意外と知らない!? 保育園・幼稚園

すくすく子育て
2017年6月24日 放送

日本中の子どもたちが通っている保育園や幼稚園。そこでどんなことをしているかご存知ですか?
幼稚園は教育の場? 保育園は預かってもらうところ? 保育園と幼稚園ってそんなに違いがあるの?
みんな知っているようで、実は知らない「保育園・幼稚園」を徹底解説!
日本の幼児教育について、みんなで考えましょう!

すくすく子育て「意外と知らない!? 保育園・幼稚園」

専門家:
汐見稔幸(白梅学園大学学長 教育学)
大豆生田啓友(玉川大学教授 乳幼児教育学)

保育園と幼稚園 どう違うの?

保育園と幼稚園、みなさんはどんなイメージを持っていますか?
実際はどんなところなのか、保育園に通う志帆(しほ)ちゃんと、幼稚園に通う利陽斗(りひと)くん、それぞれの1日を見せてもらいました。

保育園

<登園>

朝7時半、志帆ちゃんはママと一緒に家を出ます。自宅から保育園までは自転車で10分の距離です。
登園時間は、親の仕事や家庭の状況によって各自ばらばら。自治体や園によって違いはありますが、7時半から9時の間に登園するのが一般的です。

園に着いて子どもを預けるとき、ママは子どもの昨晩の様子や体調など気になることがあれば保育士さんに伝えます。
子どもたちはみんなが来るまで自由に遊びます。

<主活動>

10時半、朝の会が終わると主活動の時間です。この日、志帆ちゃんのクラスの主活動は公園遊びです。クラスごとに体操や工作など、年齢に合わせた活動が行われています。

<お昼~帰宅>

11時半、志帆ちゃんが通う保育園では、お昼ご飯の時間です。認可保育園には調理室があり、みんなで同じ給食を食べます。

午後3時、お昼寝の時間です。保育園の保育時間は長いので、子どもの年齢に合わせてお昼寝の時間がとられます。

目が覚めたらおやつを食べて、お迎えまでは自由に遊びます。

この日、ママが迎えに来たのは午後6時40分でした。
志帆ちゃんは、園で11時間過ごしたことになります。

帰宅後、ママは保育士さんから渡された連絡ノートを読みます。
連絡ノートには、その日の生活の様子が書かれていて、保護者は子どもの1日を知ることができます。

<保育園を決めた理由>
この園を選んだわけではありません。区役所で申し込むときに第10希望まで書いて、その中のひとつがこの園でした。どこでも受かればありがたいと思い、入園させました。
(志帆ちゃんのママ)

<保育園に入るには?>
認可保育園に入りたい場合、住んでいる自治体に入園の申し込みをします。自治体は各家庭の必要度に応じて順位をつけ、通う園を割り振ります。
つまり、保育園の場合、入園する園は自治体によって決められるのです。

幼稚園

<登園>

朝8時半、利陽斗くんはママと一緒に家を出て、幼稚園バスの集合場所へ向かいます。そこからは幼稚園のバスに乗って登園です。
幼稚園では、送迎バスか、保護者と一緒に登園します。みんな一斉に、9時までに登園するのが一般的です。

登園後、10時までは自由遊びの時間です。

<主活動>

幼稚園でも、朝の会が終わると主活動の時間です。クラスごとにお絵かきや体操、自然体験活動などが行われます。この日は、全員が参加するサツマイモの苗植え体験でした。

<お昼~帰宅>

12時、お昼ご飯の時間です。幼稚園ではお弁当が一般的です。
そして、午後2時には帰宅が始まります。

<幼稚園を決めた理由>
幼稚園の説明会で、園長先生から「今しかできない経験をさせる」と聞きました。
遊びを中心とした幼稚園ということでした。子どもをプレ幼稚園(体験保育)に行かせたところ、気に入っていたので、こちらに本入園させました。
(利陽斗くんのママ)

<幼稚園に入るには?>
幼稚園に入園させたい場合、通わせたいと思った園に、直接申し込みをします。そのため、親は幼稚園の特色を調べたり、入園する前にプレ幼稚園に通わせたりします。
入園希望人数などによって、入れない場合もありますが、基本的に自分たちで園を選べるのです。

(保育園、幼稚園の1日)

保育園と幼稚園 制度上の違い

回答:大豆生田啓友さん

保育園と幼稚園は、制度上の違いがあります。

保育園は児童福祉施設のひとつであり、厚生労働省の管轄です。
一方、幼稚園は学校と同じく文部科学省の管轄です。

おそらく、この制度上の違いが、幼稚園が教育的で、保育園が生活的という、みなさんのイメージにつながっているのではないでしょうか。

市役所で「保育園と幼稚園では法律が違うので、教育内容が違います」と言われたのですが、具体的な違いというのがよくわかりません。どう違うのでしょうか?

保育園と幼稚園の教育内容は同じです

回答:汐見稔幸さん

世間に誤解があるようですが、1963年の文部省・厚生省の共同通達で、保育園と幼稚園の教育内容は同じにすると決められています。

2018年から、保育園の保育指針と幼稚園の教育要領が改定されて新しくなります。その中で、保育所も幼稚園も幼児教育機関として同じ内容の教育をすると、改めて書かれました。0~2歳は保育園だけですが、3歳以上の教育については、ねらいも内容も同じなのです。

同じ教育というのは、どういう内容ですか?

遊びや生活を通した子どもの主体的な活動を重視

回答:汐見稔幸さん

遊びなど、子どもが生活の中で、自発的にいろんなものに挑んで、身につけることを大事にしています。例えば「言葉の力は、このように育てていきましょう」「人間関係については、こういう力を育てていきましょう」など、こと細かに書かれています。
それらがすべて、一言一句同じです。


世界で注目される非認知的能力って?

保育園と幼稚園の教育目標は同じ。ひとことで言えば「人間として生きていく力を育む」ということです。このことは世界の幼児教育のトレンドでもあります。
キーワードは「非認知的能力」です。

非認知的能力とは?

非認知的能力とは、例えば、目標に向かって頑張る力、他の人とうまく関わる力、感情をコントロールする力などです。

数がわかる、字が書けるなど、IQなどで測れる力を「認知的能力」と呼ぶ一方で、IQなどで測れない内面の力を「非認知的能力」と呼んでいます。

いまなぜ、非認知的能力が注目されているのでしょうか? 世界の乳児教育に詳しい遠藤利彦さん(東京大学大学院 教育学研究科教授)に聞いてみました。

非認知的能力が注目される理由

教育経済学の代表的な研究者に、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンさんがいます。
ヘックマンさんの主張は大きく2つです。
ひとつは、子どもの教育に国が公共政策としてお金を使うなら、就学前の乳幼児期がとても効果的だということ。
もうひとつは、幼少期に非認知的な能力を身につけておくことが、大人になってからの幸せや経済的な安定につながるということです。

ヘックマンさんの代表的な研究に「ペリー就学前プロジェクト」があります。アメリカのミシガン州で行われている、1960年代からはじまり、現在まで続く調査です。

▼こちらの記事も併せてご覧ください
乳幼児期の習いごと - 子どもの“遊びの重要性”がよくわかる!長期的に行われた調査

調査の対象は、経済的に余裕がなく幼児教育を受けることができない貧困世帯の3~4歳の子どもたち123人です。この中の約半数の子どもに、週3回、1日3時間のプリスクールに2年間通ってもらいました。さらに、週に一度、教師による家庭訪問も行いました。

プリスクールに通ったグループと通わなかったグループ。その後の人生にどんな変化が起こるのか追跡調査をしたところ、40歳の時点で明らかな違いが現れました。

プリスクールに通ったグループは、通わなかったグループに比べて、収入が多い、持ち家率が高い、学歴が高いなどの差が見られたのです。

この結果の理由を「教育を受けてIQが伸びたからではないか?」と考えてしまうかもしれません。しかし、子どもたちのIQを調べると、プリスクールに通っている間は急激に伸びていますが、9歳ごろになるとIQの差はほとんどなくなります。

ヘックマンさんは、彼らが大人になってもより幸せでいられるのは、プリスクールに通って認知的な能力を伸ばしたからではなく、認知的な能力以外(非認知能力)を身につけたことが大きな要因ではないかと考えたのです。

日本での取り組み

日本でも、非認知的能力が注目されています。
2017年3月に改訂された「学習指導要領」に、その内容が組み込まれ、学習指導要領に合わせて保育所保育指針・幼稚園教育要領も改定されました。保育園・幼稚園も変わろうとしています。

非認知的能力が大事だというのは、どうしてですか?

目標の達成まで粘り強く頑張る力

回答:汐見稔幸さん

私たちは「文字が読める、うまくブロックを積み上げられる、三角形と四角形と五角形を区別できる」といった、目に見えて知的に賢くなったと感じる認知的な能力を重視しがちです。
しかし、幼児期に認知的な能力を高めることが、その後の人生の成功や安定につながっているのか、いろいろ調べた結果、あまり関係がないことがわかってきました。

大事なことは、うまくいかないときに諦めず「どうしてかな」「こうやってみよう」「これがだめなら、ああやってみよう」など、あくまで目標の達成まで頑張る姿勢を身につけることです。我慢できること、感情をコントロールする力なども大事です。

そのような力は一生残ります。大人になって社会で成功する力につながります。

非認知的能力は、どうやって身につけるんですか?

非認知的能力は、子ども主体の遊びで育つ

回答:大豆生田啓友さん

子どもの自発的な部分を大事にしましょう。させられるのではなく、自分からやっていく中で育ちます。
特に、幼児期の場合は遊びです。子どもたちは遊びこむ(熱中・集中して徹底的に遊ぶ)中で、やる気、意欲、粘り強さ、探求していく力が身についていきます。

「頑張ればできる」を積み重ねる

回答:汐見稔幸さん

子どもに任せきりでなく、大人がサポートすることも大切です。
例えば、子どもが遊んでいるときに失敗しかけたら「こうしたらどう?」とフォローしてあげると、頑張りが続きます。すると「頑張ればできるんだ」と、いつのまにかわかってくる。

このような経験を積み重ねていけば、後で必ず生きてくる力になります。
これを非認知的能力と言っています。


子どもにとって、遊びの中で力を身につけるとは?

幼児期に、遊びの中で必要な力を身につけていく。その実践例を見てみましょう。

港北幼稚園

神奈川県横浜市にある「港北幼稚園」。登園から帰るまで、子どもたちは基本的にやりたい遊びだけをやって過ごすそうです。でも、そんなに好きに遊ばせて大丈夫なのでしょうか?

渡邉英則さん(港北幼稚園 園長)

単純に、子どもは好きに遊ぶ方が面白いんです。子どもたちが面白がっていることを応援していくと、子どもたちは勝手に何回も繰り返す、夢中で試行錯誤する、色んな発想を出していく。大人が考えて子どもたちに何かさせようとするより、子どもたち一人ひとりが自分を出してきます。

縄跳びひとつをとっても、子どもが納得するまで続けます。そのように遊びこむことで、学べることがあると言います。

例えば、自分たちでルールを作り、縄を跳ぶ順番を守るようになる。自分のやりたいという気持ちを尊重された子どもは、他の子の気持ちも尊重できるようになるのです。
また、自分ができないことでも、できている友達に刺激され、何度もチャレンジしようという気持ちにつながります。

渡邉英則さん(港北幼稚園 園長)

乳幼児期は失敗が許されています。できなくても何回も挑戦できる。遊びで友達関係などを学んでいく中で、苦手なこともチャレンジしていく。チャレンジしようとする力が大事だと思っています。

こちらの子どもが夢中になっていたのは、あらゆる物の重さを量って比べるという遊び。
この遊びは「どうして水に浮くものと沈むものがあるのか」という疑問から生まれたそうです。重さを比べたいという気持ちが芽生えることで、数字にも興味が沸き、それを記録するために文字を書きたいという欲求にもつながっていると言います。

仁慈保幼園 多摩川保育園

乳児にとって遊びこむ経験とは具体的にどのようなものでしょうか。
0歳から5歳の子どもたちが通う、東京都大田区にある「仁慈保幼園 多摩川保育園」に伺いました。

この園では、いつも水が流れていて、いつでも水に触れられる場所があります。

この1歳児の子は、カップに水を入れては石にかけたり、自分の手にかけたり、ジョウロに入れて上下に振ったり、それを何度となく繰り返しています。

一見、意味がなさそうなこの遊びに、大きな意味があると言います。

妹尾正教さん(仁慈保幼園 多摩川保育園 園長)

五感を通して、いろんな感覚を自分に入れていきます。これをインプットと呼んでいます。ただ入れているのではなく「これはなんだろう? これは温かいのか? これはサラサラしている。一体これはなんだろう」というように、子どもであっても自問自答しています。それは、自分と向き合っていると言えるわけです。

水の出る勢いや重さ、冷たさなど、あらゆる情報を「感覚」としてインプットしているのです。そうした経験を重ねることで、例えば「冷たい」という言葉を知ったとき、実感が伴った意味をとらえることができます。

五感によるインプットは、0歳児から始まっています。

こちらは、ガラスで反射させた光の粒を使った遊びです。
ガラス自体に興味を持つ子、光に気づいて捕まえる子、手に光を映してみる子など、いろんな反応があると言います。

この遊びは、窓辺からさす太陽光に興味を示した子どもたちを見て、保育士同士の話し合いから生まれたそうです。

妹尾正教さん(仁慈保幼園 多摩川保育園 園長)

子どもは、あらゆるものに向き合いながら、探求しています。だからこそ「学び」だと言っています。遊びの中で「もう一歩、もう一歩先へと物事を見ていく」ということをしています。

昔から子どもは遊びの中で必要な力を育ててきた

回答:大豆生田啓友さん

この幼稚園と保育園で実践していることは、かつての子どもたちが当たり前にしてきたことです。いろんなことに挑戦したり、何かをやりとげようとしたり。子どもは、その中で非認知的能力を育んできました。

遊びの中の経験・感覚の積み重ねが「学習」であり「発達」

回答:汐見稔幸さん

例えば、水道の蛇口で遊ぶとき、そこには初めての経験がたくさんあります。これだけ水が貯まると重くなる、重くなったら持ち方を変えないといけない、季節によって水の温度が違うなどです。それらがすべて頭の中にインプットされていきます。つまり、脳に回路ができていくわけです。

脳に新しい回路ができることを「学習する」と言い、回路が組み合わさり、ひとつのシステムとなっていつでも通用するようになったとき「発達する」と言っています。
いろんな経験は、必ず新しい知識やスキルを刻み込んでいきます。そのような経験が遊びの中にはたくさんあるわけです。

やりたいことをやりながら、長く続けていくと、そこには実に豊かな学びがあります。そのようなことを積み重ねることで、考える力や工夫する力が育まれます。

遊びを大事にする場合、保育士さんや先生は何をしてあげてるんですか?

子どもが遊びこむには、先生方の仕掛けがたくさん必要

回答:大豆生田啓友さん

普通の親からすると「遊んでいるだけ」に見えるかもしれません。しかし、子どもが本気で遊びこむには、先生たちによる裏側の仕掛けがたくさん必要になります。


遊び中心の保育は、放任とは違うの?

遊び中心の保育とは、子どもが主体となって遊びを深める保育です。
子どもを放っておくだけではできません。子どもが遊びに没頭するため、保育のプロによるさまざまな「仕掛け」が必要になります。

遊び中心の保育のための取り組みを見てみましょう。

その1 遊びに集中できる環境

先生は、子どもの興味を常に察し、すぐにその遊びに取り組めるようにしています。例えば、使いやすい位置に材料や道具を準備する、棚からいつでも好きなおもちゃを選べるように配置を工夫するなどです。

0歳児の保育室では、仰向けで寝ている赤ちゃんの目線の先に、モビールを吊るしたり、天井にキラキラ光る紙を貼ったり、赤ちゃんの興味関心が広がるように工夫します。

また、窓際にレースのカーテンをつけて、風を目や肌(五感)で感じられるようにしています。

その2 子どもの情報を共有

先生は、保育中に遊びの様子を写真に撮ります。ドキュメンテーションと言われる記録を作るためです。

子どもが夢中になって頑張って工夫する姿、どのように世界を広げようとしているのか、保護者や他の先生たちと情報を共有します。

渡邉英則さん(港北幼稚園 園長)

単に「水で遊んでいました」「砂場で遊んでいました」と伝えるのではなく、そこにどんな興味があったのかを見ようとしています。
そこから、次の遊びでは、こんな関わり方をしたらどうだろうかと、考えることができます。保育者はドキュメンテーションをひとつのツールにしながら、遊びをつなげていくことができます。

保育者同士の話し合いは、毎日行われています。一人ひとりの子どもを複数の大人で見て、対話を重ねることで、今後の保育について考えているのです。

妹尾正教さん(仁慈保幼園 多摩川保育園 園長)

一人の子どもをあらゆる角度から多面的に見ようとしています。これからどうしていくのかを考えながら作っていくのが、保育であり教育であると考えています。

その3 一人ひとりをよく見る

例えば、ひとりの子どもが集まりの時間になっても「まだ遊びたい」と言って、遊びを続けていても、保育士は何も言わず、しばらくその様子をじっと見守ります。
保育士は、やりたいところまでやれば、自分で片付けるだろうと考え、待つそうです。頭ごなしに「やめなさい」と伝えるのではなく、自分で気づくように、考えられるようにしようと心がけていると言います。

一人ひとりの子どもを、よく見ているからこそできる保育なのです。

一人ひとりの子どもにあわせた関わり方

回答:大豆生田啓友さん

保育士や幼稚園の先生は、一人ひとりの子どもがどんな思いなのかを、考えながら関わっています。これはとてもすごいことです。

子どもが、かみついたり、いたずらしたり、一見、悪いことをしているように見えても「この子はこういう思いでしているのだろう」と考えます。
単純に怒っている人はプロとは言えません。

一人ひとりの子どもをよく見て、必要な材料をきちんと提供しています。

普通は子どもが遊びに没頭する前に終わることがほとんど

回答:汐見稔幸さん

遊びこむまでには、遊び始める、だんだんと火がついてくる、やがて没頭するという段階があります。没頭していくと面白くてしかたがなく、アイデアがどんどん出てきます。
ですが、没頭する前に遊びが終わってしまうことが多いんです。

没頭して遊びこむ状態になるために、大人が試行錯誤しながら上手にサポートする。それがプロの仕事です。

遊び主体の園が理想なんですが、園を選ぶときのポイントはありますか?

子どもたちが生き生きと遊んでいるか

回答:大豆生田啓友さん

園を見る上で大事なことは、子どもたちが生き生きと遊んでいるかどうかです。
子どもたちが夢中になって遊ぶためには、遊ぶ時間と環境が保障されていることが必要になります。
また、保育士さんや先生が、子どもに寄り添いながら主体性を大事にしているかがポイントになります。

通っている園が遊び重視でない場合、どうしたらいいですか?

本当に大事な育ちとは何か、親側の理解も重要

回答:大豆生田啓友さん

直接的な答えではありませんが、園の方針は、親側のニーズを反映している部分もあります。勉強や習い事を重視してほしい、しつけをきちんとしてほしい、などです。

本来そこが重点ではないだろうと考えている園も多くあります。
幼児期は、遊びや一人ひとりのペースなどが大事だと、親側も理解することが重要です。


子どものために親ができることは?

幼児期に必要な力を身につけていくために、親ができることはないでしょうか?

子どもが自由に遊べる環境の工夫を

回答:汐見稔幸さん

私自身が子育てをしていたときは、自分の幼少期に楽しかったことを、子どもができるようにしようと考えていました。

かつての生活は、不便な面もありますが、子どもにとっては全部自分でつくらなくてはいけない環境でした。そして、達成感も大きかった。いろんなところに遊び場がありました。今は、それがなかなかできなくなっています。

親が意識して、自然のある場所に連れていこう、思い切って走らせよう、昔のような遊びを子どもと一緒にやろうとすることが大事になっています。難しく考えずに、週末に出かけてみてはいかがでしょうか。

自然と触れ合ったほうがいいと漠然と思うのですが、やっぱり大事ですか?

自然の中で触れたさまざまな感覚は、必ず財産になる

回答:汐見稔幸さん

自然には、いろんな教材があります。人間にとって何が大事なのかを教えてくれるところです。
自然には、実に豊かな感覚があります。生命が存在するのだという感覚です。そういう感覚は理屈を超えて、子どもの中に何かを残します。

大人になって、自然と人間との共存を考えるようになったときは、地に足がついた発想が出てくる。
幼児期に体験しておくことは、どこかで私たちの財産になっています。


良い園を選びたいけど、選べる状況にない。どうしたらいい?

預かり時間が長い、遊びに特化しているなど、魅力のある園を選ぶと、プレ幼稚園の時点で「キャンセル待ち90人」だったりします。可能性はかなり低いと思うのですが申し込みだけをしているところです。どうしたらいいでしょう?

園だけではなく家庭など全体のバランスで

回答:大豆生田啓友さん

地域による差が非常にありますが、希望の園に入れないという声はたびたび聞きます。

現実的には「必ずしもベストでなくてもいい」と考えてみましょう。
なぜなら、どんな園でも、子どもは本当によく頑張るからです。いろんな園の状況の中で、それをどう乗り越えようかと、頑張ります。
園ですべてが決まるわけでもありません。園で足りないと感じることは、家庭で大事にするなど、全体のバランスで考えてみましょう。

家庭で与える影響は園より大きい

回答:汐見稔幸さん

東京のように環境条件として広い空間が確保できないところでも、地域と協力して工夫しはじめています。そのことを信頼しましょう。
そして、家庭の中で、どのように子どもたちと接していくかが重要です。家庭が与える影響は、園よりも大きいことを知っておきましょう。

体験が大事だというのはわかったんですが、どうしていろんな園がそうならないのですか?

今、少しずつ変わってきています

回答:汐見稔幸さん

ヨーロッパでは、教育政策の中で「保育・幼児教育を最重視する」と宣言しています。幼児期の体験こそが、人間の一生にとって、どれだけ大事かということがわかってきたからです。21世紀は難しい問題がたくさんあります。そのような課題を解決していく力を子どもたちに持ってほしい。そのことからも、幼いころから質の高い保育・幼児教育を行っていこうとなってきています。

日本でも、保育・教育の質の確保が議論されており、国の方針も少しずつ変わってきています。


認定こども園って何?

今、保育園と幼稚園を一体化する動きが始まっています。それが、保育園と幼稚園、2つの機能をあわせ持つ「認定こども園」です。
認定こども園の特徴は2つあります。3~5歳の子どもは、保護者の働いている状況に関係なく、教育・保育を一緒に受けられること。地域の子育て支援の場であり、園に通っていない家族の支援も行うことです。

認定こども園とは、どんなところなのでしょう?

栃木県佐野市にある認定こども園「あかみ幼稚園」に伺いました。2010年に、幼稚園から認定こども園へと移行したそうです。
現在、この園に通っているのは、0~5歳児まで331名です。

午後2時までは、年齢別のクラスで過ごします。約半数の子どもは幼稚園と同じように、午後2時になると帰宅します。残った子どもたちは、おやつを食べたり、自由に遊んだりして過ごします。

また、保護者同士や保護者と園が、行事などを通して協力し合う体制を目指しています。

<保護者に聞いてみました>

  • この園では、どんな親でも係を担当することになっています。協力し合えて、顔見知りにもなれて、あったかいなと感じます。
  • 働き方をフルタイムから短めのパートに変えたのですが、そのままこの園に通えます。安心して働き方を変えられるところが、すごく良かったと思います。

この園は、子育て家族以外の地域の住民に対しても開かれています。園庭には、子どもたちに食文化を伝えるための畑があり、地域の高齢者がボランティアで農作物を育てています。

<ボランティアの方に聞いてみました>

  • 子どもたちには元気をもらっています。自然に親しんで、これがジャガイモだ、これがサツマイモだと発見していると思います。売っている野菜しか見たことないでしょうから。
  • 子どもたちと触れ合うのは楽しいことです。

地域のすべての親子が、安心して生活できるための取り組みもあります。
家庭で子育てをしているママたちが親子で交流する会や、地域の親子が気軽に遊びに寄れるカフェエリアもあります。

園内には学童保育もあります。小学生が園庭で遊ぶことで、異年齢の遊びが伝承されています。

中山昌樹さん(認定こども園 あかみ幼稚園 理事長)

歴史的にみて、子どもが大人になるために必要な生育環境があったと思います。ただ、簡単に昭和の時代に戻れませんので、新しい形で、それを再生しなければなりません。認定こども園は、教育・保育をベースにしながらも、かつての地域コミュニティの力を新しい形でもう1回作り上げることができる、その拠点になれる場所だと思っています。

認定こども園が増えることのメリットは何でしょうか?

子育て支援の拠点として地域の要に

回答:汐見稔幸さん

ヨーロッパのほとんどの国は、保育園と幼稚園の2系統をやめて、1系統にしています。日本では、認定こども園一本に変わってきています。

途中でやめてもいいし、親が働いていても、働いていなくてもよいというように、自由度が増してきています。少しずつ自由度の高い幼児教育施設が増えていけば、保護者は利用しやすくなります。
ただし、違うものを一体化させるわけですから、それなりに課題はあり、それらを解決していかないといけません。

もうひとつ、認定こども園は、子育て支援が義務になっています。保育園・幼稚園では努力義務です。地域に根ざして、子育て支援の拠点になっていかないといけない。そういう意味では、新しいモデルになると考えています。

いろんな人たちが子育てに貢献できる社会に

回答:大豆生田啓友さん

アフリカの古いことわざに「子どもひとりを育てるには、村中全員の力が必要」という言葉があります。今の子育て環境は、そうではありません。親だけが向き合って「私が頑張らないといけない」と思ってしまう環境です。

保育園・幼稚園があるだけでも、とても大事なことです。その上に、いろんな親たちも関わってくる、地域の人たちも関わってくる。これからは、いろんな人たちが関わることが大事になってきます。
保育園・幼稚園が迷惑施設だと言われる方もいますが、その方もまた地域の中で孤独なのだと思います。いろんな人たちが子育てに貢献できる社会をつくっていくことが、子どもにとっても、高齢者にとっても、いろんな親にとっても、いいことだと思います。

認定こども園だけの話ではなく、保育園や幼稚園も同じように変わってきていると思います。


すくすくポイント
保育士と幼稚園教諭の違いは?

保育園の「保育士」、幼稚園の「幼稚園教諭」。それぞれどう違うのか紹介します。

保育士

保育士になるには、試験を受けて保育士資格(国家資格)を取得する必要があります。

ひとクラスに配置される保育士の人数は、子どもの年齢と人数に応じて国が定めています。

<保育士の配置基準(国の配置基準)>

0歳児   3人に1人
1~2歳児 6人に1人
3歳児   20人に1人
4~5歳児 30人に1人

幼稚園教諭

幼稚園教諭になるには、教職課程がある大学や専門学校で、必要単位を修得し、試験を受けて、幼稚園教諭免許状を取得する必要があります。

法律によって、1クラスに1人の担任の先生を配置するように定められています。

<幼稚園教諭の配置基準(学校教育法により)>

1学級あたり専任教諭1人配置
※1学級の幼児数は原則35人以下


保育士さん・幼稚園の先生の声

番組には、保育士さんや幼稚園の先生からも声が寄せられました。

周辺環境が悪い。景観が悪くなるから水遊びをするな、うるさいから子どもを騒がすな。子どもたちはどこにいても思い切り遊べず、とても可哀想に思うと同時に、自分勝手な大人達が、とてもいらだたしく、感じます。
地域の人達、大人達も優しい目で見守ってほしいです。
(神奈川県 民営の認可保育園勤務の方より)

早く来て当然。遅く帰って当然の職場風土。その分の賃金は不十分で、独身のうちは持ち帰りの仕事もこなせるが、子どもを育てながらとなると自分の家庭が崩壊してしまう。
(佐賀県 公立の認可保育所勤務の方より)

今、保育の現場では、先生たちの人手不足や、働き方など、問題が山積みです。
また、幼児教育の重要性、保育の専門性が、あまり社会に理解されていない面もあります。

これからの保育園・幼稚園が果たす役割は、もっと大きくなっていきます。
社会全体の問題として考え、子どもがより良く育つための環境を、みんなで支えていきたいですね。


汐見稔幸さんからのメッセージ

あまり難しく考え過ぎないことも大事です。
乳幼児期は何かに没頭する、熱中するという体験をいっぱいさせてあげてほしい。遊びには、ものすごく大きな価値があることが、ようやくわかってきました。非認知能力について述べたことは、それを難しく言っているだけです。

認知能力と非認知能力は、2つが平行しているわけではなくて、非認知能力が上がれば、それを土台として認知能力が伸びる。そのように、相互に作用しながら伸びていきます。

やがて、将来受験勉強などに必ず生きてくる。
まずは、とにかく遊びをいっぱいさせてあげたいですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです