脱・ワンオペ育児

すくすく子育て
2017年4月22日 放送

みなさんは「ワンオペ育児」という言葉を聞いたことありますか?
「ワンオペ」とは外食チェーン店などで従業員ひとりが長時間すべての業務をこなすこと。そのブラックな働き方を家事や育児をたったひとりで24時間担っているママの姿にあてはめて「ワンオペ育児」と言われるようになりました。
体も心も、もう限界! どうしたらこの状態から抜け出せるのか。
ワンオペ育児について、専門家と一緒に考えます。

すくすく子育て「脱・ワンオペ育児」

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学学長 発達心理学)
大豆生田啓友(玉川大学教授 乳幼児教育学)

パパに頼れない! どうしたらいい?

ワンオペ育児に悩むママたちから「パパの仕事が忙しくて頼れない」「パパが非協力的で頼ろうにも頼れない」という声が多く寄せられています。

  • 主人と息子は平日朝10分程度しか顔を合わさず、息子が寝てから主人は帰宅。休日もほとんど家にはおらず体調を崩した時は本当に地獄です。
  • 共働きだけど夫の帰宅は23時前後。そのため保育園へ迎えに行ってから寝かしつけまで自分ひとり。仕事で疲れているときは疲弊とイライラで頭がおかしくなりそう。
  • 育休中は育児も家事も妻がして当たり前と思っていて、たまの休みは自分だってリフレッシュが必要とゴルフにスノボ、昼までダラダラ寝るなど、育児をしません。この先10数年間も私の独り相撲かと思うと、すごくブルーになります。
  • 私の指示待ちで自発的にお世話をしようという姿勢がなく、結局ごはんなどの家事もお世話も私になってしまい、平日より週末にどっと疲れている自分がいます。
  • 離乳食の準備をしているとき、子どもがおなかがすいたと泣き叫んでいても、となりでスマホのゲームをしたり、昼寝をしたりします。そこは気付いて、子どもを見てほしいです。

ママたちの孤独にパパたちは気付いていない

回答:大日向雅美さん

「パパは平日忙しいから」など、育児をしない言い訳を考えてあげる必要はありません。専業主婦のママも、フルタイムで育児と家事をしています。ママも休む時間が欲しいというのは当然です。
ですから、だらだらとスマホで遊んだり、スノボやゴルフに行ってしまったりするのは「いけません」とはっきりさせる必要があります。
これが実態なのです。現状は全く「イクメン(育児に積極的なパパ)」などと言っていられないということを、しっかりと認識しなくてはいけません。

ママたちがひとりで抱えて遠慮して言えずに孤独になる。そのことにパパたちは、ほんとうに気付いていません。そこに気が付いて「なんとかしないと」と思えたら「会社や上司に掛け合ってみよう」といった行動に移せます。また、会社側も「ノー」と言わない社会になってきています。

ハッキリ言わないとママのつらさは伝わらない

回答:大豆生田啓友さん

ママたちにインタビュー調査をしたときに、全く同じような話を聞きました。
一方で、パパは「そんなにつらかったら言ってくれたらいいのに」と言います。ママからすると「それぐらい言わなくてもわかってほしい」という話になります。

私も自分のことを振り返ってみると「わからなかった」。ですから、ママの大変さをはっきりとパパに伝えましょう。その方が、解決に向かって進んでいけると思います。


育児支援が使えない! どうしたらいい?

ワンオペ育児に悩むママたちから、育児支援に対する不満の声が多く寄せられています。

  • 私は育休中で保育園を探すも空きなし、復帰できなければワンオペ育児から抜け出せない。行政の一時預かりサービス、ファミサポなどはいつも満員でほぼ機能していない。
  • 地域でのサービスもあるのは知っていますが、そこに行くまでが大変です。田舎で車社会なので運転しない者にとっては遠くてなかなか気軽に行けません。親も子どもも役所の人もみな頑張っているのに報われないのはなぜかと考えてしまいます。
  • 大抵言われるのは「〇日前までに予約してください」です。3日後に予約したとして、3日後に病気になったり、預ける用事ができるとは限りません。そう考えると、使いにくいというのが実情です。

地域で頼れる場所・人を5か所くらい確保する

回答:大日向雅美さん

施設を運営する側では、保育を担当する人をきちんと確保することも、とても大事なことになります。そのため、それぞれの施設の受け入れ数には限界があります。
ですから、1か所だけでなく、頼れる場所や頼れる人を少なくとも5か所程度、確保しておきましょう。行政の施設や民間の施設、ママ友同士の助け合いなど、地域のネットワークをつくっておくことも大切です。

いつでもリフレッシュできるように前もって確保しておく

回答:大豆生田啓友さん

実際には、使いたいときになかなか使えないことがあるので、前もっていくつか確保(予約)しておくのもひとつの方法です。確保した時間で、いつでも自分のリフレッシュに利用できると考えましょう。


パパが協力的になるには?

子どもが6か月を過ぎた頃から、ささいなことで口げんかが増えてきました。元々パパは協力的でしたが、子どもがパパを嫌がるようになり、しかたなくすべての育児を私がひとりで見るようになっていました。
そんなある日、私と子どもが同時に39度の高熱を出してしまいました。でも、パパが帰ってきたのは翌日の昼過ぎです。そこで「離婚する!」と言ってしまいました。
離婚を切り出されて焦ったパパは「そんなに言うなら、丸一日、自分ひとりで育児をしてみせる」と思わず言ったようですが、その一日の経験が、パパの気持ちを大きく変えました。「これが毎日休みなく続くと考えると、すごくしんどいだろうな」と分かったそうです。
それから、パパの提案で、土曜日はパパが育児を担当して、ママの自由時間をつくることになりました。子どももパパを嫌がらなくなりました。週末1日の交代育児で、気持ちに余裕ができ、パパに対する感謝やいたわりの気持ちを、より持てるようになりました。
(1歳1か月の男の子をもつママより)

せっぱ詰まったら時を待たない

回答:大日向雅美さん

「離婚する」という言葉も、そこに信頼があったことが重要だと思います。その上で「離婚」と言ってしまうほど追い詰められていた。そのことを、時を待たずにしっかり伝えたことがよかったと思います。

「パパ嫌い」は成長のプロセス。そこであきらめないで

回答:大豆生田啓友さん

子どもは、成長の過程で信頼できる人にはいろんなことを言ってきます。「パパ嫌い」もそのひとつで、育児をしていたからこそ言われたわけです。そこで引いてしまったことは残念でしたね。

その後、丸一日育児をしてみて、ママがどれほど頑張っているか、その一端を気付くことができたのは、すごくよかったケースだと思います。

非協力的なパパへはどうアプローチしたらいい?

人生設計について真剣に話し合う

回答:大日向雅美さん

今後の人生設計について、真剣に話し合う場を持つべきです。1回2回で解決するほど簡単に人は変わらないので、あきらめずに、常に努力し続けることが必要です。ただ、無理はしないことです。

また、このままでは私の人生がむちゃくちゃになると思うなら、清算するぐらいの決意も必要です。そのためには、ママも一人で生きていけるような力や覚悟が必要です。「母はつよし」というのは、自分と子どもの人生をきちんと守るための強さでもあると思います。


仕事が忙しいパパに頼るには?

パパは仕事が忙しく帰ってくるのは毎日夜中過ぎ。会話をする時間も、ほとんどありませんでした。仕事で疲れているのも分かっているから、あまり手伝わせるのも悪いなという気持ちがあって、夜泣きも自分で対処したり、朝の準備も早く起きてやったり。
でも、出産後半年を過ぎたころから、体にも心にも、不調を感じるようになりました。感情のコントロールができなくて、突然機嫌が悪くなったり、パパに対して強くあたったり、自分でも泣いちゃったり。起き上がれないとか、ずっと頭痛がするとか、気持ち悪いとか、体の不調にも。自分の母親を頼って、できるだけワンオペにならないように頑張っていましたが、パパの存在感が薄くなっていって寂しくなっていました。
そして、パパにもう少し一緒に居る時間を増やしてほしいと、思い切って相談しました。
パパは会社の上司と話し合って、週一回、早く帰宅するようになりました。今では夫婦の会話も増え、気持ちも落ち着いてきました。
(1歳の男の子と女の子の双子をもつママより)

社会や企業は変わろうとしている。勇気を出して声をあげて

回答:大日向雅美さん

現在、社会が変わり、会社も変わろうとしています。制度も整い始めています。後は、働くパパやママたちが声をあげることです。実際に、このケースでは、相談してみると育児に理解のある上司がいたわけです。悩んでいる方々は、あと少しの声をあげる勇気を持ちましょう。
パパたちに気付いてもらうためには、ママたちがしっかりと気持ちを届けることも必要です。

祖父母のサポートがあってもパパは育児にしっかり関わって

回答:大豆生田啓友さん

近所に祖父母がいると頼りにしますから、パパたちはどうしても「祖父母がいるから」と甘えてしまいます。
逆に、そのような環境を与えられているパパが、どう自分の役割を見出していくのかが、重要だと思います。


ご近所の力で乗り切るには?

パパの転勤で、知らない土地を転々として心細い日々が続いていましたが、家を購入することになり、今の場所に引っ越してきました。
以前は、ご近所付き合いはありませんでしたが、引っ越しを機に変化が生まれました。
いざというときに助けてもらえるだけのつながりがないと、自分がどうしても不安なので、そのためにはこちらから開いていかないと向こうも開いてくれない。そう思い、自治会に参加し、ご近所にも自分から積極的に声をかけ、少しずつ関係を築いていきました。
いまでは、家族ぐるみで集まって楽しんだり、お互いの家を行き来して、きょうだいのように子どもたちを遊ばせられる関係ができてきました。
(3歳7か月の男の子・7か月の男の子をもつママより)

地域に心の根をおろす

回答:大日向雅美さん

これからは、このような近所の支え合いが必要になると思います。地域にどれだけ心の根をおろすかということです。たまたま家の購入が、地域に一体感を持つ機会になったと思いますが、そうでなくとも地域の中に支え合いのネットワークを組むことはできます。

また、「地域にできることがないか」と、サポートできることを探しているシニア世代の方々が結構いらっしゃいます。そのような方が声をかけやすいように、ママたちがシグナルを出してくれるとお手伝いしやすいと思います。

「居続ける」と周囲の人との関係が変わってくる

回答:大豆生田啓友さん

ある調査で分かったことですが、支援センターで友達をつくりたいという人は、あふれるほどいます。実際には、なかなか言えないだけなのです。それが、しばらくの間「居続ける」と周囲の人との関係が変わってきます。ですので、支援センターなどを重要な場所として利用していきましょう。
センターには、先輩ママのように相談にのってくださる方もいます。「なかなか友達ができない」と話せば、関係作りの場を用意してくださることもあります。そのように利用するのもよいと思います。


すくすくポイント
労働時間から見る、ママのワンオペ育児の背景

ワンオペ育児の大きな原因のひとつが、日本社会の長時間労働です。
この「労働時間」に注目して、日本のママたちの状況を考えてみましょう。

有償労働と無償労働

「労働」には、会社勤めなどでお金をもらう「有償労働」と、育児や家事など、賃金を伴わない「無償労働」の2つが含まれます。先進主要国の労働時間を見てみましょう。

日本人は男女ともに、先進国の中で労働時間が最も長いグループに入っています。

注目したいのは、日本人の男女では、有償労働と無償労働の比率が大きく違うことです。
日本の女性は、先進国の中で、家事や育児などの無償労働時間がもっとも長いグループに入っています。
それに対して、日本の男性は、無償労働時間が極端に短く、反対に会社などでの「有償労働」の時間が非常に長くなっています。

男性の無償労働時間と女性の睡眠時間

一方で、日本の女性の睡眠時間は、一番短くなっています。そして、日本のように男性が家事育児をする時間が短い国ほど、女性の睡眠時間が短いことがわかります。

つらいワンオペ育児をしているママを助けるためには、パパの働き方を見直すことが、とても大事なことです。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです