産後の体と心~心編~

すくすく子育て
2017年7月22日 放送

待ちに待った赤ちゃんとの対面。これから始まる育児を元気に楽しみたい! と張り切っていたけど、立ちくらみやめまいがあって体がしんどい、気持ちの波が激しくて涙がわけもなく出てきてしまう⋯ 体も心もうまくコントロールできない!
今回は、そんな産後ママの「心の悩みやギモン」にスッキリお答えします。

産後の体と心~心編~

専門家:
笠井靖代(日本赤十字社医療センター 産婦人科医)
岩佐寛子(東京都助産師会 助産師)

産後、心が不安定になる原因は?

はじめての子を出産して2か月になりますが、出産後すぐに心の変化を感じました。
涙がわけもなく出てきてしまうことがありました。だっこしていて、日に日に重くなるのを感じると、かわいすぎて「大きくなっちゃうんだ」と思って。
気分の浮き沈みも大きくなりました。産まれてきてすごくうれしい、笑ってくれてかわいいと思う気持ちと、泣かれてどうしようと思う気持ち。この繰り返しで、気持ちの波が激しくて、どうしていいのかわからない感じでした。
きちんと育てないといけないと思う反面、もし階段でつまずいて落としてしまったらどうしようと思って急に怖くなったり。
産後に心が不安定になるのは、どうしてなんでしょう?
(2か月の女の子をもつママより)

産後は女性ホルモンが急激に低下し、心が不安定になる

回答:笠井靖代さん

産後、一時的に不安定になり、次のような症状が続くことをマタニティ・ブルーズ(※)といいます。
おおくは2週間程度で症状がなくなり、何かの治療をするのではなく、家族の協力などで少しずつよくなっていきます。
妊娠中も出産への不安がありますが、マタニティ・ブルーズとは、産後の一時的な不安定さを意味します。それには、女性ホルモンの影響があるのです。

妊娠中、赤ちゃんを育てるのに都合のよい体になるため、胎盤から女性ホルモン(エストロゲン)がたくさん分泌されます。女性ホルモンは出産までに10倍から100倍に増え、出産後は急激に低下します。

この女性ホルモンは、妊娠・出産だけではなくて、いろいろな部分に働いています。

<女性ホルモンの働き>

  • 髪や皮膚のみずみずしさの維持
  • 骨量の減少を防ぐ
  • 骨、筋肉、関節の働きをスムーズにする
  • 脳機能の維持、精神を安定させる など

女性ホルモンの急激な低下は、体にさまざまな影響を及ぼし、その中には「脳機能の維持、精神を安定させること」も含まれます。
そのため、体の不調のほかにも、緊張が続く、涙もろくなるなど、心が不安定になるような症状が一時的にあらわれるのです。

※マタニティ・ブルーズ
産後一時期に起こる、情緒不安定な状態
症状:涙もろくなる、気分が落ちこむ、疲労感、不安感、緊張など

出来たことに目を向ける。周囲のサポートが心の安定につながる

回答:岩佐寛子さん

はじめての育児の場合、みなさん責任を感じますし、完璧を求めてすごく頑張りますよね。
それだけに、出来なかったことがあると落ちこむこともある。ですが「今日はうまく寝かしつけできた」など、出来たことに目を向け、自分で自分を認めて褒めていただきたい。

また、周囲のサポートがとても大事になります。例えば、パパが「ママおつかれさま。今は僕がだっこしておくよ」というようにしていただくと、ママの心の安定につながると思います。

マタニティ・ブルーズは一時的ということですが、何か気をつけることはありますか?

症状によっては専門家に相談を

回答:笠井靖代さん

次のような項目に該当する場合は、注意が必要です。メンタルヘルスの専門家に相談してください。

<こんなときは受診を!>

  • 不眠が続く
  • 食欲が落ちる
  • 子どもがかわいいと思えない
  • 自分を責める など

きちんと治療を受ければ、このような深刻な症状があってもよくなりますし、赤ちゃんと一緒に生活を続けることもできます。

産後の心に不安を感じたら

産後の心に不安を感じたとき、行政の子育て支援を活用することもできます。
厚生労働省では2017年4月から、産後検診費用2回分の助成をはじめました。心がもっとも不安定な時期にあたる「産後2週間」の検診費用と、これまで自己負担だった「産後1か月」の検診費用も助成されます。
ただ、実施している自治体はまだそれほど多くありません。産後ママの体や心、育児を支援するサービスは自治体によってまちまちです。
お住まいの地域の保健センターなどへ相談してみてください。


産後のイライラで上の子に優しくできない、どうしたらいいの?

2人目の子を出産して、2人の子どもの子育てがはじまってから、ささいなことでイライラするようになりました。
その原因は、イヤイヤ真っ盛りのお兄ちゃんです。食事中に食べもので遊んだり、ごはんに飽きておもちゃで遊びはじめたり、育児が思い通りにならず、イライラして大声で叱ってしまうこともあります。
産後の心の乱れと疲れもあって、怒りのままにお兄ちゃんに当たっているのがすごくつらいです。負い目に感じているところもあります。
どうしたらいいでしょう?
(2歳の男の子、4か月の女の子をもつママより)

2人の子育てをしています。子どもたちのことはとても大好きです。ですが、寝不足や疲れで余裕がないとき、上の子がわがままを言ったり、生意気な口をきいたりすると、どうしてもイライラしてしまいます。
(3歳11か月の女の子、5か月の男の子をもつママより)

子育てを楽しむには、ママ自身が楽しめる時間を持つ

回答:笠井靖代さん

私も経験がありますが、どうしてもイライラしてしまいますよね。

赤ちゃんは大事で、本当に一生懸命育てようという気持ちでいっぱいだと思いますが、同時に、少しでも自分の時間を持つようにしてください。かわいい赤ちゃんを育てるからこそ、少し休む時間をとるなど、自分自身が楽しむ時間を持つことがとても大切です。

母親だから「こうしないといけない、ああしないといけない」と縛られ過ぎると、余計にプレッシャーとなってしまいます。パパやほかの家族などに赤ちゃんをみてもらって、美容院にいく、お茶をしてくるなど、リフレッシュできることを見つけましょう。そうしないと、まいってしまいますよ。

悪いと感じたら素直に謝って大好きを伝える

回答:岩佐寛子さん

人間ですから、少し声をあらげてしまうこともありますよね。
そんなときは、素直に謝って「ごめんね、お母さんはあなたが大好きなんだよ」と伝えて、ぎゅっと抱きしめてあげてください。言葉やスキンシップで気持ちを伝えることが大事です。


産後、ささいなことでパパにイライラしてしまう!

出産後、ささいなことでパパにイライラすることが多くなりました。家事を手伝ってくれて、ごみ捨てなどもやってくれます。ですが、例えば、ごみを捨てた後、次のごみ袋をごみ箱につけてくれなかったり、そういう小さなところにイライラしてしまいます。
(5か月の男の子をもつママより)

イライラをぶつけられるのは信頼できる相手だから

回答:笠井靖代さん

イライラする気持ちをぶつけられる。それは、それだけ信頼できる相手だということです。
家族や、信頼するパートナーでなければ、ぶつけることすらできないですよね。

わかって欲しいではなく、しっかり伝える

回答:岩佐寛子さん

ママは空気を読んでほしいのだと思います。先回りしてほしい、言わなくてもわかってほしい、そう思うこともあるかもしれません。でも、それは難しいことです。パパに「今はこれをして欲しい」など、はっきりと伝えてみてください。

パパも「今日はありがとうね」「一日どうだった?」など感謝やねぎらいの気持ちを伝えながら、ママが話しやすい雰囲気をつくってあげることも大事なことです。


はじめて住む町での育児が不安、頼れる人もいない⋯ どうしたらいい?

長男を出産する直前にパパの転勤が決まり、住み慣れた東北を離れて引っ越しました。
初めて暮らす土地で、初めての子育て。日々心細さを感じています。パパも忙しく、日中は赤ちゃんと2人きりの生活で、ほとんど外に出ません。誰とも話をしない日もあったり、近くに悩みを相談できる人もいなかったり。
ひとりでこなす育児に、不安を感じることもあります。私の微熱が続いたときも、病院に行けず我慢して、なんとかやり過ごしたことがありました。近くに頼れる人がいないと、どうすればいいのかなと⋯。
ほんとうはパパに頼りたい部分はありますが、毎日仕事で疲れているので、家ではゆっくり過ごしてほしいという気持ちがあります。私自身が専業主婦なので、働いているお母さんに比べたら、自分で家事も育児も頑張らないといけないと思い、なかなか周りの人にも言えません。
(7か月の男の子をもつママより)

育児に専念している人ほど、休む時間とネットワークが必要

回答:笠井靖代さん

少し前に、ワーキング・マザーと専業主婦、どちらが大変かという調査をしました。
その結果、専業主婦のほうが、むしろ大変で精神負担が大きいということがわかりました。

それは、専業主婦がネットワークを作りにくいためです。例えば、保育園にいけば、保育士さんにアドバイスをもらったり、ママ友もいたりします。専業主婦はその保育園と接点がないのです。
自分自身には昼も時間があるから、しっかりしないといけない、頑張らないといけないという気持ちもより強いので、余計に孤立感や孤独感を抱えて、うまくいかないと感じていられる方が多いと思います。

ですので、育児に専念している専業主婦だからこそ、育児を休む時間やネットワークが必要だと考えてください。

子育てのネットワークについて

子育てのネットワークを広げるためには、次の3つのポイントを押さえておきましょう。

<相談先>

まず、子育てで困ったとき、悩んだときの相談先です。
地域の「保健センター」では専門家のアドバイスが受けられます。「助産院」では、育児の悩みだけでなく、ママの体や心の相談にも乗ってくれます。地域で活動している「助産師」なら自宅訪問をしてくれるそうですよ。

<仲間づくりの場>

続いて、仲間づくりの場です。
「地域の子育て広場」「子育てサロン」などでは、子育て中の仲間と知り合うことができます。

<いざという時に頼れるところ>

最後は、ママの体調が悪いときなど、いざという時の相談先です。
家事や育児をサポートしてくれる「産後支援ヘルパー」や「ファミリーサポート」。保育園では「一時預かり」をしているところもありますよ。

ひとりで抱えこまないように

回答:岩佐寛子さん

家族以外にも相談できる場所や人をみつけて、ひとりで抱えこまないようにしてください。


子どもはかわいいけれど母親としての実感はない、みんなはどうなの?

子どもはとてもかわいいし、しっかり守らないといけないと思います。でも、妊娠中も、子どもが8か月になった今でも、母親としての実感があまりないように感じます。みなさんはどうなんでしょうか?
(8か月の女の子をもつママより)

日々の育児をしながら少しずつ親になる

回答:笠井靖代さん

出産してすぐは、当然、まだまだ実感がわかない。それが正直なところだと思います。
日々の育児をしながら、いろいろなたくましさが出てきて、うまくいかないこともある中で、なんとかやりこなしていける。
そうやって、少しずつ母親らしく、父親らしくなるものだと思います。

赤ちゃんが自分たちを親にしてくれている

回答:岩佐寛子さん

例えば、赤ちゃんを抱きあげると泣きやんでくれた。パパが抱きあげると泣きやんだ。
そういったことから、赤ちゃんが自分を必要としてくれていると感じて、少しずつ変化していくと思います。
赤ちゃんが、自分たちをお母さん、お父さんにしてくれている、という感覚もあります。

最初から、実感がないからダメだということはまったくありません。
少しずつ母親、父親になっていけたら、いいのではないでしょうか。


すくすくポイント
産後の心をリラックス

赤ちゃんと一緒にできるリラックス法を紹介します。
教えてくれるのは、ヨーガを取り入れて産前産後のママをケアする、助産師の飯島睦子さん(日本マタニティ・ヨーガ協会)。

月と太陽の呼吸法

まずは、リラックスできる基本の呼吸法です。
イライラしたり、落ち着かないとき、眠れないとき、頭痛がするときにも効果がある呼吸法です。

<呼吸法のやり方>

まず、手のひらを上に向けてあぐらを組み、背筋を伸ばし力を抜きます。

右手の人差し指を眉間におき、親指で右の方の鼻を押さえます。
そのまま、左の鼻から息を吸っていきます。

左の方の鼻を押さえて閉じます。
親指をはなして、右の方の鼻を開き、息を出します。

続けて、右から息を入れて、閉じます。

左から息を吸い、息を止め、右から吐く。右から吸い、息を止め、左から吐く。
これで1セットです。ゆっくり3~4回おこないます。

赤ちゃんをだっこしたままでもできますから、ぜひ、やってみてください。

完全弛緩のポーズ

呼吸が整ったら、体もリラックスさせましょう。

あおむけになって両足を少し開き、手のひらを上向きに。
全身の力を抜くだけで、リラックス効果は抜群です。
育児の合間、4~5分でもリフレッシュできます。

「こんなふうに休んだことがなかったです」「こんな短い時間でも体がほぐれて楽になりました」と、お母様方から聞いています。おうちでも取り入れやすいと思います。
(飯島睦子さん)

産後、リラックスタイムを持つことはとても大切です。赤ちゃんと一緒に毎日の生活に取り入れてみてください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです