食物アレルギーの新常識

すくすく子育て
2017年6月10日 放送

2016年12月。子どもの食物アレルギーに関して、ある研究結果が発表されました。
これまで、食物アレルギーといえば原因となる食べ物を「除去」することが常識だったのですが、このとき発表された研究結果によれば、逆に「食べる」ことが予防や治療に効果がある、というのです。
いったいどういうことなのでしょうか?
今回は、ママ・パパにぜひ知ってほしい、食物アレルギーに関する最新情報をお伝えします。

すくすく子育て「食物アレルギーの新常識」

専門家:
大矢幸弘(国立成育医療研究センター アレルギー科医長)
馬場直子(神奈川県立こども医療センター 皮膚科部長)

うちの子 食物アレルギー?

6か月ごろから離乳食を始めましたが、食物アレルギーが心配です。私自身にアレルギーがたくさんあること、パパも小児ぜんそくとアトピーがあったので、子どももアレルギーやアトピーやぜんそくが出てくるのかなと心配になります。
だから、アレルゲンになりそうな食材は、まだ食べさせていません。卵など食べさせていい月齢なのですが、あげるのを躊躇しています。
(10か月の女の子をもつママより)

1歳を過ぎるころまでは、何事もなく離乳食を食べていました。ところが、3か月ほど前、夜ご飯の後にすごくかゆがって。トマトだったのですが、顔やトマトを持った手に湿疹が出てしまったのです。
30分ほどで消えたので、病院には行きませんでした。それ以来、トマトは食べさせていませんが、アレルギーだったのか何なのか心配です。
(1歳6か月の男の子をもつママより)

親にアレルギーがあると、子どもも食物アレルギーになりますか?

食物アレルギーは遺伝しない

回答:大矢 幸弘さん

食物アレルギーは遺伝しません。ぜんそくやアトピー性皮膚炎については、なりやすい傾向は見られますが、完全に遺伝するというわけではありません。

そもそも、食物アレルギーはどのようにしてなるんですか?

肌が荒れていると食物アレルギーになりやすい

回答:大矢 幸弘さん

まだ完全に解明されていませんが、子どもの食物アレルギーについて、昔より多くのことがわかってきています。

ひとつは、湿疹のある赤ちゃんが食物アレルギーになりやすいということです。
湿疹のある皮膚に付着した食物が、体内に取り込まれると、食物を敵だとみなすようなメカニズムが働くことがあるのです。

●食物アレルギー発症のメカニズム


肌荒れのない健康な皮膚なら問題ないのですが、皮膚が荒れているとアレルゲンとなる食物が皮膚から体内へ入ってしまいます。


それを危険な異物だと体が認識し、抗体をつくるのです。その後、その食物を食べたときにアレルギー反応を起こすということがわかったのです。

人間は、口からものを食べると、それを異物とみなさず、消化して取り込む力があります。ところが、肌は入ってきてほしくない場所です。肌が荒れているときなどに取り込まれてしまうと、アレルギーのメカニズムが働いてしまいます。

そのため、湿疹やアトピー性皮膚炎のある赤ちゃんは、食物アレルギーになりやすいわけです。

●食べる前に肌から入るとリスク高
つまり、口から食べるより先に皮膚から体内に入ってしまうと食物アレルギーになりやすいということです。
離乳食を遅らせることは、食物アレルギーのリスクをかえって高めるのです。

昔より、スキンケアに気を付けている方も多いと思うのですが、現代のほうがアレルギーの子が多い気がします。どうしてなんでしょう?

以前より肌が乾燥しやすい環境になっている

回答:馬場直子さん

現代は、生活様式の変化でとても乾燥しやすい環境になっています。都市熱などで空気全体が乾燥しやすく、気密性の高い住居でのエアコンによって室内も乾燥しているので、肌も乾燥しやすくなっています。
意識してスキンケアをしている方もいると思いますが、何もしなければ以前より乾燥しやすいわけです。
また、清潔志向のためきれいにしようと洗いすぎる、こすりすぎることがあります。その結果、肌が本来持っているバリア機能をこわしてしまう傾向があります。
赤ちゃんのときから保湿をして、バリア機能を守ることが大事になります。

アレルギー疾患は世界的に増加傾向にある

回答:大矢 幸弘さん

この数十年間で、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患は、世界の先進国を中心に増加傾向にあります。

食物アレルギーの場合、対象の食物を食べなければ何も起こらないので「予防のためには食べない方がいいのではないか?」という考えが浮かんでしまいます。そのため、卵やピーナッツなどを食べる時期が遅くなりました。実際には、離乳食を開始する時期が遅くなるにしたがって、食物アレルギーがどんどん増えていることがわかっています。
つまり、よかれと思ってやっていたことが、逆に食物アレルギーを増やす方向に働いていたわけです。

トマトで湿疹ができてから、トマトをあげていません。どうしたらいいでしょう。

食物アレルギーではなく、かぶれの可能性も

回答:馬場直子さん

湿疹が出たところが、顔と手だけということでしたので、食物アレルギーではなく、トマトに触れた場所が炎症してかぶれた可能性もあります。

食物アレルギーとかぶれは違うのですか?

食物アレルギーとかぶれは違うので対策も異なる

回答:大矢 幸弘さん

かぶれの中には特殊なアレルギーのケースもありますが、食物アレルギーとかぶれは違うもので、そのメカニズムが異なります。

食物アレルギーとかぶれの違い

食物アレルギーの発疹は、食べることで体内の抗体が反応して全身に出るもの。かぶれは、皮膚に対する刺激によって触った場所とその周辺の皮膚にだけに発疹が出ます。メカニズムは違いますが、見た目には判断しにくいので、医師に相談しましょう。

もしかぶれであれば、食べる前にワセリンなどで肌を保護してあげるとよいと思います。食物アレルギーであった場合は、肌の保護と関係なく、食べると症状が出てきます。
食物アレルギーとかぶれでは対策が異なるわけです。

「かぶれ」を「食物アレルギー」だと自己判断して、食べ物を「除去」することで対策してしまうと、本当に食物アレルギーになるリスクを高めることもあります。きちんと病院などで調べましょう。


食物アレルギー 親にできることは?

長男が10か月のときに突然、卵を食べてアレルギー反応が出ました。おかゆに卵を入れてあげたら、食後15分くらいで気持ち悪そうな感じで。全身にじんましんが出て、目の上もすごく腫れてしまいました。
血液検査をした結果、卵と大豆のアレルギーがあることがわかり、今は完全除去しています。最近、弟も卵と大豆のアレルギーであることがわかりました。
長男は乳児湿疹がひどかったので、母乳のせいなのかなとか思ったり、妊娠中に私が卵を除去したりすれば子どもの発症リスクを下げられたのかなと思っています。親にできることはあるのでしょうか?
(2歳6か月と1歳の男の子をもつママより)

妊娠中・授乳中の親の食物制限は予防にならない

回答:大矢 幸弘さん

妊娠中の母親が食物制限しても、アレルギーの予防にはなりません。世界のガイドラインでは、妊娠中の親の食物制限は推奨されていません。
授乳中も同じで、卵を食べないようにしても、子どもの卵アレルギーを防ぐことはできません。
また、食物が原因で乳児湿疹が出てくるわけでもありません。

乳児湿疹こそ肌ケアが大事

回答:馬場直子さん

赤ちゃんは、胎内にいるときは羊水に守られています。しかし、生まれた後は、空気という乾燥した環境にさらされ、いろんな刺激があり、ちょっとした刺激でも湿疹が出やすくなります。

乳児湿疹は、非常に頻度の高い症状です。昔は、「乳児湿疹ならほっておけば治るよ」と言ってあまりケアをしてこなかった傾向があります。しかしながら、早い時期の湿疹がひどい子ほど、後で食物アレルギーなど、いろんなアレルギーになりやすいことがわかっています。

乳児湿疹こそ、放置せずにきちんとケアしましょう。乳児湿疹をはやく抑えて、保湿剤を使っていい肌の状態を保つようにすることが、親にできる大事なことです。肌ケアは、食物アレルギーなどの予防にもつながります。


食物アレルギーは治るの?

9か月のころ初めて食べた離乳食の卵白でアレルギー反応がありました。それまで、何でもスムーズに食べていたので、うれしくて、自信もありました。でも、初めて卵白を食べた日は、食後元気がなく、すぐに寝てしまって、2時間後ぐらいに滝のように吐いてしまって、じんましんもできて。病院で検査をすると卵白のアレルギーだとわかりました。
卵白で自信がなくなってしまって、わずかな卵白にも神経を使って、新しい食材を食べさせるのも怖いです。
この後、この子がどうなっていくのか心配です。食べられるようになっていくんだろうなぁとは思っているのですが、そのプロセスが全然わからないので不安です。
(1歳6か月の男の子をもつママより)

肌ケアをして、少しずつ食べれば治る可能性はある

回答:大矢 幸弘さん

スキンケアを続けて、肌のきれいな状態を維持しながら、少しずつ食べていくと治る可能性があります。
ただし、「少しずつ」の量が、お子さんによって個人差があります。病院で食物経口負荷試験(*注1)を行い、このぐらい食べても大丈夫だという安全な量を調べましょう。
そのような量を食べていると、だんだんと食べられる量が増えていきます。
安全な量を自分で判断するのは危険です。必ず医師と相談しながら安全な量を調べてください。

*注1 食物経口負荷試験
アレルギーの原因と疑われる食物を少しずつ増やしながら食べさせて症状の出現を観察する試験。

私自身が小さいころ、重度のアトピー性皮膚炎でステロイドを使っていた経験があり、子どものスキンケアにステロイドを使うことに抵抗感があります。

ステロイドは正しく使えば怖くありません

回答:馬場直子さん

ステロイドは、決して怖い薬ではありません。使い方が大事です。
昔は「よくなったらすぐに使用をやめなさい」という指導があり、よくなってすぐにやめたら、また悪くなって「薬のリバウンドではないか、ステロイドは怖い」となってしまったのではないかと思います。

実は、よくなったように見えても皮膚の中では炎症がくすぶっていて、完全に治っておらず、使用をやめたらまた出てくることがわかってきています。

●ステロイド 使い方のポイント

ステロイドは、医師に処方されたものを、毎日十分な量を塗ることが大事です。
表面がよくなったら、1日おき、2日おき、3日おきと徐々に日にちを空けていき、それでも炎症が出なくなったところで保湿剤に切り替えます。
薬をやめるタイミングなどは、医師と相談しながら進めましょう。


食物アレルギー 子どもへどう説明したらいい?

子どもに食物アレルギーがあります。そのため、家族とは別の盛り付け、保育園でもひとりだけ別の席です。一緒にたのしく食事をとれないまま成長してしまい、このままで大丈夫なのか心配しています。大きくなって自我がしっかりとしてきたとき、子どもへどう説明したらよいのか知りたいです。
(2歳5か月の男の子をもつママより)

親自身がポジティブに考えよう

回答:馬場直子さん

自分が人と違うことに劣等感を持ってしまうかもしれませんが、親が食物アレルギーを困ったこと、面倒なことだとネガティブに思っていると、その気持ちが子どもに伝わります。
ですので「あなたがとても大事、特別だから、人と違うかもしれないけどスペシャルなことをしているんだよ。お母さんと一緒に頑張っていけばきっと治るよ」というように、親がポジティブに考えていくと、その気持ちがお子さんにも伝わり、一緒に頑張っていこうとなるのではないでしょうか。

誕生日会などで、ケーキをみんなで食べようとなったとき、小麦粉や卵などのアレルギーがある場合は、まわりもどうするか難しいなと思います。一緒に楽しむ方法はないでしょうか?

まわり人たちの理解が大事

回答:大矢 幸弘さん

自分の子どもに食物アレルギーがあることを、まわりの人たちに理解してもらいましょう。
今は、食物アレルギーがすごく多いので、そういう点での理解は社会的に随分進んできています。
ですから、幼稚園・保育園の先生に相談しながら、まわりの親御さんにも理解していただき、前向きに一緒に取り組んでいくことが大事です。


すくすくポイント
食物アレルギー 最新の研究

「食物アレルギー」の予防・治療の最新の研究について詳しくご紹介します。

食物アレルギーという言葉が使われるようになったのは1970年ごろ。
特定の物を食べるとおう吐や下痢を起こす症例が世界中から報告されました。

食べなければ症状は出ないので、長い間「除去」という対処をしてきたのですが、食物アレルギーの患者は減ることなく増えてしまったのです。

2008年。ピーナツを乳幼児期から食べていたイスラエルの子どもたちと、アレルギーを心配して食べさせていなかったイギリスの子どもたちを比較すると、イギリスの子どもたちの方がピーナツ・アレルギーの発症頻度が高いという研究結果が発表されました。

さらに2015年。乳児期からピーナツを食べた子どもたちは、まったく食べなかった子どもたちに比べて、5歳でのピーナツ・アレルギーの発症率が非常に少ないという研究結果も発表され、食べなければ予防になるという考えが完全に間違いであることが証明されたのです。

そこで、大矢幸弘さん(国立成育医療研究センター アレルギー科医長)が率いる国立成育医療研究センターでは「離乳早期にアレルギーを起こしやすい食品を食べさせると食物アレルギーを予防できる」という仮説を立てて研究を行いました。

生後4~5か月までにアトピー性皮膚炎を発症した乳児を対象に、生後6か月から1歳まで介入を実施。早期から卵を摂取した方が、食物アレルギーの発症率は8割予防できる結果となり仮説は実証されたのです。

このような国内外の研究結果から、食物アレルギーの予防・治療の方針が「除去」から「食べる」方向に180度転換することになったのです。

ただし、すでに食物アレルギーと診断されているお子さんに、自己判断で食べさせるのは大変危険です。主治医と相談しながら治療を進めてください。


食物アレルギーについてパパ・ママへのメッセージ

大矢幸弘さんからのメッセージ

食物アレルギーは丁寧に治療すれば治すこともできますし、予防もかなり可能な時代になってきました。まずはスキンケアを徹底する、そして予防のためには食べるのを遅らせないほうがいいということ。
食物アレルギーなのかわからない場合、リスクがある場合は、必ず病院で相談して、子どもが安全に食べられる量を把握した上で、きちんとそれを食べていく。
そのように丁寧に対処すれば、食物アレルギーを克服していくことができます。

馬場直子さんからのメッセージ

生まれてすぐから、スキンケアをはじめて、保湿をしっかりする。それは、皮膚のためだけでなく、食物アレルギーの予防になります。この予防は、その後のアレルギー・マーチの予防にもつながります。そのような意識を持って、スキンケアをしていきましょう。
また、皮膚のケアをしていくときに、どうしてもステロイドを使うことがあると思います。怖がらないで、医師とよく相談しながら、きちんとした指導の下で使ってください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです