甘えと甘やかし、どう違う?

すくすく子育て
2017年9月23日 放送

子どもが甘えてくること、よくありますよね。小さいときは愛情たっぷりで育てたほうがいい?
でも、何でもやってあげてしまっていいの?
そんな甘えと甘やかしの境界線について、みんなで考えます。

甘えと甘やかし、どう違う?

専門家:
大豆生田啓友(玉川大学教授 乳幼児教育学)
若盛清美(認定こども園こどものもり副園長)

何でも手伝ってしまうのは、甘やかしになってしまう?

子どもが、朝起きると「だっこして」と甘え、一人で起きることができません。「着替えてね」と言っても、ママにやってほしいと甘えます。靴もママに履かせてほしいと甘えます。保育園では自分でやっているところを目にしたことがありますが、家だと甘えます。
保育園に預けて寂しい思いをさせているのかなと思うと、甘えさせてしまいます。子どもも私がいると「ママ、ママ」となってしまうし、私も「かわいい」となってしまって。ある程度距離をおかないと、親離れ子離れができないのかなと思うのですが。周りの人からは、甘やかしすぎ、手をかけすぎと言われることもあります。甘やかしになってしまっているのかと悩んでいます。
(2歳11か月の男の子をもつママより)

甘やかしは子どものやりたいを阻むもの

回答:大豆生田啓友さん

手伝っていいものか悩みつつも、丁寧に対応してあげていますね。
一日のはじまりにぐずっても、子どもの「やってほしい」をちゃんと受け止めてあげる。子どもは、自分を受け止めてもらって、どんどん元気な気持ちになっていきます。

甘えと甘やかしには違いがあります。
甘えは、子どもが自立に向かうための、愛に基づいた依存です。つまり愛着関係です。子どもは、自分のことをしっかりと、いっぱい受け止めてもらえると、自分に自信がついていきます。それが、いろいろなことをやろうという気持ちにつながります。
一方、甘やかしは、子どもの自立を阻むものです。例えば、過干渉や、先回りをするなどです。子どもが自分でできるのに、やりたいのに、それを親がやってしまうことです。

「だっこ」ではなく、ときどき抱きしめてあげる

回答:若盛清美さん

このようなお子さんは、たくさんいらっしゃいますよね。
そんなときは、「だっこ」だけではなく、ときどきぎゅっと抱きしめてあげてください。例えば、お誕生日会のときなどです。子どもは、どんなに大きくなってもママ、パパのことが大好きです。ですから、ときどきは抱きしめてあげてください。
ママ、パパはちょっと恥ずかしいかもしれません。でも、子どもはとってもうれしそうな顔をしますよ。子どもは、抱きしめられて、胸と胸がぎゅっとくっつくことで、自分は親に愛されていると感じているのではないでしょうか。
そういう場をいくつになっても持ってほしいですね。


愛情と甘やかしの境界がわからない

子どもが目玉焼きの黄身しか食べず、白身を食べません。食パンも真ん中しか食べません。残ったものは私が食べています。無理に食べさせて「いや!」となると、次から食べないだろうと思うと、一口食べるだけでもよしとしようと思っています。なるべく、子どもの気持ちを受け入れたいと思っています。
外出のときも、だっこをせがまれます。腰が痛いのですが、せがまれるとだっこしてしまいます。
わがままな子に育ってほしくありませんが、小さいときは手をかけて愛情たっぷりに育てたほうがいいのではと思って、今は許しています。でも、どこまでが愛情たっぷりで、どこからが甘やかしなのか悩みます。
(3歳1か月の女の子をもつママより)

子どもの見える所で「おいしい!」と言って食べる

回答:若盛清美さん

保育者としては、「これも食べてくれるといいな」と考えて食材を盛りつけるので、食べてほしいですよね。
こういうときは、子どもと向かい合って食べてみましょう。保育者が、子どもから見えるように座ります。大きいお子さんであれば、同じテーブルで食べるのもよいです。そして、子どもの前で「おいしい!」と言って食べる。すると、子どもに「なんだろう?」という興味が生まれます。ここで「あなたも食べる?」と言う必要はありません。

第3の手で、子どもの気持ちを切り替える

回答:大豆生田啓友さん

「だっこして」を全部受け止めていいのか、「いつもはだめよ」と言ったほうがいいのか悩みますよね。親もずっとだっこするのは疲れてしまいます。このような場合は「第3の手」を考えてみましょう。
例えば「だっこじゃなくて、走っていってみよう!」など、子どもが目先を変えられるように、ちょっと空気を変えてあげる。子どもも意外と自分の気持ちを切り替えます。だっこするでもなく、だっこしないわけでもない、第3の手です。
どこかに買い物に行って、子どもが「買ってほしい!」とぐずる。このとき買うか買わないか悩みますが、できれば買ってあげないほうがいいと考えるなら、「お家に帰ったら、この前残しておいたお菓子を食べよう!」などと声をかけてみます。買うでも買わないでもなく、もうひとつの別の手を出すことによって、子どもが「今は我慢しよう」となることもある。
第3の手を出すことによって、子どもは自分の気持ちを切り替えていくのです。

「第3の手」が思い浮かばない状況のときは、どうしたらいいでしょう?

ダメなことはダメと言うことも必要

回答:大豆生田啓友さん

子どもにはさせたくないこともありますよね。例えば、お菓子を食べさせたくないと思うなら、「これはダメだよ」と言うことも大事です。スマホで動画を見せることも、際限がなくなるので悩ましいですね。
もちろん、親が大変なときに、ちょっと見てもらって助かることもあります。それを使うことが悪いわけではありません。でも、見だすと止まらないので、大人がコントロールしてあげなければなりません。
「今は見る時間じゃないよね」「15分って決めたよね」というように、ダメなものはダメだという姿勢を示すことも大事です。「第3の手」を使わずに、ダメだと言うこともときには必要です。

ちょっと難しい話をすると意外と食いついてくる

回答:若盛清美さん

例えば「夜寝る前にアイスクリームを食べると体によくないんだよ」「お菓子をいっぱい食べると虫歯になるよ」というように、子どもにとって、ちょっと難しい話をすると意外と食いついてきます。
そのように、ママやパパの気持ちを伝えてあげるとよいかもしれません。


寝る前にもう一回テレビを見たいと泣く息子 見せてもいい?

下の子を寝かしつけるときに、上の子が「テレビを見たい」と言うので、「いいよ」と見せておくのですが、寝かしつけ終って戻っても「まだ見たい、もう1回見たい」と言って、泣いてせがみます。
子どもに泣かれたり、ぐずられたりして「いいよ」と許してしまうのは大丈夫なことなのかと気になります。
(2歳10か月と10か月の男の子をもつママより)

見せ過ぎと思うなら、どこかで切る

回答:大豆生田啓友さん

もし、テレビを見せ過ぎかなと思うのであれば、子どもにもちゃんと説明して、どこかで切りましょう。子どもは泣くこともありますが「これ以上は、無理を言っているんだ」と、本人は十分わかっています。そして、どこかで気持ちをおさめます。
実は、泣くことは自分の気持ちを切り替えていく練習になります。これも大事なことです。

最初に予告しておくのも、ひとつの手

回答:若盛清美さん

ずっと見せてあげると「それでいいんだ、僕の気持ちが全部通るんだ」という思いになってしまいます。ですので、最初に「下の子を寝かしつけるから、それまでよ。」「あとで本を読んであげるね」など、予告をしておくのもひとつの手です。
例えば、こども園で「明日、〇〇時になったら、みんなで集まって〇〇をしよう」と事前に予告しておくことがあります。予告しておくと「昨日、お話したように、みんなで集まろうね」と言ったとき「あ、そうだったね」とわかってくれます。もう少し大きくなってくるとそうなりますよ。

五感に訴えて、気持ちを切り替える

回答:大豆生田啓友さん

子育てをしていると、どのように気持ちを切り替えてあげるか考えますよね。
このとき、空気を変えてみることが大事です。「まだ見たい」とぐずっているとき、部屋を暗くして「みんなで寝ちゃうよ」と言うのも空気を変えることになります。
例えば、赤ちゃんが泣いているときでも「外に行ってみよう」「鳥が飛んでいるね、見える?」など五感に訴えるのもよいと思います。泣いているときに気持ちを切り替えてあげる。ちょっとしたことでよいと思います。


子どもが簡単に取れるものを親はとってあげたほうがいい?

子どもと2人で遊んでいるとき、娘が転がっているおもちゃを「とって」と言います。手を伸ばせばすぐに取ることができるのに「とって、とって」と言います。甘えているなと思いつつ、ついつい取ってあげたりします。自分でやらせたほうがいいのでしょうか?
(3歳1か月の女の子をもつママより)

コミュニケーションしたいという気持ちの表れ

回答:大豆生田啓友さん

私ならよろこんでとってあげますね。
子どもが小さい時期の子育ては大変だから、なかなかそういう気持ちになれないかもしれません。ですが、もう少し大きくなると「とって」と言ってくれなくなります。「とって」は、ママとコミュニケーションしたいという気持ちの表れなのです。全く甘やかしではありません。

ママも「とって」と言って「ありがとう」を加える

回答:若盛清美さん

ママも「それをとって」と言ってみたらどうでしょうか。子どもがとってくれたら「ありがとう」と加えてみてください。すると「ありがとう」という言葉をおぼえることにもなります。

親切にされた子は、人にも親切をするようになる

回答:大豆生田啓友さん

親切にされた子は、人にも親切をするようになります。
その意味でも、甘やかしではないんです。


すくすくポイント
甘えさせたほうが自立する?

子どもに甘えさせることは「甘やかすこと」や「子どもの自立を妨げること」になるのではないか。このように、甘えさせることは、どこかネガティブなイメージを持ちがちですよね。
しかし、実は甘えさせることが子どもの自立につながるといいます。甘えの重要性について、内田伸子先生(十文字学園女子大学特任教授)にお話を伺いました。

子どもは、甘えによる愛着関係を土台にして、自分の世界を広げていきます。甘えが、自立していくときの安全基地となるわけです。
子どもが何かに挑戦すると、失敗することもあります。そこに安全基地があると「どうしたらいいだろう」と立ち戻ることができます。そして、再び挑戦できる。うまくいけば達成感を持ち、自尊心が育ちます。「これができた!」という自分への信頼につながります。自分への信頼は、難題に直面したときに「今度もきっとやれる」と思えることにもつながります。

甘えに応じる、ひとりでやらせる、どちらがいいの?

甘えは子どもの自立にどう影響するのでしょうか。
内田伸子先生は、幼稚園の3歳児クラスを1年間(合計3年間)保育観察しました。クラスは1組(20名)と2組(20名)のふたつ。それぞれのクラスで「甘え」への異なる対応をして、経過を観察したのです。

1組の先生は、子どもの甘えを受け入れ、ボタンをはめてあげたり靴下を履き替えさせてあげるなど、何でも手伝ってあげました。

2組の先生は「幼稚園生だから、自分のことは自分でやりましょう」と言葉で促して、手伝うことはしませんでした。

すると、2つのクラスの子どもたちに顕著な違いが出てきました。
先生が子どもの甘えに応じた1組の子どもたちは、自分で着替えができるようになっていました。先生に対する信頼感が育ち、自分でやってみようという意欲が育ったのです。
一方、先生が言葉で促すだけで手伝わなかった2組の子どもたちは、自分から着替えようという自主的な行動は見られませんでした。

子どもたちが十分に甘えられる安全基地を持つことは、将来自立して生きていくための前提になるのではないでしょうか。子どもに甘えさせて、安全基地になることが、幼少期の親の役目かもしれません。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです