生きる力を育む 子どもの遊び

すくすく子育て
2017年5月6日 放送

みなさんのお子さんはよく遊んでいますか?
子どもが遊ぶ場所も時間も減ったといわれる昨今、思い切り遊ばせるのに一苦労・・・なんてことはありませんか?
そんな今だからこそ、あらためて子どもにとって遊びとは何かを考えます。

今回は、横浜にある保育施設「りんごの木」の様子をみながら、専門家のお話を伺います。
子どもの遊びの本質と、大人にできることのヒントがきっと見つかります。

すくすく子育て「生きる力を育む 子どもの遊び」

専門家:
柴田愛子(保育施設「りんごの木 子どもクラブ」代表)
大豆生田啓友(玉川大学教授 乳幼児教育学)

子どもにとって「遊び」とは?

子どもにとって遊びが大切というのはよく聞くのですが、どういう風に遊ばせたらいいのか、意外とわからないものです。子どもにとって「遊び」とはどんなものだと思いますか?

子どもが育っていくための栄養素

回答:柴田愛子さん

子どもにとって「遊び」は「ごはん」のようなものだと思います。ごはんは毎日食べて、エネルギーになっていく。遊びもそれぐらい自然なもので、育っていくための大事なエネルギーになる栄養素だと思います。

遊びの経験は生きる力・学ぶ力につながる

回答:大豆生田啓友さん

子どもにとって「遊び」はやりたいからやっているだけで、何かのためではありません。
長い目で見ると、子どもが遊び込む経験は、生きる力や学ぶ力につながる重要な経験だということが、多くの研究で言われています。


子どもたちをどんな風に遊ばせる?

保育施設「りんごの木」では、4歳から6歳、およそ70人の子どもたちを預かっています。
みんなで相撲をとっている子がいたり、ひとりブロックで遊んでいたり、お絵かきをしている子もいます。

外で遊んでいる子どもたちもいます。園庭はありませんが、園の前の広場や通りで自由に遊んでいます。

水遊びをしている子もいます。窓ガラスにぬれた新聞紙を投げつけているようです。

先生はそんな様子を笑って見守っています。ひとりひとりがバラバラに自由に遊ぶ様子は、私たちが想像する幼稚園・保育園と違うかもしれません。
まるで自分の家や近所で好き勝手に遊んでいるようです。

自分の「やりたい」を保証したい

回答:柴田愛子さん

子どもたちは、ひとりひとりやりたい遊びが違います。みんなが同じことに興味を持って、同じように遊ぶのは不可能だと思います。
一方で、これをやりたい、おもしろそうだと思うと、さわがしくて混みあった中でも、集中してブロックで遊ぶ子もいます。子どもは自分のやりたいことをやるときは、あまり周りのことが気にならなくなります。
だから、私は子どもの「自分がやりたいこと」を保証したいと思っています。

窓にぬれた新聞紙を投げつけて遊んでいましたが、いたずらというか、やんちゃと言うか、悪いことをしているようにも見えます。家でされると叱ってしまいそうです。

「やんちゃ」と「悪い」は違うこと

回答:柴田愛子さん

やんちゃではあるけど、悪いことではないと思います。新聞紙をぬらすとガラスに張り付くというのは、子どもたちにとって大発見なんです。

昔は、子どもは汚くてうるさくて、何をやるかわからないから「外で遊んでおいで!」と言っていましたね。今は、マンションなどの住環境の関係で、遊びも生活も、その中で引き受けなくてはいけません。そうすると、家ではあまり不快なことはやってほしくないとなるのはしかたがない面もあります。

子どもたちが思い切り遊べる場所は、幼稚園や保育園が担っている

回答:大豆生田啓友さん

昔は、みんな自由に遊んでいたんです。何もなくても、外に出れば遊びたいことがたくさんあって夢中で遊んでいた。
そういう意味で考えると、かつて地域にあった子どもたちが思い切り遊べるような場を、幼稚園や保育園が提供している。それは、とても重要なことだと思います。
実際に、多くの幼稚園や保育園では、このことを大事にしています。

外の通りや広場で遊んで大丈夫でしょうか?
苦情はきませんか?

子どもを知ることが、子どもアレルギーを緩和する

回答:柴田愛子さん

最初の頃は、よく苦情がありました。
もしかしたら住んでいた方々が子どものことをよく知らないで、子どもがうるさいし、チョロチョロして危ないし気になる、それが苦情になっていたと思います。
でも、みなさんがだんだんと慣れてきたんです。最初は「何をやっているんだ」と言っていた方に、「おもしろそうなことをしているね」「子どもたちの目が輝いているね」と言ってもらえたり。
子どもたちを知ることで、子どもアレルギーが緩和されたような気がしています。思い返せば「子どもって、こんなふうだったな」と、大人が子どもを見守る目が優しくなるといいなと思います。


子どもの“挑戦”、サポートのしかたは?

保育施設「りんごの木」には園庭がありませんが、近くに借りている空き地へ、週に一度遊びに行きます。

ここには既製の遊具はありません。子どもたちは緑に囲まれた場所で、木の実を食べたり、トカゲを捕まえたり、泥だらけになったり、水遊びしたり、火を使ったり、1日中自由に遊びます。

ノコギリや金づちなどの道具を使って工作することもできます。自分のぬいぐるみのためのイスを、真剣な眼差しで、もくもくとつくっている子もいました。

子どもは自分の発達に必要な遊びをする

回答:柴田愛子さん

子どもが、おもしろそう、かっこいい、こうしてみたいと思った心で感情が動きます。
そのことを、やってみないことには体験につながりません。
やらずにわかるのではなく、やってみてわからないといけません。

子どもは、今自分の発達のために必要なことを、いたずらや遊びを通して経験を積んでいきます。子どもが成長して、いろんなことがわかっていくには、多くの無駄と時間が必要だと思います。

火やノコギリは危なくないのですか?

「危ない」は体験してみないとわからない

回答:柴田愛子さん

火やノコギリや金づちなど、大人は危ないと言いますが、子どもたちはどう危ないのか知りません。どう危ないのかは、体験しないとわからないのです。

特に、3歳頃から、危険に対してすごい集中力を発揮します。
そのため、金づちで血豆ができた程度ならありますが、ノコギリで手を切るような大けがや火をかぶるような事故は20年来起きていません。
危険なことをしている緊張感は、快感でもあるんです。

そして、ぬいぐるみのイスのように、やりたいと思ったらゼロから自分でつくることができる。そういう体験を大切にしたいと思っています。

※柴田さんによると、火やノコギリを使うのは4歳になってからとのこと。4歳ぐらいから、自分でできるかできないかの判断がつくからだそうです。

最低限の安全を大人が確保するのは大前提

回答:大豆生田啓友さん

もちろん、最低限の安全は大人たちが確保することが大前提になります。

でも、子どもが本当に夢中になっているときは、大きなけがが起きないんです。
木登りでもそういうことがあります。事故は、無理に登らせるなど、無理矢理させようとしたときに起きます。例えば、1歳や2歳の子どもでも、自分がやろうと決めて真剣に何かに登ろうとしていると、あまり落ちたりしないことがわかっています。
もちろん、安全を確保する必要があることには変わりありません。

危険なことをさせるとき、どういうことに気を付ければいいですか?

子どもは自分の力量を超えることはしない

回答:柴田愛子さん

子どもは大人よりも、本能と感性がはるかに豊かだから、自分の力量を超えることに手を付けません。例えば、滑り台の場合、およそ8割大丈夫と思ったら、滑りおりるための一歩を踏み出します。5割程度では、まだ足を出しません。

ですから、例えば子どもが滑り台を登ろうとしている時に、大人が登らせるような手助けをしてはいけないと思います。それは、力量を超えたことを後押しすることになります。後で困って落ちたりしたとき、大きなけがになります。
大人は辛抱して見守りましょう。「あそこから落ちたら危ないかも」と思ったら、下にある危険物をとりのぞく、受け止められるようにするなどそのフォローをするような見守り方がよいと思います。

遠くまで出かけたときなど、親としてはこの滑り台はここにしかないし、やっておいたほうがいいよと思う気持ちもありますが、子どもが自分で判断するということですね。

やるかやらないか、決めるのは子ども自身

回答:大豆生田啓友さん

やるかやらないかは個人差が大きいと思います。やる子もいれば、やらない子もいます。
特に、積極的ではない子どもの親は、子どもにもさせたいと考えると思います。
でも、それは子どもが自分で決めることです。本人の中でも「やろうか、でも怖いな」と葛藤があります。何かに押されてしまうのは、つらいのです。
本人も滑り台を魅力的だと思っているけど、今はまだ無理だと感じている。親は、その機が熟すのを待つことも大事です。

思い切りぶつかった経験は、いろんなことに向き合う力に

回答:大豆生田啓友さん

「リンゴの木」は、普通の園と比べて、大胆にいろんなことをやっていると思います。
多くの園も、ここまでではないにしても、自分を出すことを大事にしています。

例えば、どろんこになることは、親からすると洋服が汚れる、衛生面が心配など、困ることがあると思います。でも、子どもは、この時期でなければ経験する機会がないのです。
子どもたちは、思い切り遊んだ後、すっきりとした顔をしています。それは、泥に向かう力だけではなく、今後いろんな物事に向かっていく力にもなります。
「泥だらけはダメ」ばかりになると、本人がやろうとすることを止めてしまうことになります。自分から積極的になることを、学べなくなるかもしれません。


「やりたいこと」をみつけるためにできることは?

柴田さんは、遊びの中で子どもが成長する姿がよくわかる例が最近もあったといいます。それは「温泉ごっこ」という遊びです。

「温泉ごっこ」を始めたのは、なおきくんという6歳の男の子。友だちと一緒に遊べない時期がありましたが、企画するのが得意で、自分のやりたい「温泉ごっこ」を実現するために、他の子たちに働きかけました。そして、みんなもおもしろがってアイデアを一緒に膨らませていったそうです。

具体的には、プールにお湯をはって子どもたちが入ったり、足湯が用意されたりします。それだけではなく、温泉の制服を自分たちでつくったり、店員の募集をしたり。なおきくんの誘いにのった友達が、おみくじの催しを考えてくることも。

もっと仲間を増やしたいなおきくんは、園の集まりの時間でお店を募集しました。ウルトラマンショーをやりたくて仲間を集める子どもも出てきました。

そして、温泉ごっこの当日。先生が用意してくれたプールで温泉を楽しんでいます。

温泉にいくための電車をやっている子ども、そのための踏切をつくる子もいました。ウルトラマンショーも盛り上がっています。

そんな中、なおきくんは裏方としてもくもくと働いていました。なおきくんがやりたかったのは、温泉に入ることではなく店員さんになることだったようです。

いろんな子がいるから、いろんなアイデアが出る

回答:柴田愛子さん

いろんな子がいるから、いろんなアイデアが出てきます。アイデアをどう実現するか、違う子が考えたりもします。ひとりの種を、みんなで育てていくということです。

自分がいることの意味を実感する

回答:大豆生田啓友さん

みんなの中で、ひとりひとりが光る経験になっています。自分が貢献すること、自分がいることの意味を実感すること。これは、すごく大事なことだと思います。

温泉に入るだけではなく、裏方だったり怪獣ショーだったりいろいろなアイデアを思い付くんですね。

大人が思い付かないようなことを見てきて、実現していく

回答:柴田愛子さん

子どもは大人の知らないところで、よく見ています。家族でスーパー銭湯や温泉に行ったときに、店員さんの動きや、ショーの裏方を見てきたのかもしれませんね。
私たちが思い付かないようなことを見てきて、こういう形で実現しているわけです。

何かを生み出す力の原点は遊びの中に

回答:大豆生田啓友さん

これが創造力の育ちですね。自分が経験したこと、そのイメージを実現・再現する。クリエイティビティと言える、何かを生み出していく力です。
学問や科学に必要な、何もないところから何かを生み出していく力。その原点は、このような遊びの中にあるわけです。
ただのごっこ遊びのように見えて、大事な経験をしているのだと思います。

このような経験をさせてあげるために、親ができることは何でしょう?

余計なことは言わずに、一緒に喜ぶ

回答:柴田愛子さん

余計なことは言わないことです。

例えば「そこまでにしておこうね」「そんなことをしたら変だよ」というように、ストップをかけることがよくあると思います。そのような余計なことを、できるだけ言わずに、一緒に喜びましょう。
そうすると、子どものやりたいことがどんどん出てくると思います。

うまく行かないことを経験するから、その先に成長がある

回答:大豆生田啓友さん

なおきくんは、もともと「ああしたい、こうしたい」という発想がたくさんあったと思います。でも、なかなかうまく行かなかった。みんなよりも、発想が先に行き過ぎていたのかもしれません。
今回、まわりの子どもたちがそれをわかってくれたことがよかったですね。

園生活はうまく行くことばかりではありません。うまく行かないことを経験するから、それを乗り越えたとき成長すると思います。
なおきくんは、完全に乗り越えて成長したと思います。だからこそ、みんなが協力してくれたわけです。いろんなお店ができたり、ショーができたり。なおきくんはコーディネーターのようでしたね。

なおきくんが自分の思いを実現できたことも、他の子たちが一緒に協力して実現したことにも光が当たる場面がたくさんあったと思います。

生きることは自分が主役であるべき

回答:柴田愛子さん

保育園や幼稚園での集団生活は、ひとりひとりが集団の中でいろんな子の刺激を受けながら、自分の力を付けていく場だと思います。
自分の人生は自分のもの、人に代えることはできません。だから、自分を大事にしてほしい、その子にとってより有効な育ちであってほしいと願っています。

生きることは、自分が主役であるべきです。自分が主役として、いろいろなことに出会いながら、大きく育っていくのだと思います。

自己決定だからこそ乗り越えていける

回答:大豆生田啓友さん

自己決定だということが大切ですね。
自分のことを自分で決めることで、いろんな困難も乗り越えて行ける。そこから、自分の世界が広がっていくと思います。


子どもの遊びを応援したいママ・パパへのメッセージ

柴田愛子さんからのメッセージ

子どもは「体験」なしに、効率よく無傷で豊かな人間に育つことはないと思います。
心も含めて、擦り傷、切り傷をしながら、その経験の中で自分を練って豊かな人間に育っていくと思います。
だから、ママ・パパが頑張ればいい子に育つのではなく、この子にはこの子の育つ力があると考えてください。
「何の役に立つのだろう」と半信半疑になっても、子どもの育つ力を信じて任せてみましょう。

大豆生田啓友さんからのメッセージ

子どもが小さい時期はあっという間です。
その時期が大事だからこそ、親はどうするのがいいのかと悩みます。
私は、週末に親子で「一緒に楽しんじゃおう!」ぐらいの気持ちでもいいのではないかと思います。
親も一緒にどろんこをやってみたり、アスレチックをやってみたり。
その時期でないとできない、ちょっと楽しい、いい経験かもしれませんので、親子で遊んでみてはどうでしょう。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです