ことばの心配

すくすく子育て
2018年3月10日 放送

口数が少なく、なかなかことばが出てこない⋯
ことばがハッキリしないのは、親の話しかけが足りないから?
子どものことばを育む方法や親の関わり方について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
久保山茂樹(国立特別支援教育総合研究所 総括研究員 臨床発達心理士)

無口な子ども、このままでことばは出てくる?

1歳3か月になる娘が、とても無口で心配しています。好奇心は旺盛で、気になることがあるとトコトコ歩いて探検したり、見知らぬモノを口に入れて確かめたりします。でも、何をするにしても、いつも無言です。声が出るのは、私に何かをしてほしいときや嫌なときに「わー」と言うぐらいで、意味のあることばにはなりません。まわりの子と比べると、ことばが出るのが遅いのかなと思っています。
でも、私が言うことはわかっているようです。私がドテっと寝転んで「〇〇ちゃんもドテっ!」と言うと一緒になって転がったり、子どもがおならをしたとき「お尻からプン!」と言うと楽しそうに笑ったりしますが、そのときも無言です。
何をするにも無口ですが、このままでことばは出てくるのでしょうか?
(1歳3か月の女の子をもつママより)

ことばには3つの種類がある

回答:久保山茂樹さん

ことばの数は少ないかもしれませんが、このお子さんの場合、ことばにつながる“ことばの芽”はたくさん見られます。例えば、ママが寝転んだとき、一緒になってまねをしています。動作をまねするのは、口では言えないけど、「ママの言っていること、わかっているよ。まねするよ」を体で表現した“動作のことば”なんです。

ことばは、声に出す話しことばだけではなく、3つの種類があると考えられています。

まずは、おしゃべりなどの「音声のことば」。

次に、目で見てわかる「視覚のことば」。例えば、靴を見せると「お出かけ」だと伝わるようなものです。

そして、体を使った「動作のことば」。
どれも、立派な「ことば」だと考えられているのです。

小さなお子さんは「音声のことば」が出てくる前に、「動作のことば」でしっかりコミュニケーションしています。例えば、ママのところにおもちゃを持ってくるのは、「ママ見て!」を動作で表現したものです。このような動作のことばに、丁寧に応えてあげてください。
親も、子どもに「食べる?」と聞くとき、動作のことば(食べる動作)を合わせると、子どもにとってわかりやすくなります。

子どもの表現をまねする

回答:久保山茂樹さん

少し恥ずかしいかもしれませんが、子どもの表現をそのまま“まね”してあげてください。子どもは、自分が表現していることをママやパパがまねしてくれると、受け止めてもらえたと感じます。そこから、自分もまねをしてみようとなり、コミュニケーションの土台が育っていきます。


ことばがハッキリしない子どもの親は、どのように関わればいい?

子どもの成長が少し遅いのではないかと気になっています。1歳を過ぎても、なかなかことばが出てきませんでしたし、立ちはじめたのもこの頃です。1歳4か月を過ぎたころから急にことばが出てきましたが、ハッキリとせず、ことばにならない声を出していて、私たちにもよくわからないことが多いです。
例えば、パパと大好きな電車のおもちゃで遊んでいるとき、何かをパパに伝えたいのか、がんばって声に出すのですが、ことばはハッキリしません。パパは「この電車がいいの?」と応えて電車をレールに乗せてあげたり、「出発しますよ、3・2・1、出発進行!」と声をかけたりしながら遊んでいます。
もっとたくさん話しかけたほうがよいのか。親はどう関わっていけばよいのでしょうか?
(1歳5か月の男の子をもつパパとママより)

やりたいことを動作のことばで表現している

回答:久保山茂樹さん

子どもにとって、パパとママが自分の好きなものに寄り添って一緒に遊んでくれることは、すごくうれしいことです。やりたいことがたくさんあって、電車のおもちゃであんなことやこんなことをしたいと、一生懸命に“動作のことば”で表現しています。パパは「この電車?」とこたえて、うまく“音声のことば”にしてあげている。この関わり方を大事にしてください。

子どもが興味をもっているときに声をかける

回答:久保山茂樹さん

子どもは、親が言うことを聞いてくれるときと聞いてくれないときがあります。その違いは、子どもの「やりたい」「欲しい」といった興味です。興味が向いていると、ものを覚えようとしてすごく学びます。そんなときに「出発進行!」や「ガタンガタン」と声をかけると、子どもは「あ、そうやって言うんだ」と学びます。
子どもが興味を持っているときは、短いことばで声をかけてみてください。興味が向いていないときだと、右から左に抜けてしまいますよ。

「目を見て話すのがいい」と聞きますが、そのほうがよいのですか?

横に並んで同じものを見る

回答:久保山茂樹さん

「目を見て話す」と言われることがありますが、大人がじっと見つめると、子どもは「何で見てくるの?」と感じて、それが気になってしまいます。ですので、無理をして目を見なくてもよいと思います。それよりは、横に並んで同じものを見てあげると、子どもは安心して表現しやすくなると思います。例えば、子どもがおもちゃを指差したときは、心が動いているときです。指の先に何があるのかを見て、「電車がきたね」「ワンワンだね」と声をかけて反応してあげるとよいと思います。


ダンスは得意なのにおしゃべりが苦手⋯ どうすればもっとことばで伝えられる?

2歳3か月になる長女は、ものの名前を言えるようになりましたが、まだ二語文を話せず、自分の気持ちを伝えられないことに心配しています。
歌や踊りが大好きで、お気に入りの番組を何度も見て、振り付けを覚えてしまいました。興奮してくると、歌に合わせて「やー!」と声を出すこともありますが、楽しい気持ちをことばで伝えることはありません。
保育園の先生からも「まねっこが上手でよく踊ったりしています」と言われます。ダンスは器用にできるのに、おしゃべりが上手にならないのはどうしてなのか気になります。
1歳半検診のときには、「ことばが遅れ気味ですね」と言われました。2歳前後で出ると言われる二語文が、やっと少し出はじめたぐらいです。どうすれば、もっとことばで伝えられるようになるのでしょうか?
(2歳3か月の女の子と1歳5か月の男の子をもつママとパパより)

テンポがゆっくりだとことばを出しやすい

回答:久保山茂樹さん

今は、ダンス(動作のことば)で表現するのが楽しいのではないでしょうか。テンポの速い曲だと、体を動かすことで精いっぱいになって、ことばを出す余裕がないかもしれないので、少しテンポがゆっくりした曲であれば、歌に合わせてことばを出しやすくなると思います。歌と一緒に「やー!」と声が出ているのは、テンポに余裕があるときだと思います。

今は動作のことばを大事にする

回答:久保山茂樹さん

検診で「ことばが遅れ気味」と言われて心配になると思いますが、音声のことばの発達には、大きな個人差があります。一方で、動作のことばの発達が早い子もいます。今は、動作のことばを大事にしてあげてください。やがて、動作のことばに音声のことばが乗ってきます。それがお子さんなりの成長ですよ。

心の動きが表現したい気持ちにつながる

回答:久保山茂樹さん

ダンスのときに「やー!」と声を出すことも立派なことばです。体が表現したいという気持ちのとき、思わず出てしまう声は覚えやすく定着しやすいものです。体を使って経験すると、心が動いてワクワクしたりドキドキしたりします。それが表現したい気持ちにつながります。できるだけ、本物で体験させてあげるとよいと思います。例えば、電車のおもちゃより実物の電車を見ると興奮度が違いますよね。

二語文には必要な力がある

回答:久保山茂樹さん

二語文が出るためには、使える単語の数が増えてくること、2つのことを同時に処理できる脳の働きがあること、この2つの力が備わっていることが必要になります。
例えば、おままごとで遊ぶとき、1歳ぐらいだと口にものを入れるだけですが、1歳半くらいになるとおもちゃの包丁で切るまねができるようになります。2歳くらいになると切ったものをお皿に載せるなど、手順を踏むことができます。それが、二語文を話すことができる大事な頭の働きとつながっていると言われています。
その意味では、お子さんはダンスが得意で動作をどんどんつなぐことができています。もう、二語文の準備はできてきていると思いますよ。


赤ちゃんことばを、いつ、どうやってふつうのことばに変えていくの?

子どもに赤ちゃんことばで話しかけています。今は、そのほうが子どもにわかりやすいのかなと思いますが、いずれふつうのことばに変えていくと思います。例えば、「ワンワン」から「いぬ」と言うときがくると思います。ふつうのことばへ変えていくのは、どういった時期に、どういった方法で変えていくのでしょうか?
(1歳3か月の女の子をもつママより)

いずれ卒業するけど、それまで楽しむ

回答:久保山茂樹さん

例えば「ワンワン」は、繰り返しことばで、ひとつのことばが短いので、子どもにとって覚えやすくて言いやすいことばです。その意味では、赤ちゃんことばはとても大事だと思います。
この先、保育園や幼稚園に通いはじめて、自分のことばが伝わらないと気づいたとき、子どもは自分で“人に伝わることば”を覚えていきます。そのときが、赤ちゃんことばの卒業になると思います。それまでは、親子で赤ちゃんことばを大いに楽しみましょう。


すくすくポイント
コミュニケーションしたいという気持ちを育てるには?

ことばの大きな役割は、人とつながり、心を通わせるコミュニケーションの働きです。そして、ことばを育てるためには、コミュニケーションしたいという気持ちが大事になります。でも、この気持ちを育てるためには、どうしたらいいのでしょうか。

子どもたちが遊んでいるとき、大人がどう関わればよいのか、そのポイントを久保山茂樹先生(国立特別支援教育総合研究所 総括研究員 臨床発達心理士)に聞いてみました。

集中して遊んでいるとき

子どもが夢中になって遊んでいるときは、自分のイメージをしっかりと持っています。
このときに声をかけると、動きが止まったり、自分のイメージと違うことで声をかけられたりして、「つまんないな」となってしまいます。
遊びに集中しているときは、声をかけずに見守りましょう。

思い通りにならないとき

自分の思い通りにならなくて、おもちゃをグチャグチャにして、思わず声が出てしまうようなときがあります。イメージを持って遊んでいたのにうまくいかず、思わず声が出てしまう。そんなときは、その気持ちを大事にして共有しましょう。

親に目を合わせないとき

親と一緒に遊んでいるとき、親に目を合わせないことがあり、気になるかもしれません。でも、子どもは、本当に伝えたいとき、伝えたいことがあるときは、大人の目をしっかりと見ます。必要なときには、子どもから目を合わせてくるので、それを待ってあげましょう。
遊びながら声をかけるときは、短いことばで、ゆっくりと優しく話しかけるといいですね。

おままごとのとき

おままごとで、おもちゃの包丁でおもちゃのニンジンを切る、切ったニンジンをお人形に食べさせてあげる。それができるのは、何が道具で、何が食べものなのかよくわかっているからです。このように、音声のことばが出る準備として、意味の理解ができるようになるのはとても大事なことです。

子どもの行動をことばに代えていくことも、大事な関わり方だと思います。
例えば、おもちゃの電子レンジで遊んでいたら「チンしてくれるの?」など、声をかけてあげましょう。


子どもは、成長にともなって、ことばを使って考えたり、学んだりするようになります。さらに成長すると「このおもちゃで遊ぼう!」「これは触っちゃダメ!」など、ことばの力で自分の行動をコントロールできるようになります。そのようなことばの発達につながる最初の一歩が “コミュニケーションする”ということです。
子どもは、子どもなりに“表現したい気持ち”があります。大人は、その気持ちを大事にして、しっかりと受け止めましょう。その繰り返しの中で、コミュニケーションしたいという気持ちが育まれていくのです。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです