どう違う? ひとりっ子の子育て

すくすく子育て
2018年3月17日 放送

ひとりっ子は甘えん坊? わがままになるって本当? 過保護になりそう⋯
そんな、ひとりっ子の育て方の悩みや疑問を解決しましょう。

専門家:
坂上裕子(青山学院大学准教授 発達心理学)

ひとりっ子って甘えん坊?

ひとりっ子を育てていますが、着替えやご飯などを、本当は自分でできるのに、いつも甘えてきます。例えば食事のとき、自分のイスに座らずママの膝の上に座ろうとしたり、「ひとりで食べられない!」とおねだりしてきたり。ママにかまってもらおうとして、食事がなかなか進みません。甘やかすつもりはないのですが、根負けして、ついつい食べさせてあげています。食事に限らずこのような感じで、ひとりっ子って甘えん坊なのかなと思ってしまいます。
どうしたら自分のことをやってくれるようになりますか。
(3歳4か月の女の子をもつママとパパより)

“甘え”自体は発達には大事

回答:坂上裕子さん

ひとりっ子だから甘えん坊になるわけではありません。
甘えること自体は、発達や成長のプロセスの土台となる大事なことです。自分が不安なときや、気持ちが落ち着かないときに、甘えて安心感をもらう。それが「いろいろなことに挑戦してみよう」「外の世界に行ってみよう」という気持ちのエネルギーになります。これが本来の“甘え”で、ひとりっ子であることとは関係ありません。

自分のことは自分でやろうと思うように、促したほうがいいですか?

集団生活に入れば自分でやるようになる

回答:坂上裕子さん

今は、「子どもはやってもらう人」「ママはやってあげる人」という役割パターンが固定化していると思います。
そのため、「自分でやろうね」と言っても、「ずっとママがやってくれていたのに、どうして自分が?」と思うのではないでしょうか。でも、同年代の子どもたちと集団生活をするようになれば、「みんな自分でご飯を食べている、自分で着替えている」と気付いて、ママがやってくれることが当然ではないとわかります。
「やってもらう・やってあげる」に、違うパターンがあってもよいでしょう。例えば、おままごと遊びでは、お人形さんのお世話をしたり、ご飯を食べさせたりして、子どもが「やってあげる」側になります。


ひとりっ子って集団生活は大丈夫?

2歳のころから人見知りが激しく、特に同じ年頃の子どもたちが苦手です。もうすぐ幼稚園で、プレ保育にも通っているのですが、入口にお友だちがたくさんいるのを見ただけで「入りたくない、やだ」となってしまい困っています。ひとりっ子は集団生活が苦手なのでしょうか?
(3歳4か月の女の子をもつママより)

まずは先生を信頼。友だち作りはそれから

回答:坂上裕子さん

子どもたちは、幼稚園に入ってすぐに仲よくなるわけではありません。まずは先生を頼りにします。パパやママ以外に信頼できる大人がいるとわかって、はじめて安心して生活ができるようになります。その後、だんだんとお友だちとの関係ができていきます。
今の年齢では、大人との信頼関係がきちんとできているかが大事ですので、心配しなくても大丈夫ですよ。


ひとりっ子は過保護になりそうで心配⋯

1歳になるひとり娘を育てていますが、私自身には姉がいて仲よくしているので、ひとりっ子の気持ちがわからず不安があります。娘が「きょうだいがほしいな」と思ったり、大人になって親に話せないこともきょうだいにならと考えたりすると、もうひとり産むかどうか悩みますが、子どもをなかなか授からなかったので、二人目を望んでも難しいかなと思っています。
今は、私と子どもの1対1だから、愛情も心配も全部集中してしまって、やりすぎたり、過保護になったりしてしまうのではないかと心配です。
(1歳の女の子をもつママより)

あえて手をかけずに見守ることも愛情

回答:坂上裕子さん

何かをやってあげることが子どもへの愛情だと思いがちですが、あえて手をかけずに見守ることも愛情のかけかたのひとつです。これから成長して大きくなっていくと、いかに親が手を引いて、子どもを信じて見守るかが大切になっていきます。

成長したら手より目をかける

回答:坂上裕子さん

子どもが小さいころは手をかけ、大きくなったら目をかけようと言われます。どのタイミングで手から目をかけるのかは、子どもの成長によりますし、それぞれに違うので、バランスが大切です。でも、子どもはたくましいので、意外に大丈夫なものです。やってみて失敗してもいいんです。失敗してもフォローをすればいいと考えてください。手の出し方、助け方など、失敗してわかることもあります。
最初から失敗しないように意識し過ぎると、親も子も学べる機会が少なくなってしまいます。「できるかもしれない」と思うことは、思い切ってやってみましょう。それが学びにつながっていきます。

子どもの持ち味によって関わり方を試行錯誤する

回答:坂上裕子さん

他のママの関わり方や、いろいろなお子さんを見ていると、我が家と比べて同じところや違うところが見えてきます。すると、我が子の持ち味、親自身の持ち味がわかってきます。持ち味を踏まえて、どのように関わったらよいのか、自分たちに合った方法を見つけていく。試行錯誤でよいので、ゆっくりと探していきましょう。

今はまだ小さいので、ママやパパとの関係をしっかりつくる時期だと思います。しつけなどは、もう少し大きくならないとできません。焦らないで、今のお子さんとのやりとりを楽しんでください。


ひとりっ子って、そもそも何が違うの?

ひとり娘は1歳のときから保育園に通っていますが、全く保育園に慣れなくて、泣いたり逃げたりしていました。そこで、先輩ママに相談しようと話をすると「ひとりっ子だからね」と言われました。そう言われてしまうと、それ以上相談ができません。そんなことが何度かあり、「ひとりっ子って、そもそも何が違うのだろう」と疑問を持つようになりました。ひとりっ子と、きょうだいがいる子に違いはあるのでしょうか?
(3歳2か月の女の子をもつママより)

ひとりっ子は何事にも集中しやすい環境

回答:坂上裕子さん

きょうだいの有無だけが、子どもの育つ環境を決めるわけではありません。祖父母などの家族の関わりや、それ以外の人間関係もあります。ことさらに“ひとりっ子”を強調することはありません。
違いを考えてみると、きょうだいがいる場合は親の注意が分散します。みんなの要求に応えるのは難しくなるので、良くも悪くも親の目が離れます。ひとりっ子の場合は、ひとりを見ているので気になってしまう。でも、子どもの要求に気が付きやすい面もあります。
きょうだいがいると、にぎやかでうるさいこともありますが、ひとりっ子だと静かな環境になります。自分がやりたいことにじっくり取り組める、自分のペースで物事を進めていける、何事にも集中しやすい環境だと思います。

どの養育環境がベストとは言えない

回答:坂上裕子さん

さまざまな家庭環境ときょうだい構成があり、どの養育環境がベストだとは言えません。それぞれに、良い部分と、補ったほうがいい部分があります。周りの人は「ひとりっ子だから」と言い過ぎないようにして欲しいですね。そのような意見は受け流して、意識し過ぎないようにしましょう。


ひとりっ子だと親の目が集中して、窮屈に感じていない?

子どもがひとりっ子で、両親の目がひとりに集中します。そのため、一挙手一投足が目につき、ついつい注意をしてしまいます。例えば食事のとき、箸の持ち方やひじ付きなど、よかれと思って矢継ぎ早に言ってしまいます。娘は窮屈に感じていないのでしょうか?
(5歳の女の子をもつパパより)

いろいろな人間関係を体験できる工夫を

回答:坂上裕子さん

子どもが大きくなるまでに体験する人間関係は、大きく分けて3つのタイプがあります。

まず、親や先生との関係である「タテの関係」です。続いて、同世代の子どもたちとの対等な関係である「ヨコの関係」。そして、タテとヨコの関係が混在した「ナナメの関係」です。きょうだいは「ナナメの関係」にあたります。

ひとりっ子だと、「ナナメの関係」が少なく、どうしても「タテの関係」だけになってしまいがちです。そのため、いつも叱られ役になって、子どもは「何をやっても叱られる」という気持ちになってしまいます。ですが、例えばお人形さんのお世話をするという遊びで、「ナナメの関係」を疑似体験することもできます。もし気になるのであれば、いろいろな関係を体験できる工夫をしてみましょう。
私の子どももひとりっ子なのですが、何かを「平等に分ける」ことをよくやっていました。例えば、ケーキを買うときは1つにして、パパとママと子どもで3つに分けて食べるようにしていたんです。お菓子があると、今でも自分から「半分こにしよう」と言います。
このように、ヨコの関係・ナナメの関係は、親子のやりとりや、遊びの中でつくることができると思います。

ときには子どもの行動を見て見ぬふりも

回答:坂上裕子さん

みなさんにも、大人の目を盗んで何かをしたという覚えがあると思います。「やっちゃいけない、怒られるだろう」とわかっていても、やってみようとする。そこから、子どもの好奇心が生まれ、いろいろな考える力が育つこともあります。子どもが「何かやっているな」と気づいても、見守ることがあってもよいと思います。
もちろん、子どもの安全を確保しないといけませんし、注意しないといけないこともあります。成長するにしたがって、どこまでは見守っても大丈夫かが変わっていくと思います。子どもの様子を見て、叱ったらどんな反応をするか考えてみましょう。叱るときも、頭ごなしに叱らずに、アプローチを少し変えて「何をやってたの?」と聞くなど、いろいろな関わり方があると思います。

子どもに考えさせる声かけを

回答:坂上裕子さん

親から注意されて、窮屈に感じているかもしれませんが、ひとりっ子であることと関係なく、叱られてばかりだと自分で考えなくなります。ときには、いつもとは違う角度で「どうしたらいいのかな?」と声をかけ、子ども自身が考えることができるような工夫をしてみましょう。そういう意味では、しつけをすることも、やりとりを楽しむことのひとつになると思います。


「なぜ、きょうだいがいないの?」と聞かれたら?

「すくすく子育て」で「ひとりっ子の子育て」についてアンケートを実施したところ、「子どもから、『どうして、きょうだいがいないの?』と聞かれたら」という質問が多く寄せられました。
どう答えたらよいでしょうか?

子どもの気持ちを受け止めてあげる

回答:坂上裕子さん

お姉ちゃんやお兄ちゃんへのあこがれから、自分も「下の子のお世話をしてみたい」という気持ちが生まれることは、自然なことだと思います。その中で「どうして?」と聞いてくることがあるかもしれませんが、理由をきちんと知りたくて聞いているわけではないと思います。「赤ちゃんが欲しいのかなぁ」と、子どもの気持ちを受け止めて、「そうだね。赤ちゃんがいると楽しいかもしれないね」と、気持ちに応えてあげてください。
「どうして?」という部分は、子どもが大きくなるにつれて、自分でわかっていけると思います。


すくすくポイント
ひとりっ子が集団生活を始めるときの親の心構え

ひとりっ子の親は、子どもが保育園や幼稚園などで集団生活を始めるとき、どういう心構えをしていればよいのでしょう。保育の現場で、40年以上にわたって子どもたちをみつめてきた若盛清美さん(認定こども園 こどものもり 副園長)にお話をうかがいました。

子どもには、それぞれの個性がある
入園当初は、ひとりっ子ときょうだいがいる子で違いを感じることもあります。ですが、全員に感じるわけではありません。きょうだいの有無に関係なく、ひとりひとりが違い、それぞれの個性があると思います。

集団生活のスタートラインは一緒
人見知りをする子、活発な子、それぞれ園に慣れるまでの時間は違います。ですが、みんな毎日の生活の中で気の合うお友達をみつけてなじんでいきます。
そもそも、ひとりっ子でも、きょうだいがいても、同年代の子どもたちとの集団生活という意味では、スタートラインはみんな一緒なんです。

親は意識し過ぎないように
実は、お子さんより、親の方が心配だと思うことがあります。自分の目の見える範囲にいた子が、数時間かもしれないけれど、自分の目が届かない違う場所にいる。「泣いていないかな」「いじめられていないかな」と心配するママもいると思いますが、親の不安が子どもに伝わってしまうと感じることもありますので、親が「ひとりっ子であること」を意識しすぎない方がいいと思います。

先生と子どもの情報を交換する
「それでも不安」と思うママは、お迎えのときなどに、先生に園での様子を聞いて情報交換しましょう。
先生たちも巻き込んで、みんなの目で子どもを見守ってください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです