

ご褒美をあげる作戦が正しいとは言いませんが、あの手この手を使わないで、正論だけで子育てをしようとするとパンクしてしまいます。大変なとき、おやつをあげることで言うことを聞いてくれるなら、私は使ってもいいと思います。


褒めて育てたいのに叱ってばかり。これでいいの?

私は、褒めて育てることを大切にしてきました。大人が思う“いい子”ではなく、自分らしく幸せになってほしいので、親がいろいろ言うより、自分で「こんなことができるんだ、得意なんだ」ということをいっぱい感じてほしいと思っています。
でも、最近になって息子を叱ることが増えてきました。ひとつは食事のマナーです。4歳になるのにスプーンやフォークをうまく使えず、手で食べてしまい、食べものをこぼしたりしています。保育園でも迷惑をかけていると思いますし、ちゃんとしないといけないと思っています。もうひとつの原因は、遊びに夢中なとき、はしゃぎ過ぎて乳幼児の妹にぶつかったりすることです。
息子を見ていると毎日楽しそうで、それがよいことだと思うのに、結局ガミガミと叱ることで悲しい気持ちにさせているようで⋯。褒めて育てたいのに、それでも叱るべきなのか葛藤して悩んでいます。
(4歳2か月の男の子と8か月の女の子をもつママより)

褒めると叱る、両方あってのしつけ

回答:遠藤利彦さん

しつけにおいて、褒めることは確かに大切ですが、叱るべきときには叱ることも大切です。褒めること・叱ること、その両方のバランスがうまくとれている中で、子どもはしっかりと育っていきます。
また、褒めることにも注意することがあります。具体的な根拠を挙げないで、ただ褒めることを続けると、褒められることに慣れてしまい、“褒められ中毒”になるのです。これは欧米の研究によるものです。中毒になると「いい子でいないといけない」という気持ちが強くなり、失敗するようなことに手を出さなくなります。チャレンジをしなくなるので、自分の発達の可能性を小さくしてしまうこともあると言われています。ただ褒めるだけでよく育つとは限らないということは、どこかで気に留めていただけるといいのではないかと思います。

うまくスプーンが使えるまで食事に工夫を

回答:柴田愛子さん

お子さんは食欲旺盛なのに、食べたい気持ちにスプーンを使う手の方が追いつかず、気持ちと体の動きのギャップが大き過ぎるのだと思います。手の未熟さは待つより他はないと考えて、今は待ちましょう。スプーンがうまく使えるまでは、食事がばらばらにならないようにおにぎりを作ったり、こぼれても大丈夫なように床に新聞紙をしいたり、いろいろな工夫をするのがよいと思います。


自分だけが叱られると、上の子が不満に感じていたら?

2人のきょうだいを育てています。上の子は叱るけど、まだ分別がつかない下の子は叱らないことがあります。すると、上の子は「どうして僕ばかり怒るの?」と訴えてきます。かわいそうだと思いつつも、どうしていいのかわかりません。自分だけが叱られると、上の子が不満に感じていたら、どうしたらよいのでしょうか?
(4歳と2歳のきょうだいをもつママより)

生まれた順番はマイナスなことばかりではない

回答:柴田愛子さん

上の子は、いつもきちんとしようとするし、親を引き受けてしまうところがありますよね。我慢することも多いと思うので、どこかでフォローしておきましょう。
私には兄がいて、よくケンカをしていました。腕力はかなわないので、私は泣き叫ぶわけです。すると、怒られるのは兄なので、いつも悪いなと思っていました。それが、今でも仲のよいきょうだいなんです。
生まれた順番は引き受けざるをえないことですが、マイナスなことばかりではないと思います。

上の子と下の子でバランスをとる

回答:遠藤利彦さん

これは下の子を優先、でも他のところは上の子が優先というように、バランスをとっていくことが大事です。上の子の発達が進んで理解力が上がってくると、「こういうときには我慢しないといけないけど、こういうときにはちゃんとやってもらっている」とわかってきて、納得できるようになると思います。


すくすくポイント
子どもの困った行動への対処法~保育士さんはどうしてる?~

子どもの困った行動や言い聞かせたいことがあるとき、どんな対処法があるのでしょうか。
保育園の3歳児クラスにおじゃまして、保育士の子どもへの関わり方を見ながら、そのヒントを探ってみます。

ポイント① 先の見通しを立ててあげる

今日は、みんなで公園にお出かけします。

保育士は、外へ出かける前に、必ず子どもに「おでかけのときに起きること」のイメージを持たせるような話をしているそうです。そして、どういう行動をしたらいいか、子どもたちに問いかけます。

保育士 お散歩をするときは、何に気を付けなければいけないかな?
子どもたち 道路!
保育士 道路危ないね。あと大切なことは何かな?
子どもたち 走らない!
保育士 そうだね。急に走り出すとお友だちが転んじゃうかもしれないよ。

このような話をすることで、子どもが自分で考えて、困った行動を抑えられるようになるそうです。

ポイント② 子どもの気持ちを受け止める

子どもが集まればトラブルはつきもの。この日も、ブロックでつくったものをお友だちに壊されてケンカになっていました。

このようなときは、間に入って、子どもの気持ちを代弁してあげるそうです。

保育士 壊されて悲しくなっちゃったみたいだよ。どうする?
子ども ごめんね⋯
保育士 ごめんねって言ってくれているけど、大丈夫そう?
子ども うん

気持ちを代弁してあげることで、子どもは“気持ちを分かってもらえた”と満足して落ち着くといいます。
大人に受け止めてもらえたことで、子どもも聞く態度ができて、言われたことを受け入れやすくなるそうですよ。

子どもの困った行動に対して“叱る”以外のこんな対処法も試してみてくださいね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです